償却原価法の計算例【利息法・定額法】取得差額の配分と仕訳
目次
- 償却原価法の定義と適用対象
- 適用が必要になる3つの場面
- 取得差額のうち償却の対象になる部分
- 計算例の前提条件
- 利息法による計算例
- 実効利子率の求め方
- 各期の配分額と償却額
- 利息法の仕訳例
- 定額法による計算例
- 利息法と定額法の違いと使い分け
- 計算の前に確認したい実務上の論点
- 減損処理を行った債券
- 取得差額に信用リスクが含まれる場合
- 転換社債型新株予約権付社債
- 元本が分割償還される債券
- その他有価証券に区分した債券
- 適用時期と改正の経緯
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 利息法と定額法はどちらを採用すべきですか。
- 実効利子率はどのように求めますか。
- 償却額はどの科目で計上しますか。
- 最終期に端数が出た場合はどう処理しますか。
- 減損処理をした債券にも償却原価法を続けますか。
償却原価法は、債券や債権を額面と異なる金額で取得したときに、その差額を償還までの期間にわたって受取利息に振り替えていく方法です。考え方は理解できても、実効利子率をどう求め、毎期いくらを利息として配分し、どのような仕訳を切るのかという計算過程でつまずく方は少なくありません。
この記事では、当事務所で作成した設例を使い、利息法と定額法の償却スケジュールを1期ずつ数字で追いながら、仕訳の借方・貸方まで示します。基準・実務指針の根拠となる条項番号も併記していますので、社内の会計方針や監査対応の資料としてもご活用いただけます。
償却原価法の定義と適用対象
償却原価法とは、金融資産または金融負債を債権額または債務額と異なる金額で計上した場合において、その差額に相当する金額を弁済期または償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減する方法をいいます。この加減額は、受取利息または支払利息に含めて処理します(金融商品に関する会計基準 注5)。
つまり償却原価法は、評価の話ではなく利息の期間配分の話です。時価評価のように相場で価額を動かすのではなく、当初に決まっている差額を計画的に利息へ振り替えていきます。ここを取り違えると、後述する利息法・定額法のどちらを選んでも計算の意味が分からなくなります。
適用が必要になる3つの場面
償却原価法が問題になる代表的な場面は次の3つです。いずれも「取得価額(または収入額)と債権額・債務額が異なり、その差額の性格が金利の調整と認められること」が適用の入口になります。
| 債権 | 債権を債権金額より低い価額または高い価額で取得し、その差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額から貸倒引当金を控除した金額を貸借対照表価額とします(金融商品に関する会計基準 第14項)。 |
|---|---|
| 満期保有目的の債券 | 債券を債券金額より低い価額または高い価額で取得し、その差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とします(金融商品に関する会計基準 第16項)。 |
| 社債その他の金銭債務 | 社債を社債金額よりも低い価額または高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とします(金融商品に関する会計基準 第26項)。資産に計上された債券の処理方法が、負債側にもそのまま適用されます(金融商品会計に関する実務指針 第126項)。 |
負債側の論点は、調達額と償還額の差額の把握や社債発行費との区別など、資産側とは別の実務判断が必要になります。金銭債務にしぼった解説は次のコラムでまとめています。
関連コラム【金融商品会計】金銭債務の評価と償却原価法の実務解説▸
取得差額のうち償却の対象になる部分
取得価額と債券金額との差額を取得差額といいます。取得差額が生じる要因には、クーポンレートと取得時の市場利子率との調整に基づくものと、発行体の信用力の変動や減損その他の要因がありますが、償却原価法の対象となるのは、取得差額が金利の調整部分(金利調整差額)により生じた場合に限定されます(金融商品会計に関する実務指針 第70項)。
実務では、取得差額の全額を機械的に償却してしまう誤りが起こりがちです。取得時に「この差額はなぜ生じたのか」を確認し、金利調整差額と認められる部分を特定する手順を、会計方針とあわせて社内で決めておくと監査対応が安定します。
計算例の前提条件
ここから、当事務所で作成した設例を使って計算過程を追います。前提は次のとおりです(単位:千円)。
- X1年4月1日に、額面金額100,000千円の社債を97,000千円で取得した
- 取得区分は満期保有目的の債券、償還期限はX4年3月31日(3年)
- クーポンレートは年2.0%、利払は年1回(毎年3月31日)で1回あたり2,000千円
