ライセンスの供与の収益認識では、企業の約束の性質が「アクセス権」と「使用権」のどちらに当たるかによって、収益を計上する時期が大きく変わります。アクセス権と判定されればライセンス期間にわたって収益を認識し、使用権と判定されれば供与時点で一括して収益を認識します。判定を誤ると売上高の計上時期が数年単位でずれるため、契約書の内容を要件に当てはめて検討する必要があります。
この記事では、収益認識に関する会計基準および同適用指針の条項に沿って、ライセンスの供与に関する履行義務の識別、アクセス権と使用権の判定フロー、売上高または使用量に基づくロイヤルティの特例、そして具体的な仕訳例までを整理します。読者としてソフトウェア・コンテンツ・フランチャイズなど知的財産を扱う企業の経理実務者を想定しています。
ライセンスの供与の収益認識の全体像
ライセンスとは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものをいいます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第61項)。知的財産のライセンスには、ソフトウェアおよび技術、動画・音楽その他の形態のメディア・エンターテインメント、フランチャイズ、特許権・商標権および著作権に関するものが含まれます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第143項)。
ライセンスの供与の収益認識は、大きく2段階で検討します。第1段階は、ライセンスを供与する約束が契約に含まれる他の財またはサービスを移転する約束と別個のものかどうかの判定です。第2段階は、別個のものであると判定した場合に、企業の約束の性質がアクセス権と使用権のいずれに当たるかの判定です(収益認識に関する会計基準の適用指針 第61項、第62項)。
収益認識に関する会計基準の適用時期と改正の経緯
収益認識に関する会計基準は、2018年3月30日に公表され、2020年3月31日に改正されています。2020年に改正した会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されています(収益認識に関する会計基準 第81項)。早期適用として、2020年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することも認められていました(収益認識に関する会計基準 第82項)。
その後、2024年にリースに関する会計基準の公表に伴う改正が行われています(収益認識に関する会計基準 第91-3項)。2024年改正会計基準の適用時期は2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とされており、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます(収益認識に関する会計基準 第83-3項)。この改正はライセンスの供与に関する定めの内容を変えるものではありません。
ライセンスと他の財又はサービスの別個性の判定
ライセンスの供与は、単独で契約されることもあれば、機器の販売や保守サービスなど他の財またはサービスと組み合わせて契約されることもあります。顧客との契約が、財またはサービスを移転する約束に加えてライセンスを供与する約束を含む場合には、他の種類の契約と同様に、会計基準第32項から第34項の定めに従って当該契約における履行義務を識別します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第144項)。
別個のものでない場合の単一の履行義務としての処理
ライセンスを供与する約束が他の財またはサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、両方を一括して単一の履行義務として処理します。この場合は、会計基準第35項から第40項の定めに従い、その単一の履行義務が一定の期間にわたり充足されるものか一時点で充足されるものかを判定します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第61項)。アクセス権と使用権の区分による判定は行いません。
別個のものである場合の独立した履行義務としての処理
ライセンスを供与する約束が他の財またはサービスを移転する約束と別個のものであり、当該約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、アクセス権と使用権のいずれを提供するものかを判定します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第62項)。
ここでいう別個の財またはサービスとは、当該財またはサービスから単独で顧客が便益を享受できること、および当該財またはサービスを顧客に移転する約束が契約に含まれる他の約束と区分して識別できることの両方を満たすものをいいます(収益認識に関する会計基準 第34項)。
アクセス権と使用権の判定フロー
アクセス権とは、ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利をいい、使用権とは、ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利をいいます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第62項)。両者の収益認識の時期は次のとおりです。
| 企業の約束の性質 | 収益認識の時期 |
|---|---|
| アクセス権(ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利) | 一定の期間にわたり充足される履行義務として処理し、履行義務の充足に係る進捗度に基づき一定の期間にわたり収益を認識する |
| 使用権(ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利) | 一時点で充足される履行義務として処理し、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益を認識する |
アクセス権は、企業の知的財産へのアクセスを提供するという企業の履行からの便益を、企業の履行が生じるにつれて顧客が享受するため、一定の期間にわたり充足される履行義務の要件を満たすものとして扱われます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第146項、収益認識に関する会計基準 第38項(1))。
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アクセス権と判定される3つの要件
ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、次の3つの要件のすべてに該当する場合にアクセス権を提供するものとなります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第63項)。1つでも該当しない場合は使用権となります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第64項)。
| 知的財産に著しく影響を 与える活動の実施 |
ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている、または顧客により合理的に期待されていること |
|---|---|
| 顧客が直接的に 影響を受けること |
顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること |
