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株式の間接所有と資本連結手続|孫会社の実質持分の計算

2026-08-06
目次

株式の間接所有とは、親会社が子会社などを通じて他の企業の株式を所有し、間接的に支配が及んでいる状態をいいます。この場合でも資本連結手続の考え方そのものは直接所有と変わりませんが、孫会社(子会社を通じて支配している会社)の利益剰余金に対する親会社の実質的な持分は、持分比率の積数(掛け算)で計算する点が決定的に異なります(移管指針第5号 第2項、第3項)。この一点を取り違えると、非支配株主持分と連結上の利益剰余金がまとめてずれます。

本記事では、公認会計士事務所の実務視点から、間接所有がある場合の資本連結手続を、移管指針第5号(株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針)の条項に沿って整理します。孫会社の実質持分の計算、緊密者等を通じた間接所有、子会社間の相互持合いを連立方程式で解く方法、債務超過会社がある場合の取扱い、持分法への準用までを扱います。投資と資本の相殺消去やのれんといった資本連結の一般論は前提として最小限に触れるにとどめ、間接所有に固有の論点に絞ります。企業会計基準委員会 移管指針第5号 株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針

株式の間接所有とは|間接的な支配も連結の対象になる

子会社の判定基準として、連結財務諸表に関する会計基準(以下「連結会計基準」)では支配力基準が採用されています。同基準では、「親会社」とは他の企業の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関(意思決定機関)を支配している企業をいい、「子会社」とは当該他の企業をいうと定義されています(連結会計基準 第6項)。

重要なのは、支配が直接及んでいる場合に限られない点です。親会社及び子会社又は子会社が他の企業の意思決定機関を支配している場合、その他の企業もその親会社の子会社とみなされます(連結会計基準 第6項)。つまり、親会社が1株も直接保有していない会社であっても、子会社を通じて支配が及んでいれば連結の対象になります。この、子会社又は親会社と子会社を通じて間接的に支配している企業を、移管指針第5号では「孫会社」と呼んでいます(移管指針第5号 第2項)。企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準

連結子会社を通じた間接所有の2つの形態

連結子会社を通じた間接所有は、基本的に次の二つのパターンに区分されます(移管指針第5号 第3項)。実務では、後者(直接所有と間接所有の併存)のほうが多く、持分比率の集計を誤りやすい形態です。

間接所有のみ 親会社が孫会社の株式を直接は保有せず、子会社だけが保有している形態です。移管指針第5号 第3項では、P社がS社株式を80%、S社がA社株式を60%所有する例が示され、A社はP社にとって孫会社であり、かつ間接所有の子会社になるとされています。
直接所有+間接所有 親会社と子会社の双方が同じ会社の株式を保有している形態です。移管指針第5号 第3項では、P社がS社株式を70%、B社株式を40%所有し、S社がB社株式を15%所有する例が示され、P社とS社による支配関係を一つの単位とみれば、B社はP社にとって合計で議決権の55%を所有する子会社になるとされています。

連結の範囲そのものの判定(支配力基準・影響力基準の当てはめ)は、間接所有の有無にかかわらず共通の論点です。判定の基本から確認したい場合は、次の記事もあわせてご覧ください。

関連コラム連結の範囲|子会社・関連会社の判定基準を解説

孫会社の親会社持分額|資本金等と利益剰余金で算式が分かれる

直接所有の子会社については、子会社の資本の親会社持分額は、子会社の資本に親会社の持分比率を乗じて計算します(移管指針第5号 第2項、移管指針第4号 第9項、第10項)。ここでいう持分比率とは、議決権を有する株式の発行済株式数(分母)と持株数(分子)に基づく比率です(移管指針第4号 第10項)。企業会計基準委員会 移管指針第4号 連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針

子会社の資本の親会社持分額 = 子会社の資本 × 子会社株式の親会社持分比率

これに対し、孫会社の資本の親会社持分額は、資本金等(資本金及び資本剰余金並びに支配獲得日の利益剰余金)と、支配獲得日以降に生じた利益剰余金とで、異なる算式によって計算します(移管指針第5号 第2項)。以下の算式は、いずれも移管指針第5号 第2項に示されたものです。

