増資の登記手続き【必要書類一覧表】登録免許税と税務署への届出
目次
- 増資の登記に必要な書類一覧
- 会社の状況で追加・差し替えになる書類
- 増資の登記の期限と登記すべき事項
- 登記の期限は効力発生から2週間以内
- 登記すべき事項
- 増資の登録免許税と登記費用|0.7%・最低3万円
- 増資の登記後の届出|税務署への異動届出書
- 増資の手続きの流れ|決議から登記までの5ステップ
- 決議機関と決議要件の判定
- スケジュールを組むときの考え方
- 増資の種類と資本金への影響
- 増資の仕訳|資本金組入れと資本準備金
- 資本金の額が税負担に与える影響
- 増資の登記を自分で申請する流れとオンライン申請
- 減資(資本金の額の減少)の手続きと必要書類
- 株主総会の決議
- 債権者保護手続
- 効力発生と登記
- 減資の登記に必要な書類
- 増資・減資の手続きで実務がつまずく点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 増資の登記に必要な書類は何ですか。
- 増資の登記はいつまでに申請する必要がありますか。
- 増資の登録免許税はいくらかかりますか。
- 増資の登記後に税務署へ届出は必要ですか。
- 増資の決議は普通決議でよいのですか。
- 資本準備金に振り分ければ均等割も下がりますか。
- 増資の登記は自分で申請できますか。
- 減資の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか。
増資の登記では、株主総会議事録・株主リスト・引受けの申込みを証する書面・払込みを証する書面・資本金の額の計上に関する証明書の5点が基本の添付書類です。申請は効力発生から2週間以内に本店所在地の法務局へ行い、登録免許税は増加した資本金の額の1,000分の7(3万円未満なら3万円)を納めます。登記が終わったら、税務署へ異動届出書を提出します。
本記事では、まず増資の登記に必要な書類を一覧表で示し、取締役会の有無・総数引受契約・書面決議など会社の状況によって追加・差し替えになる書類も整理します。そのうえで、登録免許税と登記費用の計算、税務署への届出、募集事項の決議から払込みまでの手続きの流れ、払込金の仕訳を条文と照らしながら解説します。減資(資本金の額の減少)の手続きも後半で扱います。
増資の登記に必要な書類一覧
資本金の額は登記事項であり(会社法 第911条第3項第5号)、増資をすると必ず変更登記が発生します。添付書面は商業登記法と商業登記規則に定めがあり、金銭出資による募集株式の発行(第三者割当増資など)で一般に必要となる書類は次のとおりです。
| 必要書類 | 内容と根拠条文 |
|---|---|
| 株式会社変更登記申請書 | 申請人・登記の事由・登記すべき事項・登録免許税の額と課税標準の金額などを記載し、記名押印します(商業登記法 第17条第2項)。 |
| 株主総会議事録 | 募集事項を決議した株主総会の議事録です。登記すべき事項につき株主総会の決議を要するときに添付します(商業登記法 第46条第2項)。 |
| 取締役会議事録 | 公開会社が募集事項を決議した場合や、取締役会設置会社が譲渡制限株式の割当てを決議した場合に添付します(商業登記法 第46条第2項)。 |
| 株主リスト | 議決権割合の上位10名、または議決権割合を上位から加算して3分の2に達するまでの株主のいずれか少ない人数について、氏名・住所・株式数・議決権数・議決権割合を証する書面です(商業登記規則 第61条第3項)。 |
| 募集株式の引受けの申込みを証する書面 | 株式引受申込書、または総数引受契約書が該当します(商業登記法 第56条第1号)。 |
| 払込みがあったことを証する書面 | 金銭出資の場合に添付します。払込取扱機関の証明書、または代表取締役作成の証明書に払込口座の通帳の写し等を合綴したものが実務で使われます(商業登記法 第56条第2号)。 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | 資本金の額が会社法および会社計算規則に従って計上されたことを証する書面で、増資・減資のいずれの変更登記にも必要です(商業登記規則 第61条第9項)。 |
| 委任状 | 司法書士など代理人が申請する場合に、その権限を証する書面として添付します(商業登記法 第18条)。 |
