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リースの減価償却|使用権資産の償却方法・耐用年数と仕訳例

2026-08-21
目次

2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から強制適用される新しいリース会計基準では、借手はほぼすべてのリースについて使用権資産を計上し、これを減価償却していくことになります。従来のオペレーティング・リース取引のように、支払リース料をそのまま費用処理する処理は原則としてできなくなります。

実務でつまずきやすいのは「償却方法をどう選ぶか」「耐用年数を何年にするか」「そもそも償却しなくてよいリースはあるのか」の3点です。この記事では、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」と企業会計基準適用指針第33号の定めに沿って、使用権資産の減価償却の考え方を仕訳例つきで整理します。

使用権資産の減価償却の全体像

使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます(リースに関する会計基準 第10項)。借手は、リース開始日にリース負債を計上したうえで、リース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。

リース負債は、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。この利息相当額は、借手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分されます(リースに関する会計基準 第36項、リースに関する会計基準の適用指針 第39項)。

その結果、借手の損益計算書には、支払リース料という一本の費用ではなく、使用権資産の減価償却費リース負債に係る利息費用という性質の異なる2つの費用が計上されます。リース料の総額が変わらなくても、期間ごとの費用配分は前倒しになる点に注意が必要です。

使用権資産の
減価償却費
使用権資産の帳簿価額を、選択した償却方法により借手のリース期間等にわたって配分した費用
リース負債に
係る利息費用
利息相当額の総額を、原則として利息法によりリース期間中の各期に配分した費用。未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する

なお、リース負債に係る利息費用は、損益計算書において区分して表示するか、利息費用が含まれる科目及び金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。使用権資産そのものの認識や当初測定の全体像は、次のコラムで整理しています。

関連コラム使用権資産とは|認識・当初測定と償却・減損・表示の実務

償却方法と耐用年数の決定

使用権資産の減価償却は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかで扱いが分かれます。ここを取り違えると、耐用年数も残存価額も誤ることになるため、契約ごとの判定が出発点になります。

所有権が移転すると認められるリースの減価償却

契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに係る使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定します。この場合の耐用年数は経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。

ここでいう「所有権が借手に移転すると認められるリース」は、次のいずれかに該当するものをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第43項)。実質的に購入と変わらない取引を、自己所有資産と同じ土俵で償却させる趣旨です。

  • 契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース
  • 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実であるリース
  • 原資産が借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース
減価償却方法 原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法
耐用年数 経済的使用可能予測期間
残存価額 合理的な見積額

所有権が移転しないリースの減価償却

これに対し、所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリースに係る使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用して算定します。原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する必要はありません。この場合、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。

実務では定額法を採用する例が多くなりますが、基準上は定額法に限定されていません。自社の設備の使用実態に照らして、生産高比例法など他の方法が適切であれば選択できる、という建て付けです。一方で耐用年数は「原則として借手のリース期間」と定められているため、リース期間の決定が償却額を直接左右します。延長オプションや解約オプションの評価がずれると、償却費もずれます。

関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準

減価償却方法 定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用する。自己所有資産と同一の方法である必要はない
耐用年数 原則として借手のリース期間
残存価額 原則としてゼロ

仕訳例:所有権が移転しないリース

所有権が移転しないリースについて、初年度末の仕訳を作例で示します。前提は、リース負債及び使用権資産の当初計上額をいずれも25,000千円、借手のリース期間を5年、減価償却方法を定額法、残存価額をゼロとし、当期の利息相当額を1,250千円、当期のリース料支払額を5,800千円とします。減価償却は直接法により表示します(リースに関する会計基準 第36項、第38項。単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 5,000 使用権資産 5,000
支払利息 1,250 現金預金 5,800
リース負債 4,550

減価償却費は25,000千円をリース期間5年で配分した金額です。リース料の支払額5,800千円は、利息相当額1,250千円とリース負債の元本返済額4,550千円に区分されます。

減価償却費 = 25,000千円 ÷ 5年 = 5,000千円
リース負債の元本返済額 = 5,800千円 − 1,250千円 = 4,550千円

仕訳例:所有権が移転すると認められるリース

同じ設備でも、所有権移転条項が付されている場合は耐用年数が変わります。前提は、原資産を機械装置、使用権資産の当初計上額を30,000千円、借手のリース期間を5年とし、自ら所有していたと仮定した場合の減価償却方法は定額法、経済的使用可能予測期間は8年、残存価額はゼロと合理的に見積もられたものとします(リースに関する会計基準 第37項。単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 3,750 使用権資産 3,750
減価償却費 = 30,000千円 ÷ 8年 = 3,750千円

リース期間の5年ではなく、経済的使用可能予測期間の8年で配分している点が要点です。所有権移転の有無という契約条件の違いだけで、単年度の償却費が大きく変わります。契約書のドラフト段階で購入オプションや所有権移転条項の有無を確認しておくことが、決算の手戻りを防ぎます。

減価償却が生じないリースと簡便的な取扱い

すべてのリースについて使用権資産を計上して償却しなければならないわけではありません。基準は、実務負担に配慮した簡便的な取扱いを複数用意しています。適用すれば、そもそも減価償却費が生じない、あるいは減価償却費だけを計上すればよいことになります。

短期リースに関する簡便的な取扱い

短期リースとは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。借手は、短期リースについて、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。

この取扱いは、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、適用するか否かを選択することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。契約単位ではなく資産のグループ単位で方針を決める点が、社内ルールを整えるうえでの実務上のポイントです。

少額リースに関する簡便的な取扱い

次のいずれかを満たす場合も、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

基準額
による判定
重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース。基準額は、企業が採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができる
重要性・少額性
による判定
企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、又は新品時の原資産の価値が少額であるリース

