収益認識に関する注記の全体像
収益認識に関する会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(収益認識に関する会計基準 第81項)。会計処理の5つのステップは実務に定着した一方で、決算・有価証券報告書の作成局面では「注記に何をどこまで書くか」で迷う場面が今なお多く残ります。
収益に関する注記は、大きく重要な会計方針の注記と収益認識に関する注記の2つに分かれ、後者はさらに収益の分解情報、収益を理解するための基礎となる情報、当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報という3つの区分で構成されます(収益認識に関する会計基準 第80-5項)。開示目的は、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を開示することにあり(収益認識に関する会計基準 第80-4項)、注記の要否や詳しさはこの開示目的に照らして判断します。
| 重要な会計方針の注記 | 主要な事業における主な履行義務の内容と、当該履行義務を充足する通常の時点を注記します(第80-2項) |
|---|---|
| 収益の分解情報 | 当期に認識した収益を、主要な要因に基づく区分に分解して注記します(第80-10項、第80-11項) |
| 収益を理解するための 基礎となる情報 |
契約及び履行義務、取引価格の算定、配分額の算定、充足時点、重要な判断を注記します(第80-12項から第80-19項) |
| 当期及び翌期以降の 収益の金額を理解するための情報 |
契約資産・契約負債の残高等と、残存履行義務に配分した取引価格を注記します(第80-20項から第80-24項) |
重要な会計方針として注記する2項目
収益に関する重要な会計方針として求められているのは、企業の主要な事業における主な履行義務の内容と、企業が当該履行義務を充足する通常の時点、すなわち収益を認識する通常の時点の2つです(収益認識に関する会計基準 第80-2項)。この2項目以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容があれば重要な会計方針として注記します(収益認識に関する会計基準 第80-3項)。
実務で迷いやすいのが重要な会計方針と収益認識に関する注記の重複ですが、重要な会計方針として注記している内容は収益認識に関する注記として重ねて記載しないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-8項)。
上場準備会社の初回の有価証券報告書では、重要な会計方針の記載が「収益を認識しています」という一般論にとどまり、自社の履行義務の内容が読み取れないケースが散見されます。主な事業ごとに、何を約束し、いつ支配が移転するのかを具体的に書き分けることが、監査上の指摘を避ける近道になります。
収益の分解情報と区分の選び方
収益の分解情報は、当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解して注記するものです(収益認識に関する会計基準 第80-10項、第178項)。どの程度まで分解するかは企業の実態に即した事実及び状況に応じて決定し、複数の区分に分解する必要がある企業もあれば、単一の区分のみで足りる企業もあります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-3項)。
分解に用いる区分の例
適用指針は、収益を分解するための区分として次の例を挙げています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-5項)。ただし、この例示はチェックリストや網羅的なリストとして利用されることを意図したものではありません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第190項)。
| 財又はサービスの種類 | 主要な製品ライン |
|---|---|
| 地理的区分 | 国又は地域 |
| 市場又は顧客の種類 | 政府と政府以外の顧客 |
| 契約の種類 | 固定価格と実費精算契約 |
| 契約期間 | 短期契約と長期契約 |
| 財又はサービスの 移転の時期 |
一時点で顧客に移転される財又はサービスから生じる収益と、一定の期間にわたり移転される財又はサービスから生じる収益 |
| 販売経路 | 消費者に直接販売される財と仲介業者を通じて販売される財 |
区分を選ぶときの手がかりも基準に示されています。決算発表資料や年次報告書、投資家向け説明資料など財務諸表外で開示している情報、最高経営意思決定機関が事業セグメントの業績評価のために定期的に検討している情報、そして企業や財務諸表利用者が資源配分の意思決定や業績評価に使用する情報において、収益がどのように分解されているかを考慮します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-4項)。
実務では、決算説明会資料で使っている売上区分と注記の分解区分が食い違っていると、監査人から整合性を問われます。IRで外部に説明している切り口を出発点に据えるのが、もっとも説明のつきやすい進め方です。
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セグメント情報との関係
セグメント情報等の開示に関する会計基準を適用している場合には、分解情報と、各報告セグメントについて開示する売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記する必要があります(収益認識に関する会計基準 第80-11項)。適用指針の開示例1でも、主たる地域市場・主要な財又はサービスのライン・収益認識の時期による分解と、報告セグメントとの関連を示す調整表が示されています。
逆に、セグメント情報として開示される売上高に関する情報が収益認識会計基準の会計処理に基づいており、かつ主要な要因に基づく区分に分解した情報として十分であると判断される場合には、セグメント情報に追加して収益の分解情報を注記する必要はないと考えられています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第191項)。
また、収益認識に関する注記として記載する内容を財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができます(収益認識に関する会計基準 第80-9項)。既存のセグメント情報の区分が分解区分に適うと判断される場合が、この参照の典型例として結論の背景に示されています(収益認識に関する会計基準 第172項、第173項)。
