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【一覧表】関連当事者の範囲はどこまで?開示が必要な取引の判定基準

2025-08-29
目次

関連当事者の開示でつまずきやすいのは、「誰が関連当事者に当たるのか」と「その取引を注記に書く必要があるのか」の2点です。範囲は企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」で11の区分として列挙され、開示の要否は企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」の重要性の判断基準で決まります。

本記事では、まず該当者チェックリスト開示要否の早見表で自社のケースを機械的に判定できるようにし、そのうえで範囲・重要性基準・注記項目を条項番号つきで整理します。あわせて、実務で混同されやすい会社計算規則第112条の注記や、会社法上の利益相反取引・取締役会承認との違いも扱います。

関連当事者の判定フローと該当者チェックリスト

関連当事者の開示は、「範囲の判定」と「重要性の判定」という2段階の作業です。まずは次の5ステップで、自社の取引が注記の対象になるかを絞り込みます。

開示要否を判定する5つのステップ

  1. 相手方が関連当事者に該当するかを判定する。企業会計基準第11号 第5項(3)に列挙された11の区分に当てはまるかを確認します。形式的な肩書ではなく、支配・重要な影響力の有無で実質的に判定します(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3)、第17項)。
  2. 連結・個別のどちらの財務諸表で開示するかを確定する。連結財務諸表では連結子会社が関連当事者から除かれ、個別財務諸表では重要な子会社の役員およびその近親者などが除かれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3))。
  3. そもそも開示対象外の取引でないかを確認する。一般競争入札による取引や役員報酬の支払いなどは、金額にかかわらず開示対象から外れます(関連当事者の開示に関する会計基準 第9項)。
  4. 関連当事者を4つのグループに区分する。親会社および法人主要株主等、関連会社等、兄弟会社等、役員および個人主要株主等のいずれかに割り振ります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第13項)。
  5. グループごとの重要性の判断基準に当てはめる。法人グループは損益・資産に対する割合、個人グループは金額で判定します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項、第16項)。基準を満たした取引について、第10項の項目を注記します。

該当者チェックリスト(関連当事者の11区分)

次のいずれかに当てはまる相手は、関連当事者に該当します(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3))。自社の株主名簿・役員名簿・関係会社一覧と突き合わせて確認してください。

  • 親会社
  • 子会社
  • 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社(いわゆる兄弟会社)
  • その他の関係会社(財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合の当該他の会社)並びにその親会社および子会社
  • 関連会社および当該関連会社の子会社
  • 財務諸表作成会社の主要株主およびその近親者
  • 財務諸表作成会社の役員およびその近親者
  • 親会社の役員およびその近親者
  • 重要な子会社の役員およびその近親者
  • 上記の主要株主・役員・その近親者が、議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社
  • 従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る)

これらの「会社」には、会社だけでなく組合その他これらに準ずる事業体も含まれます。この場合、業務執行組合員が組合の財務および営業または事業の方針を決定しているときは、「議決権」を「業務執行を決定する権限」と読み替えます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(4))。また、その他の関係会社には共同支配投資企業が、関連会社には共同支配企業が含まれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(5))。

関連コラム投資事業組合の連結範囲|支配力基準・影響力基準の判定実務

開示要否の早見表

取引の類型ごとに、開示対象になるかどうかの結論をまとめます。判断に迷う取引は、まずこの表で当たりを付けてから重要性の判断基準に進んでください。

取引の類型 開示の要否
商品・製品の売買、不動産の賃貸借 重要性の判断基準を満たせば開示対象
資金の貸付・借入とその利息の授受 重要性の判断基準を満たせば開示対象
債務保証等、担保の提供または受入れ 重要性の判断基準を満たせば開示対象
増資の引受け、自己株式の取得などの資本取引 開示対象。ただし公募増資は開示対象外
無利子貸付や寄附などの無償取引、低廉な価格での取引 独立第三者間取引と仮定した金額を見積り、重要性を判断して決定
形式的・名目的に第三者を経由した取引 実質上の相手先が関連当事者であることが明確なら開示対象
独立第三者と同等の条件で行われた取引 開示対象。一般的な取引条件でも開示は省略できない
一般競争入札による取引、預金利息・配当の受取り 開示対象外
役員に対する報酬、賞与、退職慰労金の支払い 開示対象外
使用人兼務役員が福利厚生制度による融資を受ける取引 開示対象外
連結財務諸表の作成にあたり相殺消去した取引 連結財務諸表では開示対象外
連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引 開示対象外

