リースの中途解約【仕訳例】使用権資産の取崩しと違約金|新リース会計基準
目次
- 借手の中途解約3パターンの判定表
- パターン1:合意解約の仕訳例(契約条件の変更)
- 使用権資産の全額減額と差額の損益計上
- 仕訳例:本社オフィスの合意解約
- パターン2:解約オプションを行使する場合の仕訳例
- 借手のリース期間の見直しと使用権資産への加減
- 仕訳例:店舗の閉店に伴う解約
- パターン3:解約を織り込み済みの場合の仕訳例
- 旧基準の中途解約処理との違い
- 中途解約の実務チェックリスト
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 中途解約の仕訳はいつの日付で起こしますか。
- 解約オプションを行使すると、必ず解約損が出ますか。
- 中途解約で生じた差額はどの科目で計上しますか。
- オフィスの一部の区画だけを解約した場合も同じ処理ですか。
オフィスの移転や店舗の閉鎖で、リース契約を期間の途中で終わらせる場面は珍しくありません。旧基準では賃貸借処理をしていた不動産の賃貸借も、新リース会計基準のもとでは借手が使用権資産とリース負債を計上するため、中途解約のたびに両者を取り崩す仕訳が必要になります。
結論から言うと、借手の中途解約の仕訳は「解約が当初の契約にどう織り込まれていたか」で3つに分かれます。本記事では、この3パターンを判定表で整理し、自社作例の数値で仕訳例を示します。部分的な解約や面積の縮小ではなく、リースの全部を解約する場合に絞って解説します。
なお、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から強制適用され、2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。
借手の中途解約3パターンの判定表
中途解約の処理は、解約の権利が当初の契約にあったか、そしてリース開始日にその行使を借手のリース期間へ織り込んでいたかで決まります。借手のリース期間は、解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの期間を加えて決めるためです(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。
| パターン1 貸手との合意で 契約を終了する |
当初の契約条件になかった契約期間の短縮であり、リースの契約条件の変更として処理する。使用権資産を全額減額し、リース負債の修正額との差額を損益に計上する |
|---|---|
| パターン2 契約上の解約オプションを 想定外に行使する |
契約条件の変更ではなく、借手のリース期間の変更としてリース負債を見直す。修正額は使用権資産に加減し、使用権資産がゼロを下回る部分だけ損益に計上する |
| パターン3 当初から解約を リース期間に織り込み済み |
違約金は当初からリース負債に含まれ、使用権資産は解約時点までに償却済みとなる。解約時は違約金の支払でリース負債を消し込む |
同じ「中途解約」でも、パターン1は解約の合意日に損益が一度に出る一方、パターン2は損益が出ないまま使用権資産の残りを退去日まで償却する形になります。どちらに当たるかで決算への影響の出方が変わるため、まず契約書の解約条項と、リース開始日に行ったリース期間の判定記録を確認するところから始めます。
関連コラム新リース基準におけるリース期間の決定方法(借手・貸手)▸
パターン1:合意解約の仕訳例(契約条件の変更)
「リースの契約条件の変更」とは、当初の契約条件の一部ではなかったリースの範囲又は対価の変更をいい、原資産を使用する権利の解約や契約期間の短縮もこれに含まれます(リースに関する会計基準 第24項)。解約条項のない契約を貸手と話し合って終了させる場合は、この契約条件の変更に当たります。
使用権資産の全額減額と差額の損益計上
範囲が縮小される契約条件の変更では、借手は変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額します。使用権資産の減少額とリース負債の修正額に差額が生じたときは、その差額を損益に計上します(リースに関する会計基準 第39項、リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。全部を解約する場合、使用権資産は帳簿価額の全額が減額の対象です。
発効日とは、契約の両方の当事者が変更に合意した日をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(10))。退去日や違約金の支払日ではなく、合意日に仕訳を起こす点が実務で間違えやすいところです。合意日が決算日の直前であれば、退去が翌期でも損益は当期に計上されます。
仕訳例:本社オフィスの合意解約
前提(単位:千円):本社オフィスの賃貸借で、借手のリース期間5年のうち2年が経過した時点で貸手と解約に合意しました。合意日の帳簿価額は使用権資産5,400、リース負債5,500です。違約金1,200を合意日に支払います。本記事の作例では、変更後の条件のもとで借手が支払うのは違約金のみと整理し、リース負債を1,200まで修正(4,300減少)したうえで、使用権資産の減少額5,400との差額1,100を損益に計上しています(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 4,300 | 使用権資産 | 5,400 |
| リース解約損 | 1,100 | ||
