労働組合の法人登記の手順|資格審査と登記事項・必要書類
目次
- 労働組合の法人登記の位置づけ
- 登記によって法人となる仕組み
- 登記事項の第三者への対抗力
- 代表者に関する定め
- 法人登記の前提となる資格審査
- 自主性の要件(労働組合法 第2条)
- 規約に定めなければならない事項(労働組合法 第5条第2項)
- 会計報告と会計監査人による証明
- 法人登記の手続きの流れ
- 資格審査の申請先と証明書の交付
- 設立登記の申請先
- 登記すべき事項
- 設立登記の添付書類
- 登記後に必要となる変更登記と期限
- 実務上の留意点
- 資格審査は手続きごとに必要になる
- 会計体制は登記後も継続して問われる
- 解散した場合の取扱い
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 労働組合は法人登記をしないと活動できませんか
- 資格審査はどこに申請しますか
- 一度資格審査を受ければ、次回以降は不要ですか
- 会計報告の証明は組合内部の監査で足りますか
- 代表者が交代したときの登記の期限はいつまでですか
労働組合を法人にするには、労働委員会から労働組合法に適合する旨の証明を受けたうえで、主たる事務所の所在地において登記をする必要があります(労働組合法 第11条第1項)。届出だけで法人格が得られるわけではなく、その前提として資格審査を通過しなければならない点が、この手続きの最大の関門です。
資格審査では、労働組合が自主的な団体であるか(労働組合法 第2条)に加えて、規約に法定の事項が備わっているか(労働組合法 第5条第2項)が審査されます。規約の要件には会計報告と会計監査人による証明も含まれており、日頃の会計実務がそのまま審査の対象になります。
本記事では、労働組合の法人登記について、資格審査の要件、労働委員会への申請、設立登記の登記事項と添付書類、登記後に必要となる変更登記の期限までを、労働組合法および労働組合法施行令の条文に沿って整理します。
労働組合の法人登記の位置づけ
登記によって法人となる仕組み
労働組合は自由に設立することができ、設立にあたって行政機関へ届け出る必要はありません。一方で、労働組合が法人格を得るには手続きが必要です。この法律の規定に適合する旨の労働委員会の証明を受けた労働組合は、その主たる事務所の所在地において登記することによって法人となります(労働組合法 第11条第1項)。
つまり、法人格の取得には「労働委員会の証明」と「登記」の2つが揃わなければなりません。どちらか一方だけでは法人にはなりません。労働組合の登記に関して必要な事項は政令で定めるものとされており(労働組合法 第11条第2項)、具体的な手続きは労働組合法施行令に置かれています。
登記事項の第三者への対抗力
労働組合に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ第三者に対抗することができません(労働組合法 第11条第3項)。代表者が交代したにもかかわらず登記を放置していると、対外的な契約や紛争の場面で、変更後の事実を主張できない事態が生じ得ます。設立時だけでなく、登記事項に変更が生じたときの対応まで含めて設計しておく必要があります。
代表者に関する定め
法人である労働組合には、1人又は数人の代表者を置かなければなりません(労働組合法 第12条第1項)。代表者が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、法人である労働組合の事務は代表者の過半数で決するものとされています(労働組合法 第12条第2項)。代表者を複数置く場合は、意思決定の方法を規約に明記しておくと運用が安定します。
法人登記の前提となる資格審査
資格審査とは、労働組合が労働組合法第2条および第5条第2項に定める資格要件を備えているかを労働委員会が審査する手続きです。法人登記をするために資格証明書の交付を受ける場合は、この資格審査を受ける必要があります。過去に資格審査で適格の決定を受けたことがある労働組合であっても、その都度、あらためて資格審査を受けることになります。
自主性の要件(労働組合法 第2条)
労働組合とは、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体をいいます(労働組合法 第2条)。ただし、同条各号に該当するものは労働組合には当たりません。