開示対象外とされる取引の根拠は、一般競争入札等および役員報酬等が第9項、使用人兼務役員の福利厚生融資が適用指針第5項、相殺消去した取引が第6項です(関連当事者の開示に関する会計基準 第6項、第9項、関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第5項)。公募増資が開示対象外となるのは、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引に該当するためです(関連当事者の開示に関する会計基準 第28項)。連結会社が直接関わらない関連当事者同士の取引は、正確かつ網羅的な情報の入手が困難であることなどから開示対象外とされています(関連当事者の開示に関する会計基準 第34項)。

なお、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引を除き、第三者との取引と同等の条件であっても開示は省略できません(関連当事者の開示に関する会計基準 第32項)。「独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っている」旨を注記に書く場合は、関連当事者以外の第三者との取引と比較して同等であることを確かめる必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準 第36項)。

関連当事者とは|定義と開示の目的

関連当事者とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、または他の当事者の財務上および業務上の意思決定に対して重要な影響力を有している場合の当事者等をいいます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3))。親会社・子会社のような資本関係だけでなく、役員やその家族、議決権の10%以上を持つ株主といった個人も含まれる点が特徴です。

関連当事者取引の定義

関連当事者取引とは、会社と関連当事者との取引をいい、対価の有無にかかわらず、資源もしくは債務の移転、または役務の提供をいいます。関連当事者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連当事者が当該取引に関して会社に重要な影響を及ぼしているものも含まれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(1))。

実務で見落とされやすいのは、後半の「第三者を挟んだ取引」です。金銭的な対価が発生しない無償の役務提供や、名義上は第三者との取引でも実質的に関連当事者が関与している取引が、開示対象から漏れやすい典型例です。

開示が求められる理由

会社と関連当事者との取引は、会社と役員等の個人との取引を含め、対等な立場で行われているとは限らず、会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがあります。また、直接の取引がない場合においても、関連当事者の存在自体が会社の財政状態や経営成績に影響を及ぼすことがあります。関連当事者の開示は、こうした影響を財務諸表利用者が把握できるように、適切な情報を提供するものでなければなりません(関連当事者の開示に関する会計基準 第2項)。

この趣旨から、本会計基準では取引の開示だけでなく、親会社等の存在に関する開示も求めています。関連当事者の開示は財務諸表の注記情報であることから、コーポレート・ガバナンスに関する側面は副次的な位置付けとされています(関連当事者の開示に関する会計基準 第16項)。上場準備の実務では、関連当事者取引の解消そのものが審査上の論点になりますが、会計基準が求めているのはあくまで「注記による情報提供」である点を切り分けて理解しておくと整理しやすくなります。

関連当事者の範囲|法人・個人の一覧

ここからは、11区分を法人と個人に分けて内容を確認します。範囲は形式的に判定するのではなく、実質的に判定する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準 第17項)。

法人としての関連当事者

親会社 財務諸表作成会社を支配している会社
子会社 財務諸表作成会社に支配されている会社。連結財務諸表上は連結子会社が関連当事者から除かれる
同一の親会社を
もつ会社
いわゆる兄弟会社
その他の関係会社
とその親会社・子会社
財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社と、その親会社および子会社
関連会社と
その子会社
財務諸表作成会社が重要な影響力を有する会社と、その子会社
主要株主・役員等が
過半数を所有する会社
主要株主・役員・その近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社
従業員のための
企業年金
企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る

