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財務会計

旧リース会計基準と新基準の違い|借手・貸手の新旧対比と移行実務

目次
  1. 旧リース会計基準と新リース会計基準の全体像
  2. 旧基準=企業会計基準第13号の枠組み
  3. 新基準=企業会計基準第34号の枠組み
  4. 新旧の骨格を対比する
  5. 借手の会計処理はどう変わるか
  6. オペレーティング・リースのオンバランス化
  7. 新旧で仕訳がどう変わるか
  8. すべてのリースを載せるわけではない
  9. 所有権移転外ファイナンス・リースの扱いはどう変わるか
  10. リースの識別とリース期間の考え方の違い
  11. 貸手の会計処理は基本的に維持される
  12. 表示および注記の違い
  13. 適用時期と旧基準からの移行
  14. 適用時期と早期適用
  15. 旧基準から新基準へ移るときの取扱い
  16. なぜ基準が変わるのか
  17. まとめ
  18. 参考文献
  19. よくある質問
  20. 旧リース会計基準と新リース会計基準の最も大きな違いは何ですか
  21. 所有権移転外ファイナンス・リースという区分は新基準でもなくなりませんか
  22. 新基準ではすべてのリースを貸借対照表に計上しなければなりませんか
  23. 貸手の会計処理も大きく変わりますか
  24. 旧基準でオンバランスしていたリース資産は、移行時にどう扱いますか

リース会計は、いま日本基準が大きく切り替わる途中にあります。現在の実務で使われているのは旧リース会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」)ですが、2024年9月13日に公表された新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)が、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます(リースに関する会計基準 第58項)。

新旧の違いを一言でいえば、借手がリースを分類しなくなることです。旧基準では、ファイナンス・リース取引だけをオンバランスし、オペレーティング・リース取引は賃貸借処理で費用計上していました。新基準では、借手は簡便的な取扱いを選択した場合を除き、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します。

この記事では、旧リース会計基準と新リース会計基準の違いを、借手・貸手・表示および注記・適用時期の順に新旧対比で整理します。あわせて、実務で質問の多い所有権移転外ファイナンス・リースの扱いがどう変わるのか、旧基準から新基準へ移る際に何を準備すればよいのかまで確認できるようにしました。

旧リース会計基準と新リース会計基準の全体像

まず、それぞれの基準が何を定めているのかを押さえます。土台となる考え方が違うため、個別の論点を追う前に枠組みの違いを理解しておくと、そのあとの比較が読みやすくなります。

旧基準=企業会計基準第13号の枠組み

旧リース会計基準は、リース取引に係る会計処理を定めることを目的とした基準です(リース取引に関する会計基準 第1項)。ここでいうリース取引とは、特定の物件の所有者たる貸手が、当該物件の借手に対し、合意された期間にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は合意された使用料を貸手に支払う取引をいいます(リース取引に関する会計基準 第4項)。

旧基準の骨格は二分法です。リース取引は、まずファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分けられます。ファイナンス・リース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引またはこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいいます(リース取引に関する会計基準 第5項)。オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リース取引以外のリース取引です(リース取引に関する会計基準 第6項)。

会計処理は、この分類にそのまま連動します。ファイナンス・リース取引については通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行い、借手はリース取引開始日にリース物件とこれに係る債務をリース資産およびリース債務として計上します(リース取引に関する会計基準 第9項、第10項)。一方、オペレーティング・リース取引については通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行います(リース取引に関する会計基準 第15項)。つまり、オペレーティング・リース取引は貸借対照表に載りません。

新基準=企業会計基準第34号の枠組み

新リース会計基準では、出発点となる用語そのものが変わりました。リースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分をいいます(リースに関する会計基準 第6項)。「取引」ではなく「契約」を軸にした定義であり、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含むと判断します(リースに関する会計基準 第26項)。

そして借手側では、使用権資産という新しい概念が中心に置かれます。使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産です(リースに関する会計基準 第10項)。借手は、リース開始日に、リース負債を計上するとともに、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用および資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。

ここで重要なのは、この第33項に「ファイナンス・リースの場合は」という条件が付いていないことです。新基準における借手の会計処理は、リースの分類にかかわらない単一のモデルとして設計されています。

