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セグメント情報等の開示に関する会計基準|マネジメント・アプローチの実務

2026-07-19
目次

セグメント情報等の開示は、財務諸表利用者が企業の過去の業績を理解し、将来のキャッシュ・フローを適切に評価できるよう、企業が行う事業活動の内容とその経営環境に関する情報を提供する開示です。企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」は、経営者の視点に基づくマネジメント・アプローチを採用し、報告セグメントの決定から開示項目までを定めています。本稿では、事業セグメントの識別、報告セグメントの決定に用いる量的基準(10%基準・75%ルール)、開示項目と差異調整、関連情報の開示までを、上場準備の実務視点で解説します。企業会計基準委員会 企業会計基準第17号 セグメント情報等の開示に関する会計基準

マネジメント・アプローチの考え方

マネジメント・アプローチとは、経営者が経営上の意思決定を行い、また業績を評価するために企業を事業の構成単位に分割した方法を基礎として、セグメント情報を開示する方法です。企業会計基準第17号は、国際的な会計基準と同様にこの方法を採用しており、セグメントの区分方法や測定方法を特定の方法に限定せず、経営者の意思決定や業績評価に実際に使用されている情報に基づいて一組のセグメント情報を開示することを求めています。従来の「事業の種類別セグメント情報」「所在地別セグメント情報」「海外売上高」を分解する方法との違いは、経営者が実際に用いている情報に基づくか否かという点にあります。

この方法の長所は、財務諸表利用者が経営者の視点で企業を見ることにより経営者の行動を予測でき、将来キャッシュ・フローの評価に反映できる点にあります。加えて、セグメント情報の基礎となる財務情報は経営者が利用するために既に作成されており、企業が必要とする追加的費用が比較的少なく、実際の組織構造に基づくため区分に恣意性が入りにくいという特徴があります。上場準備の局面では、社内の管理会計・組織構造そのものが開示の出発点となるため、内部管理資料と開示情報の整合性を早期に整えておくことが重要です。

事業セグメントの識別

事業セグメントとは、企業の構成単位のうち、次の要件のすべてに該当するものをいいます。区分方法が複数ある場合は、各構成単位の事業活動の特徴、責任を有する管理者の存在、取締役会等に提出される情報などの要素に基づいて、単一の区分方法を決定します。

収益・費用 収益を稼得し、費用が発生する事業活動に関わるものであること(同一企業内の他の構成単位との取引に関連する収益及び費用を含む)
定期的な検討 企業の最高経営意思決定機関が、配分すべき資源に関する意思決定を行い、また業績を評価するために、その経営成績を定期的に検討するものであること
財務情報 分離された財務情報を入手できるものであること

ここでいう最高経営意思決定機関とは、企業の事業セグメントに資源を配分し、その業績を評価する機能を有する主体をいい、取締役会や執行役員会議といった会議体のほか、最高経営責任者(CEO)や最高執行責任者(COO)といった個人である場合も考えられます。なお、本社や特定の部門のように、収益を稼得していない、又は付随的な収益を稼得するに過ぎない構成単位は、事業セグメント又はその一部とはなりません。連結子会社がそれぞれ事業セグメントを構成することもあり、その場合の資源配分・業績評価は企業集団としての経営の見地から行われる必要があります。

報告セグメントの決定

報告セグメントは、識別された事業セグメント又は集約された事業セグメントの中から、量的基準に従って決定します。決定プロセスは、集約基準の検討、量的基準の判定、75%ルールによる追加識別という順序で進みます。

集約基準

複数の事業セグメントが次の要件のすべてを満たす場合、これらを1つの事業セグメントに集約できます。すなわち、集約が基本原則と整合していること、経済的特徴が概ね類似していること、そして製品・サービスの内容、製造方法・提供方法、販売する市場又は顧客の種類、販売方法、規制環境という要素が概ね類似していることです。経済的特徴が概ね類似しているといえるためには、それらの事業セグメントが長期的に近似した業績の動向(例えば長期的な売上総利益率の近似)を示すことが見込まれている必要があります。

量的基準(10%基準)

企業は、次の量的基準のいずれかを満たす事業セグメントを報告セグメントとして開示しなければなりません。ここで、売上高には事業セグメント間の内部売上高又は振替高を含み、役務収益も含みます。利益又は損失については、利益の生じている全事業セグメントの利益合計額と、損失の生じている全事業セグメントの損失合計額の絶対値のうち、いずれか大きい額を分母とします。