- 決算日は3月31日、取得差額3,000千円は全額が金利調整差額と認められる
取得差額は次のように計算されます。この3,000千円を、償還までの3年間でどのように利息へ振り替えるかが、利息法と定額法の違いです。
取得時の仕訳は次のとおりです。取得価額そのままで計上し、償却原価法はこの帳簿価額を出発点として進みます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 投資有価証券 | 97,000 | 現金預金 | 97,000 |
利息法による計算例
利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)となるように、複利をもって各期の純損益に配分する方法をいいます。配分額とクーポン計上額との差額を帳簿価額に加減します(金融商品会計に関する実務指針 第70項)。
実効利子率の求め方
利息法では、まず実効利子率を求めます。実効利子率は、将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率です。本設例では、次の算式が成立する率rを探すことになります。
この式は手計算では解けないため、実務では表計算ソフトの利回り関数や内部収益率の計算機能を使って求めます。分子に置く金額は、各期のクーポン受取額と最終期の元本償還額であり、取得価額はこの計算の結果ではなく前提として与えられる点に注意してください。
各期の配分額と償却額
実効利子率が求まれば、各期の計算は「期首帳簿価額×実効利子率=有価証券利息」「有価証券利息−クーポン受取額=償却額」の2ステップです。第1期は次のようになります。
同じ計算を3期分繰り返した償却スケジュールは次のとおりです。帳簿価額が増えるにつれて有価証券利息も増えるのが利息法の特徴で、償却額は年を追うごとに大きくなります。
| 第1期 | 期首97,000/有価証券利息2,968/クーポン2,000/償却額968/期末97,968 |
|---|---|
| 第2期 | 期首97,968/有価証券利息2,998/クーポン2,000/償却額998/期末98,966 |
| 第3期(償還期) | 期首98,966/有価証券利息3,034/クーポン2,000/償却額1,034/期末100,000 |
第3期の有価証券利息3,034千円は、期首帳簿価額に実効利子率を乗じた金額(約3,028千円)ではなく、期末の償却原価が額面金額100,000千円にちょうど一致するように逆算した金額です。実効利子率を小数第何位で四捨五入しても端数は必ず残るため、最終期で調整して償還額と帳簿価額を一致させる実務が一般的です。償却額の合計は968+998+1,034=3,000千円となり、取得差額と一致します。
利息法の仕訳例
第1期末(X2年3月31日)に、クーポン2,000千円を受け取り、償却額968千円を帳簿価額に加算します。加減額は受取利息に含めて処理するため、償却額も有価証券利息として計上します(金融商品に関する会計基準 注5、金融商品会計に関する実務指針 第70項)。単位は千円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 2,000 | 有価証券利息 | 2,968 |
| 投資有価証券 | 968 |
償還時(X4年3月31日)には帳簿価額が額面金額と一致しているため、現金預金100,000千円と投資有価証券100,000千円を相殺するだけで、損益は生じません。償却原価法を正しく適用していれば、償還時に差損益が出ないのが本来の姿です。
定額法による計算例
定額法とは、債券の金利調整差額を取得日(または受渡日)から償還日までの期間で除して各期の純損益に配分する方法をいい、配分額を帳簿価額に加減します(金融商品会計に関する実務指針 第70項)。利息法と異なり利払日ごとに償却する必要はなく、期末に計算すれば足ります。
償却スケジュールは次のとおりです。毎期同額が償却されるため、有価証券利息も3期を通じて一定になります。
| 第1期 | 期首97,000/有価証券利息3,000/クーポン2,000/償却額1,000/期末98,000 |
|---|---|
| 第2期 | 期首98,000/有価証券利息3,000/クーポン2,000/償却額1,000/期末99,000 |
| 第3期(償還期) | 期首99,000/有価証券利息3,000/クーポン2,000/償却額1,000/期末100,000 |
第1期末の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。利息法と比べると、第1期は有価証券利息が32千円多く計上されます。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 2,000 | 有価証券利息 | 3,000 |
| 投資有価証券 | 1,000 |
