新リース会計基準と消費税【仕訳例】オンバランス後の仕入税額控除の時期
目次
- 結論|仕入税額控除の時期は法人税法上の区分で決まる
- 新リース会計基準で変わる会計処理と変わらない消費税の判定
- 借手はリースを使用権資産とリース負債で計上
- 消費税の判定は法人税法の取扱いの例による
- 法人税法上の賃貸借取引【仕訳例】支払うべき日に課税仕入れ
- 所有権移転外リース取引の一括控除【仕訳例】
- 引渡しを受けた日にリース料総額で控除
- 会計上の利息相当額と消費税の非課税利子は別物
- 帳簿にリース料総額を明らかにする
- オンバランス後の分割控除の扱い
- 短期リース・少額リースの簡便的な取扱いを使う場合
- 適用初年度に向けた消費税の確認手順
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 新リース会計基準を適用すると、消費税の計算方法は変わりますか。
- オペレーティング・リースを使用権資産に計上したら、引渡し時に一括控除しますか。
- リース負債の利息相当額は、消費税の非課税仕入れになりますか。
- 短期リースや少額リースは分割控除できますか。
- 新リース会計基準はいつから適用されますか。
新リース会計基準(企業会計基準第34号)を適用すると、借手はほぼすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。一方、消費税の仕入税額控除をいつ行うかは、原則として会計処理ではなく法人税法上の区分で決まります。オンバランスしたからといって、すべてのリースが引渡し時の一括控除に変わるわけではありません。
注意が要るのは、所有権移転外リース取引をこれまで賃貸借処理し、リース料の支払ごとに控除(分割控除)してきた会社です。分割控除は「賃借料等として経理している」ことを前提に認められてきた取扱いのため、オンバランス後もそのまま続けられるとは限りません。本記事では、仕入税額控除の時期の判定と、仮払消費税等を計上するタイミングを自社作例の仕訳で整理します。
結論|仕入税額控除の時期は法人税法上の区分で決まる
消費税では、リース取引が資産の譲渡・資産の貸付け・金銭の貸付けのいずれに当たるかを、原則として法人税(個人は所得税)の課税所得の計算における取扱いの例により判定します(消費税法基本通達 5-1-9)。このため、会計上はすべて使用権資産を計上していても、消費税の処理は法人税法上の区分ごとに分かれます。
| 法人税法上の賃貸借取引 (オペレーティング・リース相当) |
資産の貸付けとして、契約上リース料を支払うべき日の属する課税期間に課税仕入れとなる |
|---|---|
| 法人税法上のリース取引 (売買があったものとされる取引) |
リース資産の引渡しを受けた日の属する課税期間に、リース料総額で一括控除する |
| 所有権移転外リース取引で 賃借料等として経理している場合 |
リース料を支払うべき日の属する課税期間ごとの課税仕入れ(分割控除)も認められる |
表の2行目と3行目が、国税庁が示す一括控除の原則と分割控除の特例です(消費税法基本通達 11-3-2)。新リース会計基準の適用で影響を受けるのは主に3行目、つまり分割控除の前提となる「賃借料等として経理」の部分です。
新リース会計基準で変わる会計処理と変わらない消費税の判定
借手はリースを使用権資産とリース負債で計上
借手は、リース開始日にリース負債を計上し、これにリース開始日までに支払ったリース料や付随費用等を加減した額で使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。リース負債は、未払の借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値で算定するのが原則です(リースに関する会計基準 第34項)。利息相当額は借手のリース期間にわたり、原則として利息法で配分します(リースに関する会計基準 第36項)。
この処理は連結財務諸表だけでなく個別財務諸表にも適用されます。基準の開発過程では、法人税法など関連諸法規との利害調整も論点として審議されたうえで、連結・個別の両方に適用する結論が維持されています(リースに関する会計基準 第BC20項、第BC21項)。消費税の申告は個社単位で行うため、個別財務諸表の会計処理が変わる影響は、消費税の実務にも直接及びます。
適用時期は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。本記事を執筆している2026年10月時点では早期適用が可能な期間にあり、3月決算会社の強制適用は2028年3月期からとなります。
消費税の判定は法人税法の取扱いの例による