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収益を理解するための基礎となる情報
2つ目のブロックは、顧客との契約が財務諸表の表示項目や他の注記事項とどのように関連しているのかを示す情報で、注記する事項は5つに整理されています(収益認識に関する会計基準 第80-12項)。これらは収益認識の5つのステップと対応しており、契約及び履行義務に関する情報がステップ1及び2、取引価格の算定がステップ3、履行義務への配分額の算定がステップ4、履行義務の充足時点がステップ5に対応します(収益認識に関する会計基準 第179項)。
| 契約及び履行義務に関する情報 | 履行義務の内容と重要な支払条件を記載します。代理人として行動する場合、返品・返金及びその他の類似の義務、保証及び関連する義務が契約に含まれる場合はその内容も注記します(第80-13項、第80-14項、第80-15項) |
|---|---|
| 取引価格の算定に関する情報 | 変動対価の算定、見積りが制限される場合の評価、重要な金融要素、現金以外の対価、返品・返金等の義務の算定に用いた見積方法・インプット・仮定を記載します(第80-16項) |
| 履行義務への配分額の 算定に関する情報 |
独立販売価格の見積りや、契約の特定の部分に値引き・変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分について記載します(第80-17項) |
| 履行義務の充足時点に 関する情報 |
収益を認識する通常の時点、一定の期間にわたり充足される履行義務について使用した方法とその根拠、一時点で充足される履行義務について支配の移転時点を評価した重要な判断を記載します(第80-18項) |
| 本会計基準の適用に おける重要な判断 |
基準を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるものを記載します(第80-19項) |
履行義務を充足する通常の時点には、例えば商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時が挙げられます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-6項)。一定の期間にわたり充足される履行義務については、使用したアウトプット法又はインプット法の記述と、当該方法をどのように適用しているのかの記述を行います(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-7項)。
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契約残高と残存履行義務の注記
3つ目のブロックは、当期の収益とキャッシュ・フローの関係を示す契約資産及び契約負債の残高等と、翌期以降の収益の見通しを示す残存履行義務に配分した取引価格の2つから構成されます。
契約資産及び契約負債の残高等
履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、次の事項を注記します(収益認識に関する会計基準 第80-20項)。
- 顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高(区分して表示していない場合)
- 当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
- 当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容
- 履行義務の充足の時期が通常の支払時期にどのように関連するのか、並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明
加えて、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から当期に認識した収益がある場合には、当該金額を注記します(収益認識に関する会計基準 第80-20項)。
期首・期末の残高は、次のようなかたちで示すことになります。以下は自社作例の数値です(単位:千円)。
| 顧客との契約から生じた債権 | 期首残高 42,000/期末残高 48,000 |
|---|---|
| 契約資産 | 期首残高 8,500/期末残高 11,000 |
| 契約負債 | 期首残高 6,000/期末残高 18,000 |
このうち「期首現在の契約負債残高に含まれていた額」は、勘定の動きで捉えると理解しやすくなります。財又はサービスを顧客に移転する前に対価を受け取った時点で契約負債を計上し(収益認識に関する会計基準 第78項)、その後、履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識します(収益認識に関する会計基準 第35項)。
次の仕訳は自社作例です。前期に1年分の保守サービス料12,000千円を受領して契約負債に計上し、前期末までに6か月分を収益として認識した結果、当期首の契約負債残高は6,000千円となっています。当期にこの履行義務をすべて充足しました(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 契約負債 | 6,000 | 売上高 | 6,000 |
この6,000千円が、当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額として注記される金額です(収益認識に関する会計基準 第80-20項)。前受金型のビジネスでは、この金額が翌期の売上の見通しを読むうえで重要な情報になります。
なお、残高の重要な変動の例としては、企業結合による変動、進捗度や取引価格の見積りの見直しによる修正、対価に対する権利が無条件となるまでの通常の期間の変化などが挙げられており、この注記に必ずしも定量的情報を含める必要はありません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-8項)。契約資産及び契約負債の期首から期末への合計額の調整を表形式で注記することも求められていません(収益認識に関する会計基準 第192項)。
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残存履行義務に配分した取引価格
