労働組合の組合費の相場は、組合員1人あたり月3,736円です。厚生労働省が2021年に実施した労働組合活動等に関する実態調査では、1人平均月間組合費が3,736円となっており、金額階級別では「4,000円以上5,000円未満」が20.0%で最も多くなっています。
ただし、この平均額は企業規模によって2,855円から4,290円まで開きがあり、自組合の水準が高いか低いかを平均値だけで判断することはできません。組合費の額そのものに法令上の上限や基準はなく、決めるのは組合の規約と総会です。規約に定めるべき事項と規約改正の手続は、労働組合法が規律しています(労働組合法 第5条第2項各号)。
この記事では、公的統計に基づく組合費の相場と、その数字の正しい読み方を整理したうえで、組合費の決め方・徴収方法、そして「何に使ったか」を組合員へ示す会計報告の義務までを条文に沿って解説します。
組合費の相場と平均額
組合費の水準を示す公的な統計は、厚生労働省の労働組合活動等に関する実態調査です。組合費の金額が調査されたのは2021年調査が直近であり、これが現時点で参照できる最新の公表値になります。
1人平均月間組合費の水準
2021年調査における1人平均月間組合費は3,736円でした。前回の2018年調査では3,707円であり、3年間で微増にとどまっています。組合費の水準は、賃上げの動向とは異なり、短期間で大きく動くものではありません。
ここでいう1人平均月間組合費とは、組合員1人当たりの平均月間組合費の記入があった労働組合について集計したもので、1労働組合ごとに回答した1人当たりの平均月間組合費の単純平均です。組合員数で加重した平均ではないため、規模の小さな組合の水準も1件として同じ重みで反映されている点を押さえておく必要があります。
金額階級別の分布
平均額よりも実務で参考になるのは、金額階級ごとの分布です。2021年調査の分布は次のとおりです。
| 1人平均月間組合費の階級 | 労働組合の割合 |
|---|---|
| 1,000円未満 | 5.0% |
| 1,000円以上2,000円未満 | 10.7% |
| 2,000円以上3,000円未満 | 15.3% |
| 3,000円以上4,000円未満 | 15.2% |
| 4,000円以上5,000円未満 | 20.0% |
| 5,000円以上6,000円未満 | 14.9% |
| 6,000円以上7,000円未満 | 6.1% |
| 7,000円以上8,000円未満 | 2.6% |
| 8,000円以上9,000円未満 | 1.4% |
| 9,000円以上 | 0.5% |
| 不明 | 8.2% |
最も多い階級は「4,000円以上5,000円未満」の20.0%で、2018年調査の17.6%から比率が高まっています。一方で、2,000円以上6,000円未満の範囲に全体のおよそ3分の2が収まっており、組合費の実勢はかなり広い帯の中に分布していることが分かります。単一の平均値を「相場」と呼ぶよりも、この帯のどこに自組合が位置するかを見るほうが実態に合っています。
企業規模別・組合種類別の水準
組合費は企業規模によって明確な差があります。2021年調査では、企業規模が大きくなるほど組合費は高くなる傾向が示されています。
| 5,000人以上 | 4,290円 |
|---|---|
| 1,000〜4,999人 | 4,263円 |
| 500〜999人 | 3,947円 |
| 300〜499人 | 3,466円 |
| 100〜299人 | 3,058円 |
| 30〜99人 | 2,855円 |
最大規模と最小規模で1,435円の差があり、比率にすると1.5倍です。同じ「平均3,736円」でも、従業員100人規模の企業内労組にとっての基準は3,000円前後、数千人規模の企業であれば4,000円台が実勢ということになります。
労働組合の種類による違いも確認しておきます。
| 本部組合 | 4,125円 |
|---|---|
| 単位労働組合 | 3,714円 |
| 支部等の 単位扱組合 |
4,270円 |
| 単位組織組合 | 3,044円 |
単位組織組合が3,044円と最も低く、支部等の単位扱組合が4,270円と最も高くなっています。上部団体への上納金の有無や、組合が担う活動範囲の広さが、この差の背景にあると考えられます。
相場データを読むときの注意点
組合費の見直しを検討する際、統計値をそのまま自組合の目標値に置き換えるのは危険です。実務では次の3点を必ず確認しています。