法人税法上の「リース取引」は、中途解約が禁止されているなどの解約不能の要件と、賃借人がリース資産からの経済的利益を実質的に享受し、使用に伴う費用を実質的に負担する要件をいずれも満たす資産の賃貸借をいいます。どちらかを満たさない資産の賃貸借は、法人税法上の賃貸借取引(いわゆるオペレーティング・リース取引)として扱われます(国税庁 タックスアンサー No.5705)。
消費税では、法人税法上の売買があったものとされるリース取引は、リース資産の引渡しの時に資産の譲渡があったことになり、その対価の額はリース期間中に収受すべきリース料の額の合計額となります(消費税法基本通達 5-1-9)。会計上のファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分が借手側でなくなっても、消費税ではこの法人税法上の区分を引き続き確認する必要があります。
法人税法上の賃貸借取引【仕訳例】支払うべき日に課税仕入れ
法人税法上の賃貸借取引は、消費税では資産の貸付けとして扱われます。課税仕入れを行った日は、資産の借受けをした日などをいい、その判定は資産の譲渡等の時期の取扱いに準じます(消費税法基本通達 11-3-1)。賃貸借契約に基づく使用料等の資産の譲渡等の時期は、契約又は慣習によりその支払を受けるべき日とされています(消費税法基本通達 9-1-20)。したがって、会計上オンバランスしても、仮払消費税等は各回のリース料を支払うべき日に計上するのが基本の形です。
作例の前提は次のとおりです。中途解約が可能な店舗設備の賃貸借(法人税法上の賃貸借取引)で、借手のリース期間3年、年額リース料1,200,000円(税抜・各年末後払い)、消費税率10%、割引率3%、税抜経理方式とします。リース開始日の使用権資産・リース負債は3,394,334円です(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。第1年度末の支払時の仕訳は次のとおりです(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 1,098,170 | 現金預金 | 1,320,000 |
| 支払利息 | 101,830 | ||
| 仮払消費税等 | 120,000 |
リース開始日には「使用権資産 3,394,334/リース負債 3,394,334」を計上するだけで、仮払消費税等は動きません。消費税の課税仕入れの対価は支払うべきリース料1,200,000円であり、会計上の元本・利息の内訳とは関係なく計算します。法人税でも、賃貸借取引の支払額は債務の確定した各事業年度に損金算入されるため、会計とのずれは申告調整で埋めることになります(国税庁 タックスアンサー No.5705)。
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所有権移転外リース取引の一括控除【仕訳例】
引渡しを受けた日にリース料総額で控除
法人税法上のリース取引による資産の譲受けが課税仕入れに該当する場合、課税仕入れを行った日はリース資産の引渡しを受けた日となり、その日の属する課税期間で仕入税額控除を行います(消費税法基本通達 11-3-2、国税庁 タックスアンサー No.6163)。所有権移転外ファイナンス・リース取引についても、リース資産の引渡しを受けた日に資産の譲受けがあったものとして一括で計算するのが原則です(国税庁 質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人における仕入控除税額の計算」)。
会計上の利息相当額と消費税の非課税利子は別物
見落としやすいのが利息の扱いです。リース契約でリース料のうち利子に相当する部分とそれ以外の部分が区分表示されている場合に限り、利子相当部分は非課税となり課税仕入れから外れます(国税庁 タックスアンサー No.6163)。新リース会計基準では利息相当額を見積って配分しますが、これは会計上の測定です。契約に利子の区分表示がなければ、消費税ではリース料総額が課税仕入れの対価になります。
作例の前提は次のとおりです。複合機の所有権移転外リース(法人税法上のリース取引)で、借手のリース期間5年、年額リース料600,000円(税抜・各年末後払い)、リース料総額3,000,000円、契約に利子の区分表示なし、消費税率10%、割引率3%、税抜経理方式とします。使用権資産・リース負債は2,747,824円です(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。消費税は貸手へ各回のリース料と合わせて支払う契約とし、リース開始日に一括控除分を未払金で受ける処理例を示します(単位:円)。
リース開始日(引渡し日)の仕訳
