03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

税効果会計における納税主体と法人税等の定義を徹底解説

目次
  1. 納税主体の定義と基準設定の背景
  2. 納税主体の定義とは
  3. 納税主体の基準設定の背景
  4. 法人税等の定義と税効果会計の対象範囲
  5. 法人税等の定義
  6. 税効果会計の対象外となる税金
  7. 法人税等の基準設定の背景
  8. 具体的なケーススタディ
  9. ケース1:納税主体の違いによる相殺表示の禁止
  10. ケース2:法人税等の対象判定と法定実効税率の計算
  11. まとめ
  12. 税効果会計の納税主体と法人税等に関するよくある質問まとめ

税効果会計の実務において、納税主体と法人税等の定義を正確に理解することは極めて重要です。これらの概念は、繰延税金資産および繰延税金負債の貸借対照表上の表示方法や、法定実効税率の算定に直接的な影響を与えます。本記事では、「税効果会計に係る会計基準」および「企業会計基準適用指針第28号」に基づき、それぞれの定義や基準設定の背景、実務上の具体的なケーススタディを交えて詳細に解説いたします。

納税主体の定義と基準設定の背景

納税主体の定義とは

税効果会計における納税主体とは、原則として納税申告書の作成主体を指します。通常の企業活動においては、それぞれの企業(単体の法人)がひとつの独立した納税主体として取り扱われます。この概念は、税効果会計を適用する際の計算単位や表示方法の基礎となる重要な要素です。(企業会計基準適用指針第28号 第4項(1))

項目 定義内容
納税主体 納税申告書の作成主体(通常は個々の単体法人)(企業会計基準適用指針第28号 第4項(1))

納税主体の基準設定の背景

納税主体の概念を明確にする最大の理由は、繰延税金資産と繰延税金負債の相殺表示の可否を判定するためです。企業会計の原則として資産と負債は総額表示が求められますが、将来の同一の税務当局に対する税金の支払額を調整する性質を持つため、同一納税主体に帰属する場合に限り相殺表示が義務付けられています。親会社と子会社のように異なる納税主体間で発生した繰延税金資産と繰延税金負債は、連結財務諸表上であっても相殺せずに両建てで表示する必要があります。(企業会計基準第28号 第2項(2))

納税主体の状況 貸借対照表での表示方法
同一納税主体 繰延税金資産と繰延税金負債を相殺して表示(企業会計基準第28号 第2項(2))
異なる納税主体 相殺せずに両建てで総額表示(企業会計基準第28号 第2項(2))

法人税等の定義と税効果会計の対象範囲

法人税等の定義

税効果会計の対象となる法人税等とは、法人税その他「利益に関連する金額を課税標準とする税金」と定義されています。具体的には、国税である法人税に加え、地方税である都道府県民税、市町村民税(住民税の法人税割)、および利益に関連する金額を課税標準とする事業税(所得割)が含まれます。これらのみが税効果会計の適用対象となります。(企業会計審議会基準 第一、企業会計基準適用指針第28号 第4項(2))

税効果会計の対象外となる税金

企業の利益(所得)の増減に関係なく課税される税金は、税効果会計の対象外となり、法定実効税率の算定基礎にも含まれません。具体的には、外形標準課税における事業税の付加価値割および資本割や、赤字であっても定額(例:資本金等の額が1,000万円以下かつ従業員数50人以下の場合の均等割7万円など)で課される住民税の均等割が該当します。また、特定同族会社において留保金額が留保控除額(定額基準額2,000万円など)を超える場合に追加課税される留保金課税も、通常の利益に対する課税ではないため対象外です。(企業会計基準適用指針第28号 第91項)

区分 具体的な税金の種類
対象となる税金 法人税、住民税(法人税割)、事業税(所得割)(企業会計審議会基準 注解(注1))
対象外となる税金 事業税(付加価値割・資本割)、住民税(均等割)、特定同族会社の留保金課税(企業会計基準適用指針第28号 第91項)

