03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

不動産流動化の会計処理|譲渡人の売却判定と5%ルール

目次
  1. 不動産流動化の会計処理の全体像
  2. 移管指針第10号の適用範囲
  3. リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチの相違
  4. 売却取引として認められるための要件
  5. 判定の前提となる条件
  6. 継続的関与の9類型
  7. 売却処理が認められない類型
  8. 5%ルール(リスク負担割合)の定義と算定
  9. リスク負担割合の算式
  10. リスク負担の金額に何を含めるか
  11. 算定における留意点
  12. リスク負担割合の計算例
  13. 優先出資証券を保有する場合
  14. 劣後信託受益権を留保する場合の売却損益
  15. 売却処理できない場合の会計処理と開示
  16. 金融取引としての処理
  17. 開示対象特別目的会社に係る注記
  18. 実務上の落とし穴
  19. リースバックを伴う流動化
  20. 更新(リファイナンス)時の再判定
  21. 公表・移管の経緯と適用時期
  22. まとめ
  23. 参考文献
  24. よくある質問
  25. 5%ルールとは何に対する5%ですか
  26. リスク負担割合が5%でも売却価額は95%になるのですか
  27. 譲渡先の特別目的会社が自社の子会社の場合はどうなりますか
  28. 売却処理ができなかった場合、その後に売却処理へ切り替えることはできますか
  29. 2024年9月改正はすでに適用されていますか

保有する不動産を特別目的会社(SPC)へ譲渡して資金化する不動産流動化では、譲渡人の会計処理が「売却取引」と「金融取引」のいずれになるかで、貸借対照表も損益計算書も大きく変わります。結論から申し上げると、判定の枠組みはリスク・経済価値アプローチであり、その具体的な判断基準がリスク負担割合がおおむね5%の範囲内かどうか、いわゆる5%ルールです。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

この取扱いを定めているのが、移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」と、実務上の解釈を補う移管指針第13号のQ&Aです。難しいのは5%という数字そのものではなく、分子である「リスク負担の金額」に何をどこまで含めるかです。劣後受益権や匿名組合出資だけでなく、買戻しの取決め、保証、リースバック、子会社を通じた出資まで含めた実質判断が求められます。

不動産流動化の会計処理の全体像

譲渡人の会計処理は二択です。リスクと経済価値のほとんどすべてが他の者に移転していれば売却取引として処理し、不動産は貸借対照表から除かれます。移転していると認められなければ金融取引として処理し、不動産はオンバランスのまま、流入した資金は負債として計上されます。

売却取引として会計処理する場合 譲渡した不動産は貸借対照表から除かれ、帳簿価額との差額を固定資産売却損益として計上します。流入した資金は売却代金として処理します
金融取引として会計処理する場合 譲渡した不動産は貸借対照表に残り、売却損益は計上しません。流入した資金は預り金又は借入金等の負債に計上します

上場準備企業でよくあるのは、資金調達とオフバランス化の両方を狙って流動化を組成したものの、譲渡人が劣後部分を厚めに持たされていて売却処理ができず、想定していた自己資本比率やROAの改善が実現しないケースです。スキームを固める前に会計判定を済ませておくことが実務上もっとも効きます。

移管指針第10号の適用範囲

対象は、特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人側の会計処理です。特別目的会社とは、資産の流動化に関する法律第2条第3項に規定する特定目的会社、および事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいい、不動産の流動化とは、特別目的会社に不動産を譲渡することにより当該不動産を資金化することを指します。

対象不動産は土地、建物、構築物、借地権等と広く、固定資産に限られません。販売用不動産等として棚卸資産に計上されているものも対象です。一方、投資信託又は投資法人は特定目的会社に該当しないと考えられるため、これらを活用した不動産の流動化には本実務指針は適用されず、当面は監査委員会報告第27号「関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い」第2項の留意事項に基づき総合的に判断すべきものとされています。ビークルの選択によって拠るべき指針が変わる点は、初期段階で確認しておく必要があります。

リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチの相違

不動産の売却の認識は、不動産が法的に譲渡されていること及び資金が譲渡人に流入していることを前提に、譲渡不動産のリスクと経済価値のほとんどすべてが他の者に移転した場合に消滅を認識する方法、すなわちリスク・経済価値アプローチによって判断します。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