重要性の乏しいリースについて金額を判定する際、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として借手のリース期間としますが、契約上定められた契約期間とすることもできます。また、維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することもできます(リースに関する会計基準の適用指針 第23項)。

使用権資産総額に重要性が乏しい場合

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法を適用することができます。この場合、使用権資産及びリース負債は借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみを計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第40項(1))。利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法を選ぶこともできます(リースに関する会計基準の適用指針 第40項(2))。

ここでいう「使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の借手のリース料の期末残高が、当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第41項)。

利息相当額を控除しない方法を採用した場合の仕訳を作例で示します。前提は、借手のリース期間を4年、借手のリース料の総額を4,800千円(毎期末に1,200千円を支払)とし、使用権資産及びリース負債をいずれも4,800千円で計上、減価償却方法は定額法、残存価額はゼロとします(リースに関する会計基準の適用指針 第40項(1)。単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 1,200 使用権資産 1,200
リース負債 1,200 現金預金 1,200

支払利息が計上されないため、各期の費用は減価償却費のみとなり、結果として支払リース料と同額が費用計上されます。判定基準である10パーセントは期末残高で判断するため、設備投資の増減によって年度ごとに判定結果が変わりうる点には留意が必要です。

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償却額が動く実務上の論点

使用権資産の帳簿価額は、当初計上額のまま固定されるわけではありません。次のような場面では帳簿価額が増減し、以後の減価償却費に影響します。

資産除去債務の計上

借手は、資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資産であるとき、資産除去債務に関する会計基準 第7項に従って当該負債の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加えます(リースに関する会計基準の適用指針 第28項)。賃借建物の原状回復義務を資産除去債務として計上するケースでは、除去費用を含めた金額が償却の対象になります。

関連コラム原状回復義務と資産除去債務|賃借建物の計上要否と敷金の簡便法

借地権の設定に係る権利金等

借地権の設定に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含め、原則として、借手のリース期間を耐用年数として減価償却を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第27項)。ただし、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等のうち一定のものについては、減価償却を行わないものとして取り扱うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第27項)。

リース期間・契約条件の変更

借手のリース期間に変更がある場合や、リース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合には、リース負債の計上額の見直しを行い、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準 第40項、リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。リースの範囲が縮小される契約条件の変更については、解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額し、使用権資産の減少額とリース負債の修正額との差額は損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第45項)。

実務では、賃貸借契約の更新交渉や増床・減床がこれに該当します。使用権資産の帳簿価額が動けば、残存期間にわたる減価償却費も改定されます。契約変更の情報が経理部門に届く仕組みを整えておかないと、償却計算が実態と乖離します。

貸借対照表における表示

使用権資産については、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法、又は対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等)において使用権資産として区分する方法のいずれかにより表示します(リースに関する会計基準 第49項)。どちらを選ぶかで、減価償却費の集計単位や固定資産台帳の設計も変わってきます。

適用時期と経過措置における償却の引継ぎ

リースに関する会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。本会計基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号などに従って会計処理されている取引については、これらの適用を終了します(リースに関する会計基準 第59項)。

本会計基準及び適用指針は2024年9月13日に公表され、その後2025年4月23日に、会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更しない修正が行われています。

関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説

適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。

このただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第13号においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額のそれぞれを、適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額とすることができます(リースに関する会計基準の適用指針 第120項)。この場合、これまで行ってきた償却計算をそのまま引き継ぐ形になります。

一方、企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース等については、適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を、適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上したうえで、使用権資産をリース1件ごとに、会計基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額とする方法、又はリース負債と同額とする方法のいずれかで算定します(リースに関する会計基準の適用指針 第123項)。どちらを選ぶかで適用初年度以降の減価償却費が変わるため、移行方針の決定は早めに固めておく必要があります。

まとめ

使用権資産の減価償却は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかで、償却方法・耐用年数・残存価額のいずれもが変わります。所有権が移転すると認められるリースは自己所有資産と同一の方法で経済的使用可能予測期間にわたり償却し、それ以外のリースは定額法等を選択適用して原則として借手のリース期間で償却します。

あわせて、短期リース・少額リースの簡便的取扱いや、使用権資産総額に重要性が乏しい場合の取扱いを適用できるかどうかで、実務負担は大きく変わります。適用初年度に向けては、契約の棚卸し、リース期間と割引率の決定ルール、経過措置の選択という3点を早い段階で固めておくことが、決算の混乱を避ける近道です。

参考文献

よくある質問

使用権資産の減価償却はいつから開始しますか。

借手は、リース開始日に使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。リース開始日とは、貸手が借手による原資産の使用を可能にする日をいいます(リースに関する会計基準 第18項)。したがって、契約の締結日ではなく、原資産を使用できる状態になった日から償却を開始します。

使用権資産の耐用年数は何年になりますか。

所有権が借手に移転すると認められるリースでは経済的使用可能予測期間とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースでは、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。

使用権資産の償却方法は定額法に限られますか。

限られません。所有権が借手に移転すると認められるリース以外のリースでは、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用します(リースに関する会計基準 第38項)。一方、所有権が移転すると認められるリースでは、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法によります(リースに関する会計基準 第37項)。

短期リースや少額リースでも減価償却は必要ですか。

簡便的な取扱いを適用する場合は不要です。短期リース及び一定の少額リースについては、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

現在ファイナンス・リース取引として償却している資産はどうなりますか。

適用初年度の期首から新たな会計方針を適用する方法を選択する場合、企業会計基準第13号においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについては、前期末のリース資産及びリース債務の帳簿価額を、適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額とすることができます(リースに関する会計基準の適用指針 第120項)。この場合、償却計算を引き継ぐ形になります。

使用権資産の償却方法や耐用年数の決定、簡便的取扱いの適用可否は、契約条件や自社の重要性判断によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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対応責任者
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