企業年金については、わが国の確定拠出年金制度・確定給付企業年金制度・厚生年金基金制度のいずれの場合でも、掛金の拠出を除き、会社と直接取引を行わないのが通常であるため、開示対象となるような取引は通常生じないものと考えられています(関連当事者の開示に関する会計基準 第23項)。

個人としての関連当事者

主要株主と
その近親者
総株主の議決権の10%以上を保有している株主と、その二親等以内の親族
役員と
その近親者
財務諸表作成会社の取締役、会計参与、監査役、執行役等と、その二親等以内の親族
親会社の役員と
その近親者
親会社の役員の子会社に対する影響力が大きい場合もあることから範囲に含まれる
重要な子会社の役員
とその近親者
会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者が子会社の役員にいる場合の当該役員

親会社の役員が含まれるのは、その子会社に対する影響力が大きい場合があることを踏まえたものです(関連当事者の開示に関する会計基準 第20項)。重要な子会社の役員については、子会社の役員を一律に含めると情報収集の負担が過大になる一方、影響の大きい孫会社の役員が除かれるのも適当ではないことから、「会社グループの事業運営に強い影響力を持つ者」という基準で範囲を画しています(関連当事者の開示に関する会計基準 第21項)。

主要株主・役員・近親者の定義

主要株主 保有態様を勘案した上で、自己または他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(6))
役員 取締役、会計参与、監査役、執行役またはこれらに準ずる者(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(7))
近親者 二親等以内の親族。配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父母、子、孫および配偶者の父母、兄弟、姉妹、祖父母並びに兄弟、姉妹、子、孫の配偶者(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(8))

主要株主の10%という水準は、金融商品取引法上の主要株主の取扱いと同様とすることとしたものです(関連当事者の開示に関する会計基準 第18項)。ただし、信託業を営む者が信託財産として株式を保有している場合、証券業を営む者が引受けまたは売出しを行う業務により株式を保有している場合、および証券金融会社がその業務として株式を保有している場合については、その保有態様から主要株主には該当しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第3項)。

役員の「これらに準ずる者」は、たとえば相談役、顧問、執行役員その他これらに類する者であって、その会社内における地位や職務等からみて実質的に会社の経営に強い影響を及ぼしていると認められる者をいいます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第4項)。創業者等で役員を退任した者についても、役員の定義に該当するかどうかを実質的に判定します。退任後どこまでを範囲に含めるかは、一律に期間を設けるのではなく、会社に対して役員と同等の影響力を及ぼしているか否かを個々のケースごとに実質的に判定することとされており、退任後間もない役員については特に慎重な対応が求められます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第23-2項)。この点は、オーナー系の上場準備企業でしばしば論点になります。

連結と個別で範囲が変わる点

本会計基準は、すべての会社の連結財務諸表または個別財務諸表における関連当事者の開示に適用されます。なお、連結財務諸表で関連当事者の開示を行っている場合は、個別財務諸表での開示を要しないこととされています(関連当事者の開示に関する会計基準 第4項)。

範囲そのものも連結と個別で異なります。連結財務諸表上は連結子会社が除かれ、個別財務諸表上は重要な子会社の役員およびその近親者並びにこれらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社が除かれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3))。連結・個別で同じリストを使い回すと過不足が生じるため、実務では2本立てで管理するのが安全です。

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開示対象となる取引の判定|重要性の判断基準

会社と関連当事者との取引のうち、開示対象となるのは重要な取引です(関連当事者の開示に関する会計基準 第6項)。この場合の重要性の判断は、適用指針第13項から第18項および第20項に基づいて行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第12項)。

関連当事者の4つのグループ区分

法人または個人の別、支配または被支配の別、影響力の度合いなどに基づき、関連当事者は4つのグループに区分します。開示に際しては、各グループに適用される重要性の判断基準に従って開示の要否を判定し、開示を要する事項をグループ順に並べて開示します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第13項)。