| 財又はサービスの 移転を伴わないこと |
企業の活動の結果として、財またはサービスが顧客に移転しないこと |
1つ目の要件にある「著しく影響を与える活動」に該当するのは、当該活動が知的財産の形態(デザインやコンテンツなど)または機能性(機能を実行する能力など)を著しく変化させると見込まれる場合、あるいは顧客が知的財産からの便益を享受する能力が企業の活動により得られること、または当該活動に依存している場合です(収益認識に関する会計基準の適用指針 第65項)。ブランドからの便益は、知的財産の価値を補強または維持する企業の継続的な活動から得られることが多く、後者に当たりやすい例といえます。
企業がそのような活動を行うことが顧客により合理的に期待されていることを示す要因としては、企業の取引慣行や公表した方針などがあります。また、売上高に基づくロイヤルティのように、知的財産についての企業と顧客との間で経済的利益の共有が存在することも、合理的に期待されていることを示す可能性があります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第149項)。
使用権と判定されやすいライセンス
顧客が権利を有している知的財産が重要な独立した機能性を有する場合には、知的財産の便益の実質的な部分が当該機能性から得られるため、企業の活動が知的財産の形態または機能性を著しく変化させない限り、顧客が便益を享受する能力は企業の活動による著しい影響を受けません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第150項)。この場合はアクセス権の要件を満たさず、使用権として一時点で収益を認識することになります。
重要な独立した機能性を有することが多いライセンスの例としては、ソフトウェア、薬品の製法、映画・テレビ番組・音楽作品の録音物などのメディア・コンテンツが挙げられています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第150項)。一方、ブランドやフランチャイズのように、企業の継続的な活動が価値を支えている知的財産は、アクセス権に該当する可能性が高くなります。
判定で考慮しない2つの要因
企業の約束の性質を判定するにあたって、次の2つの要因は考慮しません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第66項)。契約書に記載されていても判定材料にしない点に注意が必要です。
| 時期、地域又は 用途の制限 |
約束したライセンスの属性を明確にするものであり、履行義務を一定の期間にわたり充足するのか一時点で充足するのかを明確にするものではないため |
|---|---|
| 特許の不正使用を 防止するための保証 |
特許の不正使用を防止するという約束は履行義務ではなく、そのための活動は知的財産の価値を保護し、供与されるライセンスが契約で合意された仕様に従っているという保証を顧客に提供するものであるため |
これらの取扱いは、適用指針の結論の背景でも同じ趣旨が示されています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第148項)。
アクセス権と使用権の仕訳例
判定結果によって、動く勘定科目と計上時期がどのように変わるかを仕訳で確認します。以下の設例はいずれも当社が作成した仮設例であり、金額の単位は千円です。
使用権として一時点で収益を認識する場合の仕訳
自社開発のパッケージソフトウェアのライセンスを顧客に供与し、契約時にプロダクトキーを引き渡して顧客が利用を開始できる状態にしたとします。対価は5,000千円で、翌月末に入金される条件です。重要な独立した機能性を有するライセンスであり使用権に該当するため、顧客がライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益の全額を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第62項、第147項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 5,000 | 売上高 | 5,000 |
アクセス権として一定の期間にわたり収益を認識する場合の仕訳
自社ブランドの使用を3年間許諾する契約を締結し、契約開始時に対価3,600千円を一括して受け取ったとします。ブランドの価値を維持するための広告宣伝活動を継続して行うことが顧客により合理的に期待されており、アクセス権に該当すると判定した場合の仕訳です。時の経過に応じて履行義務が均等に充足されると見積り、1年あたり1,200千円を収益として認識します。
1行目は契約開始時に対価を受け取ったときの仕訳、2行目は第1期末に1年分の収益を認識するときの仕訳です。財またはサービスを顧客に移転する前に対価を受け取っているため、受領時には契約負債を計上します(収益認識に関する会計基準 第78項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 3,600 | 契約負債 | 3,600 |
| 契約負債 | 1,200 | 売上高 | 1,200 |
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売上高又は使用量に基づくロイヤルティの取扱い
ライセンス契約では、固定額ではなく顧客の売上高や使用量に連動したロイヤルティを対価とする形態が多く見られます。この場合の対価は変動対価に当たりますが、知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高または使用量に基づくロイヤルティについては、変動対価の額の見積りとその制限を定めた会計基準第54項および第55項の定めを適用しない特例が置かれています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。
特例が適用される範囲
特例が適用されるのは、当該ロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連している場合、または当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合です(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。ここでいうライセンスが支配的な項目である場合とは、例えばロイヤルティが関連する財またはサービスの中で、ライセンスに著しく大きな価値を顧客が見出すことを企業が合理的に予想できる場合をいいます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第152項)。
この特例は、売上高または使用量に基づくロイヤルティにのみ適用されるものであり、他の種類の変動対価に流用することはできません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第151項)。また、前記の要件に該当しない場合には、通常どおり会計基準第50項から第55項の変動対価の定めを適用します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第68項)。
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ロイヤルティの収益認識時点