孫会社の資本の親会社持分額(資本金等) = 孫会社の資本金等 × (孫会社株式の親会社持分比率 + 孫会社株式の子会社持分比率)
孫会社の資本の親会社持分額(利益剰余金) = 孫会社の利益剰余金 × (孫会社株式の親会社持分比率 + 孫会社株式の子会社持分比率 × 子会社株式の親会社持分比率)

親会社が支配を獲得した子会社を通じて孫会社にあたる企業が連結子会社となった場合には、上記の算式を用いて孫会社の資本を親会社持分額と非支配株主持分額とに按分したうえで、前者を孫会社に対する投資(親会社による投資と子会社による投資の合計額)と相殺消去し、消去差額が生じた場合には当該差額をのれんとして計上するとともに、後者を非支配株主持分へ振り替えます(移管指針第5号 第2項)。

なぜ資本金等と利益剰余金で算式が違うのか

算式が分かれる理由は、消去のされ方が違うからです。資本金等は、投資と相殺されるか、又は非支配株主持分へ振り替えられることによりすべて消去されるのに対し、利益剰余金は、孫会社株式の直接所有と間接所有を通じて親会社に帰属する部分が生じるためです(移管指針第5号 第13項)。

実務上の言い換えをすると、資本金等の側は「グループとして何%押さえているか」だけを見ればよく、単純な合算(親会社持分比率+子会社持分比率)で足ります。一方、利益剰余金の側は「孫会社の利益がどれだけ親会社株主まで届くか」を見る必要があるため、途中の子会社で非支配株主に漏れる分を反映させる積数計算になる、という理解が実務では扱いやすいと考えています。

投資と資本の相殺消去、のれんの計上、非支配株主持分への振替といった資本連結手続の基本形については、次の記事で詳しく解説しています。

関連コラム資本連結手続とは|投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分の実務

数値設例|孫会社の実質持分と非支配株主持分を段階的に計算する

ここからは、移管指針第5号の算式の使い方を確認するために、当事務所で作成した自作の数値設例を使って計算します(移管指針第5号に掲載されている設例そのものではありません)。前提条件は次のとおりです。

  • P社(親会社)はS社の議決権を70%直接所有しており、S社はP社の連結子会社です。
  • G社の議決権は、P社が10%、S社が60%を所有しています。合計70%となるため、G社はP社の子会社(孫会社)に該当します。
  • G社の資本金等は1,000、支配獲得日以降に生じた利益剰余金は500とします。評価・換算差額等および税効果は考慮しません。

ステップ1として、資本金等に対する親会社持分比率を求めます。算式②に当てはめると、単純合算になります(移管指針第5号 第2項)。

資本金等の親会社持分比率 = 10%(P社の直接持分) + 60%(S社の持分) = 70%
資本金等の親会社持分額 = 1,000 × 70% = 700
資本金等の非支配株主持分額 = 1,000 − 700 = 300

ステップ2として、利益剰余金に対する親会社の実質的な持分比率を求めます。ここでS社経由の60%をそのまま足してはいけません。S社の議決権の30%は非支配株主が保有しているため、その分は親会社株主まで届かないからです。算式③に当てはめます(移管指針第5号 第2項)。

利益剰余金の実質持分比率 = 10% + 60% × 70% = 10% + 42% = 52%
利益剰余金の親会社持分額 = 500 × 52% = 260

ステップ3として、残る48%(=100%−52%)が誰に帰属するのかを分解します。移管指針第5号 第3項が<直接所有+間接所有>の例で示している分解の考え方に倣うと、次のとおり2つに分かれます。

G社の非支配株主への帰属分 = 100% − 10% − 60% = 30%
S社の非支配株主への帰属分 = 60% × 30%(S社の非支配株主持分比率) = 18%
非支配株主持分額の合計 = 500 × (30% + 18%) = 500 × 48% = 240

親会社持分額260と非支配株主持分額240の合計は500となり、G社の利益剰余金と一致します。上場準備の場面でよく見かける誤りは、ステップ2でS社経由分をそのまま60%と置いてしまい、実質持分比率を70%としてしまうケースです。この場合、親会社株主に帰属する当期純利益が過大になり、非支配株主持分が過少になります。資本金等は単純合算、利益剰余金は積数と覚えておくと、この取り違えを防げます。

