関連当事者の注記記載例|重要性の基準値一覧と取引種類別の文例
目次
- 関連当事者の注記に記載する項目
- 取引に関する開示項目8点
- 関連当事者の概要に記載する内容
- 開示対象となる重要性の基準値一覧
- グループ区分と判断の順序
- 法人グループの数値基準(損益計算書項目)
- 法人グループの数値基準(貸借対照表項目)
- 個人グループと重要な関連会社の基準
- 取引種類別の注記ひな形と文例
- 注記の表に設ける記載欄
- 営業取引の文例
- 資金貸借取引・債務保証・担保提供の文例
- 役員・近親者との取引の文例
- 貸倒懸念債権等の文例
- 注記作成でつまずきやすい論点
- 開示対象外となる取引
- 期中に関連当事者となった場合の対象期間
- 開示の継続性と有償支給取引
- 上場準備会社が押さえておきたい実務
- 親会社・重要な関連会社の存在に関する注記
- 適用時期と改正の経緯
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 連結財務諸表で開示していれば個別財務諸表では注記しなくてよいですか。
- 取引金額が1,000万円以下の役員との取引は、すべて注記不要ですか。
- 無償で資金を貸し付けた場合、取引金額はゼロとして開示不要になりますか。
- 相談役や顧問との取引も注記の対象になりますか。
関連当事者の注記は、開示項目そのものは会計基準に列挙されているのに、いざ書こうとすると「どの取引を拾うのか」「どの欄に何を書くのか」で手が止まりやすい注記です。判断の中心は、企業会計基準適用指針第13号が定める数値基準にあります。
この記事では、関連当事者の開示の注記記載例を作るために必要な情報を、重要性の基準値一覧と、取引種類別の記載項目・文例という2つの形で整理します。数値基準はすべて適用指針の条項番号を併記していますので、社内の判定資料としてもそのままお使いいただけます。
関連当事者の注記に記載する項目
関連当事者の開示は、財務諸表の注記事項として行われます。すべての会社の連結財務諸表又は個別財務諸表に適用され、連結財務諸表で開示を行っている場合は個別財務諸表での開示を要しません(関連当事者の開示に関する会計基準 第4項)。まず、注記に何を書くのかを押さえておきます。
取引に関する開示項目8点
開示対象となる関連当事者との取引がある場合、原則として個々の関連当事者ごとに、次の項目を開示します(関連当事者の開示に関する会計基準 第10項)。注記の表を組む前に、この8点が揃っているかを確認するのが近道です。
| 関連当事者の概要 | 名称又は氏名のほか、法人か個人かに応じた属性情報を記載します |
|---|---|
| 会社と関連当事者 との関係 |
役員の兼任、製品の販売先、資金の援助などの関係を記載します |
| 取引の内容 | 形式的・名目的には第三者との取引である場合は、形式上の取引先名を記載したうえで、実質的には関連当事者との取引である旨を記載します |
| 取引の種類ごと の取引金額 |
販売、仕入、資金の貸付けなど、取引の種類ごとに区分して金額を記載します |
| 取引条件及び 取引条件の決定方針 |
価格や利率をどのように決めたかを、脚注などで具体的に記載します |
| 債権債務に係る 主な科目別の期末残高 |
売掛金、買掛金、長期借入金など、科目ごとに期末残高を記載します |
| 取引条件の変更が あった場合の内容 |
その旨、変更内容及び当該変更が財務諸表に与えている影響の内容を記載します |
| 貸倒懸念債権及び 破産更生債権等に係る情報 |
貸倒引当金計上額、貸倒損失等を記載します。関連当事者の種類ごとに合算して記載することもできます |
関連当事者の概要に記載する内容
「関連当事者の概要」に何を書くかは、適用指針で法人と個人に分けて定められています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第7項)。ここを取り違えると、注記の表の列構成そのものがずれてしまいます。
| 法人の場合 | 名称のほか、所在地、資本金(出資金)、事業の内容、及び当該関連当事者の議決権に対する会社の所有割合又は財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合を記載します。会社に準ずる事業体なども含みます |
|---|---|
| 個人の場合 | 氏名のほか、職業、及び財務諸表作成会社の議決権に対する当該関連当事者の所有割合を記載します |
なお、関連当事者の範囲そのものの判定(主要株主は総株主の議決権の10%以上を保有している株主、近親者は二親等以内の親族)は、会計基準の用語の定義で定められています(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(6)、第5項(8))。範囲の判定に迷う場合は、次のコラムで一覧を確認してください。
関連コラム【一覧表】関連当事者の範囲はどこまで?開示が必要な取引の判定基準▸
開示対象となる重要性の基準値一覧
