新リース会計基準における貸手の会計処理の全体像
新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)の話題は、借手のすべてのリースがオンバランスされる点にどうしても集まります。そのため、貸手の立場にある企業からは「自社は何をどこまで変えなければならないのか」という質問を数多くいただきます。
結論から申し上げます。貸手の会計処理は、収益認識会計基準との整合性を図る点と、リースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」の定めを踏襲しています(リースに関する会計基準 BC13項、BC53項、BC61項)。借手のように処理の枠組みが入れ替わるわけではありません。
ただし「基本的に踏襲」は「何も変わらない」という意味ではありません。除外された2点、すなわち収益認識会計基準との整合とリースの定義・識別の見直しは、リース業・不動産賃貸業・販売型リースを行う設備メーカーにとって、売上高の計上タイミングと金額に直結します。実務では、この差分だけを正確に切り出せるかどうかが対応工数を大きく左右します。とりわけリースの識別が見直されたことにより、従来リースとして扱っていなかった契約が新たにリースとして識別される可能性がある点には注意が必要です(リースに関する会計基準 第26項)。
借手と貸手は別々の定めに従って判断する
踏襲の背景には、貸手の会計処理についてはIFRS第16号及びTopic 842のいずれも抜本的な改正が行われていないという事情があります(リースに関する会計基準 BC13項)。
その結果、借手は分類を行わずすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する一方(リースに関する会計基準 第33項、BC13項)、貸手は従来どおりファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類します(リースに関する会計基準 第43項)。同じ契約でも、借手がオンバランスしたからといって貸手が必ずファイナンス・リースとして処理するわけではありません。
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貸手のリースの分類とファイナンス・リースの判定
貸手の会計処理は分類から始まります。貸手は、リースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類し(リースに関する会計基準 第43項)、ファイナンス・リースについてはさらに所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類します(リースに関する会計基準 第44項)。この分類の枠組みは、企業会計基準第13号の方法から基本的に変更されていません(リースに関する会計基準 BC54項)。
解約不能とフルペイアウトの2要件
ファイナンス・リースとは、次の2つをいずれも満たすリースをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第59項)。
- 解約不能のリース…契約期間の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリース
- フルペイアウトのリース…借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース
実務で判断が割れやすいのが解約不能の要件です。法的形式上は解約可能であっても、解約に際して相当の違約金(規定損害金)を支払わなければならない等の理由から事実上解約不能と認められるリースは、解約不能のリースに準ずるリースとして取り扱います。具体例としては、解約時に未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を規定損害金として支払うこととされているリースが挙げられています(リースに関する会計基準の適用指針 第60項)。フルペイアウトについては、原資産を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受し、取得価額相当額・維持管理等の費用・陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担する場合をいうと整理されています(リースに関する会計基準の適用指針 第61項)。
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現在価値基準と経済的耐用年数基準
2要件は経済的実質に基づいて判断すべきものですが、実務上は次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合にファイナンス・リースと判定します(リースに関する会計基準の適用指針 第62項)。
| 現在価値基準 | 貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上であること |
|---|---|
| 経済的耐用年数基準 | 貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること |
2つの基準は並列ですが、優先順位があります。原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等を勘案すると現在価値基準の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合、経済的耐用年数基準には該当しないものとして扱います(リースに関する会計基準の適用指針 第62項(2))。また、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であっても、借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合には、現在価値基準のみにより判定を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第63項)。
なお、「概ね90パーセント以上」「概ね75パーセント以上」という表現が用いられているのは、現在価値基準の判定に見積りの要素が多いためであり、例えば88パーセントや73パーセントであっても実質的にフルペイアウトと考えられる場合にはファイナンス・リースと判定されることになります(リースに関する会計基準の適用指針 BC104項)。数値だけを機械的に当てはめて結論を出さないことが実務上の要点です。