| リース負債 | 1,200 | 現金預金 | 1,200 |
損益への影響は、使用権資産の帳簿価額と支払う違約金の合計から、取り崩すリース負債を差し引いた額になります。
違約金が小さく、リース負債の残高が使用権資産と違約金の合計を上回る場合は、差額は利益になります。基準が求めるのは差額を損益に計上することで、科目名までは示していないため、作例では「リース解約損」としています。社内の勘定科目体系にあわせて決めておくとよいでしょう。
パターン2:解約オプションを行使する場合の仕訳例
不動産の賃貸借では「6か月前に予告すれば解約できる」といった条項が一般的です。リース開始日に、この解約オプションを行使しないことが合理的に確実と判断していれば、借手のリース期間は解約可能日より長く設定されています。その後に閉店や移転を決めて解約オプションを行使する場合、契約自体は当初の条件どおりに運用されているため、契約条件の変更には当たりません。
借手のリース期間の見直しと使用権資産への加減
借手は、借手の統制下にあり、解約オプションを行使しないことが合理的に確実かどうかの決定に影響を与える重要な事象又は重要な状況が生じたときに、借手のリース期間を見直します。延長オプションの行使等により解約不能期間に変更が生じたときも同様です(リースに関する会計基準 第41項、第42項)。
見直しの日には、リース負債を事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、修正額に相当する金額を使用権資産に加減します。使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお減額が残る場合に限り、残額を損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。パターン1と違い、差額をその場で損益に落とす処理ではない点が大きな違いです。
修正に用いる割引率について、適用指針は状況ごとの定めを置いていません(リースに関する会計基準の適用指針 BC79項)。変更前の割引率を使うか見直し時点の割引率を使うかは、社内の会計方針として決めておく必要があります。
仕訳例:店舗の閉店に伴う解約
前提(単位:千円):月額賃料100の店舗で、リース開始日に解約オプションを行使しないことが合理的に確実と判断し、借手のリース期間を10年としていました。4年経過時に取締役会で閉店を決め、6か月後に退去する解約を申し入れました(違約金なし)。見直し日の帳簿価額は使用権資産6,000、リース負債6,450で、残り6か月分の賃料600の現在価値を595と算定しました。リース負債の減少額は5,855(6,450−595)で、同額を使用権資産から減額します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 5,855 | 使用権資産 | 5,855 |
減額後の使用権資産145は、見直し後の借手のリース期間である残り6か月で償却します(リースに関する会計基準 第38項)。月あたりの償却費は約24です。
仮に見直し日の使用権資産が5,500だった場合は、5,855のうち5,500で使用権資産がゼロになり、残る355を損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項ただし書)。賃料の安い長期契約を早期に解約するときなど、リース負債の減少額が使用権資産を上回る場面で起こりえます。
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パターン3:解約を織り込み済みの場合の仕訳例
リース開始日の時点で解約オプションを行使することが見込まれ、その対象期間を借手のリース期間に含めていない場合は、解約に伴う違約金の支払額も借手のリース料に含めてリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第35項(5))。使用権資産は、所有権移転のリース以外であれば原則として、残存価額はゼロ、耐用年数は借手のリース期間で償却します(リースに関する会計基準 第38項)。
前提(単位:千円):契約期間5年の機械設備で、3年経過時に違約金300を支払えば解約できる条項があります。リース開始日に解約が合理的に確実と判断し、借手のリース期間を3年、違約金300をリース料に含めて測定していました。見積りどおり3年目の末日に解約し、最後のリース料の支払後に違約金を支払います。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 300 | 現金預金 | 300 |
使用権資産は3年で償却が終わっているため、取り崩す残高はありません。当初の見積りどおりに解約できれば、解約時に大きな損益は生じにくい形です。反対に、解約を見込んでいたのに継続利用を決めた場合は、パターン2と同じくリース期間の見直しの対象になります(リースに関する会計基準 第41項)。
旧基準の中途解約処理との違い
旧基準(企業会計基準第13号等)での中途解約の処理と、新基準の処理を並べると次のとおりです。
| 旧基準 ファイナンス・リース |
リース資産の未償却残高を除却損等として処理し、リース債務未払残高と規定損害金の差額を支払額の確定時に損益に計上する |
|---|---|
| 旧基準 オペレーティング・リース |
通常の賃貸借取引に準じて処理するため、取り崩す資産・負債がそもそも計上されていない |
| 新基準 借手のリース全般 |