会社と関連当事者との取引は、重要な取引が開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準 第6項)。この重要性の判断は、適用指針第13項から第18項及び第20項に基づいて行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第12項)。注記記載例を作る前に、どの取引を拾うかをここで確定させます。
グループ区分と判断の順序
適用指針は、法人又は個人の別、支配又は被支配の別、影響力の度合いなどに基づき、関連当事者を4つのグループに区分します。開示に際しては、各グループに適用される重要性の判断基準に従って開示の要否を判定し、開示を要する事項をグループ順に並べて開示します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第13項)。
| 親会社及び 法人主要株主等 |
親会社、その他の関係会社及びその親会社、法人である主要株主。財務諸表作成会社の上位に位置する法人のグループです |
|---|---|
| 関連会社等 | 子会社、関連会社及びその子会社、従業員のための企業年金。財務諸表作成会社の下位に位置する法人のグループです |
| 兄弟会社等 | 財務諸表作成会社と親会社を同じくする会社、その他の関係会社が支配する子会社など。上位に位置する法人の子会社のグループです |
| 役員及び 個人主要株主等 |
個人の主要株主、財務諸表作成会社の役員、親会社の役員、重要な子会社の役員と、それぞれの近親者などが該当します |
次に、各グループの取引を法人グループか個人グループかに区分し、数値基準を当てはめます。この判断は、原則として各関連当事者との取引ごとに行います。類似取引・反復取引についてはその合計で判断します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第14項)。1つの取引について売上高は重要でも売掛金残高には重要性がない、という場合でも、両者の開示が必要になる点に注意が必要です。
法人グループの数値基準(損益計算書項目)
関連当事者が法人グループである場合、損益計算書項目に属する科目に係る取引は、次の基準で開示対象を判定します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項(1))。
| 売上高・売上原価 販売費及び一般管理費 |
売上高、又は売上原価と販売費及び一般管理費の合計額の10%を超える取引 |
|---|---|
| 営業外収益 営業外費用 |
営業外収益、又は営業外費用の合計額の10%を超える損益に係る取引。取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合には損益を併せて開示します |
| 特別利益 特別損失 |
1,000万円を超える損益に係る取引。取引総額を開示し、取引総額と損益が相違する場合には損益を併せて開示します |
売上高等の基準は、算式にすると次のとおりです。分母をどちらに取るかで結論が変わりますので、決算数値を当てはめる際は両方を計算しておくと安全です。
ここには重要な例外があります。営業外損益と特別損益に係る取引は、上記の判断基準では開示対象となる場合であっても、その取引総額が税金等調整前当期純損益、又は最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益の10%以下となる場合には、開示を要しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項(1))。当該期間中に税金等調整前当期純利益と税金等調整前当期純損失がある場合には、原則として税金等調整前当期純利益が発生した年度の平均とします。
法人グループの数値基準(貸借対照表項目)
貸借対照表項目に属する科目の残高及びその注記事項に係る取引、並びに債務保証等及び担保提供又は受入れについては、総資産を基準に判定します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項(2))。
| 貸借対照表項目の 残高及び注記事項 |
その金額が総資産の1%を超える取引 |
|---|---|
| 資金貸借取引 有形固定資産・有価証券の売買 |
残高が総資産の1%以下であっても、発生総額(資金貸付額等)が総資産の1%を超える取引。取引が反復的に行われている場合や発生総額の把握が困難である場合には、期中の平均残高が総資産の1%を超える取引を開示することもできます |
| 事業の譲受け 又は譲渡 |
対象となる資産又は負債の総額のいずれか大きい額が、総資産の1%を超える取引 |
資金貸借取引は、期末残高の重要性が乏しい場合でも判断が終わりません。その取引に係る利息については損益計算書項目の基準で、取引の発生総額については貸借対照表項目の基準で、それぞれ重要性の判断を行う必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第17項(1))。債務保証等は期末における保証債務等(被保証債務等)の金額で、担保提供又は受入れは期末における対応する債務の残高で重要性を判断します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第17項(2)、第17項(3))。
