分社型分割と分割型分割の違い|会社法・会計・税務の異同点
目次
- 会社法における会社分割の枠組み
- 会社法が定めるのは吸収分割と新設分割
- 対価は必ず分割会社に交付される
- 株主へ交付する部分に財源規制は及ばない
- 手続の異同点
- 株主総会決議と簡易分割・略式分割
- 債権者異議手続の対象範囲が変わる
- 会計処理の異同点
- 判定軸は移転した事業に関する投資が継続しているか
- 分社型分割で承継会社が子会社となる場合の仕訳
- 分割型分割における分割会社の会計処理
- 分割会社の株主に係る会計処理
- グループ内で行う場合は共通支配下の取引
- 税務上の取扱いの異同点
- 法人税法上の定義
- 引継ぎか譲渡か
- みなし配当は分割型分割にのみ生じる
- どちらを選ぶかの判断フレーム
- 実務上の落とし穴
- 会計基準の適用時期
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 分社型分割と分割型分割は、会社法のどの条文で区別されていますか。
- 分割型分割の剰余金の配当に分配可能額の制限はかかりますか。
- 分社型分割で移転損益は必ず認識されないのですか。
- 無対価で会社分割を行うと、どちらの類型になりますか。
- 分割型分割の株主側で交換損益は生じますか。
- 債権者への各別の催告は省略できますか。
分社型分割と分割型分割の異同点は、会社分割の対価である承継会社(新設会社)の株式を、分割会社が受け取るか、分割会社の株主が受け取るかという一点に集約されます。分割会社が受け取るものが分社型分割、分割会社の株主が受け取るものが分割型分割です(法人税法 第2条第12号の9、第12号の10)。
この違いは呼び名の問題にとどまりません。会社法上の手続、事業分離等に関する会計基準に基づく仕訳、法人税法上の資産負債の移転の扱いとみなし配当の有無まで、実務のほぼ全域に波及します。本記事では、公認会計士事務所プライムパートナーズが、条文と会計基準の条項に紐づけながら2類型の異同点を整理します。
| 分社型分割(物的分割) | 分割型分割(人的分割) |
|---|---|
| 承継会社の株式は分割会社が受け取る | 承継会社の株式は分割会社の株主が受け取る |
| 分割後、承継会社は分割会社の子会社になるのが典型 | 分割後、承継会社は分割会社の兄弟会社になるのが典型 |
| 分割会社の貸借対照表には子会社株式が残る | 分割会社の貸借対照表には対価が残らない |
| 適格の場合は帳簿価額による譲渡 | 適格の場合は帳簿価額による引継ぎ |
| みなし配当は生じない | 非適格の場合はみなし配当が生じる |
会社法における会社分割の枠組み
会社法が定めるのは吸収分割と新設分割
まず押さえるべきは、会社法には「分社型分割」「分割型分割」という類型が存在しないという点です。会社法が定める会社分割は、吸収分割と新設分割の2つだけです。
吸収分割とは、株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割後の他の会社に承継させることをいいます(会社法 第2条第29号)。新設分割とは、1又は2以上の株式会社又は合同会社がその事業に関して有する権利義務の全部又は一部を、分割により設立する会社に承継させることをいいます(会社法 第2条第30号)。吸収分割では吸収分割契約を締結し(会社法 第757条)、新設分割では新設分割計画を作成します(会社法 第762条)。
分社型・分割型という呼称は、あくまで法人税法上の分類(法人税法 第2条第12号の9、第12号の10)と、会計上の呼び方に由来するものです。会社法の手続を設計するときに「分割型分割の条文」を探しても見つからないのは、このためです。
対価は必ず分割会社に交付される
吸収分割契約では、承継会社が吸収分割に際して吸収分割会社に対して権利義務に代わる金銭等を交付するときは、その金銭等に関する事項を定めなければならないとされています(会社法 第758条第4号)。つまり会社法上、分割の対価は分割会社に交付されるのが原則であり、株主に直接交付する構成は用意されていません。
では分割型分割はどのように実現するのでしょうか。会社法は、吸収分割契約において、分割会社が効力発生日に①全部取得条項付種類株式の取得(会社法 第171条第1項)で取得対価として承継会社株式のみを交付する行為、又は②承継会社株式のみを配当財産とする剰余金の配当を行う旨を定めることができるとしています(会社法 第758条第8号)。新設分割では新設分割計画に同旨を定めます(会社法 第763条第1項第12号)。