現在価値基準を計算するときの4つの論点
現在価値基準は分子・分母・割引率のいずれにも固有の定めがあります。上場準備の過程で指摘を受けやすい箇所でもあるため、次の4点は必ず確認してください。
| 残価保証 | 貸手は残価保証額を貸手のリース料に含めます。借手以外の第三者による残価保証額も含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第64項) |
|---|---|
| 製造又は販売を 事業とする貸手 |
分母となる現金購入価額は、貸手の製作価額や現金購入価額によらず、当該原資産の借手に対する現金販売価額を用います(リースに関する会計基準の適用指針 第65項) |
| 割引率 | 貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計額が、原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等しくなる利率(貸手の計算利子率)を用います(リースに関する会計基準の適用指針 第66項) |
| 連結での判定 | 必要に応じて親会社と連結子会社の貸手のリース料を合算した金額に基づき判定します(リースに関する会計基準の適用指針 第67項) |
不動産については別の取扱いがあります。土地は、所有権移転条項又は割安購入選択権のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定します(リースに関する会計基準の適用指針 第68項)。土地と建物等を一括したリースは、原則として貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割したうえで、建物等について現在価値基準の判定を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第69項)。
所有権移転と所有権移転外の区分
ファイナンス・リースと判定されたもののうち、次のいずれかに該当する場合は所有権移転ファイナンス・リースに、いずれにも該当しない場合は所有権移転外ファイナンス・リースに分類します(リースに関する会計基準の適用指針 第70項)。
| 所有権移転条項 | 契約上、契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース |
|---|---|
| 割安購入選択権 | 契約上、名目的価額又はその行使時点の原資産の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利が与えられており、その行使が確実に予想されるリース |
| 特別仕様の原資産 | 借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもので、返還後に貸手が第三者へ再びリース又は売却することが困難であるため、使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース |
貸手のリース期間は2つの方法から選択する
判定の分母・分子に共通して効いてくるのが貸手のリース期間です。貸手は、次のいずれかの方法を選択して貸手のリース期間を決定します(リースに関する会計基準 第32項)。
- 借手のリース期間と同様に決定する方法
- 借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間(事実上解約不能と認められる期間を含みます)に、リースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法
借手のリース期間と同様に決定する方法を選ぶと、延長オプション・解約オプションの行使可能性を貸手側でも評価する必要が生じます。実務では、既に借手として同じ評価を行っている企業かどうかで負担が大きく変わるため、方法の選択は早めに社内で決めておくことをおすすめします。
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ファイナンス・リースの貸手の会計処理
貸手は、ファイナンス・リースについて、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第45項)。リース開始日に、所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として計上します(リースに関する会計基準 第46項)。
この2つの資産は性格が異なります。所有権移転ファイナンス・リースでは借手からのリース料と割安購入選択権の行使価額で回収するのに対し、所有権移転外ファイナンス・リースではリース料と見積残存価額の価値により回収を図るため、リース投資資産は将来のリース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産となります(リースに関する会計基準 BC56項)。なお、リース債権は金融商品と考えられ、リース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分も金融商品的な性格を有するため、貸倒見積高の算定等においては企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」の定めに従います(リースに関する会計基準 BC57項)。
取引実態に応じて3つの入口に分かれる
ここが旧基準と最も異なる部分です。旧基準では貸手が3つの方法から選択していましたが、新基準の適用指針ではリースの取引実態に応じて会計処理を行う構造に改められました(リースに関する会計基準の適用指針 BC113項)。所有権移転外ファイナンス・リースの場合、入口は次の3つです。
| 製造又は販売を 事業とする貸手 |
事業の一環で行うリースについて、リース開始日に貸手のリース料から利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上します。原資産の帳簿価額により売上原価を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(1)) |
|---|---|
| 製造又は販売以外を 事業とする貸手 |