このうち株主総会議事録は、募集事項を株主総会で決議した場合に添付します(商業登記法 第46条第2項)。株主リストも、登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合に求められる書面です(商業登記規則 第61条第3項)。
会社の状況で追加・差し替えになる書類
上の一覧は基本形で、機関設計や決議の方法によって添付書類が変わります。法務局で差し戻されやすいのは、この「追加・差し替え」の見落としです。申請前に、自社がどの行に当たるかを確認してください。
| 会社の状況 | 追加・差し替えになる書類 |
|---|---|
| 取締役会を置いていない非公開会社 | 募集事項と割当てを株主総会で決議するため、株主総会議事録と株主リストが中心になります。取締役会議事録は不要です(会社法 第199条第2項、第204条第2項)。 |
| 取締役会を置いている非公開会社 | 募集事項は株主総会の決議、譲渡制限株式の割当ては取締役会の決議によるため、株主総会議事録に加えて取締役会議事録を添付します(会社法 第204条第2項、商業登記法 第46条第2項)。 |
| 公開会社 | 募集事項は取締役会で決議するため、取締役会議事録を添付します(会社法 第201条第1項、商業登記法 第46条第2項)。有利発行に当たる場合は株主総会議事録と株主リストも必要です(会社法 第199条第3項)。 |
| 総数引受契約で引き受ける場合 | 申込みと割当ての手続は不要になり、申込みを証する書面の代わりに総数引受契約書を添付します(会社法 第205条第1項、商業登記法 第56条第1号)。譲渡制限株式であれば、契約の承認をした株主総会(取締役会設置会社では取締役会)の議事録も添付します(会社法 第205条第2項)。 |
| 株主総会を書面決議で行った場合 | 株主全員の同意により決議があったものとみなされる場合は、議事録に代えて、その場合に該当することを証する書面を添付します(商業登記法 第46条第3項)。株主リストも同様に必要です(商業登記規則 第61条第3項)。 |
| 発行可能株式総数も増やす場合 | 発行済株式の総数が発行可能株式総数を超えるときは、先に定款を変更します。定款変更は株主総会の特別決議によるため、その議事録が必要です(会社法 第466条、第309条第2項第11号)。公開会社では、変更後の発行可能株式総数は発行済株式の総数の4倍を超えられません(会社法 第113条第3項)。 |
| 現物出資を含む場合 | 払込みを証する書面に代えて、検査役の調査報告や市場価格を証する書面など、出資財産に応じた書面を添付します(商業登記法 第56条第3号)。 |
現物出資による増資では、上記に加えて検査役の調査報告書とその附属書類、有価証券の市場価格を証する書面、弁護士等の証明を記載した書面、金銭債権について記載された会計帳簿などが、出資財産の種類に応じて必要になります(商業登記法 第56条第3号)。現物出資は要件判定が難しく、書類の作り込みも重くなるため、金銭出資に組み替えられないかを先に検討します。
増資の登記の期限と登記すべき事項
登記の期限は効力発生から2週間以内
登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に本店の所在地において変更の登記をしなければなりません(会社法 第915条第1項)。増資の場合、起算点は払込期日か払込期間かで次のように分かれます。
| 募集事項の定め方 | 登記申請の期限 |
|---|---|
| 払込期日を定めた場合 | 払込期日(=株主となる日)から2週間以内に申請します(会社法 第209条第1項第1号、第915条第1項)。 |
| 払込期間を定めた場合 | その期間の末日現在により、末日から2週間以内に申請すれば足ります(会社法 第915条第2項)。期間中に複数回の払込みがあってもまとめて登記できます。 |
期限を過ぎても登記自体は受理されますが、登記を怠った場合は100万円以下の過料の対象となります(会社法 第976条第1号)。過料は会社ではなく代表者個人に科される点に注意が必要です。
登記すべき事項
増資では、資本金の額のほか、発行済株式の総数も同時に変わります。申請書には登記の事由と登記すべき事項を記載します(商業登記法 第17条第2項第3号、第4号)。募集株式の発行で変更となる主な登記事項は次のとおりです。
- 資本金の額(会社法 第911条第3項第5号)