親会社および
法人主要株主等
親会社、その他の関係会社および当該その他の関係会社の親会社、法人である主要株主
関連会社等 子会社、関連会社および当該関連会社の子会社、従業員のための企業年金
兄弟会社等 同一の親会社をもつ会社、その他の関係会社の子会社、法人主要株主が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社
役員および
個人主要株主等
個人である主要株主とその近親者、役員とその近親者、親会社の役員とその近親者、重要な子会社の役員とその近親者、これらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社およびその子会社

この4グループをさらに法人グループ(上位3グループ)と個人グループ(役員および個人主要株主等)に区分して重要性を判断します。判断は原則として各関連当事者との取引ごとに行い、類似・反復取引についてはその合計で行います。1つの取引について売上高は重要でも売掛金残高には重要性がない場合であっても、売上高と売掛金残高の両方の開示が必要になる点に留意が必要です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第14項)。

法人グループの重要性の判断基準

関連当事者が法人グループである場合、次の基準に該当する取引が開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項)。個別財務諸表で開示する場合は、連結損益計算書項目・連結貸借対照表項目・税金等調整前当期純損益を、それぞれ損益計算書項目・貸借対照表項目・税引前当期純損益と適宜読み替えます。

項目 開示対象となる基準
売上高、売上原価、販売費及び一般管理費 売上高または売上原価と販売費及び一般管理費の合計額の10%を超える取引
営業外収益、営業外費用 営業外収益または営業外費用の合計額の10%を超える損益に係る取引
特別利益、特別損失 1,000万円を超える損益に係る取引
貸借対照表項目に属する科目の残高等 その金額が総資産の1%を超える取引
資金貸借取引、有形固定資産・有価証券の購入や売却 残高が総資産の1%以下でも、取引の発生総額が総資産の1%を超える取引
事業の譲受けまたは譲渡 対象となる資産または負債の総額のいずれか大きい額が総資産の1%を超える取引

営業外損益と特別損益については、上記の基準で開示対象となる場合であっても、取引総額が税金等調整前当期純損益または最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益の10%以下となるときは、開示を要しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項)。資金貸借取引が反復的に行われている場合や、発生総額の把握が困難な場合には、期中の平均残高が総資産の1%を超えるかどうかで判断することもできます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第15項、第30項)。

個人グループの重要性の判断基準

関連当事者が個人グループである場合、連結損益計算書項目および連結貸借対照表項目等のいずれに係る取引についても、1,000万円を超える取引はすべて開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第16項)。法人グループのような割合基準ではなく金額の一本値である点が、判定作業では大きな違いになります。

ただし、会社の役員(親会社および重要な子会社の役員を含みます)もしくはその近親者が他の法人の代表者を兼務しており、その法人の代表者として会社と取引を行うような場合は、法人間における商取引に該当すると考えられるため、法人グループの取引として扱います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第16項)。なお、当該役員等が当該法人または当該法人の親会社の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合は、この取扱いから除かれ、従来どおり個人の場合の基準で判断します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第33項)。

無償・低廉取引と第三者経由取引の扱い

無償取引や低廉な価格での取引については、実際の取引金額ではなく、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積った上で重要性の判断を行い、開示対象とするかどうかを決定します(関連当事者の開示に関する会計基準 第7項、第29項)。無利子貸付や寄附、有償取引における低利貸付などが典型例です。

また、形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合には、開示対象に含めます(関連当事者の開示に関する会計基準 第8項)。この場合、注記では形式上の取引先名を記載した上で、実質的には関連当事者との取引である旨を記載します(関連当事者の開示に関する会計基準 第10項(3))。

資金貸借取引、債務保証等、担保提供または受入れの重要性は、資金貸借取引については利息と発生総額の両面から、債務保証等については期末における保証債務等の金額で、担保資産については期末における対応する債務の残高で判断します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第17項)。外注先等への有償支給取引については、一連の取引が連結財務諸表上相殺消去されている場合には、消去された後のそれぞれの取引金額について重要性の判断を行います(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第18項)。