事業の一環で行うリースについて、リース開始日に原資産の現金購入価額(付随費用を含みます)によりリース投資資産を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(2)) |
| 事業の一環以外で 行うリース |
リース開始日に、貸手のリース料から利息相当額を控除した金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、当該控除後の金額でリース投資資産を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第72項) |
いずれの入口でも、各期に受け取る貸手のリース料(受取リース料)は利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者を元本回収額として会計処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(1)②)。所有権移転ファイナンス・リースの場合も基本となる会計処理は同じで、「リース投資資産」を「リース債権」と読み替えます。割安購入選択権がある場合は、その行使価額を貸手のリース料及び受取リース料に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第78項)。
実務では、自社のリースがどの入口に入るのかを契約類型ごとに棚卸ししておくことが出発点になります。設備メーカーが自社製品を販売する手法としてリースを行う場合は第1の入口、リース会社が事業として行うリースは第2の入口、本業以外で保有不動産をリースに出すような場合は第3の入口が想定されています(リースに関する会計基準の適用指針 BC114項、BC116項)。
利息相当額の算定と各期への配分
貸手における利息相当額の総額は、貸手のリース料及び見積残存価額(貸手のリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額)の合計額から、これに対応する原資産の取得価額を控除して算定します(リースに関する会計基準 第47項)。
算定した利息相当額は、貸手のリース期間にわたり、原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第47項)。このとき用いる利率は貸手の計算利子率です(リースに関する会計基準の適用指針 第73項)。
簡便的な取扱いも残されています。貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合には、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができます。ただし、リースを主たる事業としている企業はこの取扱いを適用することができません(リースに関する会計基準の適用指針 第74項)。「重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が、当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第75項)。
所有権移転外ファイナンス・リースの貸手の仕訳例
製造又は販売以外を事業とする貸手が事業の一環で行うリースを前提に、当事務所の作例で確認します。前提は次のとおりです(単位:千円)。原資産の現金購入価額3,000千円、貸手のリース期間5年、年額の貸手のリース料700千円(総額3,500千円)、見積残存価額はゼロ、貸手の計算利子率は年5.37パーセントとします。利息相当額の総額は3,500千円から3,000千円を控除した500千円です(リースに関する会計基準 第47項)。
まず、リース開始日には原資産の現金購入価額によりリース投資資産を計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(2)①)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース投資資産 | 3,000 | 現金預金 | 3,000 |
次に、第1回のリース料700千円を受け取ったときの仕訳です。利息法により配分した第1回の利息相当額は3,000千円に5.37パーセントを乗じた161千円、元本回収額は700千円から161千円を控除した539千円となります(リースに関する会計基準 第47項、リースに関する会計基準の適用指針 第71項(1)②、第73項)。単位は千円です。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 700 | リース投資資産 | 539 |
| 受取利息相当額 | 161 |
製造又は販売を事業とする貸手の場合は、リース開始日に売上高と売上原価を計上する点が異なります。ただし、販売益相当額が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合には、原資産の帳簿価額をもって売上高及び売上原価とし、販売益相当額を利息相当額に含めて処理することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第71項(1)①ただし書き)。
リース期間終了時・再リース・中途解約
貸手のリース期間の終了により借手から原資産の返却を受けた場合、貸手は当該原資産を見積残存価額でリース投資資産から貯蔵品又は固定資産等に振り替え、処分した場合は処分価額と帳簿価額との差額を処分損益に計上します。再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合の再リース料は、その発生時に収益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第76項)。
リースが中途解約された場合に受け取る規定損害金については、当該規定損害金と中途解約時のリース投資資産残高(見積残存価額控除後)との差額を損益として計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第77項)。所有権移転ファイナンス・リースの場合も、再リース料は発生時に収益へ計上し、規定損害金は当該規定損害金とリース債権残高との差額を損益として計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第80項、第81項)。
オペレーティング・リースの貸手の会計処理