不動産を含めて使用権資産とリース負債を計上しているため、解約の態様に応じて契約条件の変更か、リース期間の見直しとして処理する |
旧基準では、ファイナンス・リースの解約は未償却残高の除却と規定損害金の差額計上で処理していました(リース取引に関する会計基準の適用指針 第30項)。オペレーティング・リースは賃貸借処理だったため(リース取引に関する会計基準 第15項)、オフィスや店舗の解約で貸借対照表の科目を取り崩すことはありませんでした。新基準では借手のリースが原則として使用権資産とリース負債の計上対象になるため(リースに関する会計基準 第33項)、これまで違約金の支払だけで済んでいた不動産の解約にも、本記事の3パターンの判定が必要になります。
関連コラム所有権移転外ファイナンス・リースの減価償却と終了・解約処理▸
中途解約の実務チェックリスト
仕訳そのものは数行でも、前提となる数値を誤ると損益の額が変わります。中途解約が決まったら、次の項目を確認してから仕訳を起こすことをおすすめします。
| 処理する日 | 合意解約は契約の両当事者が合意した日、解約オプションの見直しは重要な事象等が生じた日を基準にする |
|---|---|
| 取崩し前の帳簿価額 | 処理する日までの使用権資産の償却と、リース負債の利息配分を済ませた残高を使う |
| 違約金の条件 | 契約にある規定損害金か、交渉で決めた金額か、支払時期は一括か分割かを確認する |
| 内装等の附属設備 | 借手が計上した建物附属設備や原状回復の見積りも、退去にあわせて処理の見直しが必要か確認する |
| 簡便的な取扱いの有無 | 短期リース・少額リースとして使用権資産を計上していない契約は、取り崩す残高がない |
短期リースや少額リースの簡便的な取扱いを選択したリースは、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上していないため(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)、本記事の取崩しの仕訳は生じません。また、違約金の大きさは解約オプションを行使するかどうかを判断する経済的インセンティブの要因の1つとされています(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。適用初年度に向けて契約を洗い出す際に、解約条項と違約金の条件も台帳の項目に入れておくと、解約時のパターン判定がすぐにできます。
一部の区画だけを返す面積の縮小や、契約期間の短縮と賃料の変更が同時に起きる場合は、全部解約とは処理が異なる部分があります。こうした部分解約・条件変更は、次のコラムで扱っています。
関連コラムリース会計基準における契約条件の変更と借手の会計処理▸
まとめ
- 新リース会計基準のもとでは、不動産を含む借手のリースの中途解約で使用権資産とリース負債の取崩しが必要になります。
- 貸手との合意解約は契約条件の変更で、合意日に使用権資産を全額減額し、リース負債の修正額との差額を損益に計上します。
- 契約上の解約オプションを想定外に行使する場合は、リース期間の見直しとして修正額を使用権資産に加減し、ゼロを下回る部分だけを損益に計上します。
- 解約を当初からリース期間に織り込んでいれば、違約金はリース負債に含まれており、解約時は支払で消し込むだけです。
- 新基準は2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から強制適用されるため、契約の解約条項とリース期間の判定記録を早めに整理しておくことが有効です。
どのパターンに当たるかは、契約条項とリース開始日の判断の内容によって変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第16号 リース取引に関する会計基準の適用指針
よくある質問
中途解約の仕訳はいつの日付で起こしますか。
貸手と合意して解約する場合は、契約条件の変更の発効日、つまり両当事者が合意した日に処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(10)、第45項)。契約上の解約オプションを行使する場合は、借手のリース期間を見直す事象が生じた日に処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。
解約オプションを行使すると、必ず解約損が出ますか。
必ずではありません。契約条件の変更に当たらない解約オプションの行使では、リース負債の修正額を使用権資産に加減し、使用権資産をゼロまで減額してもなお残る減額だけを損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。
中途解約で生じた差額はどの科目で計上しますか。
基準は差額を損益に計上することを定めています(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。科目名は企業が決めることになり、本記事の作例では「リース解約損」としています。
オフィスの一部の区画だけを解約した場合も同じ処理ですか。
リースの範囲が縮小される契約条件の変更として、一部の解約を反映するように使用権資産を減額し、リース負債の修正額との差額を損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。全部解約と違い、使用権資産の減額は解約した部分に対応する額になります。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




