リース投資資産とリース債権の違い【一覧表と仕訳例】新リース会計基準
目次
- リース投資資産とリース債権の違い【一覧表】
- どちらを計上するかの分かれ目
- 所有権移転ファイナンス・リースに当たる3つの場合
- 科目を分ける理由は「回収の中身」の違い
- 同じ契約で比べる仕訳例
- 契約A:リース投資資産の計上と1年目の回収
- 契約B:リース債権の計上と1年目の回収
- リース期間終了時の仕訳の違い
- 再リースと中途解約での違い
- 貸借対照表・損益計算書での表示
- 区分表示か注記か、合算できる場合
- 流動資産か固定資産か
- 損益計算書での受取利息相当額
- 注記で求められる内訳の違い
- 実務で確認しておきたい3つのポイント
- 適用時期
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- リース投資資産とリース債権はどう使い分けますか。
- リース投資資産とリース債権は合算して表示できますか。
- リース投資資産は流動資産と固定資産のどちらに表示しますか。
- リース期間が終わったとき、リース投資資産の残高はどうなりますか。
リース投資資産とリース債権は、どちらもファイナンス・リースの貸手が計上する資産ですが、どちらになるかは「原資産の所有権が借手に移転するかどうか」で決まります。所有権移転外ファイナンス・リースならリース投資資産、所有権移転ファイナンス・リースならリース債権です(リースに関する会計基準 第46項)。
名前が似ているため同じものの言い換えと思われがちですが、中身は違います。リース投資資産には「リース期間が終わって戻ってくる物件の価値(見積残存価額)」が含まれ、リース債権は借手から受け取るお金だけでできています。この違いが、終了時の振替、中途解約時の損益、注記の内訳にまで波及します。
本記事では、強制適用が2027年4月1日以後に開始する事業年度からとなる企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と同適用指針第33号に沿って、両者の違いを一覧表にまとめ、同じ金額の契約を2通りに置いた自社作例の仕訳で、計上から回収・終了までを並べて確認します。ファイナンス・リースかどうかの分類判定そのものは扱いません(関連コラムをご覧ください)。
リース投資資産とリース債権の違い【一覧表】
まず全体像です。左列の論点ごとに、リース投資資産とリース債権の違いを並べました。各項目の根拠条項は、表のあとの各見出しで示します。
| 対象となるリース | リース投資資産は所有権移転外ファイナンス・リース、リース債権は所有権移転ファイナンス・リース |
|---|---|
| 資産の中身 | リース投資資産は将来のリース料を受け取る権利と見積残存価額の複合的な資産、リース債権は借手から受け取るリース料(割安購入選択権の行使価額を含む)を回収する債権 |
| 回収の手段 | リース投資資産はリース料と見積残存価額の価値、リース債権はリース料と割安購入選択権の行使価額 |
| 金融商品としての性格 | リース債権は金融商品、リース投資資産はリース料を受け取る権利の部分だけが金融商品的な性格を持つ |
| リース期間終了時 | リース投資資産は返却された原資産を見積残存価額で貯蔵品や固定資産等へ振り替える、リース債権は回収完了で残高がゼロになる |
| 中途解約時の損益 | リース投資資産は見積残存価額控除後の残高、リース債権は残高そのものと規定損害金の差額を損益に計上 |
| 貸借対照表の表示 | それぞれ区分表示するか、含まれる科目と金額を注記。リース債権の割合に重要性が乏しければ合算可 |
| 内訳の注記 | リース投資資産はリース料債権部分・見積残存価額部分・受取利息相当額、リース債権はリース料債権部分・受取利息相当額 |
一言でまとめると、リース投資資産は「債権+物件の残り価値」、リース債権は「債権だけ」です。以下、この違いがどこから来て、仕訳と表示にどう表れるかを順に見ていきます。
どちらを計上するかの分かれ目
所有権移転ファイナンス・リースに当たる3つの場合
貸手は、ファイナンス・リースを所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースに分類します(リースに関する会計基準 第44項)。ファイナンス・リースと判定されたもののうち、次のいずれかに該当すれば所有権移転ファイナンス・リース、いずれにも該当しなければ所有権移転外ファイナンス・リースです(リースに関する会計基準の適用指針 第70項)。
- 契約上、契約期間終了後または中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされている
- 名目的な価額や著しく有利な価額で原資産を買い取れる割安購入選択権が借手にあり、その行使が確実に予想される