したがって分割型分割の実体は、分社型分割と、その対価を株主へ交付する行為の組合せです。会計基準もこれを「分離元企業(分割会社)がある事業を分離先企業に移転し、移転に係る対価である承継会社又は新設会社の株式を事業分離日に直接、分割会社の株主に交付していると考えられる吸収分割又は新設分割」と説明し、これを「分割型の会社分割」と呼んでいます(事業分離等に関する会計基準 第9項(3))。
株主へ交付する部分に財源規制は及ばない
実務で見落とされやすいのが財源規制の扱いです。通常の剰余金の配当には分配可能額による制限がかかりますが、分割型分割として行われる株式の取得と剰余金の配当については、資本金等の額の減少に関する規定、分配可能額による制限、剰余金の配当に関する規定が適用されません(会社法 第792条、第812条)。分配可能額が乏しい会社でも分割型分割を実行できる根拠がここにあります。
手続の異同点
株主総会決議と簡易分割・略式分割
分割会社は、効力発生日の前日までに株主総会の決議によって吸収分割契約の承認を受けなければなりません(会社法 第783条第1項)。新設分割の場合は新設分割計画の承認が必要です(会社法 第804条第1項)。この点は分社型・分割型で共通です。
ただし、承継会社に承継させる資産の帳簿価額の合計額が、分割会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1(定款でこれを下回る割合を定めた場合はその割合)を超えない場合には、分割会社側の株主総会決議は不要です(会社法 第784条第2項、第805条)。いわゆる簡易分割です。また、承継会社が分割会社の特別支配会社である場合には略式分割として株主総会決議が不要となります(会社法 第784条第1項)。
「分社型分割なら株主総会は不要」という説明を見かけることがありますが、これは正確ではありません。決議の要否を決めるのは対価の帰属ではなく、移転する資産の規模と支配関係です。もっとも、分割型分割では株主構成そのものが変わるため、簡易分割の要件を満たす小規模な分割でも、実務上は株主への説明を尽くしたうえで総会に諮る判断をとることが少なくありません。
債権者異議手続の対象範囲が変わる
2類型で明確に扱いが分かれるのが債権者保護手続です。吸収分割の場合、原則として異議を述べることができるのは、吸収分割後に吸収分割会社に対して債務の履行を請求することができない債権者に限られます。ところが、分割型分割として第758条第8号の定めを置く場合には、吸収分割会社の債権者全員が異議を述べることができます(会社法 第789条第1項第2号)。新設分割についても同様の構造です(会社法 第810条第1項第2号)。
会社に残る債権者にとって、分割型分割は会社財産が株主へ流出する取引だからです。この差は、官報公告に加えて知れている債権者への各別の催告が必要となる範囲を大きく変え(会社法 第789条第2項)、スケジュールと事務負担に直結します。分割型分割を選ぶ場合は、催告先の洗い出しに要する期間を早い段階で見積もっておく必要があります。
| 株主総会決議 | 分社型・分割型とも原則必要。簡易分割・略式分割の要件を満たせば不要 |
|---|---|
| 債権者異議手続 の対象 |
分社型は分割会社に履行請求できなくなる債権者のみ。分割型は分割会社の債権者全員 |
| 分配可能額 による制限 |
分割型分割として行う株式の取得・剰余金の配当には適用されない |
| 異議申述期間 | 1か月を下ることができない(分社型・分割型で共通) |
会計処理の異同点
判定軸は移転した事業に関する投資が継続しているか
会計上の出発点は、分離元企業が事業分離日に投資の清算とみるか継続とみるかの判定です。移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には、受け取った対価となる財の時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額を移転損益として認識します。一方、投資がそのまま継続しているとみる場合には、移転損益を認識せず、受け取る資産の取得原価は移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します(事業分離等に関する会計基準 第10項)。