第一に、調査の対象範囲です。労働組合活動等に関する実態調査は、民営事業所における労働組合員30人以上の労働組合から抽出して行われています。組合員が30人に満たない小規模な組合は母集団に含まれておらず、そうした組合の実勢はこの数字には表れません。
第二に、平均の算出方法です。前述のとおり単純平均であり、組合員数による加重平均ではありません。組合員数の多い大規模組合の水準が、平均値に規模相応の影響を与えているわけではない点に注意が必要です。
第三に、データの新しさです。組合費の金額は毎回の調査で必ず取り上げられる項目ではなく、次回の2023年調査では結果の概要が6項目にとどまり、組合費に関する結果は公表されていません。したがって直近の公表値は2021年調査のものであり、その後の物価上昇や賃金改定は反映されていません。定率方式を採っている組合であれば、賃上げに連動して実際の徴収額は統計値より上振れしている可能性があります。
背景として、労働組合の組織状況も押さえておくと説明に厚みが出ます。2025年6月30日現在、単一労働組合の労働組合数は22,244組合、労働組合員数は992万7千人で、推定組織率は16.0%と前年より0.1ポイント低下しています。組合員数が減れば1人あたりの負担は重くなりやすく、組合費の水準は組織拡大の課題と表裏一体です。
組合費の決め方と徴収方法
組合費の金額について、労働組合法は具体的な金額や算定方法を定めていません。いくらにするかは各組合の自治に委ねられており、その決定手続だけが法の規律を受けています。
規約と総会による決定
労働組合法は、労働組合の規約に含めなければならない事項を列挙しています(労働組合法 第5条第2項各号)。組合費はこの規約に定めるのが実務の基本です。関係するのは次の規定です。
| 組合員の 参与権と均等待遇 |
単位労働組合の組合員は、その労働組合のすべての問題に参与する権利および均等の取扱を受ける権利を有します(労働組合法 第5条第2項第3号)。 |
|---|---|
| 総会の開催 | 総会は、少なくとも毎年1回開催しなければなりません(労働組合法 第5条第2項第6号)。 |
| 規約改正の 手続 |
単位労働組合の規約は、組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正できません(労働組合法 第5条第2項第9号)。 |
実務上の意味は明確です。組合費の額を規約本体に書いている組合では、値上げにも値下げにも組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要になります(労働組合法 第5条第2項第9号)。一方、規約では算定方式の枠組みだけを定め、具体的な率や額は大会・総会の決議に委ねている組合も多く、この場合は総会決議で改定できます。どちらの建て付けかによって改定の重さがまったく変わるため、見直しの検討はまず自組合の規約の確認から始めます。
なお、これらの規約規定を欠くと、労働委員会に証拠を提出して法適合を立証できず、法に規定する手続に参与する資格を有せず、救済も与えられません(労働組合法 第5条第1項)。組合費の定め方は、単なる内部ルールではなく資格審査に直結する事項です。
定率方式・定額方式と併用方式
算定方式は、実務では大きく3つに分かれます。
- 定率方式。基本給や所定内賃金に一定率を乗じて算出します。賃上げに連動して組合財政が安定する一方、組合員ごとに負担額が異なります。
- 定額方式。全組合員が同額を負担します。分かりやすく事務も簡便ですが、賃金水準が上がっても収入は増えず、実質的な財政力は目減りします。
- 併用方式。定額部分に定率部分を上乗せします。若手の負担を抑えつつ財源の伸びも確保できるため、組合員の年齢構成が偏っている組合で採用されています。
どの方式でも、算定の基礎となる賃金の範囲(基本給のみか、諸手当を含むか)と、休職者・出向者・定年再雇用者の取扱いを規約または細則で明記しておかないと、運用の場面で必ず疑義が生じます。参与権と均等取扱いの要請(労働組合法 第5条第2項第3号)に照らしても、属性による差を設ける場合は合理的な説明ができる形にしておく必要があります。
給与天引き(チェック・オフ)の要件
組合費の徴収は、給与からの天引きによる方法が一般的です。ただし賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならないのが原則です(労働基準法 第24条第1項)。