- 原資産が借手の用途に合わせた特別仕様で、返還後に第三者へ再びリースや売却をすることが難しく、借手だけが使うことが明らかである
この分類の結果、所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として、リース開始日に計上します(リースに関する会計基準 第46項)。つまり、勘定科目の選択は分類判定の「出口」にすぎず、科目だけを独立に選ぶ場面はありません。
関連コラム新リース会計基準の貸手の会計処理|分類判定と仕訳・変更点▸
科目を分ける理由は「回収の中身」の違い
なぜ同じファイナンス・リースで科目を分けるのでしょうか。基準は、所有権移転ファイナンス・リースでは貸手が借手からのリース料と割安購入選択権の行使価額で回収するのに対し、所有権移転外ファイナンス・リースではリース料と見積残存価額の価値で回収を図る点に差があると説明しています。そのため、所有権移転外ファイナンス・リースで生じるリース投資資産は、将来のリース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産と位置づけられています(リースに関する会計基準 BC56項)。
この性格の違いは、貸倒れの見積りにも関係します。リース債権は金融商品と考えられ、リース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分は金融商品的な性格を持つとされ、これらは貸倒見積高の算定等で金融商品に関する会計基準の定めに従います(リースに関する会計基準 BC57項)。実務では、リース投資資産の見積残存価額部分まで貸倒引当金の算定対象に含めていないかを確認しておくと安心です。
同じ契約で比べる仕訳例
違いを具体的に見るため、条件をそろえた2つの契約を置きます。いずれも製造・販売以外を事業とする貸手(リース会社)が事業の一環で行うリースで、リース開始日に原資産の現金購入価額でリース投資資産またはリース債権を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(2)、第78項)。以下の数値は説明用の自社作例です。
| 共通の条件 | 原資産の現金購入価額10,000千円、貸手のリース期間5年、リース料は年1回後払いで年2,200千円 |
|---|---|
| 契約A(所有権移転外) | 期間終了時に原資産が返却され、見積残存価額は500千円 |
| 契約B(所有権移転) | 期間終了時に借手が300千円で買い取る割安購入選択権があり、行使が確実に予想される |
利息相当額の総額は、貸手のリース料と見積残存価額の合計額から原資産の取得価額を控除して算定し、原則として利息法で各期に配分します(リースに関する会計基準 第47項、リースに関する会計基準の適用指針 第73項)。利息法で用いる利率は、受け取る金額の現在価値の合計が現金購入価額と等しくなる貸手の計算利子率です(リースに関する会計基準の適用指針 第66項)。所有権移転ファイナンス・リースでは、割安購入選択権の行使価額を貸手のリース料に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第78項)。
この条件で貸手の計算利子率を求めると、契約Aは年約4.71%、契約Bは年約4.14%になります。回収額に見積残存価額を含むか、割安購入選択権の行使価額を含むかで、同じ物件・同じリース料でも利率と利息の配分が変わる点がポイントです。
契約A:リース投資資産の計上と1年目の回収
リース開始日に現金購入価額10,000千円でリース投資資産を計上し、1年目の受取リース料2,200千円は、期首残高10,000千円×約4.71%の利息相当額471千円と元本回収1,729千円に分けます(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(2)、第73項)。単位は千円で、上段がリース開始日、下段が1年目の回収日の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース投資資産 | 10,000 | 現金預金 | 10,000 |
| 現金預金 | 2,200 | リース投資資産 | 1,729 |
| 受取利息相当額 | 471 |
以後も同様に回収を続けると、5年目の回収後のリース投資資産残高は500千円になります。リース料をすべて回収しても残高がゼロにならず、見積残存価額の分だけ残るのがリース投資資産の特徴です。
契約B:リース債権の計上と1年目の回収
