労働組合の設立費用【一覧表】資格審査・法人登記にかかる実費
目次
- 労働組合の設立費用の一覧表
- 法令で金額が決まっている費用と、かからない費用
- 結成の届出が要らない理由
- 資格審査と資格証明書に手数料の定めはない
- 法人登記に登録免許税が課されない根拠
- 登記事項証明書の手数料
- 組合ごとに金額が変わる費用
- 結成大会と規約づくりの実費
- 司法書士・弁護士など専門家への報酬
- 会計監査人の報酬が発生する時期
- 設立費用を会社に負担してもらう場合の注意点
- 法人化した後に生じる費用と届出
- 設立費用を見積もる手順
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 労働組合を作るのに費用はいくらかかりますか
- 労働組合の法人登記に登録免許税はかかりますか
- 労働委員会の資格審査に手数料はかかりますか
- 会計監査の費用は設立時に必要ですか
労働組合の設立にかかる費用のうち、法令で金額が決まっているものはごくわずかです。結成に届出は不要で、労働委員会の資格審査にも手数料の定めはなく、法人登記をしても登録免許税は課されません。法令上の金額として確実に出てくるのは、登記後に登記事項証明書を取るときの手数料(1通600円)くらいです。
実際に費用の大半を占めるのは、結成大会の会場費や印刷費といった組合の自前の支出と、司法書士や公認会計士など外部の専門家に払う報酬です。こちらは法令に金額の定めがなく、組合の規模や依頼する範囲によって変わります。この記事では、設立費用を費目ごとの一覧表にまとめ、「法令で金額が決まっている費用」と「組合ごとに変わる費用」を分けて、条文を根拠に整理します。手続の順序そのものは関連コラムに譲り、ここでは費用だけを扱います。
労働組合の設立費用の一覧表
結成から資格審査、法人登記までに出てくる費目を並べると、次のようになります。右の列には、金額が法令で決まっているかどうかと、その根拠を書いています。
| 費目 | 金額と根拠 |
|---|---|
| 結成の届出 | 届出そのものが不要のため、手数料はかからない |
| 結成大会の会場費・資料の印刷費 | 法令に定めはない。組合員数や会場の確保の仕方で変わる |
| 規約の作成 | 自分たちで作成すれば外部への支払いはない。専門家に依頼する場合の報酬は依頼先によって異なる |
| 資格審査の申請 | 労働組合法・同法施行令・労働委員会規則に手数料の定めはない |
| 資格証明書の交付 | 同上。適格と決定されれば交付される |
| 設立登記の登録免許税 | 課されない。登録免許税法の別表第一に労働組合の登記が掲げられていないため |
| 登記申請の代理 | 組合の代表者が自分で申請すれば外部への支払いはない。司法書士に依頼する場合の報酬は依頼先によって異なる |
| 登記事項証明書 | 1通600円(登記所で交付を受ける場合。50枚を超えるときは加算あり) |
| 会計監査人の報酬 | 法令に金額の定めはなく、会計の規模や会計単位の数で変わる。支払いが生じるのは初回の会計報告の時期 |
法人化しない組合であれば、資格審査と登記に関わる費目はそもそも発生しません。法人登記まで進める場合でも、行政に納める手数料や税は登記事項証明書の手数料程度にとどまり、費用を左右するのは外部の専門家に何を頼むかです。以下、費目ごとに根拠を確認します。
法令で金額が決まっている費用と、かからない費用
結成の届出が要らない理由
労働組合は自由に設立でき、設立したことをどこかへ届け出る必要はありません(中央労働委員会「労働組合の資格審査について」)。届出の手続がない以上、結成の段階で行政に納める手数料も生じません。
ただし、労働組合法に規定する手続に参与し、同法の救済を受けるには、労働委員会に証拠を提出して、第2条と第5条第2項の規定に適合することを立証しなければなりません(労働組合法 第5条第1項)。設立にお金はかからなくても、法の保護を受ける場面では資格審査が必要になる、という構造です。
資格審査と資格証明書に手数料の定めはない
資格審査は、労働組合が法人登記のための資格証明書の交付を求めようとする場合などに行われます(労働委員会規則 第22条第2号)。労働委員会は、証明の申請があり、その労働組合が法の規定に適合すると認めたときは、遅滞なく証明書を交付しなければならないとされています(労働組合法施行令 第2条第2項)。資格証明書に記載する事項も規則で決まっています(労働委員会規則 第26条)。