取得日が期中の場合は、取得日から償還日までの月数で金利調整差額を除し、当期に属する月数分を配分します。年度単位で単純に除すると、取得初年度の償却額が過大になる点に注意が必要です。
利息法と定額法の違いと使い分け
償却原価法は原則として利息法によりますが、継続適用を条件として、簡便法である定額法を採用することができます(金融商品会計に関する実務指針 第70項)。継続適用が条件であるため、期によって有利な方法へ乗り換えることはできません。
| 利息法(原則) | 定額法(簡便法) |
|---|---|
| 実効利子率を期首帳簿価額に乗じて各期の利息を求め、クーポン計上額との差額を帳簿価額に加減します。 | 金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除し、各期に均等に配分します。 |
| 帳簿価額に対する利回りが毎期一定になり、実質的な利息の期間配分として合理的です。 | 各期の償却額と有価証券利息が一定になり、計算と検証が容易です。 |
| 実効利子率の算定が必要で、利払の都度の計算を伴うため事務負担が大きくなります。 | 期末にのみ償却すれば足りるため、事務負担は軽くなります。 |
| 期限前に売却した場合の売却原価の算定は先入先出法によります。 | 売却原価の算定方法として先入先出法または平均法を採用できます。 |
売却原価の算定方法が方法によって異なる点は見落とされがちです。償却原価法として利息法を採用しているときの売却原価の算定は先入先出法によるとされており、定額法の場合は先入先出法または平均法のいずれかを採用することになります(金融商品会計に関する実務指針 第71項、第275項)。
債権の場合は、判断の軸が少し変わります。債権を債権金額と異なる価額で取得したときは、将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)に基づいて入金額を元本の回収と受取利息とに区分し、償却原価法の適用は利息法によることを原則としますが、契約上、元利の支払が弁済期限に一括して行われる場合または規則的に行われることとなっている場合には、定額法によることができます(金融商品会計に関する実務指針 第105項)。
なお、利息の支払時期または支払額が不規則な貸付金・借入金・社債等については、元本と利息の合計額の将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額または調達価額に一致するような割引率に基づいて、入金額または支払額を元本と利息とに区分します(金融商品会計に関する実務指針 第131項)。また、売上債権等に重要な金利部分が含まれている場合も、取得時に時価(現在価値)で計上し、決済期日までの期間にわたって償却原価法により金利部分を各期の純損益に配分します(金融商品会計に関する実務指針 第130項)。
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計算の前に確認したい実務上の論点
計算そのものより、そもそも償却原価法を適用してよいのかの判断でつまずくケースが実務では多く見られます。特に確認しておきたい論点を整理します。
減損処理を行った債券
減損処理を行った債券については、取得差額はもはや金利調整差額とは考えられないため、以後、償却原価法の適用はありません(金融商品会計に関するQ&A Q25)。減損の判定と償却原価法の適用停止はセットで管理する必要があります。
取得差額に信用リスクが含まれる場合
信用リスクの高い債券を取得した場合には、取得差額を信用リスクを反映した部分と金利調整差額部分とに区分することが必要になりますが、それぞれの部分の算定が困難な場合には、取得差額が金利調整差額と認められる債券についてのみ償却原価法を適用し、それ以外の場合には償却原価法を適用しないことも認められます(金融商品会計に関する実務指針 第74項、金融商品会計に関するQ&A Q26)。
転換社債型新株予約権付社債
既発の転換社債型新株予約権付社債を債券金額と異なる価額で取得した場合、取得差額は株式転換権の価値の変動に起因する部分から成ると考えられるため、通常は償却原価法を適用することはできません。ただし、転換価格が取得時の株式の相場を大きく上回っている場合等により転換請求の可能性がほとんどないと認められる場合には、原則として償却原価法を適用します(金融商品会計に関するQ&A Q24)。
元本が分割償還される債券
定期的に元本の償還が行われる債券について、償却原価法の適用に当たっては、満期償還日までの間に生じる元本の償還後の残高を反映させなければなりません。元本の償還を無視して金利調整差額を取得日から償還日までの期間で単純に均等配分する方法は認められません(金融商品会計に関するQ&A Q24-2)。今回の設例のような満期一括償還債と同じ感覚で計算すると誤ります。
その他有価証券に区分した債券