各号は、使用者の利益を代表する者の参加を許すもの、団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるもの、共済事業その他福利事業のみを目的とするもの、主として政治運動又は社会運動を目的とするものを掲げています(労働組合法 第2条第1号から第4号)。
このうち経理上の援助については例外が定められており、労働者が労働時間中に時間又は賃金を失うことなく使用者と協議し、又は交渉することを使用者が許すことは妨げられません。また、厚生資金又は経済上の不幸若しくは災厄を防止し、若しくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附と、最小限の広さの事務所の供与も除かれます(労働組合法 第2条第2号ただし書)。実務では、組合費の徴収方法や事務所・備品の負担関係が自主性の観点から確認されやすい部分です。
規約に定めなければならない事項(労働組合法 第5条第2項)
労働組合は、労働委員会に証拠を提出して第2条および第5条第2項の規定に適合することを立証しなければ、労働組合法に規定する手続に参与する資格を有せず、同法に規定する救済も与えられません(労働組合法 第5条第1項)。規約に含めなければならない規定は次のとおりです(労働組合法 第5条第2項第1号から第9号)。
| 名称と主たる事務所 | 名称および主たる事務所の所在地を規約に掲げること(第1号、第2号) |
|---|---|
| 組合員の権利 | 単位労働組合の組合員が、その労働組合のすべての問題に参与する権利および均等の取扱を受ける権利を有すること(第3号) |
| 資格剥奪の禁止 | 何人も、いかなる場合においても、人種、宗教、性別、門地又は身分によって組合員たる資格を奪われないこと(第4号) |
| 役員の選挙方法 | 単位労働組合では組合員の直接無記名投票により、連合団体である労働組合又は全国的規模をもつ労働組合では単位労働組合の組合員又はその組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票により、役員を選挙すること(第5号) |
| 総会の開催 | 総会を少なくとも毎年1回開催すること(第6号) |
| 会計報告と証明 | すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名ならびに現在の経理状況を示す会計報告を、会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表すること(第7号) |
| 同盟罷業の決定 | 同盟罷業は、組合員又は組合員の直接無記名投票により選挙された代議員の直接無記名投票の過半数による決定を経なければ開始しないこと(第8号) |
| 規約改正の手続 | 規約は、組合員(連合団体である労働組合等では代議員)の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正しないこと(第9号) |
規約に条文の要求する規定が欠けていると、その一点だけで資格審査を通過できません。法人登記を検討し始めた段階で、まず現行規約を条文と1号ずつ突き合わせることをおすすめします。
会計報告と会計監査人による証明
規約の要件のなかで、実務上もっとも準備に時間がかかるのが会計に関する第7号です。条文は、会計報告を組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することを求めています(労働組合法 第5条第2項第7号)。
ここで求められているのは、会計報告そのものだけではなく、その正確性を証明する書面です。会計報告を作成して総会に諮っているだけでは、条文が求める形を満たしているとはいえません。誰を会計監査人として委嘱し、どのような証明書を毎年作成しているかまでが問われます。
また、対象となる会計報告の範囲は「すべての財源および使途」「主要な寄附者の氏名」「現在の経理状況」と広く、組合費以外の収入や上部団体との資金のやり取りも整理の対象になります。会計帳簿が現金出納帳のみで、証憑の保存や科目の統一が十分でない場合は、証明書を出せる状態にするまでに相応の期間を要します。法人登記の時期から逆算して、会計体制の整備に着手する必要があります。
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法人登記の手続きの流れ
資格審査の申請先と証明書の交付