関連コラム新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説▸

新旧の骨格を対比する

枠組みの違いを並べると次のようになります。左が現在適用されている旧基準、右がこれから適用される新基準です。

旧基準(第13号) 新基準(第34号)
リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類する(第5項、第6項) 借手はリースを分類せず、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する(第33項)
ファイナンス・リース取引のみ、借手がリース資産とリース債務を計上する(第10項) 借手は使用権資産とリース負債を計上する。分類による区別はない(第33項)
オペレーティング・リース取引は通常の賃貸借取引に係る方法に準じて処理する(第15項) 簡便的な取扱いを選択した場合を除き、オンバランスの対象となる(適用指針第33号 第20項、第22項)
貸手はファイナンス・リース取引について通常の売買取引に係る方法に準じて処理する(第13項) 貸手はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、従来と同様に処理する(第43項、第45項、第48項)
2008年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用されている(第23項) 2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される(第58項)

借手の会計処理はどう変わるか

新旧の違いのうち、実務への影響が最も大きいのが借手の会計処理です。ここは分けて丁寧に見ていきます。

オペレーティング・リースのオンバランス化

旧基準では、オペレーティング・リース取引について通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行い、解約不能のものに係る未経過リース料を、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るものと、1年を超えるリース期間に係るものとに区分して注記していました(リース取引に関する会計基準 第15項、第22項)。オフィスや店舗の賃借は、多くの場合この扱いで処理されてきました。つまり、支払義務は注記にとどまり、貸借対照表本体には現れません。

新基準では、この取扱いがなくなります。借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上するため、これまで注記だけで済んでいた賃借契約が資産と負債の両方を押し上げます(リースに関する会計基準 第33項)。総資産が増え、有利子負債に類する残高が増えるため、自己資本比率やROAといった財務指標にも影響します。

リース負債の当初測定は、原則として次の考え方によります。借手は、リース負債の計上額を算定するにあたって、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法によります(リースに関する会計基準 第34項)。

リース負債 = 未払である借手のリース料 - これに含まれている利息相当額の合理的な見積額

計上後は、利息相当額を借手のリース期間にわたり原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項)。この点は、旧基準がリース資産およびリース債務の計上額についてリース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によるとし、当該利息相当額を原則としてリース期間にわたり利息法により配分するとしていたのと、考え方としては同じ流れをたどります(リース取引に関する会計基準 第11項)。変わったのは対象範囲であって、計算の作法そのものではないと理解すると整理しやすくなります。

新旧で仕訳がどう変わるか

同じ契約が旧基準と新基準でどう記帳されるのかを、簡単な作例で確認します。前提は、オフィスを5年間賃借し、年間のリース料1,200千円を各年度末に支払う契約で、借手の追加借入利子率は年3パーセント、旧基準ではオペレーティング・リース取引に該当するものとします(単位:千円)。まず旧基準では、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて処理するため、支払時に費用を計上するだけです(リース取引に関する会計基準 第15項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払リース料 1,200 現金預金 1,200

一方、新基準では、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上し、その後は利息相当額の配分と使用権資産の償却を行います(リースに関する会計基準 第33項、第36項、第38項)。上記の前提でリース料を年3パーセントで割り引いた現在価値は5,496となり、初年度は利息相当額165、元本返済1,035、減価償却費1,099となります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 5,496 リース負債 5,496
リース負債 1,035 現金預金 1,200
支払利息 165
減価償却費 1,099 使用権資産 1,099

金額の合計は同じでも、貸借対照表に資産と負債が立つこと、そして損益計算書の費用が「支払リース料」という単一の営業費用から「減価償却費」と「支払利息」に分かれることが、実務上の大きな違いです。営業利益より下に利息が移るため、EBITDAなど一部の指標は数値が変わります。

すべてのリースを載せるわけではない

もっとも、新基準がすべてのリースを機械的にオンバランスさせるわけではありません。適用指針には、実務負担に配慮した簡便的な取扱いが用意されています。

短期リースの
簡便的な取扱い
使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。
少額リースの
簡便的な取扱い
企業の事業内容に照らして重要性が乏しいリースのうち、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいものや、新品時の原資産の価値が少額であるものについて、同様に費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

このうちリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースの判定は、旧基準の適用指針において定められていた、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲したものです(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。旧基準で少額リースの簡便処理を使ってきた企業は、その運用をおおむね引き継げると考えてよいでしょう。実務では、まずこの閾値の設定と社内ルールの再確認から着手するケースが多く見られます。