ここでいう株主資本相当額とは、移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による差額から、当該事業に係る評価・換算差額等及び新株予約権に相当する額を控除した額をいいます(事業分離等に関する会計基準 第10項(1))。子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合には、その株式を通じて移転した事業に関する事業投資を引き続き行っていると考えられるため、投資が継続しているとみなされます(事業分離等に関する会計基準 第10項(2))。
なお、事業分離に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理します(事業分離等に関する会計基準 第11項)。移転損益を認識する場合、その表示区分は原則として特別損益です(事業分離等に関する会計基準 第27項)。
分社型分割で承継会社が子会社となる場合の仕訳
事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を有しておらず、事業分離により分離先企業が新たに子会社となる場合、個別財務諸表上は移転損益を認識せず、受け取った子会社株式の取得原価は移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定します(事業分離等に関する会計基準 第17項(1))。
前提条件は次のとおりです(単位:千円)。分割会社P社が、諸資産1,000、諸負債400からなる事業を新設分割により新設会社S社へ移転し、対価としてS社株式のみを受け取ります。S社はP社の完全子会社となり、移転した事業に係る評価・換算差額等はありません。株主資本相当額は1,000-400=600です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 諸負債 | 400 | 諸資産 | 1,000 |
| 子会社株式 | 600 |
移転損益は生じず、貸借対照表には子会社株式600が残ります。連結財務諸表上は、分離元企業の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額を資本剰余金として処理します(事業分離等に関する会計基準 第17項(2))。
これに対し、分離先企業が子会社にも関連会社にもならない場合には、分離先企業の株式のみを対価としても、個別財務諸表上は原則として移転損益が認識されます(事業分離等に関する会計基準 第23項)。また、現金等の財産のみを対価として子会社や関連会社以外へ事業分離する場合も、受け取った現金等の財産を原則として時価により計上し、株主資本相当額との差額を移転損益として認識します(事業分離等に関する会計基準 第16項)。
分割型分割における分割会社の会計処理
分割型分割では、分割会社がいったん受け取った承継会社株式が同日に株主へ交付されるため、分割会社の貸借対照表には対価が残りません。会計処理としては、分離元企業の会計処理により投資の継続・清算を判定したうえで(事業分離等に関する会計基準 第10項)、株主へ交付する部分を全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当として処理することになります(会社法 第758条第8号、第763条第1項第12号)。
実務上の要点は、移転部分と株主への交付部分を分けて設計することです。分割契約・分割計画の対価の定めと、株主資本の減少項目の定めが整合していないと、登記や株主資本等変動計算書の記載でつまずきます。
分割会社の株主に係る会計処理
分割型分割特有の論点が、分割会社の株主側の会計処理です。分割型の会社分割により分割会社の株主が新設会社又は承継会社の株式のみを受け取った場合、当該株主は、これまで保有していた分割会社の株式の全部又は一部と実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主に係る会計処理に準じて処理します(事業分離等に関する会計基準 第49項)。
その際、被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に代えて、分割した部分に係る分割会社の株式の適正な帳簿価額を用います。これは、分割直前の分割会社の株式の適正な帳簿価額のうち、引き換えられたものとみなされる部分を合理的な方法によって按分し算定します(事業分離等に関する会計基準 第50項)。
前提条件は次のとおりです(単位:千円)。株主A社は、分割会社P社の株式をその他有価証券として適正な帳簿価額1,000で保有しています。P社が分割型分割を行い、A社は承継会社S社の株式のみを受け取りました。S社はA社の子会社にも関連会社にも該当せず、引き続きその他有価証券となります。合理的な按分の結果、引き換えられたとみなされる額は300と算定されました。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券(S社株式) | 300 | 投資有価証券(P社株式) | 300 |
