連結計算書類の作成義務【判定表】会社法444条の対象会社と任意作成
目次
- 連結計算書類の作成義務の判定表
- 作成義務を決める2つの要件の読み方
- 要件1 事業年度の末日における大会社
- 要件2 有価証券報告書の提出義務
- ケース別の判定例
- 連結計算書類を構成する書類
- 連結注記表で不要となる注記と個別注記表への影響
- 連結の範囲と作成の基本ルール
- 監査・承認・定時株主総会での報告の流れ
- 個別の計算書類との違い
- 任意作成を選ぶ場面と注意点
- 実務で確認したいチェックポイント
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 上場会社であれば必ず連結計算書類を作成しなければなりませんか。
- 連結計算書類に連結キャッシュ・フロー計算書は含まれますか。
- 連結計算書類は定時株主総会で承認を受ける必要がありますか。
- 連結計算書類の会計監査報告はいつまでに通知されますか。
会社法上の連結計算書類を作成しなければならないのは、事業年度の末日において大会社であり、かつ金融商品取引法により有価証券報告書の提出義務を負う株式会社です(会社法 第444条第3項)。この2つを両方満たさない会社でも、会計監査人を置いていれば任意に作成できます(会社法 第444条第1項)。
「上場しているから必ず作成義務がある」「会計監査人がいれば作らなければならない」といった理解は、どちらも条文の要件とずれています。本稿では、作成義務の有無を判定表で整理したうえで、構成書類・連結の範囲・監査から定時株主総会での報告までの流れを、会社法と会社計算規則の条文に沿って確認します。
連結計算書類の作成義務の判定表
まず結論を一覧にします。判定の軸は「会計監査人の有無」「事業年度末日の大会社該当」「有価証券報告書の提出義務」の3つです。
| 会社の状態 | 連結計算書類の扱い |
|---|---|
| 事業年度の末日に大会社で、有価証券報告書の提出義務がある | 作成義務あり(会社法 第444条第3項) |
| 大会社だが、有価証券報告書の提出義務がない | 作成義務なし。大会社は会計監査人を置かなければならないため、任意に作成できる(会社法 第328条、第444条第1項) |
| 大会社ではない会計監査人設置会社(上場会社を含む) | 作成義務なし。任意に作成できる(会社法 第444条第1項) |
| 会計監査人を置いていない株式会社 | 会社法第444条の作成規定の対象外(同条は会計監査人設置会社を主語としている) |
実務で見落とされやすいのは3行目です。上場会社であっても、資本金5億円未満かつ負債200億円未満であれば大会社に当たらず、会社法上の作成義務は生じません。反対に、非上場でも過去の募集・売出しにより有価証券報告書の提出を続けている大会社は、作成義務の対象になり得ます。
作成義務を決める2つの要件の読み方
要件1 事業年度の末日における大会社
大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表で、資本金として計上した額が5億円以上、または負債の部の合計額が200億円以上の株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。ここでいう最終事業年度は、計算書類の承認を受けた事業年度のうち最も遅いものです(会社法 第2条第24号)。
このため、事業年度の末日の時点では、その期の計算書類はまだ承認前であり、通常は一つ前の事業年度の貸借対照表で大会社かどうかを判定することになると考えられます(設立後最初の定時株主総会までの期間など、条文上の特則がある場面もあります)。期中の増資や借入れで資本金・負債が基準を超えても、その期の末日の判定に直ちに反映されるわけではない点に注意が必要です。判定時点の考え方は個別の事情で結論が変わることがあるため、会計監査人と早めに認識を合わせておくと安全です。
関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸
要件2 有価証券報告書の提出義務
会社法第444条第3項は、金融商品取引法第24条第1項により有価証券報告書を提出しなければならない会社を対象にしています。同項が提出義務の対象として挙げる有価証券は、次の4つです(金融商品取引法 第24条第1項)。
| 第1号 | 金融商品取引所に上場されている有価証券 |
|---|---|
| 第2号 | 流通状況が上場有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券 |
| 第3号 | 募集または売出しにつき届出等の規定の適用を受けた有価証券(第1号・第2号を除く) |
| 第4号 | 所有者の数が政令で定める数以上である一定の有価証券 |
上場会社は通常、第1号に当たるため分かりやすい一方(プロ向け市場の特定上場有価証券は第1号から除かれています)、第3号・第4号は非上場会社でも該当し得ます。なお、同項ただし書には、所有者数の減少などにより提出義務が外れる場合が定められているため、提出義務の有無そのものを先に確認してから第444条第3項を当てはめる順序が確実です。
関連コラム会社法監査とは|金商法監査との違いと対応スケジュール▸
ケース別の判定例
