大会社の義務【一覧表】会計監査人・監査役会・内部統制・連結計算書類
目次
- 大会社の定義と判定の基準日
- 大会社の義務の一覧表
- 公開会社か非公開会社かで変わる機関設計
- 公開会社である大会社:監査役会と会計監査人
- 公開会社でない大会社:会計監査人と監査役
- 内部統制システムの決定義務
- 計算書類の監査・連結計算書類・決算公告
- 計算書類の会計監査人監査
- 連結計算書類の作成義務
- 決算公告に損益計算書が加わる
- 有価証券報告書を提出する大会社に加わる義務
- 大会社になった後の対応手順
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 非公開会社の大会社も監査役会を置く必要がありますか。
- 負債だけが200億円以上の場合も大会社になりますか。
- 大会社になれば必ず連結計算書類を作成しなければなりませんか。
- 大会社の決算公告では何を公告しますか。
- 期末に資本金が5億円以上になった時点で大会社の義務がかかりますか。
会社法の大会社とは、最終事業年度の貸借対照表で資本金5億円以上または負債の部の合計200億円以上のいずれかに該当する株式会社です(会社法 第2条第6号)。大会社になると、会計監査人の設置、内部統制システムの決定、損益計算書の公告などの義務が一度に加わります。
ただし、加わる義務は会社ごとに同じではありません。公開会社かどうかと、有価証券報告書を提出しているかどうかの2つで範囲が変わります。本記事では、判定そのものではなく「大会社になった後に何が増えるか」に絞り、条文ごとに一覧表で整理します。
大会社の定義と判定の基準日
大会社の判定に使うのは、決算期末の残高そのものではなく、最終事業年度に係る貸借対照表です(会社法 第2条第6号)。最終事業年度とは、計算書類が定時株主総会で承認された(会計監査人設置会社で承認特則が使える場合は取締役会で承認された)事業年度のうち最も遅いものをいいます(会社法 第2条第24号)。
このため、期末に資本金が5億円以上になっていても、その事業年度の計算書類が承認されるまでは大会社ではありません。反対に、承認された時点から大会社としての義務がかかります。会社の成立後、最初の定時株主総会までの間は、成立の日の貸借対照表で判定します(会社法 第2条第6号)。
| 資本金基準 | 貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上 |
|---|---|
| 負債基準 | 貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上 |
| 判定に使う 貸借対照表 |
最終事業年度に係る貸借対照表(成立後最初の定時株主総会までは成立の日の貸借対照表) |
| 該当の条件 | 資本金基準と負債基準のいずれか一方に該当すれば大会社 |
負債基準は、借入金が少ない会社でも、前受金や預り金が大きい業種では超えることがあります。負債の部に何を含めるかは、次のコラムで科目ごとに確認できます。
関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸
大会社の義務の一覧表
会社法の条文のうち、大会社であることを要件にしている義務を一覧にすると次のとおりです。右列には、その義務がかかる大会社の範囲と根拠条文を書いています。
| 会計監査人の設置 | 公開会社か否かを問わず、すべての大会社(会社法 第328条第1項・第2項) |
|---|---|
| 監査役会の設置 | 公開会社である大会社。監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を選んだ場合は不要(会社法 第328条第1項) |
| 監査役の設置 | 公開会社でない大会社で、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社でないもの(会社法 第327条第3項) |
| 監査範囲の 会計限定の禁止 |
会計監査人設置会社・監査役会設置会社は、監査役の監査範囲を会計に限定する定款の定めを置けない(会社法 第389条第1項) |
| 内部統制システム の決定 |
すべての大会社。取締役会設置会社は取締役会で、それ以外は取締役が決定(会社法 第362条第5項、第348条第4項) |
| 損益計算書の公告 | 有価証券報告書の提出会社を除く大会社。貸借対照表に加えて損益計算書も公告(会社法 第440条第1項・第4項) |
| 連結計算書類の作成 | 事業年度の末日に大会社で、有価証券報告書の提出義務がある会社(会社法 第444条第3項) |
| 社外取締役の設置 | 公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で、有価証券報告書の提出義務がある会社(会社法 第327条の2) |
| 取締役の個人別報酬 の決定方針 |
社外取締役の設置義務と同じ範囲の会社の取締役会(会社法 第361条第7項第1号) |
| 事業報告での 監査報酬等の記載 |
会社法第444条第3項に規定する大会社(会社法施行規則 第126条第8号) |
表のうち上の5項目は、上場していない会社でも大会社になれば対象になります。下の3項目は、有価証券報告書の提出義務がある大会社に限った義務です。非上場の大会社が実務で最初に向き合うのは、会計監査人の選任と内部統制システムの決定、そして決算公告の範囲の変更の3点です。
