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会社法の内部統制システム|決議事項一覧とJ-SOXとの比較表

目次
  1. 会社法上の内部統制システムの定義と根拠条文
  2. 条文が二層構造になっている理由
  3. 整備義務がある会社の範囲と決定機関
  4. 大会社の判定は貸借対照表の2指標
  5. 取締役会の決議事項一覧(会社法施行規則第100条)
  6. 企業集団の内部統制は4つの体制に分解される
  7. 監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の追加項目
  8. 基本方針の決議後に続く事業報告と監査報告
  9. 会社法の内部統制とJ-SOXの比較
  10. 会社法の内部統制システム
  11. 内部統制報告制度(J-SOX)
  12. 新規上場会社のJ-SOX監査証明の免除
  13. 実務でつまずきやすい5つの論点
  14. 決議の時期を大会社該当年度の期末に合わせてしまう
  15. 監査役に関する7項目を1段落でまとめてしまう
  16. 費用の前払・償還の手続を定めていない
  17. 子会社が増えたのに基本方針を更新していない
  18. 運用状況の概要に書ける事実を残していない
  19. まとめ
  20. 参考文献
  21. よくある質問
  22. 内部統制システムの決議をしていない大会社はどうなりますか。
  23. 非上場の大会社もJ-SOXへの対応が必要ですか。
  24. 基本方針は毎年決議し直す必要がありますか。
  25. 監査等委員会設置会社に移行したら、監査役向けの記載はどう変わりますか。
  26. 会社法の内部統制システムに外部監査はありますか。

会社法の内部統制は、金融商品取引法の内部統制報告制度(J-SOX)とはまったく別の制度です。会社法では「内部統制システム」という言葉は条文上使われておらず、業務の適正を確保するための体制として、その整備の方針を取締役会が決議することが求められます。

大会社である取締役会設置会社では、この決議が義務です(会社法 第362条第5項)。決議すべき体制の内容は法務省令に細かく列挙されており、監査役設置会社であれば13項目を決議で押さえる必要があります。本記事では、その項目を一覧表にしたうえで、事業報告・監査報告への連動と、J-SOXとの違いを比較表で整理します。

会社法上の内部統制システムの定義と根拠条文

会社法には「内部統制システム」という語は登場しません。条文上の呼び名は「取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制」です(会社法 第362条第4項第6号)。実務ではこれを略して内部統制システムと呼び、決議した内容を「内部統制システムに関する基本方針」として公表します。

取締役会設置会社では、この体制の整備は重要な業務執行の決定にあたるため、取締役会が決定しなければならず、代表取締役や業務執行取締役に委任できません(会社法 第362条第4項第6号)。取締役会を置かない会社では、取締役の過半数で決定する事項とされ、各取締役への委任が禁じられています(会社法 第348条第3項第4号)。

条文が二層構造になっている理由

会社法の規定は、法律本体と法務省令の二層構造です。法律本体が「法令・定款への適合を確保する体制」と「企業集団の業務の適正を確保する体制」という柱を示し、その具体的な中身を会社法施行規則が列挙しています(会社法施行規則 第100条)。取締役会決議の実務では、法律本体の柱だけを決議しても足りず、施行規則が列挙する各号に対応する記載が必要になります。

整備義務がある会社の範囲と決定機関

「決議しなければならない」という義務が生じるかどうかは、機関設計によって分かれます。整理すると次のとおりです。

機関設計 決定機関と義務の根拠条文
大会社である取締役会設置会社 取締役会が決定(義務)。会社法 第362条第4項第6号・第5項
大会社である取締役会非設置会社 取締役が決定(義務)。会社法 第348条第3項第4号・第4項
監査等委員会設置会社 取締役会が決定(義務)。会社法 第399条の13第1項第1号ハ・第2項
指名委員会等設置会社 取締役会が決定(義務)。会社法 第416条第1項第1号ホ・第2項
上記以外の会社 決議は任意。決議した場合は事業報告への記載が必要

ここで注意したいのは、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、大会社であるかどうかを問わず決議が義務である点です(会社法 第399条の13第2項、第416条第2項)。監査等委員会設置会社へ移行した中堅企業が、大会社でないことを理由に決議を先送りしてしまう例がありますが、これは条文の読み違いです。