子会社株式や関連会社株式以外の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、結合後企業も引き続き子会社や関連会社に該当しない場合には、個別財務諸表上、交換損益は認識されず、取得原価は引き換えられた株式の企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定されるためです(事業分離等に関する会計基準 第43項)。
分社型分割では、分割会社の株主は何も受け取らないため、株主側にこのような会計処理は生じません。ここが2類型の会計上の最大の異同点です。
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グループ内で行う場合は共通支配下の取引
親会社が子会社へ事業を移転するようなグループ内の会社分割は、共通支配下の取引として処理します。現金等の財産のみを受取対価とする事業分離において子会社へ事業分離する場合、分離元企業が受け取った現金等の財産は移転前に付された適正な帳簿価額により計上し、当該価額と移転した事業に係る株主資本相当額との差額を原則として移転損益として認識します(事業分離等に関する会計基準 第14項(1))。連結財務諸表上、この移転損益は未実現損益の消去に準じて処理されます(事業分離等に関する会計基準 第14項(2))。
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税務上の取扱いの異同点
法人税法上の定義
法人税法は分割を明確に2つに分類しています。分割型分割とは、分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産の全てが分割の日に分割法人の株主等に交付される分割、又は分割対価資産の全てが分割法人の株主等に直接に交付される分割をいいます(法人税法 第2条第12号の9イ)。分社型分割とは、分割により分割法人が交付を受ける分割対価資産が分割の日に分割法人の株主等に交付されない場合の当該分割をいいます(法人税法 第2条第12号の10イ)。
対価が交付されない無対価分割については、分割直前の株式保有関係で判定します。分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合、又は分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合は分割型分割(法人税法 第2条第12号の9ロ)、分割法人が分割承継法人の株式を保有している場合は分社型分割となります(法人税法 第2条第12号の10ロ)。無対価で行うグループ内再編では、この判定を誤ると税務処理全体がずれるため注意が必要です。
適格分割のうち分割型分割に該当するものが適格分割型分割(法人税法 第2条第12号の12)、分社型分割に該当するものが適格分社型分割(法人税法 第2条第12号の13)です。
引継ぎか譲渡か
内国法人が分割により分割承継法人に資産又は負債の移転をしたときは、原則として分割の時の価額による譲渡をしたものとして所得金額を計算します(法人税法 第62条第1項)。非適格分割は、分社型・分割型を問わず時価による譲渡損益が計上されるということです。
適格分割の場合、条文の建て付けが2類型で異なります。適格分割型分割では、分割承継法人に対して移転した資産及び負債の分割直前の帳簿価額による引継ぎをしたものとされます(法人税法 第62条の2第2項)。適格分社型分割では、分割直前の帳簿価額による譲渡をしたものとされます(法人税法 第62条の3第1項)。
用語が「引継ぎ」と「譲渡」で分かれているのは、分割型分割では分割法人の資本金等の額や利益積立金額が分割承継法人へ引き継がれる構造をとるためです。実務では、適格分割型分割の申告調整において、資産負債だけでなく資本金等の額と利益積立金額の按分計算が必要になります。
みなし配当は分割型分割にのみ生じる
2類型で最も税負担に影響するのがみなし配当です。法人の株主等である内国法人が、合併(適格合併を除く)、分割型分割(適格分割型分割を除く)、株式分配(適格株式分配を除く)、資本の払戻し等の事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その合計額が資本金等の額のうち交付の基因となった株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額は配当等の額とみなされます(法人税法 第24条第1項第2号)。