売上高または使用量に基づくロイヤルティは、次の2つのうちいずれか遅い方の時点で収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。1つ目は、知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時、または顧客が知的財産のライセンスを使用する時です。2つ目は、当該ロイヤルティの一部または全部が配分されている履行義務が充足、あるいは部分的に充足される時です。
言い換えれば、顧客の売上や使用が実際に発生して不確実性が解消されるまでは、ロイヤルティに係る収益を認識しません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第151項)。将来のロイヤルティを見積って前倒しで売上計上することは認められない点が、通常の変動対価との大きな違いです。
ロイヤルティの仕訳例
自社の技術ライセンスを供与し、顧客の関連製品売上高の5パーセントをロイヤルティとして四半期ごとに受け取る契約を締結したとします。当四半期に顧客が計上した関連製品売上高が16,000千円であったため、ロイヤルティは800千円となります。当四半期のロイヤルティ収益は次の算式で求めます。
顧客が売上高を計上し、かつライセンスの供与に係る履行義務が充足されているため、当四半期に収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。対価はまだ受け取っていませんが、対価に対する権利が期間の経過とともに確定しているため売掛金を計上します。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 売掛金 | 800 | 売上高 | 800 |
ライセンスの収益認識における実務上の落とし穴
ライセンス期間の開始前の収益認識
使用権と判定した場合でも、契約書に署名した時点で直ちに収益を認識できるわけではありません。使用権については、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できる期間の開始前には収益を認識しません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第147項)。例えば、ソフトウェアの使用に必要なコードを顧客に提供する前にライセンス期間が開始する場合には、コードを提供する前には収益を認識しません。契約日、コードの引渡日、ライセンス期間の開始日が異なる契約では、この3つの日付を管理する必要があります。
契約書の文言だけによる判定
アクセス権の判定では、企業が知的財産に著しく影響を与える活動を行うことが「契約により定められている」場合だけでなく、「顧客により合理的に期待されている」場合も要件に含まれます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第63項(1))。契約書に活動の実施が明記されていなくても、企業の取引慣行や公表した方針から合理的に期待される状況であれば、アクセス権と判定される可能性があります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第149項)。契約書のレビューだけで判定を完結させず、実際の運用実態を確認することが重要です。
別個性の判定の省略
ライセンスに保守サービスやカスタマイズ作業が付随する契約では、アクセス権と使用権の判定に入る前に、ライセンスを供与する約束が他の約束と別個のものかどうかを判定する必要があります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第61項、第144項)。別個のものでない場合には、アクセス権と使用権の区分による判定ではなく、一括した単一の履行義務について会計基準第35項から第40項の定めに従って判定します。判定の順序を飛ばすと、結論そのものが変わるおそれがあります。
まとめ
ライセンスの供与の収益認識は、第1に他の財またはサービスと別個のものかどうか、第2にアクセス権と使用権のいずれに当たるかという2段階の判定で決まります。アクセス権は一定の期間にわたり、使用権は顧客が便益を享受できるようになった一時点で収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第62項)。
アクセス権の判定は3つの要件のすべてを満たす必要があり、1つでも欠ければ使用権となります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第63項、第64項)。時期・地域・用途の制限や特許の不正使用を防止するための保証は判定に含めません(収益認識に関する会計基準の適用指針 第66項)。また、売上高または使用量に基づくロイヤルティは、変動対価の見積りの制限を適用せず、顧客の売上計上等と履行義務の充足のいずれか遅い方の時点で収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。
ライセンス契約は、対価の設計や付随サービスの有無によって判定結果が分かれやすく、売上高の計上時期に直接影響します。契約類型ごとに判定の根拠を文書化しておくことが、監査対応と社内統制の両面で有効です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
ライセンスの供与がアクセス権と使用権のどちらに当たるかは何で決まりますか
企業の約束の性質で決まります。ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが契約で定められているか顧客により合理的に期待されていること、顧客がその活動により直接的に影響を受けること、その活動の結果として財またはサービスが顧客に移転しないことの3要件をすべて満たす場合にアクセス権となり、1つでも満たさない場合は使用権となります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第63項、第64項)。
ソフトウェアのライセンスはどちらに区分されますか
重要な独立した機能性を有するライセンスは、企業の活動が知的財産の形態または機能性を著しく変化させない限り、企業の活動による著しい影響を受けないため使用権に区分されます。ソフトウェアは重要な独立した機能性を有することが多いライセンスの例として挙げられています(収益認識に関する会計基準の適用指針 第150項)。ただし継続的なアップデートによって機能性が著しく変化する場合など、契約の実態によってはアクセス権となる可能性があるため、個別に要件を検討する必要があります。
売上高に基づくロイヤルティはいつ収益を認識しますか
知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時または顧客がライセンスを使用する時と、ロイヤルティが配分されている履行義務が充足あるいは部分的に充足される時の、いずれか遅い方の時点で収益を認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第67項)。変動対価の額の見積りに関する会計基準第54項および第55項は適用せず、将来のロイヤルティを見積って前倒しで収益を認識することはできません。
ライセンス期間の開始前に対価を受け取った場合はどう処理しますか
財またはサービスを顧客に移転する前に対価を受け取った場合は、対価を受け取った時と対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で契約負債を計上します(収益認識に関する会計基準 第78項)。使用権については顧客がライセンスからの便益を享受できる期間の開始前に収益を認識しないため、期間の開始まで契約負債のまま繰り延べます(収益認識に関する会計基準の適用指針 第147項)。