大会社の判定は貸借対照表の2指標

大会社とは、最終事業年度に係る貸借対照表において、資本金として計上した額が5億円以上であるか、負債の部に計上した額の合計額が200億円以上であるかのいずれかに該当する株式会社をいいます(会社法 第2条第6号)。いずれか一方に該当すれば大会社です。判定の基準となるのは最終事業年度に係る貸借対照表であり、期中の増資や借入の実行時点ではありません。

関連コラム大会社の判定|負債200億円に含める科目一覧と計算例▸

大会社になると、会計監査人の設置義務(会社法監査)と内部統制システムの決議義務が同時に発生します。実務では、増資や社債発行で大会社に該当する見込みが立った時点から、会計監査人の選任準備と並行して基本方針の起案を始めるのが安全です。

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取締役会の決議事項一覧(会社法施行規則第100条)

監査役設置会社である大会社の取締役会が決議すべき項目は、法律本体に定める1項目と、施行規則第100条第1項の5項目、同条第3項の7項目を合わせた13項目です。基本方針の起案では、この13項目それぞれに対応する段落があるかを点検してください。

根拠条文 決議すべき体制・事項
会社法 第362条第4項第6号 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
施行規則 第100条第1項第1号 取締役の職務の執行に係る情報の保存及び管理に関する体制
施行規則 第100条第1項第2号 損失の危険の管理に関する規程その他の体制
施行規則 第100条第1項第3号 取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
施行規則 第100条第1項第4号 使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制
施行規則 第100条第1項第5号 当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制
施行規則 第100条第3項第1号 監査役の職務を補助すべき使用人に関する事項
施行規則 第100条第3項第2号 その使用人の取締役からの独立性に関する事項
施行規則 第100条第3項第3号 監査役のその使用人に対する指示の実効性の確保に関する事項
施行規則 第100条第3項第4号 監査役への報告に関する体制
施行規則 第100条第3項第5号 報告をしたことを理由として不利な取扱いを受けないことを確保するための体制
施行規則 第100条第3項第6号 監査役の職務の執行について生ずる費用の前払又は償還の手続その他の方針に関する事項
施行規則 第100条第3項第7号 その他監査役の監査が実効的に行われることを確保するための体制

取締役会を置かない会社の場合、列挙される内容は施行規則第98条にほぼ同内容で置かれており、取締役が2人以上ある会社では「業務の決定が適正に行われることを確保するための体制」が追加されます(会社法施行規則 第98条第2項)。また、監査役設置会社でない会社では、取締役が株主に報告すべき事項の報告体制が加わります(会社法施行規則 第100条第2項)。

企業集団の内部統制は4つの体制に分解される

上表の第5号は、条文上さらに4つの体制に分解されています(会社法施行規則 第100条第1項第5号イからニまで)。子会社を持つ会社の基本方針では、この4つを取り違えずに書き分けることが必要です。

  • 子会社の取締役等の職務の執行に係る事項の当社への報告に関する体制
  • 子会社の損失の危険の管理に関する規程その他の体制
  • 子会社の取締役等の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制
  • 子会社の取締役等及び使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制

実務で抜けやすいのは3つ目の「効率性」です。子会社管理規程に決裁基準と報告ラインしか定めておらず、効率性の確保に対応する記載が基本方針にないまま決議されている例が少なくありません。

監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の追加項目

監査等委員会設置会社では、監査役に関する項目に代えて、監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人に関する事項など7項目が定められています(会社法施行規則 第110条の4第1項)。指名委員会等設置会社も同様に、監査委員会に関する7項目が定められています(会社法施行規則 第112条第1項)。監査役設置会社の雛形をそのまま流用すると、補助者に取締役が含まれる点や、独立性の判定対象が「他の取締役」「執行役」となる点を落としてしまうため、条文を当てて作り直す必要があります。

基本方針の決議後に続く事業報告と監査報告

内部統制システムの決議は、決議して終わりではありません。決議があるときは、事業報告にその決定又は決議の内容の概要と、当該体制の運用状況の概要を記載しなければなりません(会社法施行規則 第118条第2号)。運用状況の概要まで求められている点が重要で、方針を掲げただけで実際の運用実績が書けない場合、事業報告の記載自体が成り立ちません。

さらに、監査役は事業報告を受領したうえで、事業報告に記載された内部統制システムの内容が相当でないと認めるときは、その旨とその理由を監査報告に記載しなければなりません(会社法施行規則 第129条第1項第5号)。つまり、基本方針は取締役会だけで完結せず、監査役の相当性判断を経て株主に届く構造になっています。