この列挙に分社型分割は含まれていません。分社型分割では株主に何も交付されないため、そもそもみなし配当が生じる余地がないのです。個人株主についても、分割型分割による資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当は、譲渡所得等の収入金額とみなされる資本の払戻しの範囲から除かれる形で整理されています(国税庁 No.1536)。
| 非適格の場合 の資産移転 |
分社型・分割型とも時価による譲渡(法人税法 第62条第1項) |
|---|---|
| 適格の場合 の資産移転 |
分社型は帳簿価額による譲渡、分割型は帳簿価額による引継ぎ |
| 株主の みなし配当 |
分社型は生じない。分割型は非適格の場合に生じる |
| 株主の 株式譲渡損益 |
分社型は生じない。分割型は非適格の場合に生じ得る |
なお、組織再編税制の適格要件そのものは、支配関係の有無に応じて求められる要件が段階的に変わる別論点です。分割の場合、金銭等不交付要件に加えて、分割型分割では交付株式が分割法人の株主の持株割合に応じて交付されることが求められる点にも留意してください(法人税法 第2条第12号の11)。
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どちらを選ぶかの判断フレーム
実務でスキームを設計するときは、次の順序で検討すると判断がぶれません。公認会計士事務所プライムパートナーズが組織再編の支援で用いている整理です。
- 分割後に承継会社を誰の傘下に置きたいかを最初に決める。分割会社の傘下に残すなら分社型分割、株主の直接保有に移すなら分割型分割が出発点になります。
- 分割会社の株主構成を承継会社に持ち込んでよいかを確認する。少数株主や関係の薄い株主がいる場合、分割型分割では承継会社にもその株主が入ります。
- 株主に課税が生じないかを検証する。分割型分割は非適格となるとみなし配当と株式譲渡損益が同時に生じ、株主に予期しない納税が発生します。
- 債権者への催告範囲を見積もる。分割型分割は分割会社の債権者全員が異議申述の対象となるため、催告事務の量とスケジュールを先に確認します。
- 移転する事業の規模を確認する。総資産額の5分の1以下であれば簡易分割の余地があり、総会日程の制約が緩みます。
- 会計上の移転損益の有無を試算する。分離先が子会社とならない設計では移転損益が特別損益に計上され、業績への影響が生じます。
この6項目のうち、1と2は経営判断、3から6は制約条件です。制約条件を先に潰してから経営判断を確定させると、契約書のドラフト段階での差戻しを避けられます。
実務上の落とし穴
第一に、無対価分割の類型判定です。グループ内再編ではコスト削減のため無対価で行う例が多いものの、分割直前の株式保有関係によって分社型分割にも分割型分割にもなり得ます(法人税法 第2条第12号の9ロ、第12号の10ロ)。株式保有関係を再編の直前に動かすと、意図しない類型に転ぶことがあります。
第二に、債権者催告の見落としです。分割型分割にすると催告対象が分割会社の債権者全員へ広がります(会社法 第789条第1項第2号)。取引先が多い会社では、名寄せと催告書の発送だけで数週間を要します。
第三に、注記の失念です。事業分離年度において、共通支配下の取引や共同支配企業の形成に該当しない重要な事業分離を行った場合には、事業分離の概要、実施した会計処理の概要、セグメント情報における区分の名称、当期の損益計算書に計上されている分離した事業に係る損益の概算額などを注記します(事業分離等に関する会計基準 第28項)。貸借対照表日後に完了した事業分離についても、重要な後発事象に該当する場合は注記が必要です(事業分離等に関する会計基準 第30項)。
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会計基準の適用時期
事業分離等に関する会計基準は2005年に公表され、2006年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(事業分離等に関する会計基準 第57項)。その後2008年に改正され、改正後の基準は2010年4月1日以後実施される事業分離等から適用されています(事業分離等に関する会計基準 第57-2項)。さらに2013年に改正され、2015年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用されています(事業分離等に関する会計基準 第57-4項(1))。2013年改正が現時点の最終改正です。