売上高基準 売上高が、すべての事業セグメントの売上高の合計額の10%以上であること
利益(損失)基準 利益又は損失の絶対値が、利益計上セグメントの利益合計額又は損失計上セグメントの損失合計額の絶対値のいずれか大きい額の10%以上であること
資産基準 資産が、すべての事業セグメントの資産の合計額の10%以上であること

量的基準のいずれにも満たない事業セグメントを、企業の判断で報告セグメントとして開示することは妨げられません。また、量的基準を満たさない複数の事業セグメントであっても、経済的特徴が概ね類似し、かつ集約基準の要素の過半数について概ね類似している場合には、これらを結合して報告セグメントとすることができます。

75%ルールとその他区分

報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が損益計算書の売上高の75%未満である場合には、その75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加して識別しなければなりません。報告セグメントに含まれない事業セグメント及びその他の収益を稼得する事業活動に関する情報は、差異調整の中で「その他」の区分に一括して開示します。この場合、「その他」に含まれる主要な事業の名称等をあわせて開示します。

報告セグメントの外部顧客売上高合計 ≥ 損益計算書の売上高 × 75%

なお、報告すべきセグメントの数について一定の限度は定められていませんが、その数が10を超える場合には、当該区分による開示が財務諸表利用者に適切な情報を提供するものであるかを慎重に判断することが必要とされています。また、前年度に報告セグメントとされた事業セグメントが当年度に量的基準を下回る場合でも、引き続き重要であると判断されるときは、区分して継続的に開示します。

上場準備では、管理会計上のセグメント区分が量的基準・75%ルールに照らして開示上どう整理されるかを、申請期の数期前から検証しておく必要があります。

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セグメント情報の開示項目

セグメント情報として開示すべき事項は、報告セグメントの概要、各報告セグメントの利益(又は損失)・資産・負債及びその他の重要な項目の額並びにその測定方法に関する事項、そして開示項目の合計額と財務諸表計上額との間の差異調整に関する事項の3つに大別されます。

報告セグメントの概要

報告セグメントの概要としては、報告セグメントの決定方法と、各報告セグメントに属する製品及びサービスの種類を開示します。決定方法については、事業セグメントを識別するために用いた方法(例えば製品・サービス別、地域別、規制環境別、又はこれらの組合せ等、事業セグメントの基礎となる要素)や、複数の事業セグメントを集約した場合にはその旨等を記載します。

利益・資産・負債等の額

企業は、各報告セグメントの利益(又は損失)及び資産の額を開示しなければなりません。負債に関する情報が最高経営意思決定機関に対して定期的に提供され、使用されている場合には、各報告セグメントの負債の額も開示します。加えて、報告セグメントの利益(又は損失)の算定に含まれている場合、又はセグメント別の情報が最高経営意思決定機関に定期的に提供・使用されている場合には、次のような項目を各報告セグメントについて開示します。

  • 外部顧客への売上高、事業セグメント間の内部売上高又は振替高
  • 減価償却費(のれんを除く無形固定資産に係る償却費を含む)、のれんの償却額及び負ののれんの償却額
  • 受取利息及び支払利息、持分法投資利益(又は損失)
  • 特別利益及び特別損失(主な内訳をあわせて開示)、税金費用(法人税等及び法人税等調整額)
  • 持分法適用会社への投資額(当年度末残高)、有形固定資産及び無形固定資産の増加額(当年度の投資額)

測定方法に関する事項

これらの開示は、事業セグメントに資源を配分する意思決定を行い、その業績を評価する目的で、最高経営意思決定機関に報告される金額に基づいて行わなければなりません。特定の収益・費用・資産・負債を事業セグメントに配分する場合には、合理的な基準に従って配分する必要があります。企業は、報告セグメント間の取引の会計処理の基礎、報告セグメントの利益(又は損失)と損益計算書計上額との差異の内容、測定方法を前年度から変更した場合の内容など、少なくとも一定の事項を開示しなければなりません。事業セグメントに資産を配分していない場合には、その旨を開示します。