決議 取締役会が体制の整備の方針を決議する(会社法 第362条第5項)
運用 決議に沿って規程整備・運用を行い、運用の実績を記録として残す
事業報告への記載 決議の内容の概要と運用状況の概要を記載する(会社法施行規則 第118条第2号)
監査役の
相当性判断
相当でないと認めるときはその旨と理由を監査報告に記載する(会社法施行規則 第129条第1項第5号)

運用状況の概要は、抽象的な方針の再掲ではなく、当該事業年度に実際に行ったことを書く欄です。取締役会の開催回数と付議件数、内部監査の実施部署数、内部通報の受付件数と処理状況、子会社への往査回数など、年度ごとに数値が動く事実を拾っておくと、毎年の記載に困らなくなります。

会社法の内部統制とJ-SOXの比較

読者から最も多い誤解が、会社法の内部統制システムとJ-SOXを同じものとして扱ってしまうことです。両者は根拠法・目的・対象範囲・外部監査の要否のいずれもが異なります。それぞれの枠組みを分けて整理します。

会社法の内部統制システム

根拠条文 会社法 第362条第4項第6号・第5項、第348条第3項第4号・第4項、会社法施行規則 第100条
対象会社 大会社、監査等委員会設置会社、指名委員会等設置会社(上場の有無を問わない)
対象範囲 法令遵守、損失の危険の管理、職務執行の効率性、情報の保存・管理、企業集団の業務の適正
求められる行為 整備の方針を取締役会等で決議すること
開示 事業報告に決議の内容の概要と運用状況の概要を記載(会社法施行規則 第118条第2号)
外部監査 体制そのものへの会計監査人の監査証明はない。監査役が相当性を判断する

内部統制報告制度(J-SOX)

根拠条文 金融商品取引法 第24条の4の4第1項、第193条の2第2項
対象会社 有価証券報告書提出会社のうち上場会社など政令で定めるもの
対象範囲 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制(財務報告に係る内部統制)
求められる行為 経営者が体制を評価し、内部統制報告書を有価証券報告書と併せて提出すること
開示 内部統制報告書(有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出)
外部監査 原則として公認会計士又は監査法人の監査証明が必要(金融商品取引法 第193条の2第2項)

会社法の内部統制システムが業務全般の適正を対象とするのに対し、J-SOXは財務報告の信頼性に範囲を絞っています(金融商品取引法 第24条の4の4第1項)。会社法側は「方針を決議したか」が問われ、J-SOX側は「評価した結果、有効か」が問われる、という観点の違いも押さえておきたいところです。

なお、J-SOXについては、評価及び監査の基準と実施基準が2023年4月に改訂され、2024年4月1日以後開始する事業年度における評価及び監査から適用されています。評価範囲の決定や不備の開示に関する考え方が見直されているため、上場準備企業は最新版で設計する必要があります。

関連コラムJ-SOXとは?上場企業に必須の内部統制報告制度を徹底解説▸

新規上場会社のJ-SOX監査証明の免除

新規上場会社が上場後3年以内に提出する内部統制報告書には、公認会計士又は監査法人の監査証明が求められない場合があります(金融商品取引法 第193条の2第2項第4号)。起算日は上場日その他の政令で定める日です。ただし、資本の額その他の経営の規模が内閣府令で定める基準に達する会社は免除の対象外です。また、免除されるのは外部監査人による監査証明だけであり、経営者による評価と内部統制報告書の提出は免除されません。会社法側の内部統制システムの決議義務も、この免除とはまったく無関係に発生します。

実務でつまずきやすい5つの論点

基本方針の起案とその後の運用で、当事務所が実際に相談を受けることの多い論点を挙げます。

決議の時期を大会社該当年度の期末に合わせてしまう

大会社に該当するかどうかは最終事業年度に係る貸借対照表で判定されるため(会社法 第2条第6号)、該当が確定してから決議までの時間は短くなりがちです。決算作業と並行して基本方針を起案すると、施行規則の各号に機械的に対応しただけの文章になりやすく、翌年度の運用状況の記載で行き詰まります。増資や借入の検討段階で該当見込みを立て、先に起案しておくのが実務的です。