なお、重要性の判断基準の適用にあたっては、これまで開示対象となっていた取引等について、ある連結会計年度または事業年度に数値基準を下回っても、それが一時的であると判断されるような場合には、ただちに開示対象から除外するなどの画一的な取扱いをせず、開示の継続性が保たれるよう留意する必要があります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第20項)。

注記に記載する項目

開示対象となる関連当事者との取引がある場合、原則として個々の関連当事者ごとに項目を開示します(関連当事者の開示に関する会計基準 第10項)。

取引に関する開示項目

関連当事者の概要 名称または氏名のほか、法人の場合は所在地、資本金(出資金)、事業の内容、議決権の所有割合。個人の場合は職業と議決権の所有割合
会社と関連当事者
との関係
親会社、役員、主要株主などの関係性、役員の兼任状況など
取引の内容 資産の購入、資金の借入、債務保証など。第三者経由の場合は形式上の取引先名と実質の相手先である旨
取引の種類ごとの
取引金額
売上高、仕入高、支払利息など
取引条件および
取引条件の決定方針
利率、担保の有無、価格決定方法
債権債務に係る
主な科目別の期末残高
売掛金、貸付金、買掛金、借入金など
取引条件の変更が
あった場合の内容
その旨、変更内容および当該変更が財務諸表に与えている影響の内容
貸倒懸念債権等
に係る情報
債権の期末残高に対する貸倒引当金残高、当期の貸倒引当金繰入額等、当期の貸倒損失額

関連当事者の概要の具体的な記載内容は適用指針第7項に、貸倒懸念債権および破産更生債権等に係る情報の内訳は適用指針第8項に定められています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第7項、第8項)。貸倒懸念債権等に係る情報は、関連当事者ごとではなく、第5項(3)に掲げられている関連当事者の種類ごとに合算して記載することができます(関連当事者の開示に関する会計基準 第10項(8))。連結財務諸表においては、連結子会社に対する債権で相殺消去の対象とされているものに係る貸倒引当金および貸倒損失等は開示対象外です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第8項)。

資金貸借取引は連結会計年度中または事業年度中の貸付金額または借入金額を取引金額として記載し、あわせて期末残高を記載します。債務保証等は保証債務等の期末残高を取引金額とし、保証等をしているのか受けているのかの別が分かるよう注記で具体的に記載します。担保提供または受入れは、担保資産に対応する債務の期末残高を取引金額とします(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第9項)。

関連当事者の存在に関する開示

取引がなくても、親会社または重要な関連会社が存在する場合には、その情報の開示が必要です(関連当事者の開示に関する会計基準 第11項)。親会社情報としては、親会社の名称および上場または非上場の別を開示します(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第10項)。

重要な関連会社については、要約財務情報として、流動資産合計・固定資産合計・流動負債合計・固定負債合計・純資産合計といった貸借対照表項目と、売上高・税引前当期純損益・当期純損益といった損益計算書項目を開示します。要約財務情報は合算して記載することもできます(関連当事者の開示に関する会計基準 第11項(2)、関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第11項)。

ここでいう重要な関連会社とは、各関連会社の総資産(持分相当額)が総資産の10%を超える場合、または各関連会社の税引前当期純損益(持分相当額)が税金等調整前当期純損益の10%を超える場合をいいます。ただし後者については、上記の基準を満たす場合であっても、会社の最近5年間の平均の税金等調整前当期純損益の10%を超えない場合には開示を要しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第19項)。

実務での判定シートの作り方

関連当事者の開示は、決算期末にまとめて調べようとすると必ず漏れます。上場準備企業でも、開示の抜けが指摘される原因のほとんどは「範囲のリストが古い」ことにあります。実務では、次の順序で年間を通じた判定シートを整備しておくと安定します。