- 発行済株式の総数並びにその種類及び種類ごとの数(会社法 第911条第3項第9号)
- 発行可能株式総数を併せて変更した場合はその数(会社法 第911条第3項第6号)
登記すべき事項は、書面申請でも電磁的記録(CD-Rなど)で提供でき、その場合は申請書への記載を省略できます(商業登記法 第17条第3項)。
増資の登録免許税と登記費用|0.7%・最低3万円
株式会社の資本金の増加の登記に対する登録免許税は、増加した資本金の額に1,000分の7を乗じた額です。この計算による税額が3万円に満たないときは、申請件数1件につき3万円となります(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ)。
増加した資本金の額が30,000,000円の場合、計算は次のとおりです。
一方、増加した資本金の額が3,000,000円であれば、計算結果は3万円を下回るため、最低額の30,000円が納付額になります。
ここでの課税標準は「増加した資本金の額」であり、払込金額の総額ではありません。払込額の2分の1を資本準備金とした場合、課税標準は払込総額の半分になります。たとえば払込総額20,000,000円のうち10,000,000円を資本準備金とした場合、課税標準は10,000,000円となり、登録免許税は70,000円です(仕訳は後述の「増資の仕訳」で示します)。
| 登記の種類 | 登録免許税 |
|---|---|
| 資本金の増加の登記 | 増加した資本金の額×1,000分の7(3万円に満たないときは1件につき3万円)(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ) |
| 資本金の額の減少の登記 | 登記事項の変更の登記として1件につき3万円(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ツ) |
| 新株予約権の発行による変更の登記 | 1件につき9万円(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ヌ) |
同じ申請書で発行可能株式総数の変更など別の登記もあわせて申請する場合、登録免許税は登記の区分ごとに計算した額の合計になります(登録免許税法 第18条)。発行可能株式総数の変更は登記事項の変更の登記に当たるため、資本金の増加分とは別に1件につき3万円が加わります(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ツ)。増資と同時に定款を変更するときは、この加算を見込んで予算を組みます。
このほか、減資では官報公告の掲載料が実費として発生し、司法書士に依頼する場合は別途報酬がかかります。金額は公告の行数や事務所により異なるため、見積りで確認します。
増資の登記後の届出|税務署への異動届出書
登記が完了しても手続きは終わりません。資本金の額の異動は、税務署へ提出する異動届出書の対象事項です。国税庁は、事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号または名称の変更などをした場合の手続として異動届出書を案内しています。
| 届出の項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出書類 | 異動届出書。国税庁の手続案内では「C1-8 異動事項に関する届出」として整理されています。 |
| 提出先 | 異動前の納税地の所轄税務署長。 |
| 提出時期 | 異動等の後、速やかに提出します。 |
| 添付書類 | 添付書類はありません。ただし異動事項の内容確認のため、定款等の写しの提示を求められる場合があります。 |
| 提出方法 | e-Taxソフトで作成・提出するほか、書面で1部を提出先に持参または送付します。 |
| 手続根拠 | 法人税法第15条、第20条、法人税法施行令第18条。 |
異動届出書には「消費税」の欄があり、法人の消費税異動届出書や適格請求書発行事業者登録簿の登載事項変更届出書に係る事項をこの欄にチェックして届け出た場合は、それらの届出書を重ねて提出する必要はないと案内されています。
登記事項証明書の添付が一律に必要というわけではない点は、実務でよく誤解されています。一方、都道府県税事務所と市区町村への異動届は各自治体の条例・様式によるため、添付書類(登記事項証明書の写しなど)や提出期限が税務署と異なることがあります。管轄自治体の案内で個別に確認してください。取引金融機関への変更手続きも、登記完了後に併せて進めます。