労働組合法第11条第1項の証明を行う労働委員会は、労働組合法第25条第1項の規定により中央労働委員会が専属的に管轄する場合を除き、労働組合の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働委員会又は中央労働委員会です(労働組合法施行令 第2条第1項)。単組・企業内労組であれば、通常は主たる事務所を管轄する都道府県労働委員会が窓口になります。
労働委員会は、証明の申請があった場合において、当該労働組合が労働組合法の規定に適合すると認めたときは、遅滞なくその旨の証明書を交付しなければならないとされています(労働組合法施行令 第2条第2項)。審査は労働委員会の公益委員会議で行われ、適格である旨が決定されると、資格決定書の写し又は資格証明書が交付されます。
なお、労働委員会から「認証」を受けているという表示が見られることがありますが、労働組合の認証制度はありません。資格審査は、あくまで法定の資格要件を備えているかを確認する手続きです。
設立登記の申請先
法人である労働組合の登記に関する事務は、その主たる事務所の所在地を管轄する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が、管轄登記所としてつかさどります(労働組合法施行令 第7条第1項)。各登記所には労働組合登記簿が備えられています(労働組合法施行令 第7条第2項)。
労働組合の登記は、農業協同組合等を対象とする組合等登記令ではなく、労働組合法施行令の規定によって行われます。ひな形を探す際に他の法人の様式を参照すると、登記事項や添付書類が食い違うため注意が必要です。
登記すべき事項
労働組合法第11条第1項の規定による登記には、次の事項を掲げなければなりません(労働組合法施行令 第3条)。
| 名称 | 労働組合の名称 |
|---|---|
| 主たる事務所 の所在場所 |
主たる事務所の所在場所 |
| 目的及び事業 | 労働組合の目的および事業 |
| 代表者の氏名 及び住所 |
代表者の氏名および住所 |
| 解散事由 | 解散事由を定めたときは、その事由 |
目的および事業は登記事項であるため、規約の記載がそのまま外部に開示されます。規約の目的条項が抽象的すぎる場合や、実態と食い違っている場合は、資格審査の前に整理しておくほうが安全です。
設立登記の添付書類
労働組合法第11条第1項の規定による登記の申請書には、規約、労働組合法施行令第2条第2項の証明書および代表者の資格を証する書面を添付しなければなりません(労働組合法施行令 第8条)。
3点のうち、独力で用意できないのは労働委員会が交付する証明書です。この証明書を得るために資格審査を受ける必要があり、資格審査を受けるためには規約と会計の整備が前提になります。つまり、会計の整備 → 規約の整備 → 資格審査 → 証明書の交付 → 設立登記という順序で逆算して準備を進めることになります。
登記後に必要となる変更登記と期限
設立登記を終えた後も、登記事項に変動が生じるたびに登記が必要です。労働組合法施行令が定める主な期限は次のとおりです。
| 主たる事務所の移転 (他の登記所の管轄) |
2週間以内に、旧所在地においては移転の登記をし、新所在地においては登記事項を登記します(労働組合法施行令 第4条第1項) |
|---|---|
| 主たる事務所の移転 (同一登記所の管轄内) |
その移転の登記をするだけで足ります(労働組合法施行令 第4条第2項) |
| 登記事項の変更 | 2週間以内に、その登記をします(労働組合法施行令 第5条) |
| 解散と清算人 | 解散後2週間以内に、清算人の氏名および住所ならびに解散の原因および年月日を登記します(労働組合法 第13条の5第1項) |
| 清算結了 | 清算結了の日から2週間以内に、その登記をします(労働組合法施行令 第6条) |
変更の登記の申請書には、登記事項の変更を証する書面を添付しなければなりません。ただし、代表者の氏、名又は住所の変更の登記については添付が不要です(労働組合法施行令 第9条)。解散の登記の申請書には、解散の事由を証する書面と、代表者が清算人とならない場合には清算人の資格を証する書面を添付します(労働組合法施行令 第10条)。
役員改選のたびに代表者が交代する組合では、変更登記の頻度が高くなります。総会の日程と登記の期限を年間スケジュールに組み込んでおくと、失念を防げます。
実務上の留意点
資格審査は手続きごとに必要になる
資格審査は、法人登記のための資格証明書の交付を受ける場合のほか、不当労働行為の救済申立てをする場合、労働委員会の労働者委員候補者を推薦する場合、労働協約の地域的拡張適用の申立てをする場合などにも必要とされます。過去に適格の決定を受けたことがある労働組合であっても、その都度審査を受けることになります。一度通過すれば以後は不要という性質のものではありません。