  1. 範囲リストを作る。株主名簿から議決権10%以上の主要株主を、役員名簿から取締役・会計参与・監査役・執行役を、関係会社一覧から親会社・子会社・関連会社・その他の関係会社を抽出し、11区分に割り付けます。相談役・顧問・執行役員、退任した創業者は「役員に準ずる者」に当たらないかを個別に検討します。
  2. 近親者を洗い出す。役員・主要株主それぞれについて、二親等以内の親族の申告を受ける仕組みを作ります。役員向けの確認書を年1回配布し、期中の異動も報告してもらう運用が一般的です。
  3. 過半数所有会社を追う。役員・主要株主・その近親者が議決権の過半数を自己の計算において所有する会社は、それ自体が関連当事者になります。役員の資産管理会社や家族経営の取引先が該当しやすい箇所です。
  4. 取引を紐づける。範囲リストの各当事者名を、会計システムの取引先マスタと突き合わせて取引を抽出します。取引先マスタに登録されない債務保証・担保提供・無償の役務提供は、稟議書や取締役会議事録から拾います。
  5. 重要性を判定する。法人グループは割合基準、個人グループは1,000万円基準で判定し、判定結果と根拠数値をシートに残します。前期に開示していた取引が今期は基準を下回った場合は、一時的なものかどうかを検討したうえで継続性の判断を記録します。

期中に関連当事者に該当することとなった場合、または該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象になります。期末に子会社を取得(みなし取得を含みます)し、貸借対照表のみ連結している場合で、取得前の期間において関連当事者に該当するときは、当該会社との取引は連結財務諸表上相殺消去されていないため、関連当事者との取引の開示対象となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第6項)。期中に資本異動や役員の就任・退任があった年度は、この点の確認が特に重要です。

会社法・会社計算規則との違い

関連当事者をめぐるルールは会計基準だけではありません。実務では、会社計算規則に基づく計算書類の注記と、会社法上の利益相反取引規制が並走します。混同しやすいため、それぞれの位置づけを整理します。

会社計算規則第112条の注記との違い

計算書類における関連当事者との取引に関する注記は、会社計算規則第112条に定められています。株式会社と関連当事者との間に取引(当該株式会社と第三者との間の取引で当該株式会社と当該関連当事者との間の利益が相反するものを含みます)がある場合における、名称または氏名、議決権の割合、関係、取引の内容、取引の種類別の取引金額、取引条件および取引条件の決定方針、期末残高、取引条件の変更内容のうち重要なものが対象です(会社計算規則 第112条第1項)。

比較の観点 会計基準と会社計算規則の違い
適用される書類 会計基準は連結財務諸表または個別財務諸表の注記、会社計算規則は計算書類(連結注記表・個別注記表)の注記
関連当事者の範囲 会社計算規則は「重要な子会社の役員およびその近親者」を掲げていない
開示対象外の取引 会社計算規則は、公正な価格を勘案して一般の取引の条件と同様のものを決定していることが明白な取引も注記を要しないとしている
記載の省略 会計監査人設置会社以外の株式会社は、取引の内容、取引の種類別の取引金額、取引条件および決定方針、取引条件の変更の内容を省略できる

会社計算規則における関連当事者の範囲は、親会社、子会社、親会社の子会社、その他の関係会社並びにその親会社および子会社、関連会社および当該関連会社の子会社、主要株主およびその近親者、役員およびその近親者、親会社の役員またはこれらに準ずる者およびその近親者、これらの者が議決権の過半数を所有する会社等およびその子会社、従業員のための企業年金です(会社計算規則 第112条第4項)。会計基準の11区分と近いものの、重要な子会社の役員が含まれない点が異なります。

また、注記を要しない取引として、一般競争入札による取引・預金利息および配当金の受取りその他取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引、役員に対する報酬等の給付に加えて、当該取引に係る条件につき市場価格その他公正な価格を勘案して一般の取引の条件と同様のものを決定していることが明白な場合における当該取引が挙げられています(会社計算規則 第112条第2項)。会計監査人設置会社以外の株式会社は、取引の内容から取引条件の決定方針まで、および取引条件の変更の内容を省略できます(会社計算規則 第112条第1項)。省略した事項がある場合は、附属明細書に表示します(会社計算規則 第117条)。