所有権移転外ファイナンス・リースの扱いはどう変わるか

旧基準に慣れている方が最も戸惑いやすいのが、この論点です。結論から述べると、所有権移転外ファイナンス・リースという区分そのものは新基準にも残りますが、借手の会計処理を分ける役割は失われます。

旧基準では、ファイナンス・リース取引は、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの(所有権移転ファイナンス・リース取引)と、それ以外の取引(所有権移転外ファイナンス・リース取引)に分類されていました(リース取引に関する会計基準 第8項)。この分類は借手の減価償却に直結し、所有権移転ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法により算定し、所有権移転外ファイナンス・リース取引に係るリース資産の減価償却費は、原則として、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定するとされていました(リース取引に関する会計基準 第12項)。

新基準にも、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースの定義は置かれています(リースに関する会計基準 第12項、第13項)。ただし、この分類を行うのは貸手です。貸手は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類したうえで、ファイナンス・リースについて所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類します(リースに関する会計基準 第43項、第44項)。借手側には、この分類に基づいて会計処理を切り替える定めがありません。

では借手の償却はどうなるのかというと、分類ではなく契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかという基準で判断します。所有権が借手に移転すると認められるリースに係る使用権資産の減価償却費は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定し、この場合の耐用年数は経済的使用可能予測期間、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースに係る使用権資産の減価償却費は、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。

結果として、従来の所有権移転外ファイナンス・リース取引に係る償却の考え方(リース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとする)は、実質的に新基準の第38項へ引き継がれています。変わったのは分類の呼び名ではなく、その分類を借手の会計処理の入口として使わなくなった点です。旧基準では「まず分類し、次に処理を決める」流れでしたが、新基準では「まず使用権資産とリース負債を計上し、償却方法を決める段階で所有権の移転を見る」流れになります。

旧基準(第13号) 新基準(第34号)
借手がファイナンス・リース取引を所有権移転と所有権移転外に分類する(第8項) 分類を行うのは貸手であり、借手の会計処理の入口ではない(第43項、第44項)
所有権移転外ファイナンス・リース取引はリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする(第12項) 所有権が借手に移転すると認められるリース以外は、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとする(第38項)
オペレーティング・リース取引に該当すれば、借手は資産も負債も計上しない(第15項) 簡便的な取扱いに該当しない限り、借手は使用権資産とリース負債を計上する(第33項)

リースの識別とリース期間の考え方の違い

会計処理の入口が変わったことで、判断が必要な場面も前倒しになりました。新基準では、契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断します(リースに関する会計基準 第25項)。判断の基準は、契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転するかどうかです(リースに関する会計基準 第26項)。契約期間中は、契約条件が変更されない限り、契約がリースを含むか否かの判断を見直しません(リースに関する会計基準 第27項)。旧基準にはこの「リースの識別」に相当する手続がなく、リース契約という形式から入るのが通常でした。

リース期間の考え方も変わります。新基準では、借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間の両方を加えて決定します(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。旧基準のファイナンス・リース取引の判定が解約不能かどうかを軸にしていたのに対し、新基準ではオプションの行使可能性まで踏み込んだ見積りが求められます。

実務で影響が大きいのは、不動産賃貸借です。普通借家契約のように更新が想定される契約では、解約不能期間だけを見るのか、更新後の期間まで含めるのかで、計上額が大きく変わります。上場準備企業の支援でも、この判断根拠をどう文書化するかが論点になることが少なくありません。

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貸手の会計処理は基本的に維持される

借手の変化が大きい一方で、貸手の会計処理は旧基準の枠組みがおおむね維持されます。貸手は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類し(リースに関する会計基準 第43項)、ファイナンス・リースについて通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第45項)。リース開始日には、所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として計上します(リースに関する会計基準 第46項)。オペレーティング・リースについては、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第48項)。

これは、旧基準で貸手がリース取引開始日に所有権移転ファイナンス・リース取引についてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リース取引についてはリース投資資産として計上するとしていた定めと、実質的に同じ構造です(リース取引に関する会計基準 第13項)。利息相当額の算定についても、貸手のリース料および見積残存価額の合計額からこれに対応する原資産の取得価額を控除して算定し、貸手のリース期間にわたり原則として利息法により配分するとされており(リースに関する会計基準 第47項)、旧基準の考え方が引き継がれています(リース取引に関する会計基準 第14項)。