会計体制は登記後も継続して問われる
会計報告と会計監査人による証明書の公表は、少なくとも毎年1回行うことが規約の要件です(労働組合法 第5条第2項第7号)。法人登記の時点で一度体制を整えれば終わりではなく、以後も毎年、証明書を作成できる状態を維持する必要があります。次に資格審査を受ける場面で、直近年度の会計報告と証明書が問われることを前提に体制を組んでおくと、その都度の負担を抑えられます。
解散した場合の取扱い
解散した法人である労働組合は、清算の目的の範囲内において、その清算の結了に至るまではなお存続するものとみなされます(労働組合法 第13条)。法人である労働組合が解散したときは代表者が清算人となりますが、規約に別段の定めがあるとき、又は総会において代表者以外の者を選任したときはこの限りではありません(労働組合法 第13条の2)。解散した法人である労働組合の財産は規約で指定した者に帰属し、指定がない場合の取扱いも定められています(労働組合法 第13条の10)。法人化は、解散時の財産の帰属まで規約で設計しておくべき論点を伴います。
まとめ
労働組合の法人登記は、労働委員会の証明を受けたうえで主たる事務所の所在地において登記することにより法人となる手続きです(労働組合法 第11条第1項)。設立登記の申請書には、規約・労働委員会の証明書・代表者の資格を証する書面を添付します(労働組合法施行令 第8条)。
手続きの実質的な関門は登記そのものではなく、その前段にある資格審査です。自主性の要件(労働組合法 第2条)と規約の必要記載事項(労働組合法 第5条第2項)の双方を満たす必要があり、なかでも会計報告と会計監査人による証明書の公表(労働組合法 第5条第2項第7号)は、日頃の会計実務が整っていなければ短期間では用意できません。
登記後も、登記事項の変更は2週間以内(労働組合法施行令 第5条)、清算結了は2週間以内(労働組合法施行令 第6条)といった期限が続きます。法人化は一度きりの手続きではなく、継続的な管理体制を前提とする選択です。
規約の記載や会計報告が条文の要求を満たしているかの判断は個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
労働組合は法人登記をしないと活動できませんか
労働組合は自由に設立することができ、設立にあたって行政機関へ届け出る必要はありません。法人登記は法人格を取得するための手続きであり、登記をしていない労働組合が活動できないわけではありません。法人となるのは、労働委員会の証明を受けて主たる事務所の所在地において登記をした場合です(労働組合法 第11条第1項)。
資格審査はどこに申請しますか
中央労働委員会が専属的に管轄する場合を除き、労働組合の主たる事務所の所在地を管轄する都道府県労働委員会又は中央労働委員会が管轄します(労働組合法施行令 第2条第1項)。労働委員会が労働組合法の規定に適合すると認めたときは、遅滞なくその旨の証明書が交付されます(労働組合法施行令 第2条第2項)。
一度資格審査を受ければ、次回以降は不要ですか
不要にはなりません。過去に資格審査で適格の決定を受けたことがある労働組合であっても、法人登記のための資格証明書の交付を受ける場合や不当労働行為の救済申立てをする場合などには、その都度あらためて資格審査を受けることになります。
会計報告の証明は組合内部の監査で足りますか
条文は、会計報告を組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表することを求めています(労働組合法 第5条第2項第7号)。会計報告を作成して総会に諮るだけでは、証明書の要件を満たしません。誰に委嘱し、どのような証明書を得るかは個別の事情によって判断が分かれるため、専門家に確認することをおすすめします。
代表者が交代したときの登記の期限はいつまでですか
代表者の氏名および住所は登記事項であるため(労働組合法施行令 第3条第4号)、変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をする必要があります(労働組合法施行令 第5条)。登記すべき事項は登記した後でなければ第三者に対抗することができない点にも注意が必要です(労働組合法 第11条第3項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。