増資の手続きの流れ|決議から登記までの5ステップ
ここでいう増資は、株式会社が新たに株式を発行して出資を受ける「募集株式の発行」を指します。会社法は、募集事項の決定から出資の履行までを第二編第二章第八節に定めており、実務上は次の5ステップで進みます。
| 手続きの段階 | 内容と期限の目安 |
|---|---|
| ステップ1 募集事項の決議 | 募集株式の数、払込金額、払込期日(または払込期間)、増加する資本金・資本準備金に関する事項を決めます(会社法 第199条第1項)。決議機関は会社の類型で異なります。 |
| ステップ2 引受けの申込み | 会社が商号・募集事項・払込みの取扱いの場所などを通知し、引受希望者が氏名・住所・引き受ける株式数を記載した書面を交付します(会社法 第203条第1項、第2項)。 |
| ステップ3 割当ての決定 | 申込者の中から割当てを受ける者と株式数を決めます。譲渡制限株式の場合は株主総会(取締役会設置会社は取締役会)の決議が必要です(会社法 第204条第1項、第2項)。払込期日の前日までに申込者へ通知します(同条第3項)。 |
| ステップ4 出資の履行(払込み) | 引受人は払込期日または払込期間内に、会社が定めた銀行等の払込みの取扱いの場所へ払込金額の全額を払い込みます(会社法 第208条第1項)。会社に対する債権との相殺はできません(同条第3項)。 |
| ステップ5 変更登記と事後の届出 | 効力発生から2週間以内に本店所在地で変更登記を申請します(会社法 第915条第1項)。登記完了後、税務署などへ異動届出書を提出します。 |
払込期日を定めた場合、引受人はその期日に株主となり、払込期間を定めた場合は出資の履行をした日に株主となります(会社法 第209条第1項)。資本金の額が増える日=効力発生日はこの日であり、登記期限の起算点にもなります。
決議機関と決議要件の判定
「増資は株主総会の普通決議でよい」と誤解されがちですが、募集事項の決定は特別決議が原則です。会社法は募集事項の決定を株主総会の決議によるものとしたうえで(会社法 第199条第2項)、この決議を特別決議の対象に列挙しています(会社法 第309条第2項第5号)。公開会社では取締役会に読み替えられます(会社法 第201条第1項)。
| 会社の類型・場面 | 募集事項を決める機関と要件 |
|---|---|
| 非公開会社(全株式に譲渡制限あり) | 株主総会の特別決議。議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です(会社法 第309条第2項第5号)。 |
| 公開会社 | 取締役会の決議。ただし払込金額が引受人に特に有利な金額である場合は、株主総会の特別決議と取締役による理由の説明が必要です(会社法 第199条第3項、第201条第1項)。 |
| 割当ての決定(譲渡制限株式) | 株主総会の決議。取締役会設置会社では取締役会の決議によります。定款に別段の定めがあればそれに従います(会社法 第204条第2項)。 |
公開会社が取締役会決議で募集事項を定めたときは、払込期日(払込期間を定めた場合はその初日)の2週間前までに株主へ募集事項を通知するか、公告する必要があります(会社法 第201条第3項、第4項)。実務では、この2週間の通知期間が増資スケジュールの制約になります。
スケジュールを組むときの考え方
増資は「登記申請日から逆算して組む」と破綻しにくくなります。非公開会社であれば、株主総会の招集通知期間(原則1週間、書面投票等を採用する場合は2週間)、割当ての通知、払込みに要する日数、登記申請までの2週間を並べると、決議から登記完了までおよそ3〜4週間を見込むことになります。決算期をまたぐ増資では、効力発生日がどちらの事業年度に属するかで均等割の判定時期が変わるため、払込期日の設定は税務も含めて事前に確認します。
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増資の種類と資本金への影響
増資には、新たに金銭等の払込みを受ける有償増資と、すでに会社にある準備金・剰余金を資本金に振り替える無償増資があります。手続きの根拠条文が異なるため、最初にどちらかを確定させます。