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緊密者等を通じた間接所有の場合の処理

間接所有のもう一つの経路が、緊密者等を通じた所有です。連結会計基準では、自己の計算において所有している議決権(当該議決権を所有していない場合を含む)と、緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者及び自己の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者が所有している議決権とを合わせて、他の企業の議決権の過半数を占めており、かつ一定の支配の要件を充たす企業は、その企業の意思決定機関を支配しているものとして「子会社」になるとされています(連結会計基準 第7項(3))。移管指針第5号では、この両者を併せて「緊密者等」と呼んでいます(移管指針第5号 第4項)。

ここで注意が必要なのは、緊密者等が子会社に該当しない場合でも、対象会社が子会社になり得るという点です。緊密者等が持分法適用会社(関連会社)又は原価法適用会社の場合、さらには自己が緊密者等の議決権をまったく所有していない場合であっても、当該他の企業が子会社となることがあります(移管指針第5号 第4項)。

会計処理としては、緊密者等が株式の一部を所有している子会社の資本は、親会社、緊密者等及び外部株主の持分額に区分されますが、このうち緊密者等及び外部株主の持分額を非支配株主持分として処理します(移管指針第5号 第4項)。理由は明快で、連結子会社を通じた場合と異なり、緊密者等の財務諸表は連結されないためです(移管指針第5号 第14項)。この処理は、親会社が緊密者等の株式を一部所有していて、その非支配株主持分に親会社の間接持分額が含まれていても変わりません(移管指針第5号 第14項)。

実務上の留意点として、緊密者等が親会社の持分法適用会社である場合には、連結子会社となる会社の当期純損益のうち親会社持分額が、上記の処理により非支配株主に帰属する当期純利益として計上される一方で、持分法による投資損益としても重複して計上されることになります。この重複部分は、理論的には連結貸借対照表及び連結損益計算書のそれぞれにおいて相殺すべきであるとする意見もありますが、実務的でないため、移管指針第5号ではこれに言及していないとされています(移管指針第5号 第14項)。この点は監査法人と論点認識を合わせておくべき箇所です。

子会社間で株式の相互持合いがある場合|連立方程式で実質持分を求める

グループ内の会社どうしが株式を持ち合っている場合、話は一段複雑になります。資本連結手続上、一方の子会社の連結持分額を決定するためには他方の子会社の連結持分額が確定していなければならないところ、相互持合いがあると、一方の連結持分額の変動が必ず他方の連結持分額の変動をもたらすという循環的な関係が生じるためです(移管指針第5号 第5項)。

このように利益剰余金の連結持分額の決定において両者が相互に依存する関係にある場合には、前述の積数の算式(算式③)をそのまま用いることができません。子会社間の株式の相互持合いによる連結持分額の循環的な影響を収斂させるための調整を行って実質的な連結持分額を計算し、資本連結手続の処理を行う必要があります(移管指針第5号 第5項)。

原則法|2社間の相互持合いを連立方程式で解く

子会社が2社間で株式を相互に持ち合っている場合、利益剰余金については連立方程式を用いて両社の実質的な持分額を計算し、資本連結手続の処理を行います(移管指針第5号 第6項)。A社・B社の個別財務諸表に計上された利益剰余金をA0・B0、A社がB社株式を保有する比率をβ、B社がA社株式を保有する比率をα、それぞれに帰属する実質的な利益剰余金をA1・B1とすると、次の連立方程式が成立します(移管指針第5号 第6項)。

A1 = A0 + B1 × β
B1 = B0 + A1 × α

これを解くと、次の形になります(移管指針第5号 第6項)。分母の「1 − α × β」が、循環参照を収束させる調整項です。

A1 = (A0 + B0 × β) ÷ (1 − α × β)
B1 = (B0 + A0 × α) ÷ (1 − α × β)

移管指針第5号 第15項には、A0=1,000、B0=2,000、親会社P社のA社持分比率a=40%、B社持分比率b=40%、α=40%、β=50%とした場合の計算例が示されています。実際に当てはめると次のとおりです。

A1 = (1,000 + 2,000 × 0.5) ÷ (1 − 0.4 × 0.5) = 2,000 ÷ 0.8 = 2,500
B1 = (2,000 + 1,000 × 0.4) ÷ (1 − 0.4 × 0.5) = 2,400 ÷ 0.8 = 3,000

この結果を用いて、親会社P社の実質的な連結持分額と非支配株主の実質的な連結持分額を計算すると、次のようになります(移管指針第5号 第15項)。

P社の実質的な連結持分額 = 2,500 × 0.4 + 3,000 × 0.4 = 1,000 + 1,200 = 2,200
非支配株主の実質的な連結持分額 = 2,500 × (1 − 0.4 − 0.4) + 3,000 × (1 − 0.4 − 0.5) = 500 + 300 = 800