所有権移転ファイナンス・リースの基本となる会計処理は所有権移転外と同様で、「リース投資資産」を「リース債権」と読み替えます(リースに関する会計基準の適用指針 第78項)。1年目の利息相当額は、期首残高10,000千円×約4.14%の414千円、元本回収は1,786千円です。単位は千円で、上段がリース開始日、下段が1年目の回収日の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース債権 | 10,000 | 現金預金 | 10,000 |
| 現金預金 | 2,200 | リース債権 | 1,786 |
| 受取利息相当額 | 414 |
契約Bでは、5年目のリース料を回収した時点のリース債権残高は300千円で、これは割安購入選択権の行使価額と一致します。物件の残り価値ではなく、借手から受け取る予定の代金が残っている状態です。
リース期間終了時の仕訳の違い
終了時の処理で、両者の違いがはっきり表れます。リース投資資産は、借手から原資産の返却を受けた時点で、見積残存価額によりその後の保有目的に応じて貯蔵品または固定資産等へ振り替えます(リースに関する会計基準の適用指針 第76項)。一方、リース債権は割安購入選択権の行使代金を受け取って回収が完了するだけで、物件は貸手の手元に戻りません。単位は千円で、上段が契約A(返却時)、下段が契約B(割安購入選択権の行使時)の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 貯蔵品 | 500 | リース投資資産 | 500 |
| 現金預金 | 300 | リース債権 | 300 |
契約Aで返却を受けた原資産を処分した場合は、処分価額と帳簿価額の差額を処分損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第76項)。見積残存価額を高く見積もりすぎていると、この時点で処分損が出る点に注意が必要です。
再リースと中途解約での違い
再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合、再リース料はどちらも発生時に収益に計上します。ただしリース投資資産は、リース期間の終了により固定資産に振り替え、その金額を取得価額として再リース開始時点の見積再リース期間にわたり減価償却します(リースに関する会計基準の適用指針 第76項、第80項)。リース債権には振り替える物件の価値がないため、この処理は生じません。
中途解約で規定損害金を受け取った場合は、規定損害金と残高との差額を損益に計上します。比較対象となる残高は、リース投資資産では中途解約時点の見積残存価額を控除した後の残高、リース債権では中途解約時のリース債権残高です(リースに関する会計基準の適用指針 第77項、第81項)。リース投資資産だけ、見積残存価額の分を差し引いてから比べる点が違いです。
貸借対照表・損益計算書での表示
区分表示か注記か、合算できる場合
リース債権とリース投資資産は、それぞれ貸借対照表で区分して表示するか、それぞれが含まれる科目と金額を注記します。ただし、リース債権の期末残高が、リース債権とリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合は、両者を合算して表示または注記できます(リースに関する会計基準 第52項)。
区分表示は企業会計基準第13号を踏襲したものですが、合算の容認はIFRS第16号で両者が区分されていないことを踏まえて設けられた取扱いです(リースに関する会計基準 BC63項)。所有権移転ファイナンス・リースがごく一部しかない貸手にとっては、表示の手間を減らせる余地があります。
流動資産か固定資産か
流動・固定の区分は、両者に共通のルールです(リースに関する会計基準 第52項)。
| 主目的たる営業取引から 発生したもの |
全額を流動資産に表示(リース会社やメーカーの販売目的のリースなど) |
|---|---|
| 主目的たる営業取引以外の 取引から発生したもの |
貸借対照表日の翌日から1年以内に入金期限が到来するものは流動資産、1年を超えて到来するものは固定資産に表示 |
リース投資資産かリース債権かで区分ルールは変わりません。違うのは科目名と注記の内訳であり、流動・固定は「本業のリースかどうか」で決まると押さえておけば足ります。
損益計算書での受取利息相当額
損益計算書では、ファイナンス・リースに係るリース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額を区分して表示するか、含まれる科目と金額を注記します(リースに関する会計基準 第53項(2))。ここでは両者がひとまとめに扱われており、科目による違いはありません。
注記で求められる内訳の違い