2つの要件を当てはめた例を示します(いずれも3月決算・会計監査人設置会社を想定した自社作例です)。
| ケース | 判定 |
|---|---|
| 上場会社。前期末の資本金12億円 | 大会社かつ第24条第1項第1号に該当し、作成義務あり |
| 上場会社。前期末の資本金3億円、負債80億円 | 大会社に当たらないため作成義務なし。任意作成は可能 |
| 非上場会社。前期末の負債250億円、有価証券報告書の提出義務なし | 大会社だが提出義務がないため作成義務なし。任意作成は可能 |
| 非上場会社。前期末の資本金6億円、過去の募集により有価証券報告書の提出を継続 | 大会社かつ第24条第1項第3号に該当し得るため、作成義務の対象となる可能性が高い |
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連結計算書類を構成する書類
会社法第444条第1項の「法務省令で定めるもの」は、会社計算規則で次の4つと定められています(会社計算規則 第61条第1号)。
| 連結貸借対照表 | 連結会社の貸借対照表の資産・負債・純資産を基礎に作成する(会社計算規則 第65条) |
|---|---|
| 連結損益計算書 | 企業集団の損益の状況を示す書類 |
| 連結株主資本等 変動計算書 |
純資産の各項目の変動を示す書類 |
| 連結注記表 | 重要な会計方針や連結の範囲などを注記する書類(会社計算規則 第98条) |
連結キャッシュ・フロー計算書は、第61条の列挙に含まれていません。日本の会計基準で作成する会社法の連結計算書類は、上の4つで構成されます。
また、指定国際会計基準・修正国際基準・米国基準によって連結計算書類を作成できる特則も設けられています(会社計算規則 第61条第2号から第4号、第120条、第120条の2、第120条の3)。
連結注記表で不要となる注記と個別注記表への影響
連結注記表では、損益計算書に関する注記、税効果会計に関する注記、持分法損益等に関する注記、関連当事者との取引に関する注記、連結配当規制適用会社に関する注記を表示することを要しません(会社計算規則 第98条第2項第4号)。
さらに、連結注記表を作成する株式会社は、個別注記表における賃貸等不動産に関する注記と持分法損益等に関する注記が不要になります(会社計算規則 第110条第2項、第111条第2項)。連結計算書類を作る会社は、個別側の注記の要否もあわせて見直すと、重複作業を減らせます。
連結の範囲と作成の基本ルール
連結計算書類の作成期間(連結会計年度)は、前事業年度の末日の翌日から当該事業年度の末日までです(会社計算規則 第62条)。連結の範囲と主な作成ルールは次のとおりです。
| 連結の範囲 | 原則としてすべての子会社を含める。支配が一時的な子会社などは含めない(会社計算規則 第63条第1項) |
|---|---|
| 重要性による除外 | 資産・売上高等からみて重要性の乏しい子会社は、連結の範囲から除くことができる(会社計算規則 第63条第2項) |
| 決算日の異なる 子会社 |
原則として親会社の事業年度末日に決算を行う。差異が3か月以内なら子会社の決算を基礎にでき、その場合は重要な不一致を調整する(会社計算規則 第64条) |
| 相殺消去 | 投資と資本の相殺消去その他の連結会社相互間の項目の相殺消去を行う(会社計算規則 第68条) |
| 持分法 | 非連結子会社・関連会社に対する投資は、原則として持分法により計算した価額で計上する(会社計算規則 第69条) |
初めて連結計算書類を作る会社では、子会社の決算期のずれと、グループ内取引の消去に必要な情報の集め方が最初の論点になりやすい印象です。子会社側の決算日程も含めて、作成スケジュールを組み立てておくことが大切です。
監査・承認・定時株主総会での報告の流れ
連結計算書類は、監査役(監査等委員会設置会社は監査等委員会、指名委員会等設置会社は監査委員会)および会計監査人の監査を受けなければなりません(会社法 第444条第4項)。作成から定時株主総会までは、次の順序で進みます。
- 作成と提供: 取締役(指名委員会等設置会社は執行役)が作成し、会計監査人に提供する際は監査役等にも提供する(会社計算規則 第125条)。
- 会計監査報告の通知: 会計監査人は、連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日(合意により定めた日があればその日)までに通知する(会社計算規則 第130条第1項第3号)。
- 監査役等の監査報告の通知: 会計監査報告を受領した日から1週間を経過した日(合意により定めた日があればその日)までに通知する(会社計算規則 第132条第1項第2号)。
- 取締役会の承認: 取締役会設置会社では、監査を受けた連結計算書類について取締役会の承認を受ける(会社法 第444条第5項)。
- 招集通知での提供: 取締役会設置会社では、定時株主総会の招集通知に際して株主に提供する(会社法 第444条第6項、会社計算規則 第134条)。
- 定時株主総会での報告: 取締役は、連結計算書類の内容と監査の結果を定時株主総会に報告する(会社法 第444条第7項)。
連結計算書類は、総会で承認を受ける議案ではなく報告事項です。また、招集通知に際しての提供では、定款の定めがあれば、ウェブサイトに掲載して株主に提供したものとみなす方法も認められています(会社計算規則 第134条第5項)。