この全額払いの原則には例外があり、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合に、賃金の一部を控除して支払うことができます(労働基準法 第24条第1項)。組合費のチェック・オフを行うには、この書面による協定が前提になります。協定を締結しないまま天引きを続けている運用は、賃金支払の原則に反する状態です。
組合費で組合を運営する理由
「会社に事務局の人件費を持ってもらえば組合費を下げられるのではないか」という発想は、組合の存立そのものを危うくします。組合費が必要なのは、労働組合が使用者から独立して運営されなければならないためです。
労働組合法上、団体の運営のための経費の支出につき使用者の経理上の援助を受けるものは、そもそも労働組合に当たらないとされています(労働組合法 第2条第2号)。さらに、使用者が労働組合の運営のための経費の支払につき経理上の援助を与えることは、不当労働行為として禁止されています(労働組合法 第7条第3号)。
ただし、いずれの規定にも例外があります。労働者が労働時間中に時間または賃金を失うことなく使用者と協議・交渉することを使用者が許すこと、厚生資金または経済上の不幸もしくは災厄を防止し、もしくは救済するための支出に実際に用いられる福利その他の基金に対する使用者の寄附、および最小限の広さの事務所の供与は、経理上の援助から除かれます(労働組合法 第2条第2号ただし書、第7条第3号ただし書)。
したがって、組合事務所の無償提供や福利基金への会社拠出は直ちに問題とはなりませんが、専従者の人件費や日常の活動費を会社が負担する形は認められません。組合費の水準は、この自主性を維持できるだけの財源を確保するという条件のもとで決まります。相場より低い水準に抑えること自体が目的化すると、活動の外部依存を招きかねません。
使途の透明化と会計報告
組合費への納得感を左右するのは、金額そのものよりも「何に使われているか」が見えるかどうかです。この点について労働組合法は、明確な公表義務を規約の必要記載事項として課しています。
会計報告の公表義務
労働組合の規約には、すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名ならびに現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨の規定を含まなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。
この条文が求めているのは3点です。第一に、収入と支出の「すべて」を示すこと。特別会計や共済会計を本会計から切り離したまま報告しない運用は、この要請を満たしません。第二に、会計監査人による正確であることの証明書を添えること。第三に、少なくとも毎年1回、組合員に公表することです。決算書を作って役員会で承認するだけでは足りず、組合員への公表まで含めて初めて義務を果たしたことになります。
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基金の流用と特別会計
組合費から積み立てた基金の使い方にも規律があります。共済事業その他福利事業のために特設した基金を他の目的のために流用しようとするときは、総会の決議を経なければなりません(労働組合法 第9条)。
実務で問題になりやすいのは、共済目的で積み立てた資金を一般会計の赤字補填やレクリエーション費用に振り替えている例です。総会決議を経ていなければ手続違反であり、会計報告の場で説明を求められたときに答えられません。使途を組合員に説明できる状態にしておくには、会計区分の設計と、区分をまたぐ資金移動の決議記録が必要です。
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「組合費が高い」と言われたときの説明
組合員から組合費への疑問が出たとき、「他社もこの程度です」という相場論だけで答えると、かえって不信を招きます。実務でお勧めしているのは、次の順序で組み立てる説明です。
- 水準の位置づけ。全国平均3,736円に対する自組合の位置を、企業規模別の水準(自社規模に対応する金額)と併せて示します。平均だけでなく分布の帯の中でどこにあるかを添えると、説得力が変わります。
- 使途の内訳。年度予算のうち、団体交渉・教育活動・上部団体への上納金・人件費・共済がそれぞれどの程度を占めるかを金額と割合で示します。
- 決定の経緯。現在の金額がいつ、どの総会・投票で決まったかを示します(労働組合法 第5条第2項第6号・第9号)。
