持分法とは、投資会社が被投資会社の資本および損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する会計処理の方法です。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準連結財務諸表を作成する上場準備企業にとって、非連結子会社や関連会社への投資をどう取り込むかは避けて通れない論点です。本稿では、持分法に関する会計基準(企業会計基準第16号)を根拠に、適用範囲・会計処理・のれん相当額・未実現損益の消去・会計方針の統一までを、公認会計士の実務目線で整理します。
持分法の定義と連結上の位置づけ
持分法は、被投資会社の純資産および損益のうち投資会社の持分に見合う額を、投資勘定に反映させる方法です。取得原価のまま据え置く原価法とは異なり、被投資会社の業績が投資会社の連結財務諸表に反映される点に特徴があります。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準
連結財務諸表上、子会社は資産・負債・収益・費用を各項目ごとに合算する全部連結の対象となります。これに対し、持分法は投資勘定と持分法による投資損益という一行で純額を取り込むため、「一行連結」とも呼ばれます。連結の範囲に含めない投資であっても、投資会社に帰属する成果を財務諸表へ反映させる仕組みです。
持分法の適用範囲
持分法は、原則として非連結子会社および関連会社に対する投資に適用します。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準ここでいう非連結子会社とは、支配しているものの重要性が乏しいなどの理由で連結の範囲から除いた子会社を指します。関連会社とは、投資会社が財務および営業または事業の方針決定に対して重要な影響を与えることができる会社です。
| 非連結子会社 | 原則として持分法を適用する |
|---|---|
| 関連会社 | 原則として持分法を適用する |
ただし、持分法の適用によっても連結財務諸表に及ぼす影響が軽微であると認められる場合には、持分法の適用対象から除くことができます。重要性の判断は、金額的側面と質的側面の双方から行うのが実務です。
関連会社の判定と影響力基準
関連会社に該当するかどうかは、議決権の所有割合を出発点としつつ、実質的な影響力の有無で判定します。これを影響力基準といいます。子会社以外で、投資会社が議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合は、原則として関連会社に該当します。
議決権の所有割合が20%未満であっても、一定割合以上を保有し、かつ役員の派遣や重要な融資、重要な技術の提供、重要な取引などを通じて事業の方針決定に重要な影響を与えることができると認められる場合には、関連会社と判定されます。形式的な持株比率だけで判断しない点に留意が必要です。
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持分法の会計処理
持分法では、被投資会社の当期純損益のうち投資会社の持分に見合う額を、持分法による投資損益として算定し、投資勘定を増減させます。被投資会社が利益を計上すれば投資勘定は増加し、損失を計上すれば減少します。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準
被投資会社から配当金を受け取った場合には、その持分に相当する額だけ投資勘定を減額します。配当は被投資会社の純資産の払戻しであり、投資勘定に反映済みの成果の一部が現金化されたものと考えるためです。したがって、原価法のように受取配当金を損益計上することはありません。
のれん相当額の処理
投資の取得時に、投資の額と、これに対応する被投資会社の資本(識別可能な資産および負債を時価評価した後の投資会社持分)との間に差額が生じることがあります。この差額は、のれんまたは負ののれんに相当し、投資勘定に含めて処理します。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準
のれん相当額は、投資勘定に含めたうえで、その効果の及ぶ期間にわたり規則的に償却します。償却額は持分法による投資損益に含めて表示します。個別に区分して表示するのではなく、投資勘定および投資損益に一体として織り込まれる点が、全部連結におけるのれんとの表示上の違いです。
未実現損益の消去
投資会社と持分法の適用会社との間の取引に含まれる未実現損益は、投資会社の持分に応じて消去します。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準企業集団内での取引によって生じた未実現の利益が、外部への販売を経ずに財務諸表へ計上されることを防ぐための調整です。
投資会社が関連会社等へ資産を販売する取引(ダウンストリーム)でも、関連会社等が投資会社へ販売する取引(アップストリーム)でも、未実現損益は投資会社の持分割合に応じて消去します。全部連結が未実現損益の全額を消去するのに対し、持分法では投資会社の持分部分に限って消去する点が異なります。
会計方針の統一と開示
同一環境下で行われた同一の性質の取引等について、投資会社および持分法を適用する被投資会社が採用する会計方針は、原則として統一します。連結財務諸表全体として整合的な会計処理を確保するためです。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準
また、被投資会社の決算日が連結決算日と異なる場合には、被投資会社の直近の財務諸表を基礎として持分法を適用します。決算日の差異から生じる重要な取引や事象については、必要な調整を行います。持分法を適用した投資については、連結財務諸表においてその内容を注記により開示します。
上場準備における実務上の留意点
上場準備の過程では、関連会社の網羅性の確認が重要な論点になります。議決権割合が20%未満の投資先であっても、役員派遣や取引依存などの実態から重要な影響力が認められれば、関連会社として持分法の適用対象となるためです。投資先の一覧を作成し、影響力基準に照らして一社ごとに判定する体制が求められます。
あわせて、被投資会社から取得する財務情報の入手ルートと締切りの整備も欠かせません。決算日の差異、会計方針の統一、未実現損益の把握には、被投資会社の協力が前提となります。持分法は税効果会計とも関係するため、投資に係る一時差異の取扱いを含めて、連結決算のスケジュールに組み込んでおくことが実務では有効です。
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持分法の適用範囲や未実現損益の消去は、投資先ごとの実態把握に左右されるため、判断に迷う場面が少なくありません。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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持分法は、非連結子会社および関連会社への投資について、被投資会社の資本と損益の変動に応じて投資勘定を修正する一行連結の方法です。関連会社の判定は議決権割合を基礎としつつ影響力基準で行い、被投資会社の損益は持分比率に応じて取り込みます。のれん相当額は投資勘定に含めて償却し、未実現損益は投資会社の持分に応じて消去します。会計方針の統一と適切な注記を含め、連結決算体制の整備の一環として早期に着手することが、上場準備を円滑に進める鍵となります。
参考文献
よくある質問
持分法と全部連結は何が違いますか。
全部連結は子会社の資産・負債・収益・費用を項目ごとに合算するのに対し、持分法は投資勘定と持分法による投資損益という純額で被投資会社の成果を取り込む一行連結です。未実現損益についても、全部連結は全額を消去し、持分法は投資会社の持分部分のみを消去します。
議決権が20%未満でも持分法の対象になりますか。
なります。議決権割合が20%未満であっても、一定割合以上を保有し、役員の派遣や重要な融資・取引などを通じて事業の方針決定に重要な影響を与えることができると認められる場合には、影響力基準により関連会社と判定され、持分法の適用対象となります。
被投資会社から受け取った配当金はどう処理しますか。
持分法では、受け取った配当金の額だけ投資勘定を減額します。配当は投資勘定に反映済みの成果の払戻しと考えるため、原価法のように受取配当金を損益として計上することはありません。