A社に帰属する実質的な連結持分額は1,000 + 500 = 1,500、B社に帰属する実質的な連結持分額は1,200 + 300 = 1,500となり、その合計3,000は、A社とB社のそれぞれの個別財務諸表に計上された利益剰余金の合計額3,000に一致します(移管指針第5号 第15項)。この検算が合わないときは、どこかで持分比率の取り違えが起きています。

実際の資本連結手続では、この結果をそのまま使うのではなく、各子会社の利益剰余金を親会社の直接持分額・間接持分額と、非支配株主持分のうちの各子会社帰属部分に区分するマトリクスを用いて処理を行います(移管指針第5号 第6項、第15項)。連立方程式は、表計算ソフトのワークシートで反復計算を繰り返す方法によっても解くことができ、同様の結果が得られます(移管指針第5号 第16項)。

3社以上の子会社による相互持合いでも、基本的な考え方は2社間と同じです。連立方程式を3本立てて解けばよく、4社以上(n社)に相互持合いが及ぶ場合にも、計算式をn社にまで拡張すれば実質的な連結持分額の計算を行うことができます(移管指針第5号 第7項、第17項)。

簡便法|重要性がない場合に認められる2つの方法

もっとも、子会社数が多いと原則法の計算は現実的でなくなります。移管指針第5号は、一定の要件を満たす場合に2つの簡便法を認めています。いずれも重要性の判断が前提であり、無条件に選べるものではありません。

原則法(利益剰余金の実質的な帰属額を計算する方法) 連立方程式により各子会社の実質的な帰属額を計算し、親会社の直接持分額・間接持分額と非支配株主持分に区分して処理します。持分比率が前提条件として与えられれば計算は可能であり、連結の事務処理システムが構築されれば定型作業として実質持分額を得られるため、これが原則とされています(移管指針第5号 第6項、第17項)。
簡便法(利益剰余金の実質的な帰属額を計算しない方法) 相互持合いを行っている子会社の利益剰余金及び当期純損益の合計が、連結上の利益剰余金及び親会社株主に帰属する当期純利益に比較して重要性がない場合に、直接持分額と間接持分額を区分せず、利益剰余金に実質持分比率を乗じて計算する方法です。親会社持分額の合計は原則法と同額になりますが、間接持分額の帰属額の計算方法が異なるため、企業ごとに算定されるのれんの金額が異なる点に注意が必要です(移管指針第5号 第8項、第18項)。
簡便法(株式の相互持合いを無視して計算する方法) 同様に重要性がない場合に、各子会社ごとに、親会社の直接所有に係る持分比率と外部株主の持分比率との割合で利益剰余金の実質的な連結持分額を算定する方法です。相互持合いのタイムリーなデータ入手が実務上難しいこと等が背景にあります(移管指針第5号 第9項、第19項)。移管指針第5号の設例4ケース2では、この方法による結果が原則的な計算と近似する例が示されつつ、前提条件が変わると常にそうなるとは限らないため、安易にこの方法によることのないよう留意が必要であるとされています。

実務では、簡便法を採用する際に「重要性がない」ことを裏づける定量的な検討資料を残しているかどうかが、監査対応の分かれ目になります。上場準備企業では、相互持合いの株式数を決算期ごとに把握する仕組みを先に整えたうえで、原則法と簡便法の差額を試算して判断する進め方が安全です。

間接所有会社に債務超過会社がある場合の処理

間接所有の輪の中に債務超過の会社が含まれる場合、欠損金の負担は持分比率どおりにはなりません。連結会計基準では、子会社の欠損のうち、当該子会社に係る非支配株主持分に割り当てられる額が当該非支配株主の負担すべき額を超える場合には、当該超過額は親会社の持分に負担させるとされています(連結会計基準 第27項)。

これを受けて移管指針第5号では、債務超過会社(純資産がマイナスの会社)の欠損金(マイナスの利益剰余金)の負担額の計算は持分比率に基づくのではなく、出資を超えた非支配株主による負担について何らかの合意があれば当該負担額まで非支配株主に負担させ、何も合意がなければ非支配株主に出資額まで負担させて、それを超える欠損金は親会社が負担しなければならないとしています(移管指針第5号 第10項)。