もう一つの考え方が財務構成要素アプローチ(資産を財務的要素に分解し、支配が移転した部分の消滅と留保部分の存続を認識する方法)で、金融資産の譲渡にはこちらが採用されています。不動産は金融資産ではなく、権利の譲渡であること、リスクと経済価値が所有と一体化していること、金融商品に比べ時価の算定が容易でなく流通性にも劣ることを考慮して、リスク・経済価値アプローチが適当とされました。「一部だけ売れた」という按分的な発想が原則として通らないのは、この点に理由があります。

なお、ここでいうリスクとは経済環境の変化等により不動産の価値が下落することをいい、市場変動リスク、不動産不稼働リスク、特別目的会社の倒産リスクなどが例示されています。経済価値とは、当該不動産を保有、使用又は処分することによって生じる経済的利益を得る権利に基づく価値をいいます。

売却取引として認められるための要件

売却処理が認められるのは、不動産が特別目的会社に適正な価額で譲渡されており、かつ、当該不動産に係るリスクと経済価値のほとんどすべてが、譲受人である特別目的会社を通じて他の者に移転していると認められる場合です。適正な価額での譲渡という条件を満たしていても、リスクと経済価値の移転が認められなければ金融取引として会計処理します。

判定の前提となる条件

まず不動産が法的に譲渡され、資金が譲渡人に流入していることが前提です。そのうえで譲渡価額が適正な価額(時価)であることが求められ、適正な価額で譲渡されていると認められない場合には、その実態を反映した会計処理を行うこととなります。

判断は形式ではなく実質で行います。たとえば流動化に伴って証券が発行されていても、その保有者が譲渡人と実質的融資者のみである場合には、譲渡人が買い戻す可能性が極めて高いと推定されるため、金融取引として会計処理すべきものと考えられています。

関連コラム時価の算定に関する会計基準|インプットのレベル1〜3と評価技法▸

継続的関与の9類型

譲渡後も譲渡人が当該不動産に継続的に関与している場合は、リスクと経済価値が移転していない可能性があるため十分な検討が必要です。実務指針では継続的関与の具体例として次の9つが挙げられています。

  • 譲渡した不動産の管理業務を行っている場合
  • 不動産を買戻条件付きで譲渡している場合
  • 特別目的会社が譲渡人に対して売戻しの権利を保有している場合
  • 譲渡不動産からのキャッシュ・フローや残存価額を実質的に保証している場合
  • 譲渡対価の全部又は一部として特別目的会社の発行する証券等(信託の受益権、組合の出資金、株式、会社の出資金、社債、劣後債等)を有している場合
  • 譲渡不動産の開発を行っている場合
  • 譲渡不動産の価格上昇の利益を直接又は間接に享受している場合
  • 譲受人の不動産購入に関して譲受人に融資又は債務保証を行っている場合
  • 譲渡不動産を譲受人からリース(リースバック)することにより継続的に使用している場合

ただし、継続的関与があれば直ちに売却処理ができなくなるわけではありません。通常の契約条件による不動産管理業務にとどまる場合には、その限りにおいてリスクと経済価値のほとんどすべてが移転していると認められます。もっとも、管理業務契約に賃貸人の賃料の減少を補填する条項があるなど通常の契約条件ではない場合は、移転が認められない可能性があります。

売却処理が認められない類型

次の類型は、リスク負担割合を計算するまでもなく売却処理ができません。判定フローの早い段階で潰しておくべき論点です。

  • 買戻条件付きの譲渡。買戻義務を負っている場合は実質的に金融取引と同様の効果が生じるため売却処理を行うことができません。特別目的会社が譲渡人に対して売戻しの権利を保有している場合も同様です。
  • 特殊性を有する不動産と継続的関与の組合せ。譲渡人の用途等に合わせて特別な仕様により建設された建物、用途制限や環境問題等のある土地建物、収益性に著しい問題のある土地建物のように、市場性に乏しくそのまま他に転用することが困難である不動産について、何らかの継続的関与がある場合には、原則として売却処理を行うことができません。
  • 特別目的会社が譲渡人の子会社に該当する場合。リスク負担に不透明性を伴うことから、連結財務諸表だけでなく個別財務諸表においても売却処理を行うことができません。