貸手は、オペレーティング・リースについて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第48項)。原資産は貸手の貸借対照表に残り、減価償却も貸手が行います。
定額法による収益計上が明文化された
ここは旧基準から明確に前進した部分です。企業会計基準適用指針第16号はファイナンス・リース取引の会計処理のみを示しており、オペレーティング・リース取引の会計処理は示していませんでした(リースに関する会計基準の適用指針 BC120項)。新しい適用指針では、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することが定められています(リースに関する会計基準の適用指針 第82項)。背景には、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項)やレントホリデー等の無償賃貸期間に関する会計処理が必ずしも明らかでなく、実務に多様性が生じて企業間の比較可能性が損なわれているという問題意識がありました(リースに関する会計基準の適用指針 BC121項)。
無償賃貸期間がある場合の取扱いも明示されています。貸手が会計基準第32項(2)の方法を選択して貸手のリース期間を決定する場合に、当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、契約期間における使用料の総額(将来の業績等により変動する使用料を除きます)について契約期間にわたり計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第82項)。
フリーレントがある場合の貸手の仕訳例
当事務所の作例で確認します。前提は次のとおりです(単位:千円)。事務所の賃貸で、貸手のリース期間は契約期間と同じ36か月、月額使用料は300千円、当初3か月はフリーレントで無償とします。契約期間における使用料の総額は300千円に33か月を乗じた9,900千円、1か月当たりの収益計上額は9,900千円を36か月で除した275千円となります(リースに関する会計基準の適用指針 第82項)。
無償賃貸期間である第1か月から第3か月は、受取リース料275千円を計上するとともに、同額を未収収益として計上します。第4か月以降は、受け取った300千円を当月分の受取リース料275千円と未収収益25千円の取崩しに配分します。第4か月以降の各月の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 300 | 受取リース料 | 275 |
| 未収収益 | 25 |
フリーレントを設定した契約が多い不動産賃貸業では、この定めにより従来の実務を見直す必要が生じる可能性があります。契約書の無償期間条項を洗い出しておくことが準備の第一歩になります。
旧基準からの主な変更点
ここまでの内容を、旧基準との差分という切り口で整理します。貸手として優先的に検討すべきは次の4点です。
リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法の廃止
企業会計基準適用指針第16号では、貸手の所有権移転外ファイナンス・リース取引について、取引実態に応じて次の3つの方法のいずれかを選択し、継続的に適用することとされていました(リース取引に関する会計基準の適用指針 第51項)。
- リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法
- リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
- 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法
このうち、2つ目の「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は廃止されました。収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上することが認められなくなったことを契機として、リースに関する収益の計上方法を見直した結果によるものです(リースに関する会計基準の適用指針 BC112項、BC117項)。
この方法を採用してきた貸手は、収益計上のタイミングが変わり、売上高の表示金額も変動します。基幹システムやリース管理システムの収益計上ロジックの改修が必要になるため、影響が最も大きい変更点といえます。
販売益相当額を繰り延べる方法の不採用
製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースについては、原資産の引渡時に貸手が売上高を計上し同時に販売益相当額を計上することが、収益認識会計基準における収益認識の時期に関する取扱いと整合的であると整理されました。そのため、企業会計基準適用指針第16号で定められていた販売益相当額を繰り延べて会計処理を行う方法は踏襲されていません。利息相当額の取扱いについても、収益認識会計基準における重要な金融要素に関する取扱いと整合的になるよう、原則としてリース開始日に利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、受取リース料のうち当該利息相当額を各期の損益として処理することとされています(リースに関する会計基準の適用指針 BC114項)。
一方で、製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースの会計処理は、リース料総額と原資産の現金購入価額の差額を受取利息相当額として取り扱い、リース期間にわたり各期へ配分するという企業会計基準適用指針第16号の会計処理を基本的に踏襲しています(リースに関する会計基準の適用指針 BC115項)。同じ「貸手」でも、事業の性格によって影響度がまったく異なる点にご留意ください。
リースを構成しない部分の区分と維持管理費用相当額
借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行います(リースに関する会計基準 第28項)。貸手は、リースを構成する部分についてファイナンス・リース又はオペレーティング・リースの会計処理を行い、リースを構成しない部分については該当する他の会計基準等に従って会計処理を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第12項)。保守サービスなどが該当する場合は、収益認識会計基準に従うことになります。