| 増資の種類 | 概要と根拠条文 |
|---|---|
| 有償増資(募集株式の発行) | 新株の発行または自己株式の処分により出資を受け、資本金を増加させる方法です。第三者割当増資、株主割当増資、公募増資があります(会社法 第199条第1項)。会社に現金が入る点が無償増資との最大の違いです。 |
| 無償増資(準備金の資本組入れ) | 資本準備金・利益準備金を減少させ、その額を資本金に振り替える方法です。株主総会の決議で、準備金とする額と資本金とする額を定めます(会社法 第448条第1項第2号、会社計算規則 第25条第1項第1号)。 |
| 無償増資(剰余金の資本組入れ) | その他資本剰余金・繰越利益剰余金などの剰余金を減少させ、資本金に振り替える方法です(会社法 第450条、会社計算規則 第25条第1項第2号)。新たな資金調達は伴いません。 |
有償増資では、株主となる者が払込み・給付をした財産の額がそのまま資本金の額になるのが原則です(会社法 第445条第1項)。ただし、その額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができ、計上しなかった額は資本準備金としなければなりません(会社法 第445条第2項、第3項)。資本金をいくらにするかは募集事項として決議段階で決めておく必要があります(会社法 第199条第1項第5号)。
増資の仕訳|資本金組入れと資本準備金
払込みを受けた金銭の額から、募集株式の交付に係る費用のうち会社が定めた額などを調整した金額が「資本金等増加限度額」となり、この範囲で資本金と資本準備金に配分します(会社計算規則 第14条第1項)。以下は自社の作例で、第三者割当増資により払込金額の総額20,000,000円を当座預金に払い込んだ前提です(単位:円)。まず、全額を資本金に組み入れる場合の仕訳です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 20,000,000 | 資本金 | 20,000,000 |
次に、払込額の2分の1にあたる10,000,000円を資本金として計上せず、資本準備金とする場合の仕訳です(会社法 第445条第2項、第3項)。資本金の増加額が小さくなるため、登録免許税の課税標準を抑えられます。ただし、法人住民税の均等割は資本金と資本準備金を合わせた水準で判定されるため、資本準備金に振り分けても均等割の区分は下がりません(地方税法 第52条第1項、第4項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 当座預金 | 20,000,000 | 資本金 | 10,000,000 |
| 資本準備金 | 10,000,000 |
実務では、払込金額の2分の1を資本準備金とする設計が広く使われます。資本準備金は資本金と同じく株主資本の「資本剰余金」に区分され、後日、株主総会の決議で資本金に振り替えることも、その他資本剰余金に振り替えることもできます(会社法 第448条第1項、第449条)。増資の登記が必要になるのは資本金の額が変動する部分だけなので、資本準備金に積む部分は登録免許税の課税標準に含まれません。
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資本金の額が税負担に与える影響
資本金をいくらにするかは、登録免許税だけでなくその後の税負担を左右します。増資の設計段階で次のラインを確認しておきます。
| 資本金などの水準 | 主な影響 |
|---|---|
| 資本金の額1,000万円以上 | 基準期間がない事業年度でも消費税の納税義務が免除されません。事業年度開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人が対象です(消費税法 第12条の2第1項)。 |
| 資本金等の額 1,000万円超〜1億円以下 | 道府県民税の均等割の標準税率が年額5万円になります。1,000万円以下の区分では年額2万円です(地方税法 第52条第1項)。資本金等の額が資本金と資本準備金の合算額を下回る場合は、合算額で判定します(同条第4項)。 |