監査役に関する7項目を1段落でまとめてしまう

施行規則第100条第3項は7号まであり、補助使用人の設置、その独立性、指示の実効性、報告体制、不利益取扱いの禁止、費用の処理方針、実効性確保という異なる論点が並びます。これを「監査役の監査が実効的に行われるよう協力する」といった1文で済ませると、各号への対応が確認できません。号ごとに小見出しを立てて書き分けるのが安全です。

費用の前払・償還の手続を定めていない

監査役の職務執行に生ずる費用の前払又は償還の手続その他の方針は、独立した決議事項です(会社法施行規則 第100条第3項第6号)。基本方針に一文だけ書いて、社内の稟議規程や監査役監査基準に具体的な手続が落ちていないケースが見られます。方針と社内規程の両方をそろえて初めて体制として機能します。

子会社が増えたのに基本方針を更新していない

企業集団の内部統制は決議事項に含まれています(会社法施行規則 第100条第1項第5号)。M&Aや新設分割で子会社が増減した場合、報告体制や往査の範囲が変わるため、基本方針の見直しが必要になります。決議は一度行えば足りるという性質のものではなく、体制の実態が変わったときに改定するものと考えてください。

運用状況の概要に書ける事実を残していない

事業報告には運用状況の概要の記載が求められます(会社法施行規則 第118条第2号)。取締役会議事録、内部監査報告書、内部通報の受付記録、子会社往査の記録などを年間を通じて蓄積していないと、決算期に書ける材料がありません。決議の翌月から記録の様式を決めておくことをおすすめします。

まとめ

会社法の内部統制システムは、業務の適正を確保するための体制の整備方針を取締役会が決議する制度です。大会社である取締役会設置会社では決議が義務であり(会社法 第362条第5項)、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は大会社かどうかを問わず義務となります(会社法 第399条の13第2項、第416条第2項)。

決議すべき項目は、監査役設置会社であれば法律本体の1項目と施行規則の12項目を合わせた13項目です(会社法施行規則 第100条第1項・第3項)。決議後は事業報告に決議の内容と運用状況の概要を記載し(会社法施行規則 第118条第2号)、監査役の相当性判断を受けます(会社法施行規則 第129条第1項第5号)。

財務報告の信頼性に範囲を絞るJ-SOXとは対象も求められる行為も異なるため、両者を1つの体制として管理しようとすると、どちらの要求も満たせない設計になりがちです。会社法側は決議事項の網羅性、J-SOX側は評価範囲の妥当性という別の軸で整備してください。

内部統制システムの設計や基本方針の記載内容、大会社該当に伴う会計監査人の選任スケジュールは会社ごとに事情が異なりますので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

内部統制システムの決議をしていない大会社はどうなりますか。

大会社である取締役会設置会社は、取締役会が体制の整備を決定しなければならないとされています(会社法 第362条第5項)。決議がない場合、事業報告に記載すべき内容も存在しないことになり、監査役の監査報告でも指摘の対象になり得ます。該当が判明した時点で速やかに取締役会に付議してください。

非上場の大会社もJ-SOXへの対応が必要ですか。

内部統制報告書の提出義務は、有価証券報告書提出会社のうち上場会社など政令で定めるものに課されます(金融商品取引法 第24条の4の4第1項)。非上場の大会社は通常この対象に含まれないため、J-SOXの対応は不要ですが、会社法の内部統制システムの決議義務は別に発生します。

基本方針は毎年決議し直す必要がありますか。

毎年の決議を求める規定はありません。ただし事業報告には運用状況の概要を毎年記載する必要があり(会社法施行規則 第118条第2号)、子会社の増減や機関設計の変更など体制の前提が変われば、内容を見直して改めて決議するのが実務上の対応です。

監査等委員会設置会社に移行したら、監査役向けの記載はどう変わりますか。

監査役に関する項目に代えて、監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人に関する事項など7項目が定められています(会社法施行規則 第110条の4第1項)。補助者に取締役が含まれること、独立性の判定対象が監査等委員である取締役を除く他の取締役となることが主な違いです。

会社法の内部統制システムに外部監査はありますか。

体制そのものに対する会計監査人の監査証明の制度はありません。事業報告に記載された内容について、監査役が相当でないと認めるときにその旨と理由を監査報告に記載する仕組みが置かれています(会社法施行規則 第129条第1項第5号)。

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