なお、個別財務諸表で関連当事者との取引を開示する場合は、連結損益計算書項目・連結貸借対照表項目・税金等調整前当期純損益を、それぞれ損益計算書項目・貸借対照表項目・税引前当期純損益と適宜読み替えます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項)。
個人グループと重要な関連会社の基準
関連当事者が個人グループである場合の基準は、法人グループと比べて一律で分かりやすい一方、金額の水準が低く設定されています。役員や近親者との取引を「少額だから」と落としてしまう誤りが起きやすいところです。
| 個人グループ との取引 |
損益計算書項目及び貸借対照表項目等のいずれに係る取引についても、1,000万円を超える取引はすべて開示対象となります |
|---|---|
| 役員等が法人の 代表者として行う取引 |
会社の役員(親会社及び重要な子会社の役員を含む)若しくはその近親者が他の法人の代表者を兼務し、その法人の代表者として会社と取引を行う場合は、法人グループの基準で判断します。ただし、当該役員等が当該法人の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合を除きます |
| 重要な関連会社 (要約財務情報) |
各関連会社の総資産(持分相当額)が総資産の10%を超える場合、又は各関連会社の税引前当期純損益(持分相当額)が税金等調整前当期純損益の10%を超える場合に、要約財務情報の開示が必要となります |
重要な関連会社の判定については、税引前当期純損益の基準を満たす場合であっても、会社の最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益の10%を超えない場合には、開示を要しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第19項)。個別財務諸表で開示を行う場合は、税金等調整前当期純損益を税引前当期純損益と読み替えます。
取引種類別の注記ひな形と文例
重要性の判定が終わったら、注記の形に落とし込みます。関連当事者の注記は、グループごとに表を作り、表の下に取引条件及び取引条件の決定方針等を脚注として並べる構成が一般的です。
注記の表に設ける記載欄
会計基準第10項の開示項目と適用指針第7項の概要の記載内容を、表の記載欄に展開すると次の構成になります。自社の注記の列が足りているかを、この一覧で突き合わせてみてください。
| 種類 | 親会社、その他の関係会社、関連会社、役員及びその近親者などの区分を記載します |
|---|---|
| 会社等の名称 又は氏名 |
法人の名称、又は個人の氏名を記載します |
| 所在地 | 法人の場合に記載します。個人の場合は記載しません |
| 資本金又は出資金 | 法人の場合に記載します |
| 事業の内容 又は職業 |
法人は事業の内容、個人は職業を記載します |
| 議決権等の所有 (被所有)割合 |
直接保有分と間接保有分を区分して記載します |
| 関連当事者との関係 | 役員の兼任、製品の販売先、資金の援助といった関係を記載します |
| 取引の内容 | 製品の販売、資金の借入れ、建物の賃借など、取引の種類ごとに記載し、脚注番号を付します |
| 取引金額 | 取引の種類ごとの金額を記載します |
| 科目 | 売掛金、買掛金、長期借入金など、債権債務に係る主な科目を記載します |
| 期末残高 | 科目ごとの期末残高を記載します |
金額の表示については、取引金額に消費税等を含めず、期末残高に消費税等を含める旨を、表の下に一文で付記する実務が定着しています。表の下には続けて「取引条件及び取引条件の決定方針等」の見出しを置き、脚注番号ごとに文章で説明を加えます。
営業取引の文例
営業取引では、価格をどのように決めたかを具体的に書きます。取引条件が一般的な取引条件で行われた旨を記載するには、関連当事者以外の第三者との取引と比較して同等の取引条件であることを要すると考えられています(関連当事者の開示に関する会計基準 第36項)。単に「一般的な取引条件で行っている」とだけ書くのは避けたいところです。
(注1)製品の販売価格は、当社の標準価格表を基礎として、同種製品を関連当事者以外の取引先へ販売する際の条件と比較したうえで、毎期交渉のうえ決定しています。
(注2)原材料の購入については、同社を含む複数の仕入先から見積りを入手し、市場の実勢価格を勘案して発注先及び価格を決定しています。
資金貸借取引・債務保証・担保提供の文例