| 資本金の額1億円超(均等割は資本金等の額) | 資本金等の額が1億円超10億円以下になると、道府県民税の均等割の標準税率は年額13万円に上がります(地方税法 第52条第1項)。また、所得のうち年800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率19%は、期末の資本金の額が1億円以下の普通法人などが対象であるため、適用されなくなります(法人税法 第66条第1項、第2項)。 |
均等割の区分は算定期間の末日現在の資本金等の額で判定するため(地方税法 第52条第2項)、期末直前の増資は当期からの負担増につながります。資本準備金への振り分けで変わるのは登録免許税と、資本金の額で判定する消費税・法人税の区分です。均等割には効かないため、払込期日の設定も含めて決議前に試算しておくことをおすすめします。
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増資の登記を自分で申請する流れとオンライン申請
増資の登記は、金銭出資かつ株主構成が単純であれば、代表者自身が申請することもできます。おおまかな流れは、①募集事項の決議と議事録の作成、②申込書・割当通知の授受、③払込みと通帳の記帳、④払込証明書と資本金の額の計上に関する証明書の作成、⑤申請書の作成と登録免許税の納付、⑥管轄法務局への申請、という順です。
登記の申請は書面によることが原則ですが(商業登記法 第17条第1項)、法務大臣が定める条件に適合する場合は、電子情報処理組織を使用する方法によることもできます(商業登記規則 第101条第1項第1号)。オンライン申請では電子証明書が必要となるため、初回は取得の期間も見込んでおきます。申請書の様式や記載例、登記すべき事項の記録方法は法務局の案内が最新であり、そちらを確認してください。
実務上つまずきやすいのは、払込みの時期です。決議の前に入金された金銭は「募集株式の払込み」と認められないことがあるため、決議日より後の日付で入金し、その通帳の記帳を残すのが安全です。また、払込みの取扱いの場所として定めた口座と実際の入金口座が一致しているかも確認します。
減資(資本金の額の減少)の手続きと必要書類
減資は、欠損の填補や株主への払戻し、税務上の区分見直しなどを目的として行われます。会社の財産的基礎を弱める行為であるため、増資よりも手続きが重く、債権者保護手続が組み込まれています。
株主総会の決議
資本金の額を減少するには、株主総会の決議によって、減少する資本金の額、その全部または一部を準備金とするときはその旨と額、効力発生日を定めます(会社法 第447条第1項)。減少する額は効力発生日における資本金の額を超えることはできません(同条第2項)。決議は特別決議が原則ですが、定時株主総会で決議し、かつ減少額が欠損の額を超えない場合は普通決議で足ります(会社法 第309条第2項第9号)。また、株式の発行と同時に減資を行い、効力発生日後の資本金の額が従前を下回らないときは、取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会の決議)によることができます(会社法 第447条第3項)。
債権者保護手続
資本金の額を減少する場合、債権者は会社に対して異議を述べることができます(会社法 第449条第1項)。会社は、減少の内容、計算書類に関する事項、一定の期間内に異議を述べることができる旨を官報に公告し、かつ知れている債権者には各別に催告しなければなりません。この期間は1か月を下ることができません(会社法 第449条第2項)。定款で日刊新聞紙または電子公告を公告方法と定めている会社が、官報に加えてその方法でも公告したときは、各別の催告を省略できます(同条第3項)。
期間内に異議を述べなかった債権者は承認したものとみなされます(会社法 第449条第4項)。異議を述べた債権者がいる場合は、弁済、相当の担保の提供、または信託会社等への相当の財産の信託のいずれかが必要です。ただし、減資をしてもその債権者を害するおそれがないときは不要です(同条第5項)。この官報公告に1か月以上を要するため、減資は決議から効力発生まで最短でも約1か月半を見込みます。
効力発生と登記
減資は株主総会で定めた効力発生日にその効力を生じますが、債権者保護手続が終了していないときは効力が生じません(会社法 第449条第6項第1号)。手続が間に合わない場合、会社は効力発生日を変更できます(同条第7項)。効力が生じた後は、他の登記事項と同じく2週間以内に変更登記を申請します(会社法 第915条第1項)。