これらの手続を定めた労働組合法・同法施行令・労働委員会規則のいずれにも、申請や証明書の交付について手数料を納める旨の規定は置かれていません。資格審査で組合側に生じるのは、申請書と立証資料をそろえる手間と、その準備を外部に頼んだ場合の報酬です。
注意したいのは、資格審査が一度きりではない点です。法人登記のための資格証明書の交付を受ける場合などは、過去に適格の決定を受けたことがある組合でも、その都度審査を受ける必要があります(中央労働委員会「労働組合の資格審査について」)。手数料はかからなくても、準備の手間は場面ごとに発生します。
法人登記に登録免許税が課されない根拠
登録免許税は、別表第一に掲げる登記等について課される税です(登録免許税法 第2条)。別表第一には、会社の商業登記や一般社団法人・一般財団法人の登記などが掲げられていますが(登録免許税法 別表第一 第24号)、労働組合の登記を掲げた号はありません。そのため、労働組合の設立登記には登録免許税が課されません。
比較のために挙げると、株式会社の設立登記の登録免許税は資本金の額の1,000分の7で、計算した額が15万円に満たないときは1件につき15万円です(国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」)。会社を作るときには必ず出てくるこの費目が、労働組合の法人化では生じません。設立後の代表者交代などで行う変更登記も、同じ理由で登録免許税の対象になりません。
なお、労働組合の登記は、労働組合法施行令の定めによって行われます(労働組合法 第11条第2項、労働組合法施行令 第3条、第7条、第8条)。名前の似た労働者協同組合は組合等登記令の別表に掲げられ、同令の定めで登記する別の法人です(組合等登記令 第1条、別表)。労働者協同組合の設立手続や費用の情報を労働組合のものと取り違えないよう注意してください。
登記事項証明書の手数料
法人である労働組合の登記には、商業登記法の登記事項証明書の交付に関する規定が準用されます(労働組合法施行令 第11条)。登記事項証明書は手数料を納付して交付を請求するもので、手数料の額は政令で定め、収入印紙で納付します(商業登記法 第10条第1項、第13条)。
その政令である登記手数料令では、登記事項証明書の交付の手数料は1通につき600円で、1通の枚数が50枚を超えるときは50枚までごとに100円が加算されます(登記手数料令 第2条第1項)。登記後に法人としての登記内容を外部へ示す必要が出たときに、通数分の費用がかかる費目です。
関連コラム労働組合の法人登記の手順|資格審査と登記事項・必要書類▸
組合ごとに金額が変わる費用
結成大会と規約づくりの実費
結成大会では、規約の制定、役員の選出、活動方針と予算の決定を行うのが一般的です。会場費、議案書や規約の印刷費、組合員への連絡にかかる費用などが生じますが、法令に金額の定めはありません。社内の会議室を借りられるか、組合員が何人いるかで大きく変わります。
規約は自分たちで作ることもできます。ただし、資格審査を受けるなら、規約には名称、主たる事務所の所在地、組合員の平等な参与の権利、人種・宗教・性別などによる資格はく奪の禁止、役員の選挙、総会の開催、会計報告、同盟罷業、規約の改正に関する規定を含める必要があります(労働組合法 第5条第2項)。規約の不備で補正を求められると、手続が長引きます(労働委員会規則 第24条)。専門家に規約の確認を頼むかどうかは、この手戻りの見込みとの比較で決めるのが現実的です。
関連コラム労働組合の設立手続き|結成から資格審査・法人登記までの流れ▸
司法書士・弁護士など専門家への報酬
登記の申請は組合の代表者が自分で行うこともでき、その場合は外部への支払いはありません。登記申請書には、規約、労働委員会の証明書、代表者の資格を証する書面を添付します(労働組合法施行令 第8条)。書類の作成や申請を司法書士に依頼したり、結成の進め方を弁護士に相談したりする場合は報酬がかかりますが、公的な基準額は示されておらず、依頼先と依頼の範囲によって異なります。