この欠損金の負担についての処理は間接所有会社についても適用されるため、間接所有会社に債務超過会社がある場合は、非支配株主の負担額(緊密者等は、通常、出資額までの負担と考えられます)を超える欠損金については、連結上の利益剰余金に含めなければなりません(移管指針第5号 第10項)。なお、その後に当該債務超過会社に利益が計上されて債務超過が解消された後は、原則どおり持分比率に基づいて利益剰余金の実質的な連結持分額の計算を行うことになる点に留意が必要です(移管指針第5号 第10項)。

実務では、この「解消後は原則に戻る」という切替えの管理が抜けやすい部分です。債務超過が続いている期間の負担限度額の累計と、解消後の持分比率ベースの計算を、連結精算表上で追跡できる形にしておくことをおすすめします。

持分法適用会社への準用

移管指針第5号は、株式の間接所有により連結子会社となる会社における資本連結手続に適用されるものですが、間接所有対象会社が持分法適用会社である場合においても、利益剰余金の実質的な連結持分額の計算方法(算式)は、投資の持分法による投資損益の計算に準用することができるとされています(移管指針第5号 第12項)。

したがって、子会社を通じて間接的に保有している関連会社について持分法を適用する場合も、実質持分比率の考え方はそのまま使えます。持分法そのものの適用範囲や未実現利益の消去といった論点は、次の記事で整理しています。

関連コラム持分法に関する会計基準|適用範囲と未実現利益消去の実務

実務の判断フレームと手順

間接所有がある場合の資本連結手続は、次の順序で検討すると論点の抜けを防げます。判断の分岐点は「経路が連結子会社か緊密者等か」と「相互持合いがあるか」の2つです。

  1. 所有関係図を作る。親会社・子会社・孫会社・緊密者等の間の議決権比率を、矢印付きの図に落とし込みます。相互持合いの有無はここで可視化されます。
  2. 連結の範囲を確定する。間接的な支配が及んでいる会社を含めて子会社の範囲を判定します(連結会計基準 第6項、第7項(3))。
  3. 経路を区別する。連結子会社を通じた間接所有であれば孫会社として算式②③を適用し、緊密者等を通じた間接所有であれば緊密者等の持分額を非支配株主持分として処理します(移管指針第5号 第2項、第4項)。
  4. 資本金等と利益剰余金を分けて計算する。資本金等は持分比率の合算、支配獲得日以降の利益剰余金は積数で計算します(移管指針第5号 第2項)。
  5. 相互持合いがあれば実質持分比率を求める。原則法(連立方程式)で計算し、重要性が乏しい場合に限って簡便法の採否を検討します(移管指針第5号 第6項、第8項、第9項)。
  6. 債務超過会社の有無を確認する。該当があれば、非支配株主の負担限度額を超える欠損金を親会社が負担する処理に切り替えます(移管指針第5号 第10項、連結会計基準 第27項)。

落とし穴として実務で頻度が高いのは、次の3点です。第一に、利益剰余金の実質持分比率を求める際に、途中の子会社の非支配株主持分を控除し忘れること。第二に、緊密者等が持分法適用会社である場合の重複計上を認識しないまま決算を締めてしまうこと(移管指針第5号 第14項)。第三に、簡便法を採用しているにもかかわらず、重要性の検討過程を文書化していないことです。いずれも監査手続で指摘を受けやすい箇所です。

適用時期と改正の経緯

移管指針第5号の内容は、もともと日本公認会計士協会が公表していた実務指針に由来します。本報告は、平成11年4月1日以後開始する連結会計年度に係る連結財務諸表について適用されています(移管指針第5号 第11項)。その後、複数回の改正を経て、2024年7月1日に企業会計基準委員会(ASBJ)へ移管され、移管指針第5号として公表日以後適用されています(移管指針第5号 第11-7項)。したがって、2026年8月時点ではすでに適用済みの指針です。

時期 内容
平成11年3月17日 会計制度委員会報告第7号(追補)「株式の間接所有に係る資本連結手続に関する実務指針」として日本公認会計士協会が公表
平成16年4月6日〜平成26年11月28日 平成16年4月6日、平成18年5月19日、平成20年3月25日、平成26年2月24日、平成26年11月28日の計5回にわたり改正(移管指針第5号 第11-2項から第11-6項)
2024年7月1日 企業会計基準委員会へ移管され、移管指針第5号として最終改正。公表日以後適用(移管指針第5号 第11-7項)