会計上は、減少した資本金の額がその他資本剰余金に振り替えられます(会社計算規則 第25条第2項、第27条第1項第1号)。減少する額の一部を準備金とする定めを置いた場合は、その額が資本準備金になります(会社計算規則 第26条第1項第1号)。資本金10,000,000円を減少し、全額をその他資本剰余金とする場合の仕訳は次のとおりです(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 資本金 | 10,000,000 | その他資本剰余金 | 10,000,000 |
欠損填補を目的とする場合は、この後にその他資本剰余金を繰越利益剰余金へ振り替える処理が続きます。
減資の登記に必要な書類
| 必要書類 | 内容と根拠条文 |
|---|---|
| 株式会社変更登記申請書 | 登録免許税は1件につき3万円です(商業登記法 第17条第2項、登録免許税法 別表第一 第24号(一)ツ)。 |
| 株主総会議事録 | 資本金の額の減少を決議した株主総会の議事録です(商業登記法 第46条第2項)。 |
| 株主リスト | 増資の場合と同様、議決権割合上位の株主について証する書面を添付します(商業登記規則 第61条第3項)。 |
| 公告および催告をしたことを証する書面 | 官報の該当ページ、個別催告書の控えなどが該当します。日刊新聞紙または電子公告を併用した場合はその方法による公告を証する書面を添付します(商業登記法 第70条)。 |
| 異議を述べた債権者に対する対応を証する書面 | 異議を述べた債権者があるときは、弁済・担保提供・信託をしたこと、または害するおそれがないことを証する書面を添付します(商業登記法 第70条)。 |
| 資本金の額の計上に関する証明書 | 資本金の額の減少による変更登記でも必要です(商業登記規則 第61条第9項)。 |
債権者保護手続を怠ったまま減資をした場合も、100万円以下の過料の対象となります(会社法 第976条第26号)。公告の手配は決議直後に着手するのが安全です。
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増資・減資の手続きで実務がつまずく点
上場準備企業や成長企業の増資を支援していると、書類の不備よりも「順番」と「日付」に起因する差戻しが目立ちます。着手前に次の点を確認しておくと、やり直しを避けられます。
- 決議要件の取り違え:非公開会社の募集事項の決定は特別決議です。普通決議で進めると議事録が要件を満たさず、登記が通りません(会社法 第309条第2項第5号)。
- 払込みが決議より前:募集事項の決議前の入金は、募集株式の払込みとして扱われないおそれがあります。通帳の日付関係を必ず確認します。
- 登記期限の起算点:払込期日か払込期間かで起算点が変わります(会社法 第915条第1項、第2項)。期間を定めた場合は末日基準です。
- 資本金の額の計上に関する証明書の漏れ:増資・減資のいずれでも必須の添付書面です(商業登記規則 第61条第9項)。
- 減資の公告期間:異議申述期間は1か月を下れません(会社法 第449条第2項)。効力発生日を先に決め打ちすると手続が間に合わなくなります。
- 期末直前の増資:均等割の区分は算定期間の末日現在の資本金等の額で判定されるため、当期から負担が増える可能性があります。資本準備金に振り分けても均等割の区分は下がりません(地方税法 第52条第2項、第4項)。
- 添付書類の取り違え:取締役会設置会社の割当て決議や総数引受契約の承認、書面決議の証明書など、会社の状況で必要書類が変わります(商業登記法 第46条、第56条)。
まとめ
増資の登記は、株主総会議事録・株主リスト・引受けの申込みを証する書面・払込みを証する書面・資本金の額の計上に関する証明書を基本に、取締役会の有無や総数引受契約・書面決議の別に応じて書類を追加・差し替えて申請します(商業登記法 第46条、第56条、商業登記規則 第61条第3項、第9項)。申請期限は効力発生から2週間以内で(会社法 第915条第1項)、登録免許税は増加した資本金の額の1,000分の7、3万円に満たないときは3万円です(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ)。