法人税等の基準設定の背景

税効果会計の主たる目的は、損益計算書上の税引前当期純利益(会計上の利益)と法人税等の負担額を合理的に対応させることにあります。利益の増減に連動する法人税や事業税の所得割については、会計と税務の認識時点のズレ(一時差異)を調整して期間配分を行う理論的根拠があります。一方で、利益に連動しない住民税の均等割や事業税の資本割などは、会計上の利益との対応関係が存在しないため、税効果会計を用いて調整を行う意味がありません。この「利益と税金の対応関係の有無」が、対象範囲を厳密に定義する背景となっています。(企業会計審議会基準 第一)

具体的なケーススタディ

ケース1:納税主体の違いによる相殺表示の禁止

親会社であるA社と子会社であるB社は、それぞれ独立して納税申告を行う別個の納税主体です。当期の個別決算において、A社が繰延税金資産を100万円計上し、B社が繰延税金負債を40万円計上したとします。この場合、連結財務諸表を作成するにあたり、A社の資産100万円とB社の負債40万円を相殺して「繰延税金資産60万円」として表示することは認められません。A社とB社は異なる納税主体であり、税務上、A社の税金減少効果をB社の税金支払いに直接充当することは不可能なためです。したがって、連結貸借対照表には「繰延税金資産100万円」および「繰延税金負債40万円」をそれぞれ総額で表示する必要があります。(企業会計基準適用指針第28号 第4項(1)、企業会計基準第28号 第2項(2))

ケース2:法人税等の対象判定と法定実効税率の計算

A社が当期決算において、税効果会計に用いる法定実効税率を算定するケースを想定します。A社に課される税金として、①法人税、②住民税(法人税割)、③住民税(均等割)、④事業税(所得割)、⑤事業税(付加価値割・資本割)が存在します。法定実効税率の計算においては、これらすべての税率を合算するわけではありません。「利益に関連する金額を課税標準とする税金」の要件を満たす①法人税、②住民税(法人税割)、④事業税(所得割)の税率のみを抽出し、算定式に組み込みます。利益に連動しない③住民税(均等割)や⑤事業税(付加価値割・資本割)は対象外となるため計算には含めず、発生した事業年度の費用(租税公課等)として全額を損金処理します。(企業会計審議会基準 注解(注1)、企業会計基準適用指針第28号 第4項(2)、企業会計基準適用指針第28号 第91項)

まとめ

税効果会計を適切に適用するためには、納税主体と法人税等の定義を正確に把握することが不可欠です。同一納税主体の要件を満たすか否かで繰延税金資産と繰延税金負債の相殺表示の可否が決まり、利益に関連する税金か否かで法定実効税率の算定対象が変わります。実務においては、対象となる税金の種類や納税申告の単位を慎重に確認し、会計基準に基づいた正確な処理を行うことが求められます。

税効果会計の納税主体と法人税等に関するよくある質問まとめ

Q.納税主体の定義は何ですか?

A.納税主体とは、納税申告書の作成主体を指します。通常は、単体の法人がひとつの納税主体として扱われます。(企業会計基準適用指針第28号 第4項(1))

Q.親会社と子会社の繰延税金資産・負債は相殺できますか?

A.親会社と子会社は異なる納税主体であるため、原則として繰延税金資産と繰延税金負債を相殺して表示することはできず、両建てで表示する必要があります。(企業会計基準第28号 第2項(2))

Q.税効果会計の対象となる法人税等には何が含まれますか?

A.利益に関連する金額を課税標準とする税金であり、具体的には法人税、住民税の法人税割、事業税の所得割が含まれます。(企業会計審議会基準 注解(注1))

Q.住民税の均等割は税効果会計の対象になりますか?

A.住民税の均等割は利益の増減に関係なく定額で課される税金であるため、税効果会計の対象外となり、法定実効税率の計算にも含まれません。(企業会計基準適用指針第28号 第91項)

Q.事業税の付加価値割や資本割は法定実効税率に含めますか?

A.事業税の付加価値割や資本割は利益以外のものを課税標準とする税金であるため、法定実効税率の計算には含めず、発生時の費用として処理します。(企業会計基準適用指針第28号 第91項)

Q.なぜ利益に関連する税金のみが対象なのですか?

A.税効果会計の目的は、会計上の利益(税引前当期純利益)と税金負担額を合理的に対応させることにあるため、利益に連動しない税金は調整の理論的根拠がないからです。(企業会計審議会基準 第一)

実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

お問い合わせはこちら

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史