新リース会計基準の再リース【判定表と仕訳例】借手の3パターン
目次
- 借手の再リース判定表
- ステップ1:再リースに該当するかの確認
- ステップ2:借手のリース期間に含めるかの判定
- ステップ3:含めない場合の特例の選択
- 3パターンの仕訳例(同じ前提で比較)
- パターンA:再リース期間をリース期間に含める場合
- パターンB:含めず、独立したリースとして処理する場合
- パターンC:含めず、特例を使わない場合
- パターン選択で押さえたい実務ポイント
- 特例を使うかは契約管理の体制で決める
- パターンAでも判定は見直し対象になる
- 貸手の再リースは別の枠組み
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 再リース期間を借手のリース期間に含めるかは、いつ判定しますか。
- 第52項の特例を使うと、再リースは必ずオフバランスになりますか。
- 特例を使わない場合、再リースはどのように扱われますか。
- 借手も「再リースする意思が明らか」かどうかで判定してよいですか。
複合機や測定機器のリースで、解約不能期間が終わったあとに1年単位で続ける「再リース」。新リース会計基準のもとで借手がこれをどう処理するかは、リース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めるかどうかと、含めない場合に独立したリースとして扱う特例を使うかどうかの2つの判断で決まります。
本記事では、この2つの判断を判定表に落とし込み、そこから生まれる3つのパターンについて、同じ前提条件の数値で仕訳例を並べます。企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用され、2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
借手の再リース判定表
借手の再リースの処理は、次の3つのステップで判定します。ステップ2で「含める」と判断すれば、再リースは当初のリースの一部として測定され、ステップ3の判断は不要になります。
| ステップ1 再リースに該当するか |
当初の契約に再リース条項があり、解約不能期間経過後に当初の月額リース料程度の年間リース料で1年間行われるか |
|---|---|
| ステップ2 再リース期間を 借手のリース期間に含めるか |
リース開始日に、再リースを行うことが合理的に確実かどうかを経済的インセンティブから判定する |
| ステップ3 含めない場合の処理 |
再リースを当初のリースとは独立したリースとして処理する特例を使うか、延長オプションの行使としてリース負債を見直すかを決める |
判定の結果、借手の処理は次の3パターンのいずれかになります。
| パターンA リース期間に含める |
リース開始日に再リース料もリース負債に含めて計上し、使用権資産は再リース期間まで含めて償却する |
|---|---|
| パターンB 含めない・特例を使う |
再リースを独立したリースとして扱い、短期リース等の簡便的な取扱いの要件を満たせば費用処理できる |
| パターンC 含めない・特例を使わない |
再リース期間は延長オプションの対象期間となり、再リースを行った時点でリース負債と使用権資産を見直す |
ステップ1:再リースに該当するかの確認
我が国の再リースの一般的な特徴は、再リースに関する条項が当初の契約において明示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後に、当初の月額リース料程度の年間リース料により行われる1年間のリースであることとされています(リースに関する会計基準 BC27項)。
多くの契約では該当性ははっきりしていますが、判断を要する場合もあるとされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC81項)。たとえば、再リース料が当初のリース料と大差ない水準で設定されている契約や、期間が1年を超える更新の取決めは、上の特徴から外れるため、名称が「再リース」であっても通常の延長オプションとして判定すべきでないか慎重に検討する必要があります。
ステップ2:借手のリース期間に含めるかの判定
借手のリース期間は、解約不能期間に、行使することが合理的に確実である延長オプションの対象期間と、行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。再リース期間もこの枠組みで判定し、合理的に確実かどうかは経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮して判断します(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。
再リースに当てはめると、実務で確認すべき要因は次のとおりです。
| 再リース期間の契約条件 | 再リース料が市場の賃料より著しく低いか、再リースしない場合の違約金や原状回復の負担があるか |
|---|---|
| 賃借設備の改良 | 原資産に多額の周辺設備やカスタマイズを加えており、入れ替えると損失が出るか |
| 解約に関連するコスト | 後継機の選定・データ移行・操業停止などの入替コストが大きいか |
| 事業における 原資産の重要性 |
生産ラインの専用機など、代替がききにくく事業継続に不可欠か |
| 行使条件 | 再リースの申込期限や貸手の承諾の要否など、借手だけで決められるか |