ただし、リースの識別やリース期間の決定といった上流の判断は貸手にも及びます。貸手は、貸手のリース期間について、借手のリース期間と同様に決定する方法か、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に再リース期間を加えて決定する方法のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第32項)。「貸手は影響を受けない」と単純化しすぎないことが大切です。

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表示および注記の違い

貸借対照表における借手の表示は、旧基準よりも選択肢が広がりました。旧基準では、リース資産について、原則として、有形固定資産、無形固定資産の別に、一括してリース資産として表示するとされ、有形固定資産または無形固定資産に属する各科目に含めることもできるとされていました(リース取引に関する会計基準 第16項)。

新基準では、使用権資産について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含める方法か、対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法のいずれかにより表示します(リースに関する会計基準 第49項)。リース負債については、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債に属するものとし、1年を超えて支払の期限が到来するリース負債は固定負債に属するものとします(リースに関する会計基準 第50項)。加えて、リース負債に係る利息費用について、損益計算書において区分して表示するか、利息費用が含まれる科目および金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。

注記についても発想が変わりました。旧基準は、リース資産の内容および減価償却の方法を注記するといった個別の記載事項を列挙する形式でした(リース取引に関する会計基準 第19項)。新基準は、まず開示目的を置きます。リースに関する注記における開示目的は、借手または貸手が注記において、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手または貸手の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示することにあるとされています(リースに関する会計基準 第54項)。そのうえで、借手は会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記します(リースに関する会計基準 第55項)。

形式的なチェックリストではなく、開示目的に照らして自社に必要な情報を判断する必要があるため、注記の作成プロセス自体を見直すことになります。

適用時期と旧基準からの移行

適用時期と早期適用

旧リース会計基準は、2008年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用されており、2007年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から早期適用することもできるとされていました(リース取引に関する会計基準 第23項)。すでに適用から相当期間が経過しており、現在の実務で用いられている基準です。

新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。適用指針の適用時期も会計基準と同様です(リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。3月決算会社であれば、適用初年度は2027年4月1日に始まる事業年度となります。

なお、新基準の適用により、旧リース会計基準(企業会計基準第13号)、旧適用指針(企業会計基準適用指針第16号)、実務対応報告第31号、移管指針第3号に従って会計処理されている取引については、これらの会計基準等の適用を終了することとされています(リースに関する会計基準 第59項)。旧基準と新基準が並存するわけではなく、置き換わる関係にあります。

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旧基準から新基準へ移るときの取扱い

新旧の違いを実務に落とし込むうえで避けて通れないのが、移行時の処理です。適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当期首残高から新たな会計方針を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。実務では、後者の簡便的な方法が選択される場面が多くなると見込まれます。

この方法を選択する場合、旧基準での分類ごとに次の取扱いが用意されています。

旧基準でファイナンス・
リースに分類していたリース
適用初年度の前連結会計年度および前事業年度の期末日におけるリース資産およびリース債務の帳簿価額を、それぞれ適用初年度の期首における使用権資産およびリース負債の帳簿価額とすることができます(リースに関する会計基準の適用指針 第120項)。
旧基準でオペレーティング・
リースに分類していたリース
適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を、同時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上します。使用権資産は、リース負債と同額とする方法などから選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第123項)。

言い換えると、もともとオンバランスされていたファイナンス・リースは帳簿価額を引き継ぐだけで済む一方、これまで注記で済ませていたオペレーティング・リースは新たに残高を作らなければならないということです。準備の負荷は、後者にどれだけ契約があるかでほぼ決まります。旧基準で解約不能の未経過リース料として注記してきた金額(リース取引に関する会計基準 第22項)は、その規模感をつかむ最初の手がかりになります。

また、リースの識別についても経過的な選択肢があります。適用初年度の前連結会計年度および前事業年度の期末日において旧基準を適用しているリース取引について、契約にリースが含まれているか否かの判断を行わずに新基準を適用することや、適用初年度の期首時点で存在する旧基準を適用していない契約について、当該時点の事実および状況に基づいて判断することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第119項)。過去の全契約を洗い直さずに済む余地があるため、移行方針を決める段階でこの選択肢を検討しておくと、実務負担を抑えられます。