資金の貸付け又は借入れがある場合、連結会計年度中又は事業年度中の貸付金額又は借入金額を取引金額として記載するとともに、当該取引に関する期末残高を記載します。債務保証等は保証債務等(被保証債務等)の期末残高を取引金額として記載し、担保提供又は受入れは担保資産に対応する債務の期末残高を取引金額として記載します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第9項)。
いずれの場合も、保証等をしているのか受けているのか、担保を提供しているのか受け入れているのかの別が分かるよう、注記において具体的に記載する必要があります。文例にすると次のような形です。
(注3)資金の貸付けについては、当社の平均調達金利に相手先の信用リスクを加味して利率を決定しています。返済条件は期間5年、毎月元金均等返済としており、担保は受け入れていません。
(注4)当社は、同社の金融機関からの借入れについて債務保証を行っています。保証料は年率○%で受領しており、保証債務の期末残高は○百万円です。
(注5)当社の金融機関借入れに対し、同社所有の土地について担保の提供を受けています。当該担保に対応する債務の期末残高は○百万円です。
役員・近親者との取引の文例
個人グループの取引は、取引条件の妥当性を客観的にどう確かめたかまで書き切ると、読み手の疑問が残りません。不動産の賃貸借であれば近隣の取引実勢、金銭の貸借であれば市場金利との比較、といった裏づけを示します。
(注6)当社代表取締役◇◇より事務所用建物を賃借しています。賃借料は、不動産会社から入手した近隣の類似物件の賃料水準に関する資料に基づき、隔年で交渉のうえ決定しています。
(注7)当社取締役△△の近親者が議決権の過半数を所有する□社からの商品の仕入れについては、市場の実勢価格を参考に、他の仕入先の条件と比較したうえで発注先及び価格を決定しています。
貸倒懸念債権等の文例
関連当事者に対する債権が貸倒懸念債権及び破産更生債権等に該当する場合は、債権の期末残高に対する貸倒引当金残高、当期の貸倒引当金繰入額等、当期の貸倒損失額の3項目を開示します。開示にあたっては、関連当事者ごとに開示せず、関連当事者の種類ごとに合算して記載することができます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第8項)。関連当事者に対する債務保証損失引当金の期末残高や繰入額なども開示対象となります。
(注8)関連会社(当該関連会社の子会社を含む)に対する更生債権等に対し、合計○百万円の貸倒引当金を計上しています。また、当連結会計年度において合計○百万円の貸倒引当金繰入額を計上しています。
なお、連結財務諸表においては、連結子会社に対する債権で相殺消去の対象とされているものに係る貸倒引当金及び貸倒損失等は、開示対象外となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第8項)。
注記作成でつまずきやすい論点
数値基準を当てはめる前後に、実務でよく判断に迷う論点があります。ここを外すと、注記の網羅性そのものが崩れてしまいます。
開示対象外となる取引
関連当事者との取引のうち、一般競争入札による取引並びに預金利息及び配当の受取りその他取引の性質からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引と、役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払いは、開示対象外です(関連当事者の開示に関する会計基準 第9項)。役員報酬は、コーポレート・ガバナンスに関する非財務情報として開示が規定されているため、関連当事者の開示の対象外とされています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第24項)。
また、関連当事者である役員と会社が報酬等の支払い以外の取引をする場合でも、当該役員が従業員としての立場で行っていることが明らかな取引は開示対象外となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第5項)。使用人兼務役員が会社の福利厚生制度による融資を受ける場合などが、これに当たります。
一方で、連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は開示対象外ですが(関連当事者の開示に関する会計基準 第6項)、無償取引や低廉な価格での取引は、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で重要性の判断を行います(関連当事者の開示に関する会計基準 第7項)。形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合も、開示対象に含めます(関連当事者の開示に関する会計基準 第8項)。
期中に関連当事者となった場合の対象期間
連結会計年度又は事業年度の途中において関連当事者に該当することとなった場合、又は関連当事者に該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第6項)。期末に子会社を取得し、貸借対照表のみ連結している場合で、取得前の期間において関連当事者に該当する場合には、当該会社との取引は連結財務諸表上相殺消去されていないため、関連当事者との取引の開示対象となります。