見積りを比べるときは、総額だけでなく「どこからどこまでを頼むのか」をそろえることが大切です。規約の確認だけなのか、資格審査の申請書の作成まで含むのか、登記申請の代理まで含むのかで、金額の意味が変わります。
会計監査人の報酬が発生する時期
設立費用を見積もるときに見落としやすいのが、会計監査人の報酬です。労働組合の規約には、すべての財源と使途、主要な寄附者の氏名、現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨の規定を含めなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。
この条文が規約に求めているのは、証明書付きの会計報告を毎年公表する仕組みです。結成した時点では締めるべき会計年度がまだないため、会計監査人への報酬が実際に生じるのは、通常は最初の会計年度を終えて会計報告を作る時期になります。つまり、設立時の支出というより、初年度の予算に組み込んでおくべき費用です。設立直後に資格審査を受ける場合に会計面でどのような立証資料が求められるかは、申請先の労働委員会に事前に確認しておくと確実です。
報酬の額は法令に定めがなく、会計の規模、本部・支部などの会計単位の数、帳簿や証憑の整い方で変わります。結成の段階から会計帳簿と証憑の保存方法を決めておくと、初回の監査で確認に要する手間が減り、報酬を抑えることにもつながります。
関連コラム労働組合の会計監査の報酬相場|費用の決まり方と抑えるポイント▸
労働組合の会計監査は公認会計士へ
全国対応・オンライン完結|公認会計士事務所プライムパートナーズ
無料見積り・ご相談はこちら
設立費用を会社に負担してもらう場合の注意点
費用の話でもう一つ押さえておきたいのが、会社(使用者)に費用を出してもらうことの扱いです。団体の運営のための経費の支出について使用者の経理上の援助を受ける団体は、労働組合法上の労働組合に当たらないとされています(労働組合法 第2条第2号)。使用者の側も、労働組合の運営のための経費の支払について経理上の援助を与えることが禁止されています(労働組合法 第7条第3号)。
例外として認められているのは、労働時間中に時間や賃金を失わずに使用者と協議・交渉することを許すこと、福利その他の基金への使用者の寄附、最小限の広さの事務所の供与です(労働組合法 第2条第2号ただし書、第7条第3号ただし書)。社内の一室を組合事務所として借りることは例外の範囲で考えられますが、結成大会の費用や外部専門家への報酬を会社に負担してもらう形は、経理上の援助に当たるおそれがあります。
経理上の援助に当たると、資格審査で自主性の要件を満たさないと判断されかねません。設立費用は組合費や組合員の拠出でまかなうことを前提に、会社との費用負担の線引きを結成の段階で確認しておくのが安全です。
法人化した後に生じる費用と届出
設立の時点では費用がかからなくても、法人化した後に生じる負担があります。設立費用と一緒に把握しておくと、初年度の予算が立てやすくなります。
| 場面 | 費用・手続の内容 |
|---|---|
| 登記事項の変更 | 代表者の交代などで登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記が必要。登録免許税は課されない |
| 会館など不動産の登記 | 不動産の登記は登録免許税の課税対象で、労働組合を非課税とする規定はない |
| 組合が発行する領収書 | 法人である労働組合が作成する受取書は、営業に関しないものとして印紙税が非課税 |
| 専従職員などへの給与の支払い | 給与の支払事務を取り扱う事務所を設けたときは、1か月以内に税務署へ開設の届出が必要 |
変更の登記の期限は労働組合法施行令に定めがあります(労働組合法施行令 第5条)。不動産の登記は登録免許税の課税対象として別表第一に掲げられており(登録免許税法 第2条、別表第一 第1号)、登録免許税法には労働組合を非課税とする規定が置かれていないため、組合名義で会館を取得すれば通常どおり課税されます。
領収書の印紙税については、利益金や剰余金の配当・分配ができない法人として、法人である労働組合が作成する受取書は非課税と案内されています(国税庁「営業に関しない受取書(作成者)」)。給与支払事務所等の開設の届出は、開設の事実があった日から1か月以内に、所在地の所轄税務署へ提出します(国税庁「A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」)。
