03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

EPS算定における当期純利益と優先配当額の控除ルール

目次
  1. 普通株式に係る当期純利益の算定構造(分子の原則)
  2. EPSの分子となる利益額の定義
  3. 控除対象となる普通株主に帰属しない金額
  4. 優先配当額の算定と控除ルール
  5. 累積型配当優先株式における要支払額の控除
  6. 非累積型配当優先株式における基準日ベースの控除
  7. その他の控除項目と連結上の調整
  8. 配当優先株式に係る消却および償還差額
  9. 参加可能額の控除要件と算定方法
  10. 連結財務諸表における親会社持分の調整
  11. 控除してはならない項目とその背景
  12. 成果の分配に該当しない資本取引等の除外
  13. 控除不可となる具体的な項目
  14. 実務ケーススタディ:優先株式発行企業のEPS算定
  15. 複合的な優先株式を発行する企業の設定
  16. 累積型および非累積型株式の控除額算定プロセス
  17. 最終的な普通株式に係る当期純利益の確定
  18. まとめ
  19. 1株当たり当期純利益算定のよくある質問まとめ

企業の収益力を示す重要な指標である1株当たり当期純利益(EPS)の算定において、分子となる当期純利益から何を控除すべきかは実務上非常に重要です。本記事では、「1株当たり当期純利益に関する会計基準」および「同適用指針」に基づき、普通株式に係る当期純利益の正確な算定方法と、優先配当額等の控除ルールについて具体的に解説いたします。

普通株式に係る当期純利益の算定構造(分子の原則)

EPSの分子となる利益額の定義

1株当たり当期純利益を算定する際の分子となる普通株式に係る当期純利益は、損益計算書に計上された当期純利益から、剰余金の配当に関連する項目で「普通株主に帰属しない金額」を差し引いて算定します。これにより、普通株主にとっての真の事業成果を明らかにします。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第14項

控除対象となる普通株主に帰属しない金額

普通株主に帰属しない金額とは、優先株主など普通株主以外の株主に分配されるべき金額を指します。具体的には以下の3項目が控除の対象となります。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第15項、1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針 第11項

控除項目 具体的な内容
優先配当額 優先株式に対して支払われるべき配当額
消却(償還)差額 配当優先株式を消却または償還した際に生じる差額
参加可能額 普通株主以外の株主が配当後に参加できる利益額

優先配当額の算定と控除ルール

累積型配当優先株式における要支払額の控除

累積型配当優先株式の場合、当期の純利益から控除するのは、その会計期間に係る要支払額です。当期に実際の配当が行われず不足額が翌期に繰り越される場合であっても、本来支払われるべき額を当期から控除します。一方で、過去の未払分を当期にまとめて支払う場合、その過年度の不足分は当期の利益からは控除しません。これは過年度の算定時にすでに控除されており、二重控除を防ぐためです。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第16項、第46項

配当の状況 当期純利益からの控除処理
当期の要支払額 実際の支払有無にかかわらず当期純利益から全額控除する
過年度の未払不足額 過去の算定時に反映済みのため当期は一切控除しない

非累積型配当優先株式における基準日ベースの控除

非累積型配当優先株式では、当該会計期間において基準日が属する剰余金の配当を基礎として算定した額を控除します。期末日を基準日とする配当決議が翌期の株主総会等で行われる場合であっても、決議日ではなく基準日が属する当期の純利益から控除します。財務諸表作成時に決議が未了の場合は、会社が提案予定の議案に基づいて算定します。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第16項、第47項

その他の控除項目と連結上の調整

配当優先株式に係る消却および償還差額

配当優先株式を消却または償還した際に生じる償還差額は、負債の利息と同様に優先配当額の大小に依存する性格を持つため、当期純利益から控除します。一方で、償還差損が生じた場合は普通株主にも帰属する資本取引とみなされるため、当期純利益からの控除は行いません。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針 第11項、第49項

参加可能額の控除要件と算定方法

非転換型の参加型株式において、優先配当後に普通株主への配当にも参加できる権利がある場合、あらかじめ定められた方法で算定できる場合に限り、配当を仮定して算定した参加可能額を控除します。この際、実際の配当時に求められる法定準備金(利益準備金など)の積立ては考慮せずに算定を行います。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針 第11項、第12項、第50項