既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期を理解できるよう、当期末時点で未充足(又は部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額と、その金額をいつ収益として認識すると見込んでいるのかを注記します(収益認識に関する会計基準 第80-21項)。後者は、残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用する方法と、定性的情報を使用する方法のいずれかを選べます。適用指針では、開示例2-2・開示例2-3で定量的情報による注記例が、開示例3で定性的情報による注記例が示されています。
一方で、次のいずれかに該当する場合には、この注記に含めないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-22項)。
| 契約期間が1年以内の 履行義務 |
履行義務が、当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である場合 |
|---|---|
| 請求権のある金額で 収益を認識している場合 |
履行義務の充足から生じる収益を、適用指針第19項に従って認識している場合 |
| 一定の要件を満たす 変動対価 |
売上高又は使用量に基づくロイヤルティ、又は完全に未充足の履行義務に配分される変動対価である場合 |
ただし、この便法を使ったら黙って省略してよいわけではありません。いずれの条件に該当しているか、及び注記に含めていない履行義務の内容を注記する必要があります(収益認識に関する会計基準 第80-24項)。取引価格に含まれない変動対価の額等があるために注記に含めていないものがある場合も、その旨を注記します(収益認識に関する会計基準 第80-23項)。省略できるのは変動部分についてのみで、固定部分は注記の対象となる点にも注意が必要です(収益認識に関する会計基準 第201項)。
注記に含めるか否かの判断は、収益の分解情報を区分する単位ごと、あるいはセグメントごとに行うことも考えられ、その場合は注記に含めた分解区分等を注記することが考えられます(収益認識に関する会計基準 第205項)。長期契約と短期契約が混在する企業では、この判断単位の設計が注記作成の負担を大きく左右します。
注記を省略できる場合
重要性に乏しい注記事項
収益認識に関する注記に掲げられた各注記事項のうち、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項は記載しないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-5項ただし書)。どの注記事項にどの程度の重点を置くかも開示目的に照らして判断し、重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載して有用な情報が不明瞭とならないよう、注記は集約又は分解します(収益認識に関する会計基準 第80-6項)。これらの注記事項は、最低限の注記のチェックリストとして用いられることを意図したものではありません(収益認識に関する会計基準 第167項)。
重要性に乏しいと認められるか否かの判断は、定量的な要因と定性的な要因の両方を考慮する必要があります。定量的な要因のみで判断した場合に重要性がないとは言えない場合であっても、開示目的に照らして重要性に乏しいと判断される場合もあります(収益認識に関する会計基準 第168項)。実務では金額基準だけで省略を結論づけて監査人と見解が分かれることが少なくないため、定性面まで含めて判断根拠を文書化しておくことが求められます。
連結を作成している場合の個別財務諸表
連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では注記が大幅に簡略化されます。これは、金融商品取引法に基づき作成される個別財務諸表の簡素化の趣旨、財務諸表利用者が個別財務諸表における収益の状況を分析できるようにする観点、及び財務諸表作成者の負担等を考慮したものです(収益認識に関する会計基準 第206項、第207項)。
| 損益計算書・貸借対照表 の表示に関する定め |
第78-2項、第78-3項及び第79項の表示及び注記の定めを適用しないことができます(第80-25項) |
|---|---|
| 収益の分解情報 | 注記しないことができます(第80-26項) |
| 当期及び翌期以降の 収益の金額を理解するための情報 |
注記しないことができます(第80-26項) |
| 収益を理解するための 基礎となる情報 |
注記は必要ですが、連結財務諸表における記載を参照することができます(第80-27項) |
つまり、個別財務諸表で実質的に求められるのは、重要な会計方針の注記と、収益を理解するための基礎となる情報の2つです。上場準備会社では、申請期の個別財務諸表と連結財務諸表で注記の量が大きく異なるため、どちらの様式で作成しているのかを整理したうえで注記の作成範囲を確定すると手戻りを防げます。
適用時期と改正の経緯
収益認識に関する会計基準は2018年に公表され、2020年に改正されました。2020年改正会計基準は、顧客との契約から生じる収益に関して主に表示及び注記事項の定めを改正するものであり(収益認識に関する会計基準 第208項)、本記事で扱った注記の枠組みはこの改正で整備されたものです。
2020年改正会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(収益認識に関する会計基準 第81項)。早期適用として、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの適用や、2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までの年度末に係る財務諸表からの適用も認められていました(収益認識に関する会計基準 第82項、第83項)。
その後、2024年にもリース会計基準(企業会計基準第34号)の公表に伴う改正が行われており、2024年改正会計基準では結論の背景における「範囲」の記載の一部が削除されています(収益認識に関する会計基準 第96-3項)。この2024年改正会計基準の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とされており(収益認識に関する会計基準 第83-3項)、リース会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。注記事項の枠組みそのものは2020年改正の内容がすでに適用されており、2024年改正はリースとの範囲調整が中心です。
適用指針も同じ経緯をたどっており、2018年の公表後、2020年改正、2021年改正(代替的な取扱いの追加)を経て、2024年にリース会計基準の公表に伴う買戻契約の取扱いに関する改正が行われました(収益認識に関する会計基準の適用指針 第109項から第109-4項)。適用時期はそれぞれ2020年改正会計基準、2024年公表のリース会計基準と同様とされています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第107項、第107-2項)。