なお、買戻義務がなく買戻しの権利又は優先買取交渉権を保有しているにとどまる場合は、直ちにリスクの負担には結び付きません。ただし、特殊性を有する不動産についてあらかじめ定められた価額に購入価額を誘導するような場合は、形式的には優先買取交渉権であっても実質的には買戻契約と何ら変わらないと判断されます。

関連コラム連結の範囲|子会社・関連会社の判定基準を解説▸

5%ルール(リスク負担割合)の定義と算定

「リスクと経済価値のほとんどすべての移転」を厳密に求めると、流動化スキームの構成上重要でない一部のリスクが譲渡人に残ることが避けられない場合にまで売却処理が否定され、実務上適切ではありません。そこで具体的な判断基準として置かれたのがリスク負担割合、いわゆる5%ルールです。

リスク負担割合の算式

リスク負担は、流動化する不動産がその価値のすべてを失った場合に生じる損失として捉えます。そのうえで、次の算式によるリスク負担割合がおおむね5%の範囲内であれば、リスクと経済価値のほとんどすべてが他の者に移転しているものとして取り扱います。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

リスク負担割合 = リスク負担の金額 ÷ 流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)

分母は譲渡対価そのものではなく譲渡時の適正な価額(時価)である点に注意が必要です。譲渡人が譲渡不動産の開発を行い開発コストも負担する場合で、譲渡物件が開発物件に一体として包含されているようなときは、分子・分母がいずれも開発ベースに置き換わります。

開発を行っている場合のリスク負担割合 = 全体の開発コストのうち譲渡人が負担すべき金額 ÷ 合理的に見積り可能な開発物件の譲渡時の適正な価額(時価)

リスク負担の金額に何を含めるか

分子であるリスク負担の金額は、継続的関与の形態ごとに次のように算定します。ここが5%ルールの実質です。

キャッシュ・フロー
又は残存価額の実質的な保証
保証しているキャッシュ・フローの額
又は残存価額の保証額
特別目的会社が発行する証券等
(信託の受益権、組合の出資金、株式
会社の出資金、社債、劣後債等)の保有
当該持分の取得価額
譲渡不動産の開発 開発コストのうち譲渡人が
負担すべき金額
価格上昇の利益の直接的
又は間接的な享受
享受する権利を得るための対価
譲受人への融資又は債務保証 融資額又は保証額
一定の要件を満たすリースバックにおける
適正な賃借料の支払額
リスク負担の金額に含めない

劣後受益権や匿名組合出資は、形式的には金融資産でも実質的には譲渡不動産の持分の保有であるため、取得価額がそのまま分子に載ります。判定が割れやすいのは、保証・融資・債務保証といった契約書の別の場所に書かれている項目を拾い切れているかどうかです。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

算定における留意点

リスク負担の金額は、形式的な契約内容ではなく流動化スキーム全体を考慮した実質的なリスク負担に基づいて算定します。見落とされやすい論点は次のとおりです。

  • 追加出資の可能性。契約書上の出資割合等が範囲内であっても、追加出資を行う可能性がある場合や、他の名目でありながら実質的に追加負担となるリスクに該当する場合は、これらを加味して算定します。
  • 子会社・関連会社が負担するリスク。譲渡人の子会社又は関連会社が特別目的会社に出資している等によりリスクを負っている場合は、そのリスクを譲渡人が負担するリスクに加えて算定します。一方、譲渡人の親会社及び親会社の子会社が負担する場合は含めません。
  • 年金資産との関係。譲渡対価として受け取った証券を退職給付信託に拠出した場合、当該証券は年金資産とすることはできません。退職給付信託としての拠出を除き年金資産に含まれている場合は、原則としてリスク負担の金額に含めないものとされています。
  • スキーム前提の将来変動。当初の前提が中途又は更新時に大きく変化することが確実とされる契約内容の場合は、譲渡時に実態に応じた判断を行う必要があります。