利益相反取引(会社法第356条)との違い

会社法上の利益相反取引は、取締役が自己または第三者のために株式会社と取引をしようとするとき(直接取引)、および株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき(間接取引)に、株主総会で重要な事実を開示して承認を受けなければならないという規制です(会社法 第356条第1項)。競業取引も同じ条文で規制されています。

両者の違いは、目的と対象範囲にあります。関連当事者の開示は財務諸表の注記による情報提供が目的で、対象は役員に限らず親会社・子会社・主要株主・近親者まで広がります。一方の利益相反取引規制は取締役の忠実義務違反を防ぐ事前の手続規制で、対象は取締役(および執行役)です。したがって、主要株主やその近親者との取引は、利益相反取引には当たらなくても関連当事者取引として開示対象になり得ます。逆に、取締役との少額の取引は、利益相反取引として承認が必要でも、重要性の判断基準を満たさず注記の対象外になることがあります。

取締役会承認との関係(会社法第365条)

取締役会設置会社では、第356条の「株主総会」が「取締役会」と読み替えられ、利益相反取引および競業取引には取締役会の承認が必要です。さらに、取引をした取締役は、当該取引後遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければなりません(会社法 第365条)。

実務では、この取締役会の承認記録が関連当事者取引を洗い出す有力な手掛かりになります。取引先マスタに現れない債務保証や担保提供も、承認議案としては残っているためです。ただし、承認の対象は取締役に関する取引に限られるため、これだけに頼ると主要株主やその近親者との取引が抜け落ちます。判定シートでは、取締役会議事録と株主名簿・役員の近親者申告の両方を突き合わせる設計にしてください。

適用時期と改正の経緯

企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第13号「関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針」は、2006年10月17日に公表されました(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第1項)。本会計基準は、2008年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用されています。2007年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度からの早期適用も認められていました(関連当事者の開示に関する会計基準 第12項、第40項)。適用指針の適用時期も会計基準と同様です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第21項)。

その後、適用指針は2024年に改正されています。2024年改正適用指針では、2024年の企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の公表に伴い、参考(開示例)について所要の改正が行われました。使用権資産やリース債務が開示例に反映された形です。2024年改正適用指針の適用時期は、リース会計基準の適用時期と同様とされています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第21-2項、第23項)。あわせて、退任した役員の取扱いについての考え方も示されています(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第23-2項)。

会計基準本体は2006年の公表以降、内容の実質的な改正は行われていません。したがって現行の実務では、範囲・重要性・注記項目のいずれについても、2006年公表の会計基準と2024年改正後の適用指針を組み合わせて判断することになります。

上場準備企業での実務上の留意点

上場準備の局面では、関連当事者取引は「開示すれば足りる」論点ではなく、審査で解消を求められる論点として扱われます。役員個人からの借入、役員の資産管理会社への不動産賃借、創業家関係者への外注などは、申請期までに整理しておくのが一般的です。

一方で、会計基準が求めているのは注記による情報提供です。解消済みの取引であっても、比較対象となる過年度の期間に取引があれば、その期間の取引は開示対象になります。監査法人のショートレビューの段階で、過去2期分の関連当事者リストと取引実績を作っておくと、後工程が大きく楽になります。

また、役員報酬・賞与・退職慰労金の支払いは関連当事者取引としての開示は不要ですが、これは会計基準が非財務情報としての開示に委ねているためです(関連当事者の開示に関する会計基準 第9項(2)、第33項)。金銭以外の経済的利益の供与であっても、会社法第361条にいう報酬等に含まれるものは役員報酬として別途開示され、含まれないものは関連当事者の開示の対象になると考えられます(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第24項)。役員に対する給付を「報酬か、関連当事者取引か」で切り分ける作業は、実務では意外に手間がかかります。