役員の異動も同じ発想です。前期限りで退任する役員であっても、期首から退任が決議される株主総会の日までは関連当事者に当たりますので、その間の取引を拾い漏らさない管理が必要になります。
開示の継続性と有償支給取引
重要性の判断基準の適用にあたっては、これまで開示対象となっていた取引等について、ある連結会計年度又は事業年度に数値基準を下回っても、それが一時的であると判断されるような場合には、ただちに開示対象から除外するなどの画一的な取扱いをせず、開示の継続性が保たれるよう留意する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第20項)。前期に開示していた取引を今期落とすときは、その理由を説明できる状態にしておきます。
外注先等への有償支給取引については、関連当事者との取引の開示のための重要性の判断は、当該有償支給取引に係る一連の取引が連結財務諸表上相殺消去されている場合には、消去された後のそれぞれの取引金額について行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第18項)。
上場準備会社が押さえておきたい実務
上場準備の局面では、関連当事者との取引そのものの解消・整理と、注記の作成体制の構築が並行して進みます。取引を残す場合には、事業上の必要性と取引条件の妥当性を毎期見直し、原則として個々の取引ごとに取締役会の承認を得る運用が求められます。会社法上の特別利害関係を持つ取締役は、その決議に加われない点にも注意が必要です。
取引を拾う仕組みとしては、役員への定期的なアンケート調査で関連当事者の範囲を更新し、会計システム上で関連当事者に該当する取引先にフラグを設定して金額を集計する方法が実務的です。債務保証のように会計帳簿に記録されない取引は、この方法では抽出できませんので、別途の把握手段を用意しておく必要があります。なお、証券取引所へ提出する審査資料には重要性の概念がなく、金額の少ない取引も含めて網羅的に記載することが求められる点で、注記とは考え方が異なります。
親会社・重要な関連会社の存在に関する注記
関連当事者の注記は、取引の開示だけでは完結しません。親会社又は重要な関連会社が存在する場合には、取引の有無にかかわらず、その存在に関する情報を開示します(関連当事者の開示に関する会計基準 第11項)。
親会社情報としては、親会社の名称及び上場又は非上場の別を開示します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第10項)。上場している場合は、どの証券取引所に上場しているかまで記載する形が一般的です。
重要な関連会社の要約財務情報は、持分法投資損益(共同支配企業の場合は、持分法を適用した場合の投資損益)の算定に用いた財務情報をもとに、主な貸借対照表項目及び損益計算書項目を開示します。貸借対照表項目は流動資産合計、固定資産合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計、損益計算書項目は売上高、税引前当期純損益、当期純損益が例示されています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第11項)。
要約財務情報は合算して記載することもできます。合算して記載する場合には、持分法投資損益の算定対象としたすべての関連会社の財務情報を合算したものを記載することもでき、その場合には、その旨及び重要な関連会社の名称を明記します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第11項、関連当事者の開示に関する会計基準 第11項(2))。
適用時期と改正の経緯
関連当事者の開示に関する会計基準は、2008年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用されています。早期適用として、2007年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用することもできるとされていました(関連当事者の開示に関する会計基準 第12項)。すでに適用初年度から相当の期間が経過しており、現在の実務は本基準に基づいて行われています。
適用指針についても、2006年に公表されたものの適用時期は会計基準と同様とされています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第21項)。その後、2024年に適用指針の改正が行われており、2024年のリース会計基準の公表に伴い、参考として示されている開示例について所要の改正が行われました(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第23項)。