もう一つ重要なのは、リスク負担割合は判断基準であって売却価額の算定基準ではない点です。残存価額の一部負担に伴うリスク負担割合が5%と算定された場合であっても、全体としてリスクが移転したものと考えて、譲渡不動産の全体(100%)を売却価額として処理します。5%分だけ持分が残るという処理にはなりません。

公認会計士事務所プライムパートナーズ オフィス 公認会計士へまずはご相談 公認会計士事務所プライムパートナーズ お問い合わせはこちら

リスク負担割合の計算例

優先出資証券を保有する場合

譲渡人A社が簿価50の賃貸用不動産を特別目的会社B社に100(時価)で譲渡します。B社は普通社債95と優先出資証券5を発行し、A社は優先出資証券5を購入します。物件管理は第三者に委託し、買戻特約等の契約はありません。

リスク負担割合 = 5 ÷ 100 = 5%

リスク負担割合は5%となり、売却取引として会計処理します。A社は現金預金100を受け取り、土地建物50を落として固定資産売却益50を計上し、別途、有価証券又は出資金5を計上します。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

同じスキームでも、A社が購入した優先出資証券が20、投資家向けの普通社債が80であった場合は結論が変わります。

リスク負担割合 = 20 ÷ 100 = 20%

この場合は売却処理が認められず、金融取引として処理します。譲渡時は現金預金100と預り金又は借入金100を計上し、以後は賃貸収入と賃貸原価をA社自身の損益として計上して支払利息を認識します。劣後部分をどこまで持つかで会計上の結論が反転することがよく分かる例です。

劣後信託受益権を留保する場合の売却損益

優先部分と劣後部分のように質的に異なる信託受益権に分割されている場合は、不動産全体に関するリスクと経済価値のほとんどすべてが移転しているときに限り売却取引として処理します。このときのリスク負担割合は、分子を譲渡人が保有する信託受益権の時価、分母を信託受益権の全体の時価として算定します。

A社が簿価300(時価400)の賃貸用不動産を信託し、交付された優先信託受益権を特別目的会社B社に380(時価)で売却して、劣後信託受益権20(時価)を保有し続けるケースです。

リスク負担割合 = 20 ÷ 400 = 5%

売却取引として処理しますが、売却価額は譲渡された信託受益権の譲渡価額である380となります。売却原価は、消滅を認識する直前の帳簿価額300を、譲渡した部分の時価と留保された部分の時価で按分して求めます。

売却原価 = 300 × 380 ÷ 400 = 285
固定資産売却益 = 380 − 285 = 95

なお、質的に単一な信託受益権に分割されている場合は共有不動産と同様の性格を有するため、リスク負担割合を算定して判断することなく、他の者に移転した部分について売却取引として会計処理します。分割の設計が質的に単一か異なるかで判定手順そのものが変わる点は押さえておきたいところです。

売却処理できない場合の会計処理と開示

金融取引としての処理

リスクと経済価値のほとんどすべてが移転していると認められない場合、譲渡人は金融取引として会計処理を行い、流入資金に対応する負債を預り金又は借入金等に計上します。譲渡した不動産は引き続き自社の資産として計上され、減価償却も継続します。その後、要件を満たしたときには、その時点で売却取引として会計処理を行うことになります。

開示面では、金融取引として会計処理を行った場合の記載が求められます。ここは2024年9月改正で見直された部分ですので、適用状況を分けて押さえてください。現在適用されている定めでは、担保資産の注記に準じて、その旨並びに関連する債務を示す科目の名称及び金額を記載しなければならないとされています。これに対して2024年9月改正後の定めでは、金融取引として会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及び金額を記載しなければならないとされ、負債側ではなく資産側を示す記載に改められています。改正後の定めが適用されるのは後述のとおり2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです。いずれにしても、オフバランスにできなかった事実は注記を通じて外部にも見える形になります。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

開示対象特別目的会社に係る注記

特別目的会社を連結するかどうかは連結財務諸表に関する会計基準の問題です。一定の要件を満たす特別目的会社は出資者等の子会社に該当しないものと推定されますが、その場合でも企業会計基準適用指針第15号「一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針」に基づく注記が求められます。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第15号 一定の特別目的会社に係る開示に関する適用指針の公表