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関連当事者の範囲判定や重要性の当てはめは、資本構成・役員構成・取引形態によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

まとめ

関連当事者の範囲は、企業会計基準第11号 第5項(3)の11区分に整理されており、親会社・子会社・関連会社といった法人だけでなく、議決権10%以上の主要株主、取締役等の役員、そしてそれぞれの二親等以内の近親者まで及びます。相談役・顧問・執行役員や退任した創業者も、実質的な影響力によっては役員に準ずる者として範囲に入ります。

開示の要否は、開示対象外の取引に当たらないかを確認したうえで、4つのグループ区分に応じた重要性の判断基準に当てはめて決めます。法人グループは損益・総資産に対する割合、個人グループは1,000万円という金額基準が軸です。開示対象と判定された取引は、関連当事者ごとに概要・関係・取引内容・取引金額・取引条件・期末残高などを注記します。

実務では、範囲リストを年間で維持する仕組みを持てるかどうかが精度を左右します。会社計算規則第112条の注記や会社法上の利益相反取引規制とも守備範囲が違うため、それぞれを別建てで管理し、取締役会議事録・株主名簿・近親者申告を突き合わせる運用を整えてください。

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参考文献

よくある質問

関連当事者の範囲はどこまでですか。

親会社、子会社、兄弟会社、その他の関係会社とその親会社・子会社、関連会社とその子会社、主要株主とその近親者、役員とその近親者、親会社の役員とその近親者、重要な子会社の役員とその近親者、これらの者が議決権の過半数を自己の計算において所有する会社とその子会社、従業員のための企業年金の11区分です(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(3))。

主要株主は議決権何パーセント以上の株主ですか。

保有態様を勘案した上で、自己または他人の名義をもって総株主の議決権の10%以上を保有している株主が主要株主です(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(6))。信託業・証券業を営む者や証券金融会社が業務として保有する株式については、その保有態様から主要株主に該当しません(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第3項)。

近親者はどこまでの親族を指しますか。

二親等以内の親族です。具体的には、配偶者、父母、兄弟、姉妹、祖父母、子、孫および配偶者の父母、兄弟、姉妹、祖父母並びに兄弟、姉妹、子、孫の配偶者が含まれます(関連当事者の開示に関する会計基準 第5項(8))。

役員報酬は関連当事者取引として開示が必要ですか。

役員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払いは開示対象外です(関連当事者の開示に関する会計基準 第9項(2))。使用人兼務役員が会社の福利厚生制度による融資を受ける場合など、当該役員が従業員としての立場で行っていることが明らかな取引も開示対象外となります(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第5項)。

会社計算規則第112条の注記と会計基準の開示は何が違いますか。

対象書類が計算書類か財務諸表かという違いに加え、会社計算規則の関連当事者には重要な子会社の役員およびその近親者が含まれません。また、公正な価格を勘案して一般の取引の条件と同様のものを決定していることが明白な取引は注記を要せず、会計監査人設置会社以外の株式会社は一部の記載事項を省略できます(会社計算規則 第112条)。

関連当事者取引と会社法の利益相反取引は同じですか。

異なります。利益相反取引は取締役が自己または第三者のために会社と取引する場合等に事前の承認を求める規制で、対象は取締役です(会社法 第356条第1項)。関連当事者取引の開示は財務諸表の注記による情報提供が目的で、主要株主や近親者との取引も対象になります。取締役会設置会社では利益相反取引の承認は取締役会が行い、取引後に取締役会への報告も必要です(会社法 第365条)。

期中に関連当事者でなくなった相手との取引も開示しますか。

関連当事者であった期間中の取引が開示対象になります。期中に関連当事者に該当することとなった場合も同様です(関連当事者の開示に関する会計基準の適用指針 第6項)。

取引条件が第三者と同等であれば開示は不要ですか。

不要にはなりません。取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引を除き、第三者との取引と同等の条件であっても開示は省略できません(関連当事者の開示に関する会計基準 第32項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。