貸借対照表で区分して表示していない場合、内訳を注記します。リース投資資産はリース料債権部分・見積残存価額部分の金額と受取利息相当額、リース債権はリース料債権部分の金額と受取利息相当額です。リース料債権部分と見積残存価額部分は、いずれも利息相当額控除前の金額で示します(リースに関する会計基準の適用指針 第104項)。
上の契約Aを例にすると、リース開始直後のリース投資資産10,000千円は、リース料債権部分11,000千円と見積残存価額部分500千円から受取利息相当額1,500千円を差し引いた金額として説明できます。リース債権には見積残存価額部分の行がない、というのが内訳注記上の違いです。
このほか、両者の残高に重要な変動がある場合のその内容と、リース料債権部分について貸借対照表日後5年以内の1年ごとおよび5年超の回収予定額を、それぞれについて注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第106項)。どちらの注記も、リース債権の割合に重要性が乏しい場合は合算できます(リースに関する会計基準の適用指針 第104項、第106項)。
関連コラム新リース会計基準における貸手の注記事項と個別財務諸表の特例解説▸
実務で確認しておきたい3つのポイント
- 契約書の買取条項の確認:割安購入選択権の有無と「行使が確実に予想されるか」で科目が変わります。満了時の買取価格が名目的な金額かどうかを契約ごとに確認します。
- 見積残存価額の根拠の記録:リース投資資産だけに含まれる見積残存価額は、利息の配分、終了時の振替額、処分損益のすべてに影響します。見積りの根拠を残しておくと監査対応がスムーズです。
- 合算の可否の毎期判定:リース債権の割合が小さいことを前提に合算している場合、所有権移転ファイナンス・リースの増加で前提が崩れることがあります。期末ごとに割合を確認します。
適用時期
企業会計基準第34号は2024年9月13日に公表され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。3月決算の会社であれば、2028年3月期が強制適用の適用初年度です。
貸手の会計処理は、IFRS第16号などでも抜本的な改正が行われていないことから、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲しています(リースに関する会計基準 BC13項)。リース債権とリース投資資産の区分そのものは従来どおりで、合算の容認と注記の拡充が主な変化と整理できます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
まとめ
- 所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上します。
- リース投資資産はリース料を受け取る権利と見積残存価額の複合的な資産、リース債権はリース料と割安購入選択権の行使価額で回収する債権です。
- 終了時には、リース投資資産は見積残存価額で貯蔵品等へ振り替え、リース債権は回収完了で消滅します。中途解約時の損益計算でも残高の扱いが異なります。
- 表示は区分表示または注記が原則で、リース債権の割合に重要性が乏しければ合算できます。流動・固定の区分は両者共通です。
- 注記の内訳は、リース投資資産にだけ見積残存価額部分が加わります。
参考文献
よくある質問
リース投資資産とリース債権はどう使い分けますか。
所有権移転ファイナンス・リースならリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースならリース投資資産です(リースに関する会計基準 第46項)。所有権移転条項、行使が確実に予想される割安購入選択権、特別仕様のいずれかに該当するかで分類します(リースに関する会計基準の適用指針 第70項)。
リース投資資産とリース債権は合算して表示できますか。
リース債権の期末残高が、リース債権とリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合は、合算して表示または注記できます(リースに関する会計基準 第52項)。
リース投資資産は流動資産と固定資産のどちらに表示しますか。
主目的たる営業取引から発生したものは流動資産です。それ以外の取引から発生したものは、貸借対照表日の翌日から1年以内に入金期限が到来する部分を流動資産、1年を超える部分を固定資産に表示します(リースに関する会計基準 第52項)。リース債権も同じ扱いです。
リース期間が終わったとき、リース投資資産の残高はどうなりますか。
借手から原資産の返却を受けた時点で、見積残存価額により、その後の保有目的に応じて貯蔵品または固定資産等へ振り替えます(リースに関する会計基準の適用指針 第76項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