個別の計算書類との違い
同じ会社法監査の対象でも、個別の計算書類とは手続に違いがあります。
| 会計監査報告の 通知期限 |
個別の計算書類は、全部の受領から4週間・附属明細書の受領から1週間・合意日のいずれか遅い日。連結計算書類は、全部の受領から4週間(合意日があればその日)(会社計算規則 第130条第1項第1号・第3号) |
|---|---|
| 附属明細書 | 連結計算書類の構成書類には含まれていない(会社計算規則 第61条) |
| 定時株主総会での扱い | 連結計算書類は内容と監査結果の報告にとどまる(会社法 第444条第7項) |
関連コラム計算書類の監査報告書の記載事項と通知期限|会社法監査の実務▸
任意作成を選ぶ場面と注意点
作成義務のない会計監査人設置会社でも、連結計算書類を作成することができます(会社法 第444条第1項)。ただし、任意であっても作成した以上は、監査役等と会計監査人の監査、取締役会の承認、定時株主総会への報告という第444条第4項から第7項の手続がそのままかかります。
任意作成が意味を持つ場面の一つが、分配可能額の算定です。連結配当規制適用会社となる旨を定めるには、連結計算書類を作成していることが前提になります(会社計算規則 第2条第3項第55号、第158条第4号)。この定めを選ぶと、連結ベースの数値に基づいて分配可能額が減額され得るため、メリットだけで判断せず、配当政策や子会社株式の評価とあわせて検討する必要があります。
そのほか、上場準備中で将来の作成義務が見込まれる会社が、作成体制と監査対応を前倒しで試す目的で任意に作成するケースも考えられます。会計監査人の監査工数が増えるため、監査契約の範囲・報酬への影響も事前に確認しておくと安心です。
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実務で確認したいチェックポイント
作成義務の判定と初年度の準備で、確認漏れが起きやすい点をまとめます。
- 大会社の判定に使う貸借対照表が、最終事業年度(承認済みの直近期)のものになっているか(会社法 第2条第6号・第24号)。
- 有価証券報告書の提出義務が、上場以外の事由(募集・売出しの届出、所有者数)で生じていないか(金融商品取引法 第24条第1項)。
- 連結の範囲から外す子会社について、一時的な支配や重要性の乏しさなど条文上の理由を説明できるか(会社計算規則 第63条)。
- 決算期の異なる子会社について、仮決算を行うか、3か月以内の差異として調整するかを決めているか(会社計算規則 第64条)。
- 会計監査報告・監査役等の監査報告の通知期限から逆算し、取締役会と招集通知の日程を組んでいるか(会社計算規則 第130条、第132条)。
- 連結注記表の作成に合わせて、個別注記表で不要になる注記を整理したか(会社計算規則 第110条第2項、第111条第2項)。
判定や初年度の作成体制は、資本構成・子会社の状況・上場スケジュールによって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- 連結計算書類の作成義務は、事業年度の末日に大会社であり、かつ有価証券報告書の提出義務がある会社に限られます(会社法 第444条第3項)。
- 大会社の判定は原則として承認済みの最終事業年度の貸借対照表で行うため、期中の増資・借入れの影響は時点をずらして表れます。
- 会計監査人設置会社であれば任意作成ができ、作成すれば監査・取締役会承認・定時株主総会への報告の手続がかかります。
- 構成書類は連結貸借対照表・連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書・連結注記表の4つで、連結キャッシュ・フロー計算書は含まれません。
参考文献
よくある質問
上場会社であれば必ず連結計算書類を作成しなければなりませんか。
いいえ。会社法上の作成義務は、事業年度の末日において大会社であることも要件です(会社法 第444条第3項)。資本金5億円未満かつ負債200億円未満の上場会社は大会社に当たらないため作成義務はなく、会計監査人設置会社として任意に作成するかどうかを選ぶことになります。
連結計算書類に連結キャッシュ・フロー計算書は含まれますか。
含まれません。日本の会計基準で作成する場合、会社計算規則が定める連結計算書類は、連結貸借対照表・連結損益計算書・連結株主資本等変動計算書・連結注記表の4つです(会社計算規則 第61条第1号)。
連結計算書類は定時株主総会で承認を受ける必要がありますか。
承認決議は不要で、取締役が連結計算書類の内容と監査の結果を定時株主総会に報告します(会社法 第444条第7項)。取締役会設置会社では、総会の前に取締役会の承認を受けます(会社法 第444条第5項)。
連結計算書類の会計監査報告はいつまでに通知されますか。
会計監査人は、連結計算書類の全部を受領した日から4週間を経過した日までに通知します。特定取締役・特定監査役・会計監査人の間で合意した日があれば、その日が期限になります(会社計算規則 第130条第1項第3号)。
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