  • 会社の概要及び当該会社を利用した取引の概要。会社の数、主な法形態、議決権に対する所有割合に加え、主な対象資産等の種類、主な取引形態、収益を享受する残存部分の保有などの継続的な関与の概要、将来における損失負担の可能性、取引の目的が該当します。
  • 当該会社との取引金額等。当期に行った主な取引の金額(資産の譲渡取引額など)又は期末残高、当期の主な損益計上額(譲渡損益、金融損益など)、直近の財政状態(資産総額や負債総額)が該当します。

いずれも重要性が乏しいものは省略できます。実務上重要なのは、譲渡取引を金融取引として処理している場合の取扱いです。この場合は譲渡資産と受け入れた金銭に対応する負債がすでに計上されているため取引金額等を開示する必要はありませんが、会社の概要及び利用した取引の概要については開示が必要である点に留意します。

関連コラム賃貸等不動産の時価開示とは|対象範囲と注記事項を解説▸

実務上の落とし穴

リースバックを伴う流動化

本社ビルや工場を流動化して引き続き使い続けるスキームでは、リースバックが継続的関与に該当します。それでも所定の要件をすべて満たすとき、かつその限りにおいて、リスクと経済価値のほとんどすべてが譲渡人(借手)から他の者に移転していると認められます。ここでいう適正な賃借料とは、独立した第三者間における通常の取引と同等の条件による賃借料をいいます。

注意したいのは、この要件が2024年9月改正で見直されている点です。現在適用されている要件は、リースバックがオペレーティング・リース取引であり、譲渡人(借手)が適正な賃借料を支払うこととなっていることの2つです。これに対して2024年9月改正後の要件は、リースバックが譲渡人(借手)において当該不動産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができるリースに該当しないこと、当該不動産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなるリースに該当しないこと、適正な賃借料を支払うこととなっていることの3つで、オペレーティング・リース取引という区分に依拠しない書き方に改められています。改正後の要件が適用されるのは、後述のとおり2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです。企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準等の公表

また、工場の土地を流動化しながら工場の建物をリースバックにより引き続き使用している場合のように、そのままの状態では市場性に乏しく他に転用することが困難であるときは、特殊性を有する不動産と継続的関与の組合せに該当し、原則として売却処理を行うことができません。自社仕様の設備が入った物件ほど、この論点に抵触しやすくなります。

更新(リファイナンス)時の再判定

見落とされやすいのが、譲渡時点だけでなく更新時にも判定が必要になる点です。特別目的会社が発行する証券等の期限到来に伴う更新(リファイナンス)時には、更新時の適正な価額に基づきリスク負担割合を算定し、リスクと経済価値のほとんどすべてが移転していると認められない場合には、更新時に適正な価額によって買戻しが行われたものとして処理します。

ただし、更新が譲渡人の当初のリスク負担の金額の増加を伴わないものである場合には、当初の会計処理を見直す必要はありません。リファイナンスのたびに劣後部分を積み増す設計になっていると数年後に想定外の買戻処理が生じるおそれがありますので、組成時に更新条件まで確認しておくことをおすすめします。移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」

公表・移管の経緯と適用時期

本実務指針は、もともと日本公認会計士協会が会計制度委員会報告第15号として2000年(平成12年)7月31日に公表したものです。その後、実務指針が企業会計基準委員会(ASBJ)へ移管され、2024年7月1日に移管指針第10号として公表されました。Q&Aについても、2001年(平成13年)5月25日に公表されたものが移管指針第13号として引き継がれています。企業会計基準委員会 移管指針の適用等の公表

2000年(平成12年)7月31日 日本公認会計士協会が会計制度委員会報告第15号として公表。2000年8月1日以後行われる不動産の流動化取引について適用されています
2014年(平成26年)11月4日 改正。2015年(平成27年)4月1日以後開始する事業年度から適用されています
2024年7月1日 企業会計基準委員会へ移管され移管指針第10号として公表。公表日以後適用されています
2024年9月13日 リースに関する会計基準の公表に伴う改正(リースバックの要件と金融取引の開示の見直し)。適用時期はリースに関する会計基準と同様で、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます

整理すると、5%ルールを含む本体の定めはすでに適用されています。2014年11月4日の改正も2015年4月1日以後開始する事業年度から適用済みで、同改正前に置かれていたリスク負担割合を10%の範囲内とする経過措置は、この改正により削除されています。移管指針第10号としての定めも公表日以後すでに適用されています。

これに対して、2024年9月改正の部分はこれから適用されます。改正の対象は、前述したリースバックを行う場合の要件と、金融取引として会計処理を行った場合の開示です。適用時期がリースに関する会計基準(企業会計基準第34号)と同様とされているため、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用が認められています。企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準等の公表

経過措置として、2024年9月改正の適用初年度においては、譲渡人は当該改正の適用前に行われた不動産の流動化に係る資産の譲渡の会計処理を見直さないこととされています。過去に売却処理した案件を遡って再判定する必要はありませんが、リースに関する会計基準を早期適用する場合は、その事業年度以後はリースバックの要件と金融取引の開示が新しい定めに切り替わる点に留意が必要です。

まとめ

不動産流動化の会計処理は、譲渡人が売却取引として処理できるかどうかの一点に集約されます。判定の枠組みはリスク・経済価値アプローチであり、適正な価額での譲渡と、リスクと経済価値のほとんどすべてが特別目的会社を通じて他の者に移転していることが要件です。その具体的な判断基準が、リスク負担の金額を流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)で除したリスク負担割合がおおむね5%の範囲内かどうかという5%ルールです。

実務では、買戻条件付きの譲渡、特殊性を有する不動産と継続的関与の組合せ、特別目的会社が譲渡人の子会社に該当する場合といった「そもそも売却処理ができない類型」を先に潰し、そのうえで劣後受益権や匿名組合出資、保証、融資、追加出資の可能性まで含めてリスク負担の金額を積み上げる順序が有効です。不動産流動化は、契約書の一条項の書きぶりで会計上の結論が反転する領域ですので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、スキーム組成段階からの会計判定と監査対応をご支援しています。

お問い合わせはこちら

参考文献

よくある質問

5%ルールとは何に対する5%ですか

リスク負担の金額を、流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)で除した割合が、おおむね5%の範囲内かどうかを判定するものです。リスク負担とは、流動化する不動産がその価値のすべてを失った場合に譲渡人に生じる損失をいいます。分母は譲渡対価ではなく譲渡時の時価であり、分子は劣後受益権や匿名組合出資などの持分の取得価額、保証額、融資額などをスキーム全体で積み上げた金額です。

リスク負担割合が5%でも売却価額は95%になるのですか

なりません。リスク負担割合は、リスクと経済価値のほとんどすべてが移転しているか否かの判断基準として適用するものであり、売却価額の算定基準ではありません。残存価額の一部を負担していることに伴うリスク負担割合が5%と算定された場合であっても、全体としてリスクが移転したものと考えて譲渡不動産の全体を売却価額として処理します。ただし、譲渡人が留保した信託受益権については、別途定められた方法に従って売却価額を決定します。

譲渡先の特別目的会社が自社の子会社の場合はどうなりますか

売却処理を行うことができません。譲渡人が支配している特別目的会社が譲受人となっているためリスク負担に不透明性を伴うことから、連結財務諸表だけでなく個別財務諸表においても売却処理は認められないこととされています。この場合はリスク負担割合を計算するまでもなく、金融取引として会計処理することになります。

売却処理ができなかった場合、その後に売却処理へ切り替えることはできますか

できます。当初は金融取引として会計処理を行い、流入資金に対応する負債を預り金又は借入金等に計上したうえで、その後にリスクと経済価値のほとんどすべてが移転していることの要件を満たしたときには、その時点で売却取引として会計処理を行うこととなります。劣後持分の売却などにより継続的関与が解消された場合が典型例です。

2024年9月改正はすでに適用されていますか

まだ適用されていません。2024年9月改正の適用時期は企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の適用時期と同様とされており、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用が認められています。一方、5%ルールを含む本体の定めや2014年11月4日の改正はすでに適用されています。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史