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 2,747,824 | リース負債 | 2,747,824 |
| 仮払消費税等 | 300,000 | 未払金 | 300,000 |
第1年度末の支払時は、リース負債517,565円・支払利息82,435円・未払金60,000円を借方に、現金預金660,000円を貸方に計上します。会計上の支払利息82,435円が生じても、消費税の課税仕入れの対価は3,000,000円のまま変わりません。仮払消費税等を計上する科目名や未払分の表示は会社の経理方針によるため、決算書の表示科目とあわせて決めておくと運用が安定します。
帳簿にリース料総額を明らかにする
会計処理の方法と消費税額の計算が異なる場合は、帳簿の摘要欄等にリース料総額を記載するか、会計上の計上額から課税仕入れの支払対価の額を算出する資料を作成して帳簿と合わせて保存するなどにより、リース料総額を明らかにする必要があります(国税庁 質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」)。作例のように使用権資産が2,747,824円、課税仕入れの対価が3,000,000円と食い違う契約では、この対応表が税務調査時の説明資料にもなります。
なお国税庁のインボイス制度に関するQ&Aでは、所有権移転外ファイナンス・リース取引の適格請求書はリース資産の引渡し時に取引の全額について交付されるものと考えられる、との考え方が示されています(国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問99)。契約時に受け取る請求書の保管先も、契約台帳と結び付けておきます。
オンバランス後の分割控除の扱い
分割控除は、所有権移転外リース取引について、賃借人が支払うべきリース料の額をその支払うべき日の属する課税期間の賃借料等として経理している場合に認められる取扱いです(消費税法基本通達 11-3-2)。国税庁の質疑応答事例も、令和7年度税制改正で延払基準が廃止された後について、賃借人において会計上賃貸借処理が可能な場合には引き続き分割控除して差し支えない、という書き方をしています(国税庁 質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」)。
新リース会計基準を適用して使用権資産と減価償却費・支払利息で経理するリースは、この「賃借料等として経理」の形に当たらないと解される可能性が高いと考えられます。ただし、新リース会計基準でオンバランスした所有権移転外リース取引について分割控除の可否を直接示した国税庁の公表は、2026年10月10日時点で確認できていません。実務では一括控除を前提に資金繰りと申告書の準備を進め、判断が分かれる契約は所轄税務署や顧問税理士に確認するのが安全です。
あわせて、分割控除の途中で控除の時期を変える処理には制限があります。国税庁の質疑応答事例では、リース期間3年の契約で初年度に1年分を控除し、2年目に残額をまとめて控除するといった処理は認められないとしています(国税庁 質疑応答事例「所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い」)。適用前から分割控除している既存契約を、適用初年度にどう扱うかも確認事項に入れておきます。
短期リース・少額リースの簡便的な取扱いを使う場合
借手は、借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まない短期リースや、一定の少額リースについて、使用権資産とリース負債を計上せず、リース料を原則として定額法により費用計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項、第20項、第22項)。この簡便的な取扱いでリース料を費用として経理していれば、分割控除の前提となる経理の形に沿うと考えられます。
作例の前提は、少額リースの簡便的な取扱いを適用した所有権移転外リース(法人税法上のリース取引)で、年額リース料240,000円(税抜)、消費税率10%、支払うべき日に分割控除する場合の支払時の仕訳です(単位:円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 支払リース料 | 240,000 | 現金預金 | 264,000 |
| 仮払消費税等 | 24,000 |
簡便的な取扱いは科目ごとやリース1件ごとなどの単位で選択できるため(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)、どの契約がオンバランス・費用処理のどちらになるかで、消費税の控除時期も契約ごとに分かれます。会計の選択と消費税の控除方法を同じ契約台帳で管理しておくことが、申告誤りを防ぐ近道です。