公開会社か非公開会社かで変わる機関設計
大会社の義務のうち、もっとも影響が大きいのが機関設計です。ここは公開会社(株式の全部に譲渡制限を付けていない会社)かどうかで分かれます。
公開会社である大会社:監査役会と会計監査人
公開会社である大会社は、監査役会と会計監査人を置かなければなりません(会社法 第328条第1項)。監査役会の代わりに、監査等委員会設置会社または指名委員会等設置会社を選ぶこともでき、その場合も会計監査人は必要です(会社法 第327条第5項)。
監査役会を置くと、それに連動して次の要件が加わります。
- 取締役会の設置(会社法 第327条第1項第2号)
- 監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役(会社法 第335条第3項)
- 監査役の中から常勤の監査役を選定(会社法 第390条第3項)
実務では、社外監査役と常勤監査役の候補者探しに時間がかかります。資本金の増加で大会社になる見込みが立った段階で、人選に着手しておくと定時株主総会に間に合わせやすくなります。
公開会社でない大会社:会計監査人と監査役
株式の全部に譲渡制限がある会社(公開会社でない会社)は、大会社になっても監査役会は不要で、会計監査人の設置だけが義務になります(会社法 第328条第2項)。ただし、会計監査人設置会社は、監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除き、監査役を置かなければなりません(会社法 第327条第3項)。
見落としやすいのが監査役の監査範囲です。非公開会社では監査役の監査範囲を会計に限定する定款の定めを置けますが、会計監査人設置会社はこの定めを置けません(会社法 第389条第1項)。会計限定の監査役しかいない会社が大会社になる場合は、定款変更と、業務監査を担える監査役の手当てが同時に必要になります。
なお、取締役会の設置は公開会社でない大会社には義務づけられていません。取締役会を置かない場合でも、次の内部統制システムの決定義務はかかります。
関連コラム【判定表】会計監査人の設置義務がある会社|資本金5億円・負債200億円▸
内部統制システムの決定義務
大会社である取締役会設置会社では、取締役会が「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」その他の業務の適正を確保するための体制の整備を決定しなければなりません(会社法 第362条第4項第6号・第5項)。取締役会を置かない大会社では、取締役がこれを決定します(会社法 第348条第3項第4号・第4項)。
決定すべき体制の中身は法務省令で定められており、情報の保存・管理、損失の危険の管理、職務執行の効率性、使用人の法令遵守、子会社を含む企業集団の業務の適正などが並びます(会社法施行規則 第100条、第98条)。監査役設置会社では、監査役の職務を補助する使用人や監査役への報告体制なども加わります(会社法施行規則 第98条第4項、第100条第3項)。
決定した内容は、事業報告にその概要と運用状況の概要を記載します(会社法施行規則 第118条第2号)。決議の議事録だけで終わらせず、毎年の事業報告の記載まで年間スケジュールに組み込んでおくのが実務上のポイントです。
関連コラム会社法の内部統制システム|決議事項一覧とJ-SOXとの比較表▸
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計算書類の監査・連結計算書類・決算公告
計算書類の会計監査人監査
会計監査人を置くと、計算書類とその附属明細書は、監査役(監査等委員会・監査委員会)に加えて会計監査人の監査を受けなければなりません(会社法 第436条第2項第1号)。事業報告とその附属明細書は、従来どおり監査役等の監査の対象です(会社法 第436条第2項第2号)。
一方で、会計監査人設置会社には計算書類の承認の特則があります。取締役会の承認を受けた計算書類が法務省令の要件を満たす場合、定時株主総会での承認は不要になり、内容を報告すれば足ります(会社法 第439条)。決算日程は会計監査人の監査報告の受領日から逆算して組み直すことになります。
連結計算書類の作成義務
連結計算書類の作成が義務になるのは、事業年度の末日において大会社であり、かつ有価証券報告書の提出義務がある会社です(会社法 第444条第3項)。有価証券報告書を提出していない大会社には作成義務がなく、会計監査人設置会社として任意に作成できるにとどまります(会社法 第444条第1項)。
作成した連結計算書類は、監査役等と会計監査人の監査を受けます(会社法 第444条第4項)。子会社を持つ非上場の大会社では「大会社になったから連結が必要」と誤解されることがありますが、条文上の要件は有価証券報告書の提出義務とセットです。
関連コラム連結計算書類の作成義務【判定表】会社法444条の対象会社と任意作成▸
決算公告に損益計算書が加わる
決算公告は定時株主総会の終結後遅滞なく行うもので、通常の株式会社では対象が貸借対照表だけです。大会社ではこれに損益計算書が加わり、貸借対照表と損益計算書の両方を公告します(会社法 第440条第1項)。
| 官報・日刊新聞紙 で公告する会社 |
貸借対照表と損益計算書の要旨の公告で足りる(会社法 第440条第2項) |
|---|---|
| 官報・日刊新聞紙の会社 が電磁的開示を選ぶ場合 |
定時株主総会の終結の日後5年を経過する日まで、内容を電磁的方法で継続して開示する措置をとれば、公告は不要(会社法 第440条第3項) |