実務で注記を組み立てる際の留意点
第一に、基準が示す区分に機械的に従う必要はありません。例えば収益の分解情報の区分に関連付けて履行義務に関する情報等の必要な項目を記載することが考えられるとされています(収益認識に関する会計基準 第80-7項、第170項)。事業別の説明が自然な企業であれば、事業ごとに履行義務と収益認識時点をまとめて書く構成のほうが読み手に伝わります。
第二に、他の注記との重複は参照で解消します。重要な会計方針として注記した内容は収益認識に関する注記として記載しないことができ、他の注記事項に含めて記載している内容は当該他の注記事項を参照することができます(収益認識に関する会計基準 第80-8項、第80-9項)。セグメント情報と分解情報の関係はその代表例です。
第三に、省略の判断根拠を残すことです。とくに残存履行義務の便法は、適用したこと自体と対象となる履行義務の内容を注記する必要があるため(収益認識に関する会計基準 第80-24項)、省略の意思決定と注記の記載はセットで管理してください。
収益の分解区分の設計、セグメント情報との整合、重要性による省略の可否は、いずれも自社の契約形態と管理体制を踏まえた個別判断になります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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収益認識に関する注記は、重要な会計方針の注記と、収益認識に関する注記の3区分(収益の分解情報/収益を理解するための基礎となる情報/当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)で構成されます(収益認識に関する会計基準 第80-2項、第80-5項)。
分解情報は主要な要因に基づく区分で作成し、セグメント情報として開示する売上高との関係を理解できる情報を注記します(収益認識に関する会計基準 第80-11項)。契約残高では期首・期末残高に加えて期首の契約負債残高から当期に認識した収益の額まで、残存履行義務では便法を適用した事実まで注記が求められます(収益認識に関する会計基準 第80-20項、第80-24項)。
重要性に乏しい注記事項は記載しないことができ(収益認識に関する会計基準 第80-5項ただし書)、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表では分解情報と契約残高等の注記を省略できます(収益認識に関する会計基準 第80-26項)。2020年改正会計基準は2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されており(収益認識に関する会計基準 第81項)、注記の枠組みはすでに実務に定着した段階にあります。
参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第29号 収益認識に関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第30号 収益認識に関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
よくある質問
収益の分解情報は必ず表形式で開示する必要がありますか。
基準は表形式での開示を求めていません。求められているのは、当期に認識した収益を主要な要因に基づく区分に分解して注記することです(収益認識に関する会計基準 第80-10項)。ただし、セグメント情報として開示する売上高との関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報が必要になるため(収益認識に関する会計基準 第80-11項)、報告セグメントを列に、分解区分を行に置いた表が実務では一般的です。
セグメント情報を開示していれば収益の分解情報は不要ですか。
セグメント情報等の開示に関する会計基準に基づいて開示される売上高に関する情報が、収益認識会計基準の会計処理の定めに基づいており、かつ主要な要因に基づく区分に分解した情報として十分であると判断される場合には、セグメント情報に追加して収益の分解情報を注記する必要はないと考えられています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第191項)。判断の前提が満たされているかを、自社の分解軸に照らして確認してください。
契約資産・契約負債の期首から期末への調整表は必要ですか。
必要ありません。契約資産及び契約負債の期首から期末への合計額の調整を表形式で注記することは求められていません(収益認識に関する会計基準 第192項)。求められるのは、期首残高及び期末残高、期首の契約負債残高から当期に認識した収益の額、残高の重要な変動がある場合のその内容などです(収益認識に関する会計基準 第80-20項)。なお、重要な変動の注記に必ずしも定量的情報を含める必要はありません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第106-8項)。
契約期間が1年以内なら残存履行義務は一切注記しなくてよいのですか。
当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である履行義務は、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-22項)。ただし、この条件に該当するため注記に含めていない場合には、いずれの条件に該当しているか、及び注記に含めていない履行義務の内容を注記する必要があります(収益認識に関する会計基準 第80-24項)。省略した事実そのものは開示の対象になります。
個別財務諸表ではどこまで注記を省略できますか。
連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表では収益の分解情報と、当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報を注記しないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-26項)。収益を理解するための基礎となる情報については、連結財務諸表における記載を参照することができます(収益認識に関する会計基準 第80-27項)。表示に関する定めも適用しないことができます(収益認識に関する会計基準 第80-25項)。