まとめ
分社型分割と分割型分割の異同点は、対価の帰属という一点から、会社法の手続、会計処理、税務処理へ順に波及します。共通するのは会社法上の分割手続そのもの(吸収分割・新設分割の枠組み、株主総会決議、簡易分割の要件)であり、分かれるのは債権者異議手続の対象範囲、株主側の会計処理、資産負債の移転が引継ぎか譲渡か、そしてみなし配当の有無です。
とりわけ分割型分割は、分割会社の債権者全員が異議申述の対象となる点と、非適格の場合に株主へみなし配当課税が及ぶ点が実行可能性を左右します。スキームを固める前に、この2点を必ず検証してください。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
お問い合わせはこちら参考文献
- e-Gov法令検索 会社法
- e-Gov法令検索 法人税法
- 国税庁 No.1536 株式等に係る譲渡所得等の収入金額とみなされる場合-法人の合併等、自己株式の取得等の場合-
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第7号 事業分離等に関する会計基準
よくある質問
分社型分割と分割型分割は、会社法のどの条文で区別されていますか。
会社法には分社型分割・分割型分割という区分がありません。会社法が定めるのは吸収分割(会社法 第2条第29号)と新設分割(会社法 第2条第30号)のみです。分社型・分割型は法人税法上の分類であり(法人税法 第2条第12号の9、第12号の10)、分割型は分割契約又は分割計画に全部取得条項付種類株式の取得又は剰余金の配当を行う旨を定めることで実現します(会社法 第758条第8号、第763条第1項第12号)。
分割型分割の剰余金の配当に分配可能額の制限はかかりますか。
かかりません。分割型分割として行う全部取得条項付種類株式の取得と剰余金の配当については、分配可能額による制限を含む剰余金の配当等に関する規定が適用されません(会社法 第792条、第812条)。分配可能額が少ない会社でも分割型分割を実行できるのはこのためです。
分社型分割で移転損益は必ず認識されないのですか。
いいえ。分離先企業が新たに子会社となる場合には、移転した事業に関する投資が継続しているとみなされ、移転損益は認識されません(事業分離等に関する会計基準 第17項(1))。一方、分離先企業が子会社にも関連会社にもならない場合には、株式のみを対価としても原則として移転損益が認識されます(事業分離等に関する会計基準 第23項)。現金等の財産のみを対価とする場合も、子会社や関連会社以外への分離では移転損益を認識します(事業分離等に関する会計基準 第16項)。
無対価で会社分割を行うと、どちらの類型になりますか。
分割直前の株式保有関係で決まります。分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合、又は分割法人が分割承継法人の株式を保有していない場合は分割型分割です(法人税法 第2条第12号の9ロ)。分割法人が分割承継法人の株式を保有している場合(分割承継法人が分割法人の発行済株式等の全部を保有している場合を除く)は分社型分割となります(法人税法 第2条第12号の10ロ)。
分割型分割の株主側で交換損益は生じますか。
分割会社の株主が承継会社の株式のみを受け取り、承継会社が引き続きその株主の子会社や関連会社に該当しない場合には、個別財務諸表上、交換損益は認識されず、取得原価は引き換えられた分割会社株式の適正な帳簿価額に基づいて算定します(事業分離等に関する会計基準 第43項、第49項、第50項)。ただし税務上は、非適格分割型分割であればみなし配当と株式譲渡損益が生じます(法人税法 第24条第1項第2号)。
債権者への各別の催告は省略できますか。
官報公告に加えて、定款の定めに従い日刊新聞紙又は電子公告により公告する場合には、各別の催告を省略できます。ただし、吸収分割をする場合の不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対する催告は省略できません(会社法 第789条第3項)。分割型分割では催告対象が分割会社の債権者全員に広がるため、公告方法の定款規定を事前に確認しておくと事務負担を抑えられます。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