| 有価証券報告書 の提出会社 |
決算公告の規定は適用されない(会社法 第440条第4項) |
これまで貸借対照表の要旨だけを官報に載せていた会社は、大会社になった最初の決算公告から損益計算書の要旨も必要になります。公告の原稿を作る担当部署に、大会社への移行を早めに共有しておくと漏れを防げます。
有価証券報告書を提出する大会社に加わる義務
公開会社かつ大会社である監査役会設置会社で、有価証券報告書の提出義務がある会社は、社外取締役を置かなければなりません(会社法 第327条の2)。この義務は、2019年12月に成立した会社法の一部を改正する法律(令和元年法律第70号)で設けられ、2021年3月1日から施行されています。
同じ範囲の会社では、取締役会が取締役の個人別の報酬等の内容についての決定に関する方針を定めなければなりません(会社法 第361条第7項第1号)。また、会社法第444条第3項に規定する大会社は、事業報告に、会計監査人に当該会社と子会社が支払うべき報酬等の合計額などを記載します(会社法施行規則 第126条第8号)。
上場準備会社の場合、上場によって有価証券報告書の提出義務が生じた時点で、これらの義務が上乗せされます。社外取締役の人選は社外監査役と同様に時間がかかるため、機関設計の移行計画に含めて検討するのが現実的です。
大会社になった後の対応手順
大会社になると分かった時点から、最初の定時株主総会と翌事業年度までに行う対応を時系列で並べると次のとおりです。資本金の増加で大会社になるケースを想定しています。
| 増資・決算の前 | 資本金・負債の見込みで大会社に該当するかを試算し、会計監査人候補の監査法人・公認会計士に打診する |
|---|---|
| 定時株主総会の 招集の決定まで |
機関設計の定款変更案、会計監査人の選任議案、監査役会を置く場合は監査役の選任議案を準備する |
| 定時株主総会 | 計算書類の承認で大会社に該当し、定款変更と会計監査人の選任を決議する |
| 総会後すみやかに | 監査役会設置会社・会計監査人設置会社である旨などの変更登記(会社法 第911条第3項第18号・第19号)、取締役会等での内部統制システムの決定、決算公告への損益計算書の追加 |
| 翌事業年度 | 会計監査人による期中監査・期末監査への対応、事業報告への内部統制システムの記載 |
大会社になってから会計監査人を探し始めると、監査法人側の受嘱判断や監査計画の時間が足りず、選任が定時株主総会に間に合わないことがあります。判定の時点と選任の時期の関係は、次のコラムで詳しく整理しています。
関連コラム会社法監査の要件と開始時期|大会社の判定時点と会計監査人の選任▸
まとめ
大会社は、最終事業年度の貸借対照表で資本金5億円以上または負債200億円以上の株式会社です(会社法 第2条第6号)。大会社になると、すべての会社に会計監査人の設置と内部統制システムの決定が義務づけられ、決算公告には損益計算書が加わります。
公開会社であれば監査役会(または委員会型の機関)、非公開会社であれば監査役が必要になり、会計限定の監査役は置けなくなります。さらに有価証券報告書の提出義務がある大会社には、連結計算書類の作成や社外取締役の設置が上乗せされます。義務の範囲は会社の属性で変わるため、自社がどの組み合わせに当たるかを一覧表で確かめてから準備に入ることをおすすめします。
大会社への該当や機関設計の判断は個別の事情によって異なります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
非公開会社の大会社も監査役会を置く必要がありますか。
必要ありません。公開会社でない大会社に義務づけられるのは会計監査人の設置です(会社法 第328条第2項)。ただし、会計監査人設置会社は監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社を除いて監査役を置く必要があり(会社法 第327条第3項)、その監査範囲を会計に限定することはできません(会社法 第389条第1項)。
負債だけが200億円以上の場合も大会社になりますか。
なります。資本金が5億円未満でも、最終事業年度の貸借対照表の負債の部の合計額が200億円以上であれば大会社に該当します(会社法 第2条第6号)。資本金基準と負債基準はいずれか一方を満たせば足ります。
大会社になれば必ず連結計算書類を作成しなければなりませんか。
いいえ。作成義務があるのは、事業年度の末日に大会社であり、かつ有価証券報告書の提出義務がある会社です(会社法 第444条第3項)。それ以外の大会社は、会計監査人設置会社として任意に作成できます(会社法 第444条第1項)。
大会社の決算公告では何を公告しますか。
貸借対照表と損益計算書です(会社法 第440条第1項)。官報や日刊新聞紙で公告する会社は要旨で足り(会社法 第440条第2項)、有価証券報告書の提出会社には決算公告の規定が適用されません(会社法 第440条第4項)。
期末に資本金が5億円以上になった時点で大会社の義務がかかりますか。
期末の時点ではかかりません。大会社の判定は最終事業年度に係る貸借対照表で行い、最終事業年度はその計算書類が定時株主総会等で承認された事業年度を指します(会社法 第2条第6号・第24号)。そのため、計算書類が承認された時点から大会社としての義務がかかります。
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