平成26年2月24日の改正は、平成25年に改正された企業結合会計基準及び連結会計基準を適用する連結会計年度から適用するものとされています(移管指針第5号 第11-5項)。最新の改正は、2024年7月1日の企業会計基準委員会への移管に伴うものです。なお、間接所有の論点を検討する際は、資本連結手続の一般的な指針を定めた移管指針第4号(連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針)とあわせて参照する必要があります(移管指針第5号 第12項)。

なお、本記事は一般的な解説であり、個別の事案に対する会計上・税務上の助言ではありません。持分比率の設計や相互持合いの有無によって結論が変わり得ますので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします

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まとめ

株式の間接所有がある場合でも、連結持分額の計算に持分比率を用いるという原則は変わりません。異なるのは、孫会社の利益剰余金に対する親会社の実質的な持分を、持分比率の積数で計算する点です(移管指針第5号 第2項、第3項)。資本金等は親会社持分比率と子会社持分比率の合算、支配獲得日以降の利益剰余金は積数、という切り分けが出発点になります。

緊密者等を通じた間接所有では、緊密者等の財務諸表が連結されないため、緊密者等及び外部株主の持分額を非支配株主持分として処理します(移管指針第5号 第4項、第14項)。子会社間で株式の相互持合いがある場合は、循環的な影響を収斂させるために連立方程式で実質的な連結持分額を求めるのが原則法であり、重要性が乏しい場合に限って2つの簡便法が認められます(移管指針第5号 第6項、第8項、第9項)。間接所有会社に債務超過会社がある場合は、非支配株主の負担限度額を超える欠損金を親会社が負担します(移管指針第5号 第10項、連結会計基準 第27項)。

上場準備の実務では、まず所有関係図と議決権比率の把握を仕組み化することが最優先です。持分比率の一次情報さえ揃えば、以降の計算は定型化できます。

参考文献

よくある質問

孫会社の利益剰余金に対する親会社の持分は、どのように計算しますか。

孫会社の利益剰余金に孫会社株式の親会社持分比率を加算し、さらに孫会社株式の子会社持分比率に子会社株式の親会社持分比率を乗じた比率を加えた比率を乗じて計算します(移管指針第5号 第2項)。資本金等については、孫会社株式の親会社持分比率と子会社持分比率を単純に合算した比率を用いるため、算式が異なります(移管指針第5号 第2項、第13項)。

親会社が孫会社の株式をまったく保有していなくても、連結の対象になりますか。

なります。親会社及び子会社又は子会社が他の企業の意思決定機関を支配している場合には、当該他の企業もその親会社の子会社とみなされるため、直接的な支配だけでなく間接的に支配が及んでいる場合も連結の対象とされます(連結財務諸表に関する会計基準 第6項、移管指針第5号 第2項)。

緊密者等が保有している子会社株式の持分は、連結上どう扱われますか。

緊密者等が株式の一部を所有している子会社の資本は、親会社、緊密者等及び外部株主の持分額に区分されますが、このうち緊密者等及び外部株主の持分額を非支配株主持分として処理します(移管指針第5号 第4項)。連結子会社を通じた場合と異なり、緊密者等の財務諸表が連結されないためです(移管指針第5号 第14項)。

子会社間で株式を持ち合っている場合、必ず連立方程式を解く必要がありますか。

原則は連立方程式を用いて利益剰余金の実質的な持分額を計算する方法です(移管指針第5号 第6項)。ただし、相互持合いを行っている子会社の利益剰余金及び当期純損益の合計が、連結上の利益剰余金及び親会社株主に帰属する当期純利益に比較して重要性がない場合には、実質持分比率を乗じて計算する簡便法や、相互持合いを無視して計算する簡便法によることもできます(移管指針第5号 第8項、第9項)。

間接所有している会社が持分法適用会社の場合も、この指針の算式を使えますか。

使えます。移管指針第5号は株式の間接所有により連結子会社となる会社における資本連結手続に適用されるものですが、間接所有対象会社が持分法適用会社である場合においても、利益剰余金の実質的な連結持分額の計算方法(算式)は投資の持分法による投資損益の計算に準用することができるとされています(移管指針第5号 第12項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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