関連コラム労働組合の法人格【比較表】財産名義・税務・登記の違い▸
設立費用を見積もる手順
ここまでの内容を、結成準備の会議でそのまま使える手順にまとめます。
- 法人化するかを先に決める: 法人化しないなら、資格審査と登記に関わる費目は外して見積もれます。
- 法令で金額が決まる費目を確定する: 届出・資格審査・登録免許税はゼロ、登記事項証明書は必要な通数×600円で計上します。
- 自前でまかなう実費を積み上げる: 結成大会の会場費、議案書・規約の印刷費、連絡費を組合員数から見積もります。
- 外部に頼む範囲を決めて見積りを取る: 規約の確認、資格審査の書類作成、登記申請の代理のどこまでを頼むかをそろえて比較します。
- 初年度予算に会計監査の報酬を入れる: 設立時ではなく最初の会計報告の時期に生じる費用として、会計単位の数と帳簿の整備方針を決めたうえで見積もります。
- 会社に負担を求める費目がないか確認する: 事務所の供与など例外に当たるもの以外は、組合の資金でまかなう前提にします。
まとめ
労働組合の設立では、結成の届出、資格審査、資格証明書の交付に手数料の定めはなく、法人登記にも登録免許税は課されません。法令で金額が決まっている費用は、登記事項証明書の手数料(1通600円)程度です。
費用の大半は、結成大会などの自前の実費と、司法書士や公認会計士など外部の専門家への報酬です。とくに会計監査人の報酬は、設立時ではなく最初の会計報告の時期に生じるため、初年度の予算に組み込んでおく必要があります。また、設立費用を会社に負担してもらう形は経理上の援助に当たるおそれがあるため、組合の資金でまかなうのが原則です。依頼範囲や会計の規模によって費用は変わりますので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
労働組合監査の無料見積り・ご相談はこちら参考文献
- e-Gov法令検索 労働組合法
- e-Gov法令検索 労働組合法施行令
- e-Gov法令検索 労働委員会規則
- e-Gov法令検索 登録免許税法
- e-Gov法令検索 組合等登記令
- e-Gov法令検索 商業登記法
- e-Gov法令検索 登記手数料令
- 中央労働委員会 労働組合の資格審査について
- 国税庁 No.7191 登録免許税の税額表
- 国税庁 営業に関しない受取書(作成者)
- 国税庁 A2-7 給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
よくある質問
労働組合を作るのに費用はいくらかかりますか
結成の届出は不要で、資格審査にも手数料の定めはなく、法人登記をしても登録免許税は課されません。法令で金額が決まっているのは、登記後に取る登記事項証明書の手数料(1通600円)程度です(登記手数料令 第2条第1項)。費用の大半は結成大会などの実費と、外部の専門家に依頼する場合の報酬で、組合の規模や依頼範囲によって変わります。
労働組合の法人登記に登録免許税はかかりますか
かかりません。登録免許税は別表第一に掲げる登記等に課される税で(登録免許税法 第2条)、別表第一には労働組合の登記を掲げた号がないためです。代表者の交代などで行う変更登記も同様です。ただし、組合名義で不動産を取得したときの不動産の登記は課税対象です。
労働委員会の資格審査に手数料はかかりますか
労働組合法、同法施行令、労働委員会規則のいずれにも、資格審査の申請や資格証明書の交付について手数料を定めた規定はありません。組合側に生じるのは、申請書と立証資料をそろえる手間と、その準備を外部に依頼した場合の報酬です。
会計監査の費用は設立時に必要ですか
規約には、会計報告を職業的に資格がある会計監査人の証明書とともに少なくとも毎年1回公表する旨の規定を含める必要があります(労働組合法 第5条第2項第7号)。報酬が実際に生じるのは、通常は最初の会計年度を終えて会計報告を作る時期です。設立費用とは分けて、初年度の予算に組み込んでおくのが実務的です。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