配分は、それぞれの部分の独立販売価格の比率に基づいて行います。原資産の維持管理に伴う固定資産税、保険料等の諸費用(維持管理費用相当額)が含まれる場合には、対価の一部として配分する方法か、対価から控除して収益に計上する又は貸手の固定資産税・保険料等の費用の控除額として処理する方法のいずれかによります(リースに関する会計基準の適用指針 第13項)。
実務上の負担を軽くする例外も用意されています。リースを構成しない部分が収益認識会計基準の適用対象であり、かつ、収益の計上の時期及びパターンが同じであること、リースを構成する部分がオペレーティング・リースに分類されることのいずれも満たす場合には、契約ごとに両者を合わせて取り扱うことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第14項)。なお、貸手のリース料には将来の業績等により変動する使用料は含まれないと定義されているため(リースに関する会計基準 第23項)、売上歩合による賃料などを収受している貸手は、その部分を切り分けて管理する必要があります。
サブリース取引の取扱い
サブリース取引では、中間的な貸手は、ヘッドリースについて借手のリースの会計処理を行ったうえで、サブリースの分類に応じて会計処理を行います。ファイナンス・リースに該当する場合は、サブリースした使用権資産の消滅を認識し、サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産又はリース債権を計上します。その計上及び使用権資産の取崩しに伴う損益は、原則として純額で計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第89項)。
重要なのは判定の基礎です。中間的な貸手のサブリースは、貸手のリース料の現在価値が独立第三者間取引における使用権資産のリース料の概ね90パーセント以上であるか、サブリースにおける貸手のリース期間がヘッドリースにおける残りの借手のリース期間の概ね75パーセント以上である場合にファイナンス・リースと判定されます。原資産そのものではなく使用権資産を基礎に判定する点が通常のリースと異なります。ヘッドリースに短期リース又は少額リースの簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合、サブリースはオペレーティング・リースに分類します(リースに関する会計基準の適用指針 第91項)。
このほか、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない一定の要件を満たす取引については、ヘッドリースの使用権資産及びリース負債を計上せず、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第92項)。転リース取引についても例外的な取扱いが定められています(リースに関する会計基準の適用指針 第93項)。
貸手の表示と注記
貸借対照表と損益計算書の表示
| 貸借対照表 | リース債権及びリース投資資産のそれぞれについて区分して表示するか、それぞれが含まれる科目及び金額を注記します。リース債権の期末残高が両者の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合は合算できます(リースに関する会計基準 第52項) |
|---|---|
| 流動固定の区分 | 主目的たる営業取引により発生したものは流動資産に表示します。それ以外の取引により発生したものは、貸借対照表日の翌日から起算して1年以内に入金の期限が到来するものを流動資産、1年を超えるものを固定資産に表示します(リースに関する会計基準 第52項) |
| 損益計算書 | ファイナンス・リースに係る販売損益(売上高から売上原価を控除した純額)、リース債権及びリース投資資産に対する受取利息相当額、オペレーティング・リースに係る収益について、区分表示するか科目及び金額を注記します(リースに関する会計基準 第53項) |
販売損益は、売上高と売上原価を両建てで区分表示するのではなく、控除後の純額で示す点に注意が必要です(リースに関する会計基準 第53項(1))。
貸手の注記事項
リースに関する注記の開示目的は、財務諸表本表で提供される情報と併せて、リースが借手又は貸手の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎を与える情報を開示することにあります(リースに関する会計基準 第54項)。貸手の注記は次の2区分で構成されます(リースに関する会計基準 第55項(2))。
| リース特有の 取引に関する情報 |
リース債権及びリース投資資産について貸借対照表で区分表示していない場合、リース投資資産のリース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額、リース債権のリース料債権部分の金額及び受取利息相当額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第103項、第104項) |
|---|---|
| 当期及び翌期以降の リースの金額に関する情報 |
リース債権及びリース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容と、リース料債権部分について貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第106項) |
借手の注記が会計方針に関する情報を含む3区分であるのに対し、貸手の注記は2区分である点が異なります。開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項は記載しないことができます(リースに関する会計基準 第55項)。残高の重要な変動の例としては、企業結合、見積残存価額の変動、貸手のリース期間の終了による見積残存価額の減少、残価保証額の変動、中途解約による減少、新規契約による増加が挙げられています(リースに関する会計基準の適用指針 第107項)。
オペレーティング・リースの貸手は、貸手のリース料について貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額及び5年超の受取予定額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第109項)。なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては貸手の上記2区分の注記を省略することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第110項)。
