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役員賞与の会計処理|費用処理と役員賞与引当金の実務

2026-07-26
目次

役員賞与は、かつて利益処分として未処分利益の減少で処理されていましたが、企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」により、現在は発生した会計期間の費用として処理します。本稿では、この会計基準の考え方、役員賞与引当金の計上、仕訳例、税務との差異までを、原典に沿って解説します。

役員賞与に関する会計基準の対象範囲

企業会計基準第4号は、すべての会社における役員賞与の会計処理に適用されます。ここでいう「役員」とは、取締役、会計参与、監査役及び執行役を合わせた総称です。これらの役員に対する賞与が「役員賞与」であり、会計処理の統一が図られています。

一方で、役員に対する金銭以外による支給や退職慰労金については、本会計基準では取り扱いません。これらは別途の会計基準や実務慣行に従って処理する点に留意が必要です。対象となる役員賞与は、あくまで金銭による賞与に限られます。

対象となる役員と対象外の支給

役員賞与の範囲を整理すると、次のとおりです。適用対象を正確に把握することが、会計処理の第一歩となります。

対象となる役員 取締役・会計参与・監査役・執行役
対象となる支給 役員に対する金銭による賞与
対象外の支給 金銭以外による支給・退職慰労金

役員賞与は費用として処理

本会計基準の中核は、役員賞与は、発生した会計期間の費用として処理するという取扱いです。役員報酬が職務執行の対価として費用処理されるのと同様に、役員賞与も経済的実態としては業績連動型報酬と同様の性格を持つと考えられるためです。企業会計基準委員会 企業会計基準第4号 役員賞与に関する会計基準

役員賞与と役員報酬は、いずれも職務執行の対価として支給されるものです。職務執行の対価としての性格は、本来、支給手続の相違によって影響を受けるものではないと考えられます。この考え方に基づき、支給手続にかかわらず費用として処理することが適当とされています。

従来の利益処分方式からの変更

従来、我が国では、役員報酬は発生時に費用として会計処理する一方、役員賞与は利益処分により未処分利益の減少とする会計処理が一般的でした。役員賞与を利益の分配として捉える実務慣行があったためです。

その後、平成17年(2005年)公布の会社法において、役員賞与は役員報酬とともに職務執行の対価として整理され、両者が同一の手続により支給されることとなりました。これにより、支給手続を前提とした従来の会計処理を見直す必要が生じ、本会計基準が公表されました。あわせて、従前の実務対応報告第13号「役員賞与の会計処理に関する当面の取扱い」は廃止されています。

従来の処理と現行処理の比較

従来の利益処分方式と、現行の費用処理を対比すると次のとおりです。会計上の位置づけが大きく変わっている点が要点です。

項目 会計処理
従来の慣行 利益処分による未処分利益の減少
現行(本会計基準) 発生した会計期間の費用として処理
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役員賞与引当金の計上

当事業年度の職務に係る役員賞与を、期末後に開催される株主総会の決議事項とする場合、その支給は株主総会の決議が前提となります。この場合、当該決議事項とする額又はその見込額(当事業年度の職務に係る額に限る)を、原則として引当金に計上します。実務上、この引当金は「役員賞与引当金」の科目で表示されます。

期末時点では支給額が確定していなくても、当事業年度の職務の対価として発生している以上、当期の費用として認識し、負債として引当金を計上するという考え方です。翌期の株主総会で支給が確定した時点で、引当金を取り崩して支給に充てます。

株主総会決議前でも計上できる場合

子会社が支給する役員賞与のように、株主総会の決議はなされていないものの、実質的に確定債務と認められる場合には、未払役員報酬等の適当な科目をもって計上することができます。決議の有無にとらわれず、債務の確定状況に応じた処理が認められている点が特徴です。

役員賞与引当金の仕訳例

期末の職務に係る役員賞与を翌期の株主総会で決議する場合の基本的な仕訳は、次のとおりです。金額は説明のための仮の数値です。

まず、決算時に見込額を引当金として計上します。

(借)役員賞与引当金繰入額  10,000  /  (貸)役員賞与引当金  10,000

翌期の株主総会で支給が決議され、実際に支給したときに引当金を取り崩します。

(借)役員賞与引当金  10,000  /  (貸)現金預金  10,000

役員賞与引当金繰入額は、原則として販売費及び一般管理費として損益計算書に計上されます。引当金の計上により、費用と負債が当期に適切に対応する形となります。

関連コラム株主資本等変動計算書とは|区分・様式と作成実務を解説

中間会計期間の取扱い

中間財務諸表における役員賞与の会計処理は、年度の財務諸表における会計処理に準じて処理します。中間期においても、原則として費用処理と引当金計上の考え方が適用されます。

ただし、役員賞与の金額が事業年度の業績等に基づき算定されるため、中間会計期間において合理的に見積ることが困難な場合や、重要性が乏しいと想定される場合には、中間会計期間においては費用処理しないことができます。実務上の見積可能性と重要性に配慮した例外が設けられています。

税務上の取扱いとの差異

会計と税務では、役員賞与の取扱いが異なる点に注意が必要です。会計上は費用として処理しますが、役員給与の損金算入は法人税法上の要件を満たす場合に限られます。定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与といった要件に該当しない役員賞与は、税務上、損金に算入されないのが原則です。

その結果、決算時に計上した役員賞与引当金繰入額は、会計上は当期の費用でも、税務上はその事業年度の損金として認められないことがあり、一時差異が生じます。税効果会計の対象となる場合もあるため、会計処理と税務調整は分けて検討することが重要です。損金算入の詳細な要件は、下記のコラムもあわせてご確認ください。

関連コラム役員報酬の決定方法と変更時の注意点|損金算入のルールを解説

適用時期と会計方針の変更

企業会計基準第4号は、平成17年(2005年)11月29日に公表され、会社法施行日(2006年5月1日)以後終了する事業年度の中間会計期間から適用されています。公表以降、実質的な内容の改正は行われておらず、現在も同基準に基づく費用処理が定着しています。

本会計基準の適用に伴い、役員賞与を発生した会計期間の費用として処理することとなった場合には、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱う点に留意が必要です。すでに適用されている基準ですが、過年度の処理方法を確認する際の視点として押さえておきましょう。

役員賞与の会計処理は、株主総会の決議時期や引当金の見積り、税務との差異など、実務判断が求められる場面が少なくありません。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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まとめ

役員賞与は、企業会計基準第4号により、発生した会計期間の費用として処理します。従来の利益処分方式は廃止され、期末後の株主総会で決議する場合は、その額又は見込額を役員賞与引当金として計上します。すべての会社が対象であり、会社法施行日以後終了する事業年度の中間会計期間から適用されています。会計上は費用でも税務上は損金不算入となる場合があるため、税務差異にも留意して処理することが重要です。

参考文献

よくある質問

役員賞与は費用と利益処分のどちらで処理しますか。

発生した会計期間の費用として処理します。企業会計基準第4号により、従来の利益処分による未処分利益の減少という処理は廃止され、役員報酬と同様に費用処理することとされています。

役員賞与引当金はどのような場合に計上しますか。

当事業年度の職務に係る役員賞与を期末後の株主総会の決議事項とする場合に、その決議事項とする額又は見込額を原則として引当金に計上します。実務上は役員賞与引当金の科目で表示します。

役員賞与は税務上も損金になりますか。

会計上は費用ですが、税務上は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与などの要件を満たす場合に限り損金に算入されます。要件を満たさない役員賞与は損金不算入となり、一時差異が生じることがあります。

事務所概要
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公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。