適用初年度に向けた消費税の確認手順
- リース契約を洗い出し、法人税法上のリース取引か賃貸借取引かを契約ごとに判定する(消費税法基本通達 5-1-9)。
- 法人税法上のリース取引のうち、所有権移転外リース取引で現在分割控除している契約を抽出する。
- 新リース会計基準でオンバランスする契約と、短期・少額の簡便的な取扱いで費用処理する契約を区分する。
- オンバランスする所有権移転外リース取引は一括控除を前提に、適用初年度の仕入税額控除額の増加と資金繰りへの影響を試算する。
- 契約に利子の区分表示があるかを確認し、非課税となる部分を課税仕入れから外す。
- 会計上の使用権資産とリース料総額の対応表を作り、帳簿と合わせて保存する。
- 既存契約の扱いなど判断が分かれる点は、所轄税務署・顧問税理士に事前に確認する。
法人税の申告調整は別表四・別表五(一)で行いますが、消費税は控除の時期そのものが変わりうる点で性質が異なります。両方を同じ契約台帳から作れるようにしておくと、決算・申告の作業が重複しません。
関連コラム新リース会計基準の申告調整|別表四・別表五(一)の記載と仕訳▸
まとめ
- 消費税の仕入税額控除の時期は、会計処理ではなく法人税法上のリース取引・賃貸借取引の区分で判定します。
- 法人税法上の賃貸借取引は、オンバランスしても各回のリース料を支払うべき日に課税仕入れとなります。
- 法人税法上のリース取引は、引渡しを受けた日にリース料総額で一括控除するのが原則です。
- 会計上の利息相当額とは別に、契約で区分表示された利子だけが消費税の非課税となります。
- 分割控除は賃借料等として経理していることが前提で、オンバランス後の扱いを直接示す国税庁の公表は2026年10月10日時点で確認できていません。
新リース会計基準は2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から強制適用されます。消費税の控除時期の変化は資金繰りにも影響するため、会計方針の決定と並行して確認を進めておくことをおすすめします。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 国税庁 No.6163 リース取引についての消費税の取扱いの概要
- 国税庁 No.5705 賃貸借取引(オペレーティング・リース取引)についての取扱いの概要
- 国税庁 消費税法基本通達 第1節 通則
- 国税庁 消費税法基本通達 第5款 利子、使用料等を対価とする資産の譲渡等の時期
- 国税庁 消費税法基本通達 第3節 課税仕入れ等の時期
- 国税庁 所有権移転外ファイナンス・リース取引の賃借人における仕入控除税額の計算
- 国税庁 所有権移転外ファイナンス・リース取引について賃借人が賃貸借処理した場合の取扱い
- 国税庁 インボイス制度に関するQ&A目次一覧
よくある質問
新リース会計基準を適用すると、消費税の計算方法は変わりますか。
消費税の判定は法人税法上の区分によるため、オンバランスしたことだけで課税仕入れの時期が変わるわけではありません(消費税法基本通達 5-1-9)。ただし、所有権移転外リース取引を賃借料等として経理して分割控除してきた場合は、その前提となる経理の形が変わるため、控除の時期を見直す必要が生じえます。
オペレーティング・リースを使用権資産に計上したら、引渡し時に一括控除しますか。
法人税法上の賃貸借取引に当たるリースは資産の貸付けとして扱われ、契約上リース料を支払うべき日の属する課税期間に課税仕入れとなります(消費税法基本通達 11-3-1、9-1-20)。会計上の使用権資産の計上額で一括控除するものではありません。
リース負債の利息相当額は、消費税の非課税仕入れになりますか。
非課税となるのは、リース契約で利子に相当する部分が区分表示されている場合のその部分です(国税庁 タックスアンサー No.6163)。会計上見積った利息相当額がそのまま非課税になるわけではありません。
短期リースや少額リースは分割控除できますか。
簡便的な取扱いでリース料を費用として経理する場合は、分割控除の前提である賃借料等としての経理の形に沿うと考えられます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項、消費税法基本通達 11-3-2)。個別の契約の扱いに迷う場合は、所轄税務署や顧問税理士に確認してください。
新リース会計基準はいつから適用されますか。
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