- 検証の状況。会計報告に会計監査人の証明書が添えられていること、その監査で何を確認したかを説明します(労働組合法 第5条第2項第7号)。
このうち組合員が最も重く受け止めるのは、4点目の検証の状況です。金額の妥当性を役員が自ら主張しても、身内の説明にとどまります。組合員から委嘱された会計監査人による証明が付いていることが、数字の信頼性を担保します。
逆に、内部監査だけで済ませている組合では、金額の説明はできても「その数字が正しいこと」の説明ができません。組合費の見直しや増額を提案する局面ほど、外部の会計監査の有無が議論の帰趨を分けます。
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まとめ
組合費の相場は、2021年の労働組合活動等に関する実態調査における1人平均月間組合費3,736円が公的な基準値です。最も多い階級は「4,000円以上5,000円未満」の20.0%で、企業規模別には30〜99人の2,855円から5,000人以上の4,290円まで開きがあります。自組合の水準は、全体平均ではなく規模と組合種類に対応する数字と比べるのが実務的です。
金額の決め方に法令上の基準はありませんが、決定手続は規約と総会に委ねられており、規約本体に額を定めている場合の改定には組合員の直接無記名投票による過半数の支持が必要です(労働組合法 第5条第2項第9号)。また、使用者からの経費援助に頼れない以上(労働組合法 第2条第2号、第7条第3号)、組合費は自主性を支える財源そのものです。
そして組合費への納得感を最終的に支えるのは、すべての財源および使途を示す会計報告を、会計監査人の証明書とともに毎年1回組合員へ公表する仕組みです(労働組合法 第5条第2項第7号)。相場との比較に答えを求める前に、この公表の質を上げることが、組合費をめぐる議論を前に進める最短の道になります。
規約の建て付けや会計区分の設計は組合ごとに異なり、適切な対応は個別の事情によって変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。当事務所では、労働組合の会計監査に加えて、会計報告の様式整備や組合費の使途区分の設計についても無料相談を承っています。
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よくある質問
組合費の相場は月いくらですか。
厚生労働省の労働組合活動等に関する実態調査によると、2021年調査の1人平均月間組合費は3,736円です。金額階級別では「4,000円以上5,000円未満」が20.0%で最も多く、2,000円以上6,000円未満の範囲におよそ3分の2の組合が分布しています。なお、この調査は労働組合員30人以上の労働組合を対象としています。
組合費は企業規模によって違いますか。
違います。2021年調査の企業規模別の1人平均月間組合費は、5,000人以上が4,290円、1,000〜4,999人が4,263円、500〜999人が3,947円、300〜499人が3,466円、100〜299人が3,058円、30〜99人が2,855円で、企業規模が大きくなるほど高くなる傾向が示されています。
組合費の金額は誰がどのように決めますか。
法令に金額の基準はなく、各組合の規約と総会で決めます。総会は少なくとも毎年1回開催する必要があり(労働組合法 第5条第2項第6号)、単位労働組合の規約は組合員の直接無記名投票による過半数の支持を得なければ改正できません(労働組合法 第5条第2項第9号)。規約本体に金額を定めているか、算定方式のみを定めているかで改定手続の重さが変わります。
組合費の使い道は組合員に公表されますか。
公表されます。労働組合の規約には、すべての財源および使途、主要な寄附者の氏名ならびに現在の経理状況を示す会計報告を、組合員によって委嘱された職業的に資格がある会計監査人による正確であることの証明書とともに、少なくとも毎年1回組合員に公表する旨の規定を含まなければなりません(労働組合法 第5条第2項第7号)。
組合費を給与から天引きするには何が必要ですか。
賃金は通貨で直接労働者にその全額を支払うのが原則ですが、当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合、それがないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合には、賃金の一部を控除して支払うことができます(労働基準法 第24条第1項)。組合費のチェック・オフにはこの書面による協定が必要です。