差異調整に関する事項

企業は、報告セグメントの売上高・利益(又は損失)・資産・負債それぞれの合計額と、損益計算書又は貸借対照表の対応する計上額との間の差異調整に関する事項を開示します。事業セグメント等に配分しないこととした全社収益・全社費用・全社資産・全社負債(全社費用等)がある場合は、この差異調整に関する事項として開示します。差異調整の相手方となる利益は、営業利益(又は損失)、経常利益(又は損失)、税金等調整前当期純利益(又は損失)などのうち、企業の事業内容等から適当と判断される科目とし、当該科目を開示します。

マネジメント・アプローチによる区分では、製品・サービスや地域を基礎としたセグメント情報が開示されない可能性があるため、比較可能性を補う補完的情報として、次の関連情報を開示します。セグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合を除きます。報告すべきセグメントが1つしかない企業であっても、関連情報の開示は必要です。関連情報に開示される金額は、財務諸表を作成するために採用した会計処理に基づく数値によります。

関連情報 重要性の判断基準
製品及びサービス 製品・サービス区分ごとの外部顧客への売上高が損益計算書の売上高の10%以上の区分について開示。単一区分の売上高が90%超の場合は省略可
地域(売上高・有形固定資産) 国内と海外に大別して開示。海外の単一の国への売上高が損益計算書売上高の10%以上等の場合、当該国を区分して開示。国内が90%超の場合は省略可
主要な顧客 単一の外部顧客への売上高が損益計算書の売上高の10%以上である場合、当該顧客の名称、売上高、関連する主な報告セグメント名を開示

減損損失・のれんに関する報告セグメント別情報

セグメント情報及び関連情報に加えて、財務諸表利用者にとって有用な情報として、固定資産の減損損失及びのれんに関する報告セグメント別情報の開示も定められています。損益計算書に固定資産の減損損失を計上している場合には、財務諸表作成に採用した会計処理に基づく数値によって、その報告セグメント別の内訳を開示します。報告セグメントに配分されていない減損損失がある場合は、その額と内容を記載します。また、損益計算書にのれんの償却額又は負ののれんの償却額を計上している場合には、その償却額及び未償却残高に関する報告セグメント別の内訳を開示します。いずれもセグメント情報の中で同様の情報が開示されている場合には、当該情報の開示を要しません。

適用時期

本会計基準は、平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用されています。適用初年度において、当年度のセグメント情報とともに報告される前年度のセグメント情報については、本会計基準に準拠して作り直した情報を開示することが原則とされますが、これが実務上困難な場合には、当年度のセグメント情報を前年度の取扱いに基づき作成した情報を開示することができるとされていました。組織構造の変更等により報告セグメントの区分方法を変更する場合には、その旨及び前年度のセグメント情報を当年度の区分方法により作り直した情報を開示します。

報告セグメントの決定や差異調整の設計は、企業の組織構造や管理会計と密接に関わり、判断を要する場面が少なくありません。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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まとめ

セグメント情報等の開示に関する会計基準は、経営者の視点を財務諸表に反映するマネジメント・アプローチを採用し、事業セグメントの識別、量的基準(売上高・利益・資産の10%基準)と75%ルールによる報告セグメントの決定、開示項目・測定方法・差異調整、そして製品サービス・地域・主要顧客の関連情報開示までを体系的に定めています。開示の出発点は経営者が実際に用いる内部情報であるため、上場準備では管理会計上の区分と開示情報の整合性を早期に確認することが実務上の鍵となります。減損損失・のれんの報告セグメント別情報も含め、自社の組織構造に即した判断が求められます。

参考文献

よくある質問

マネジメント・アプローチとは何ですか。

経営者が経営上の意思決定を行い、業績を評価するために企業を事業の構成単位に分割した方法を基礎として、セグメント情報を開示する方法です。企業会計基準第17号はこの方法を採用し、経営者が実際に用いている内部情報に基づいて一組のセグメント情報を開示することを求めています。

報告セグメントを決定する量的基準を教えてください。

売上高がすべての事業セグメントの売上高合計の10%以上、利益又は損失の絶対値が利益計上セグメント合計額又は損失計上セグメント合計額の絶対値のいずれか大きい額の10%以上、資産がすべての事業セグメントの資産合計の10%以上、のいずれかを満たす事業セグメントが報告セグメントとなります。

75%ルールとは何ですか。

報告セグメントの外部顧客への売上高の合計額が損益計算書の売上高の75%未満である場合に、その75%以上が報告セグメントに含まれるまで、報告セグメントとする事業セグメントを追加して識別しなければならないという要件です。

この会計基準はいつから適用されていますか。

平成22年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用されています。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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