注意したいのは、「借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加える」という考え方は、新基準では貸手がリース期間を決める方法の選択肢の1つとして置かれている点です(リースに関する会計基準 第16項、第32項)。借手は「合理的に確実」の水準で判定するため、貸手側の判定や旧基準時代の社内規程をそのまま流用せず、借手の目線で判定し直す必要があります。
関連コラム新リース基準におけるリース期間の決定方法(借手・貸手)▸
ステップ3:含めない場合の特例の選択
借手は、リース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合(又は直近のリースの契約条件の変更の発効日に含めていない場合)、リース期間の見直しの定めにかかわらず、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第52項、リースに関する会計基準 第41項、第42項)。
この取扱いを採用しない場合、借手においては再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられるとされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC81項)。つまり、ステップ3はパターンBとパターンCの分かれ道です。
3パターンの仕訳例(同じ前提で比較)
以下はすべて当事務所で設定した作例です。3パターンの違いが数値で見えるよう、共通の前提条件を置きます。
| 原資産 | 検査用の測定機器(所有権移転条項・購入オプションなし) |
|---|---|
| 解約不能期間 | 4年(リース料は各年度末に年額1,200千円を後払い) |
| 再リース条項 | 4年経過後に1年間、年額100千円(年度末後払い)で再リースできる |
| 割引率 | 年3%(借手の追加借入利子率と仮定) |
パターンA:再リース期間をリース期間に含める場合
測定機器が自社製品の品質検査に不可欠で、入れ替えには検査ラインの再検証が必要になるため、リース開始日に再リースを行うことが合理的に確実と判定したケースです。借手のリース期間は5年となり、再リース料100千円も借手のリース料に含めて現在価値でリース負債を計上し、同額で使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項、第34項、第35項)。
リース開始日の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 4,547 | リース負債 | 4,547 |
所有権移転外のリースに係る使用権資産は、原則として残存価額ゼロで、借手のリース期間にわたって償却します(リースに関する会計基準 第38項)。この例では5年で償却するため年909千円、1年目の支払利息は4,547千円×3%で136千円です。再リースを見込む分だけ、当初4年間の償却費は後述のパターンB・C(年1,115千円)より小さくなります。
パターンB:含めず、独立したリースとして処理する場合
リース開始日に再リースは合理的に確実でないと判定し、リース負債4,461千円・使用権資産4,461千円を計上して4年で償却したケースです。4年経過後に再リースを行ったとき、第52項の特例を使えば、再リースは「期間1年・年額100千円の新しいリース」として扱います(リースに関する会計基準の適用指針 第52項)。
短期リースとは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいい、借手はこれについて使用権資産及びリース負債を計上せず、リース料を原則として定額法で費用計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第20項)。この短期リースの簡便的な取扱いを当該資産の区分で選択している場合、再リース期間の年度末の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払リース料 | 100 | 現金預金 | 100 |
短期リースの簡便的な取扱いは、原資産を自ら所有していたと仮定した場合の科目ごと又は性質・用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否かを選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。選択していない区分では、再リースについても使用権資産とリース負債を計上することになる点に注意が必要です。重要性が乏しいリースや新品時の価値が少額なリースの簡便的な取扱いを使える場合もあります(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。
関連コラム新リース基準における再リースの会計処理と特例の解説▸
パターンC:含めず、特例を使わない場合
パターンBと同じく当初はリース期間4年で計上しつつ、第52項の特例を採用しないケースです。この場合、再リースは延長オプションの行使として扱われます。延長オプションの行使等により借手の解約不能期間に変更が生じた結果、借手のリース期間を変更するときは、リース負債の計上額を見直します(リースに関する会計基準 第42項)。
見直しは、変更が生じた日にリース負債を変更後の借手のリース料の現在価値まで修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減する方法で行います(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。なお、この見直しで使う割引率について、適用指針は変更前・変更後のどちらを使うかを定めていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC79項)。作例では簡便のため年3%を使います。