その他有価証券のうち、取得差額が金利調整差額と認められる債券には、まず償却原価法を適用し、取得原価と償却原価との差額を有価証券利息の修正として処理した上で、償却原価と時価との差額を評価差額として処理します(金融商品会計に関する実務指針 第74項)。時価評価だけを行って償却を飛ばしてしまう誤りが起きやすい論点です。
適用時期と改正の経緯
金融商品に関する会計基準は1999年1月に公表され、そのうち金融商品の評価基準に関する定めは2000年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(金融商品に関する会計基準 第41項(1))。償却原価法は、この時点から一貫して適用されている取扱いであり、これから導入される新しいルールではありません。
その後、本会計基準は複数回にわたり改正されています。2006年改正では会社法および純資産の部の表示に関する会計基準等を踏まえた改正が行われ、金銭債務についても償却原価法に基づいて算定された価額を貸借対照表価額とすることとされました(金融商品に関する会計基準 第26項、第50項)。2007年改正は金融商品取引法の施行に伴う有価証券の範囲の技術的な改正、2008年改正は金融商品の時価等に関する開示の充実を目的とした改正です(金融商品に関する会計基準 第50-2項、第50-3項)。
2019年改正では、時価の算定に関する会計基準の公表に伴い時価の定義が見直され、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されています(金融商品に関する会計基準 第41項(5)、第50-4項)。さらに2026年改正では、金融資産の譲渡において譲受人が特別目的会社である場合の消滅範囲が明確化され、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首以後実施される金融資産の譲渡から適用されます。2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首以後実施される譲渡から早期適用することもできます(金融商品に関する会計基準 第41項(7)、(8)、第50-5項)。この改正は金融資産の消滅の認識に関するものであり、償却原価法の計算方法そのものに変更はありません。
まとめ
償却原価法の計算は、次の順序で整理すると迷いません。
- 取得差額のうち、金利調整差額と認められる部分を特定する(実務指針 第70項)
- 利息法と定額法のいずれによるかを決め、会計方針として継続適用する(実務指針 第70項)
- 利息法なら実効利子率を求め、期首帳簿価額に乗じて各期の利息を配分する
- 定額法なら金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して均等配分する
- 償却額を帳簿価額に加減し、加減額は受取利息または支払利息に含めて計上する(会計基準 注5)
計算過程そのものは単純ですが、適用対象の判定、元本償還や期中取得の期間按分、減損後の取扱いなど、前提の置き方で結論が変わる論点が多い領域です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
利息法と定額法はどちらを採用すべきですか。
償却原価法は原則として利息法によりますが、継続適用を条件として簡便法である定額法を採用することができます(金融商品会計に関する実務指針 第70項)。保有する債券の銘柄数や金額的重要性、経理体制を踏まえて選択し、いったん決めた方法は継続して適用します。
実効利子率はどのように求めますか。
将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率として求めます(金融商品会計に関する実務指針 第105項)。各期のクーポン受取額と最終期の元本償還額を将来キャッシュ・フローとして置き、表計算ソフトの内部収益率の計算機能などを使って算定するのが一般的です。
償却額はどの科目で計上しますか。
償却原価法による加減額は、受取利息または支払利息に含めて処理します(金融商品に関する会計基準 注5)。債券であれば有価証券利息として計上し、クーポン受取額と合算した金額が各期の利息収益になります。
最終期に端数が出た場合はどう処理しますか。
実効利子率を四捨五入して適用すると、最終期の帳簿価額が額面金額とわずかに一致しなくなります。実務では、最終期の償却額を逆算して償還時の帳簿価額を額面金額に一致させる処理が広く行われています。償却額の合計が取得差額と一致しているかを、期末ごとに検算しておくと誤りに気づきやすくなります。
減損処理をした債券にも償却原価法を続けますか。
続けません。減損処理を行った債券については、取得差額はもはや金利調整差額とは考えられないため、以後、償却原価法の適用はありません(金融商品会計に関するQ&A Q25)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