この2024年改正適用指針の適用時期は、2024年に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の適用時期と同様とされています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第21-2項)。リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。リース会計基準を早期適用する会社では、関連当事者の注記の記載例もあわせて改正後のものを参照することになります。
会計基準の要件や開示項目そのものを体系的に確認したい場合は、次のコラムもあわせてご覧ください。
まとめ
関連当事者の注記記載例を作る作業は、重要性の数値基準で開示対象を絞り込み、絞り込んだ取引を記載欄に展開し、取引条件の決定方針を脚注で説明する、という3段階に分解できます。法人グループは損益計算書項目の10%と貸借対照表項目の総資産1%、個人グループは1,000万円、重要な関連会社は10%という基準値を押さえておけば、判定の入口で迷うことはなくなります。
そのうえで、営業取引・資金貸借取引・債務保証・担保提供・役員との取引といった取引区分ごとに、取引条件をどう決めたかを具体的に書き分けることが、注記の品質を大きく左右します。数値基準を一時的に下回った取引の扱いや、期中に関連当事者となった場合の対象期間など、判断の記録を残しておくと、翌期以降の作成と監査対応がぐっと楽になります。
自社の注記が網羅性・記載内容の両面で十分かどうか、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズでは、上場準備会社の関連当事者の把握体制の構築から注記の作成支援まで対応しています。
参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第11号 関連当事者の開示に関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第13号 関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
よくある質問
連結財務諸表で開示していれば個別財務諸表では注記しなくてよいですか。
連結財務諸表で関連当事者の開示を行っている場合は、個別財務諸表での開示を要しないこととされています(関連当事者の開示に関する会計基準 第4項)。連結財務諸表を作成していない会社は、個別財務諸表で開示することになります。その場合、連結損益計算書項目・連結貸借対照表項目・税金等調整前当期純損益は、それぞれ損益計算書項目・貸借対照表項目・税引前当期純損益と適宜読み替えて重要性を判断します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項)。
取引金額が1,000万円以下の役員との取引は、すべて注記不要ですか。
個人グループとの取引は、1,000万円を超える取引がすべて開示対象とされています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第16項)。ただし、役員若しくはその近親者が他の法人の代表者を兼務し、その法人の代表者として会社と取引を行う場合は、法人間における商取引に該当すると考えられるため、法人グループの基準で重要性を判断します。また、数値基準を一時的に下回った場合には、開示の継続性が保たれるよう留意する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第20項)。
無償で資金を貸し付けた場合、取引金額はゼロとして開示不要になりますか。
無償取引や低廉な価格での取引については、実際の取引金額ではなく、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で、重要性の判断を行い、開示対象とするかどうかを決定します(関連当事者の開示に関する会計基準 第7項)。無利子貸付けや寄付などが典型例です。あわせて、資金貸借取引は期末残高の重要性が乏しい場合でも、利息と発生総額の両面から重要性を判断する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第17項(1))。
相談役や顧問との取引も注記の対象になりますか。
「役員」には、取締役、会計参与、監査役、執行役又はこれらに準ずる者が含まれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(7))。「これらに準ずる者」は、例えば、相談役、顧問、執行役員その他これらに類する者であって、その会社内における地位や職務等からみて実質的に会社の経営に強い影響を及ぼしていると認められる者をいいます。創業者等で役員を退任した者についても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第4項)。
お問い合わせはこちら本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