4年経過時点で当初分の使用権資産・リース負債はいずれも残高ゼロになっているため、再リースを行った日の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 97 | リース負債 | 97 |
再リース期間の年度末には、支払利息3千円とリース負債97千円を合わせて100千円を支払い、使用権資産97千円を1年で償却します。当初のリースは借手のリース期間4年で開始しているため短期リースには該当せず、パターンBのように費用処理だけで済ませることはできません。
関連コラム契約条件変更なしのリース負債見直しと会計処理を徹底解説▸
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パターン選択で押さえたい実務ポイント
特例を使うかは契約管理の体制で決める
作例のとおり、再リース料が少額であればパターンBとCの損益への影響は小さく、差が出るのは事務負担です。パターンCでは再リースのたびに現在価値の計算と使用権資産の再計上が必要になり、再リース中の資産が多い企業ほど手間が膨らみます。第52項の特例は、旧基準の実務で定着していた取扱いを引き継ぎ、財務諸表作成者の追加的な負担を減らすために設けられたものです(リースに関する会計基準の適用指針 BC81項)。社内の固定資産台帳やリース管理システムが再リースをどう扱えるかを確かめたうえで、処理方針を決めておくと運用が安定します。
パターンAでも判定は見直し対象になる
パターンAで再リース期間を含めていても、借手の統制下にある重要な事象又は重要な状況が生じ、合理的に確実かどうかの判断に影響するときは、借手のリース期間を見直してリース負債を修正します(リースに関する会計基準 第41項)。たとえば検査工程の見直しで測定機器が不要になる計画を決めた場合などが考えられます。逆に、パターンCとして開始日に含めなかった場合でも、同じ事象が生じれば見直しの検討対象になります(第52項の特例を使うパターンBでは、再リースは独立したリースとして扱います)。
貸手の再リースは別の枠組み
貸手は、借手のリース期間と同様に決定する方法と、借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加える方法のいずれかを選択してリース期間を決めます(リースに関する会計基準 第32項)。貸手が再リース期間を含めない場合の再リース料は発生時に収益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第80項)。借手と貸手で判定の基準が異なるため、グループ内リースでは双方の処理を突き合わせておくことをおすすめします。
関連コラム新リース会計基準における貸手の終了時・解約時・再リースの実務解説▸
まとめ
- 借手の再リースは「借手のリース期間に含めるか」「含めない場合に第52項の特例を使うか」の2段階で判定し、パターンA・B・Cのいずれかになります。
- 含める場合(パターンA)は、再リース料もリース負債に含めて開始日に計上し、再リース期間まで含めて償却します。
- 含めずに特例を使う場合(パターンB)は、再リースを独立したリースとして扱い、短期リース等の簡便的な取扱いを選択していれば費用処理で済みます。
- 特例を使わない場合(パターンC)は、再リースを延長オプションの行使としてリース負債と使用権資産を見直します。
- 借手の判定は「合理的に確実」の水準で行い、貸手の「意思が明らか」という考え方とは区別します。
リース期間の判定や処理方針の決定は、契約内容や資産の使い方によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
再リース期間を借手のリース期間に含めるかは、いつ判定しますか。
リース開始日に、再リースを行うことが合理的に確実かどうかで判定します(リースに関する会計基準 第31項)。その後、借手の統制下にある重要な事象又は重要な状況が生じた場合には見直します(リースに関する会計基準 第41項)。
第52項の特例を使うと、再リースは必ずオフバランスになりますか。
必ずではありません。特例は再リースを独立したリースとして扱うもので、費用処理できるのは短期リースや少額リースの簡便的な取扱いの要件を満たし、その取扱いを選択している場合です(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項、第52項)。
特例を使わない場合、再リースはどのように扱われますか。
再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられ、再リースを行ったときにリース負債を変更後のリース料の現在価値まで修正し、修正額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項、BC81項)。
借手も「再リースする意思が明らか」かどうかで判定してよいですか。
借手は「合理的に確実」かどうかで判定します(リースに関する会計基準 第31項)。「意思が明らか」な場合の再リース期間を加える方法は、貸手がリース期間を決める際の選択肢として定められているものです(リースに関する会計基準 第32項)。
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