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なぜ基準が変わるのか

新旧の違いを理解するうえで、変更の背景を押さえておくと判断がぶれにくくなります。

日本のリース会計は、1993年6月に企業会計審議会第一部会から公表された「リース取引に係る会計基準」に始まります。この基準では、ファイナンス・リース取引のうち所有権移転外ファイナンス・リース取引について、一定の注記を要件として通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理(例外処理)を採用することが認められており、実際には大半の企業がこの例外処理を採用していました。この状況を是正するため、企業会計基準委員会は例外処理を廃止する結論に至り、2007年3月30日に企業会計基準第13号を公表しました。これが現在の旧リース会計基準です。

その後、国際会計基準審議会が2016年1月に国際財務報告基準第16号「リース」を、米国財務会計基準審議会が同年2月にTopic 842を公表しました。いずれも、オペレーティング・リースも含むすべてのリースについて、使用権資産とリース負債を計上する使用権モデルを採用しています。これらの公表により、国際的な会計基準と日本のリース会計基準との間には、特に負債の認識において違いが生じることとなりました。企業会計基準委員会はこれを受けて検討を進め、2024年9月13日に企業会計基準第34号として公表しています。

つまり、今回の変更は日本固有の事情から生じたものではなく、国際的な会計基準との整合性を図る流れの中にあります。海外投資家や海外子会社を持つ企業ほど、この方向性を前提に社内の会計方針を設計しておく意味があります。

まとめ

旧リース会計基準と新リース会計基準の違いは、次の5点に集約できます。

  • 借手の分類がなくなる。旧基準はファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引を分けて処理を変えていましたが、新基準では借手は単一のモデルで使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。
  • オペレーティング・リースがオンバランスされる。旧基準で注記にとどまっていた賃借契約が、貸借対照表に載ります(リース取引に関する会計基準 第15項、第22項)。
  • 所有権移転外ファイナンス・リースの区分は残るが、役割が変わる。分類を行うのは貸手であり、借手の償却は所有権が移転すると認められるかどうかで判断します(リースに関する会計基準 第37項、第38項、第44項)。
  • 貸手の会計処理は基本的に維持される。リース債権・リース投資資産の枠組みは旧基準から引き継がれます(リースに関する会計基準 第45項から第48項)。
  • 適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から。2025年4月1日以後開始する年度からの早期適用も可能です(リースに関する会計基準 第58項)。

実務の準備という観点では、まず旧基準でオペレーティング・リース取引として処理してきた契約を洗い出し、注記していた未経過リース料の規模を確認するところから始めるのが現実的です。そのうえで、リース期間の判断方針、割引率の決定方法、簡便的な取扱いの適用範囲を社内で固めていくことになります。

なお、どの契約がリースに該当するか、リース期間をどこまで含めるかといった判断は個別性が高く、契約書の文言や過去の更新実績によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

旧リース会計基準と新リース会計基準の最も大きな違いは何ですか

借手がリースを分類しなくなる点です。旧基準ではファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引を分け、前者だけをオンバランスしていましたが(リース取引に関する会計基準 第9項、第15項)、新基準では借手は簡便的な取扱いを選択した場合を除き、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。

所有権移転外ファイナンス・リースという区分は新基準でもなくなりませんか

定義は残ります(リースに関する会計基準 第13項)。ただし、この分類を行うのは貸手であり(リースに関する会計基準 第44項)、借手の会計処理を分ける役割は持ちません。借手の使用権資産の償却は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかで判断します(リースに関する会計基準 第37項、第38項)。

新基準ではすべてのリースを貸借対照表に計上しなければなりませんか

いいえ。短期リースおよび少額リースについては、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上する簡便的な取扱いが認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

貸手の会計処理も大きく変わりますか

貸手は引き続きリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類し、ファイナンス・リースについては通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第43項、第45項)。枠組みは旧基準から維持されますが、リースの識別やリース期間の決定といった上流の判断には新基準の定めが及びます(リースに関する会計基準 第32項)。

旧基準でオンバランスしていたリース資産は、移行時にどう扱いますか

会計方針の変更の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法を選択する場合、旧基準でファイナンス・リース取引に分類していたリースについては、適用初年度の前連結会計年度および前事業年度の期末日におけるリース資産およびリース債務の帳簿価額を、それぞれ適用初年度の期首における使用権資産およびリース負債の帳簿価額とすることができます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項、第120項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史