手続きの前段では、非公開会社なら株主総会の特別決議、公開会社なら取締役会の決議で募集事項を定めます(会社法 第199条第2項、第201条第1項、第309条第2項第5号)。登記後は異動前の納税地の所轄税務署へ異動届出書を速やかに提出し、自治体への届出も各自治体の案内に沿って進めます。減資は債権者保護手続として1か月以上の異議申述期間が必要になるため(会社法 第449条第2項)、スケジュールは増資より長く見積もります。
資本金の設計は、資金調達、税負担、上場準備における資本政策が絡み合う領域です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- e-Gov法令検索 地方税法
- 国税庁 C1-8 異動事項に関する届出
よくある質問
増資の登記に必要な書類は何ですか。
変更登記申請書のほか、株主総会議事録(商業登記法 第46条第2項)、株主リスト(商業登記規則 第61条第3項)、募集株式の引受けの申込みを証する書面または総数引受契約書と、払込みがあったことを証する書面(商業登記法 第56条第1号、第2号)、資本金の額の計上に関する証明書(商業登記規則 第61条第9項)が基本です。取締役会で割当てや総数引受契約の承認を決議した場合は取締役会議事録も添付します。
増資の登記はいつまでに申請する必要がありますか。
効力発生から2週間以内に、本店の所在地において変更の登記を申請します(会社法 第915条第1項)。払込期日を定めた場合はその期日が起算点となり、払込期間を定めた場合は期間の末日現在により末日から2週間以内に申請すれば足ります(会社法 第915条第2項)。登記を怠ると100万円以下の過料の対象となります(会社法 第976条第1号)。
増資の登録免許税はいくらかかりますか。
増加した資本金の額に1,000分の7を乗じた額で、この額が3万円に満たないときは1件につき3万円です(登録免許税法 別表第一 第24号(一)ニ)。たとえば資本金が30,000,000円増加した場合は210,000円になります。課税標準は払込総額ではなく増加した資本金の額なので、払込額の2分の1を資本準備金とすれば税額も半分になります(会社法 第445条第2項、第3項)。発行可能株式総数の変更を同じ申請書で行う場合は、1件につき3万円が加算されます(登録免許税法 第18条、別表第一 第24号(一)ツ)。
増資の登記後に税務署へ届出は必要ですか。
資本金の額等の異動は異動届出書の対象事項で、異動後速やかに、異動前の納税地の所轄税務署長へ提出します。e-Taxで提出でき、書面の場合は1部を持参または送付します。添付書類はありませんが、異動事項の内容確認のため定款等の写しの提示を求められる場合があります。都道府県税事務所・市区町村への届出は各自治体の様式によるため、管轄の案内で確認してください。
増資の決議は普通決議でよいのですか。
非公開会社では特別決議が必要です。募集事項の決定は株主総会の決議によるものとされ(会社法 第199条第2項)、この決議は特別決議の対象に列挙されています(会社法 第309条第2項第5号)。公開会社では取締役会の決議に読み替えられますが、払込金額が引受人に特に有利な金額である場合は株主総会の特別決議が必要です(会社法 第199条第3項、第201条第1項)。
資本準備金に振り分ければ均等割も下がりますか。
下がりません。法人住民税の均等割は資本金等の額で区分され、資本金等の額が資本金と資本準備金の合算額を下回る場合は合算額で判定します(地方税法 第52条第1項、第4項)。資本準備金への振り分けで抑えられるのは、増加した資本金の額を課税標準とする登録免許税などです。
増資の登記は自分で申請できますか。
金銭出資で株主構成が単純であれば、代表者自身での申請も可能です。登記の申請は書面によることが原則ですが(商業登記法 第17条第1項)、法務大臣が定める条件に適合する場合は電子情報処理組織を使用する方法によることもできます(商業登記規則 第101条第1項第1号)。現物出資がある場合は検査役の調査報告書等が必要になり、難易度が上がります(商業登記法 第56条第3号)。
減資の手続きにはどのくらいの期間がかかりますか。
債権者の異議申述期間として1か月以上を確保する必要があるため(会社法 第449条第2項)、株主総会の決議から効力発生まで最短でも約1か月半を見込みます。効力発生日までに債権者保護手続が終了していないと効力が生じないため(会社法 第449条第6項第1号)、官報公告の申込みは決議直後に着手します。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