連結財務諸表における親会社持分の調整

連結財務諸表におけるEPS算定では、控除する金額は親会社の普通株主に帰属しない金額となります。子会社が優先株式等を発行している場合、子会社の優先配当額全額を単純に控除するのではなく、親会社の持分負担分などを適切に考慮して控除額を調整する必要があります。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針 第51項

控除してはならない項目とその背景

成果の分配に該当しない資本取引等の除外

1株当たり当期純利益の目的は、普通株主に関する一会計期間の企業の成果を示すことにあります。そのため、成果の分配に該当しない資本の払戻しや、当期の成果に関係しない積立金の変動は控除してはならないと厳密に定められています。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第45項

控除不可となる具体的な項目

具体的に当期純利益から控除してはならない項目は以下の通りです。本基準における優先配当の控除は、あくまで留保利益から行われるものに限定されます。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第8項、第48項、第49項

控除不可の項目 控除してはならない理由
その他資本剰余金の処分による配当 利益の分配ではなく株主資本の払戻しという性格を持つため
普通株主に帰属する積立金の変動 別途積立金など純資産の部における単なる項目の振替にすぎないため
当期に関係しない積立金の変動 優先配当積立金など当該会計期間の事業成果に直接関係しないため

実務ケーススタディ:優先株式発行企業のEPS算定

複合的な優先株式を発行する企業の設定

親会社株主に帰属する当期純利益が10億円のA社を例とします。A社は以下の2種類の優先株式を発行しています。
・第1回優先株式(累積型):年間1億円の優先配当が定められている。前期は配当が見送られ、1億円の未払分が当期に繰り越されている。
・第2回優先株式(非累積型):年間5,000万円の優先配当が定められている。当期末を基準日とする配当議案が翌期に決議される予定である。

累積型および非累積型株式の控除額算定プロセス

第1回優先株式(累積型)については、前期から繰り越されている未払分1億円は前期の算定時に反映済みのため考慮せず、当期の要支払額である1億円のみを控除します。第2回優先株式(非累積型)については、決議前であっても会社が提案予定の議案に基づき、基準日が当期に属する5,000万円を控除対象とします。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第16項、第46項、第47項

最終的な普通株式に係る当期純利益の確定

A社の経理担当者は、当期純利益10億円から累積型の要支払額1億円と非累積型の予定配当額5,000万円を控除し、分子となる普通株式に係る当期純利益を8億5,000万円と確定させます。参考:1株当たり当期純利益に関する会計基準 第14項

算定項目 金額
親会社株主に帰属する当期純利益 10億0,000万円
控除額合計(第1回1億円 + 第2回5,000万円) 1億5,000万円
普通株式に係る当期純利益(分子) 8億5,000万円

まとめ

1株当たり当期純利益の算定において、普通株式に係る当期純利益を正確に導き出すためには、優先配当額や償還差額などを適切に控除する必要があります。累積型か非累積型かによる算定ルールの違いや、控除してはならない資本取引等の性質を正しく理解し、実務に適用することが求められます。

1株当たり当期純利益算定のよくある質問まとめ

Q.1株当たり当期純利益の分子はどのように算定しますか?

A.損益計算書上の当期純利益から、優先配当額など普通株主に帰属しない金額を控除して算定します(1株当たり当期純利益に関する会計基準 第14項)。

Q.累積型配当優先株式の優先配当額はどのように控除しますか?

A.実際の配当の有無にかかわらず、当該会計期間に係る要支払額を当期純利益から控除します(1株当たり当期純利益に関する会計基準 第16項)。

Q.累積型優先株式の過去の未払配当金を当期に支払う場合、控除対象になりますか?

A.過年度の不足額は過去の算定時にすでに控除されているため、二重控除を防ぐ目的から当期の純利益からは控除しません(1株当たり当期純利益に関する会計基準 第46項)。

Q.非累積型配当優先株式の配当決議が翌期に行われる場合、いつ控除しますか?

A.決議日ではなく、基準日が属する当期の当期純利益から控除します。決議前でも提案予定の議案に基づき算定します(1株当たり当期純利益に関する会計基準 第47項)。

Q.その他資本剰余金を原資とする優先配当は控除対象ですか?

A.利益の分配ではなく株主資本の払戻しという性格を持つため、当期純利益からの控除は行いません(1株当たり当期純利益に関する会計基準 第49項)。

Q.配当優先株式の償還差損は当期純利益から控除しますか?

A.償還差損は普通株主にも帰属する資本取引としての性格を持つため、当期純利益からは控除しません(1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針 第49項)。

実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

お問い合わせはこちら

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史