適用時期と貸手の経過措置
強制適用は2027年4月1日以後開始年度から
企業会計基準第34号は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用指針の適用時期も会計基準と同様です(リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。
3月決算会社であれば、強制適用となる適用初年度は2028年3月期です。早期適用は2026年3月期から可能であり、本稿執筆時点は早期適用が認められている期間にあたります。
本会計基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」、実務対応報告第31号及び移管指針第3号に従って会計処理されている取引については、これらの適用を終了します(リースに関する会計基準 第59項)。
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貸手に用意されている経過措置
適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。
このただし書きの方法を選択する貸手には、次の経過措置が用意されています。
| ファイナンス・リース取引に 分類していたリース |
前事業年度の期末日におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額を、そのまま適用初年度の期首の帳簿価額とすることができます。ただし、販売益を割賦基準により処理していた場合、前期末の繰延販売利益の帳簿価額は適用初年度の期首の利益剰余金に加算します(リースに関する会計基準の適用指針 第131項) |
|---|---|
| オペレーティング・リース取引に 分類していたリース等 |
従来オペレーティング・リース取引に分類していたリース及び新たに識別されたリースについて、適用初年度の期首に締結された新たなリースとして会計基準を適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第132項) |
| サブリース取引 | 適用初年度の期首時点におけるヘッドリース及びサブリースの残りの契約条件に基づいて分類を決定し、ファイナンス・リースに分類されたものは期首に締結された新たなファイナンス・リースとして会計処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第133項) |
貸手にとって金額的な影響が読みにくいのは、割賦基準による繰延販売利益の取扱いです。過去に計上した繰延販売利益が適用初年度の期首の利益剰余金に加算されるため、純資産と将来の損益の両方に影響するためです。早期に残高を把握しておくことをおすすめします。なお、第118項ただし書きの方法を選択する借手及び貸手は、適用初年度においては、会計基準第55項に記載した内容を適用初年度の比較情報に記載せず、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める事項を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第137項)。
基準の公表と修正の経緯
我が国のリース会計基準は、1993年6月に企業会計審議会第一部会から公表された「リース取引に係る会計基準」に始まります。当時は所有権移転外ファイナンス・リース取引について一定の注記を要件に賃貸借処理を行う例外処理が認められ、大半の企業がこれを採用していました(リースに関する会計基準 BC1項、BC3項)。その後、2007年3月30日に企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号が公表され、例外処理が廃止されました。
そして、2023年5月に公表された公開草案を経て、2024年9月3日開催の第532回企業会計基準委員会において承認され、2024年9月13日に企業会計基準第34号及び企業会計基準適用指針第33号が公表されています(リースに関する会計基準 第60項、BC11項)。さらに、2025年4月23日には企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の修正が公表されています。この修正は会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更するものではありません。また、企業会計基準適用指針第33号には、2025年10月16日に公表された企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」に伴う修正も反映されています。社内資料や監査法人との協議資料を作成する際は、これらの修正が反映された最新版を参照してください。
まとめ
新リース会計基準における貸手の会計処理は企業会計基準第13号の定めを基本的に踏襲しており、分類の枠組み、リース債権とリース投資資産という科目、利息法による利息相当額の配分は従来どおりです(リースに関する会計基準 BC53項)。一方で、次の点は自社への影響を必ず確認してください。
- リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法が廃止されたこと(リースに関する会計基準の適用指針 BC117項)
- 製造又は販売を事業とする貸手について、販売益相当額を繰り延べる方法が踏襲されていないこと(リースに関する会計基準の適用指針 BC114項)
- オペレーティング・リースの収益を原則として定額法で計上することが明文化され、無償賃貸期間の取扱いも定められたこと(リースに関する会計基準の適用指針 第82項)
- リースの定義及び識別の見直しにより、新たにリースとして識別される契約が生じ得ること(リースに関する会計基準 第26項)
- 割賦基準により処理していた繰延販売利益が、適用初年度の期首の利益剰余金に加算されること(リースに関する会計基準の適用指針 第131項)
強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からです(リースに関する会計基準 第58項)。契約類型の棚卸し、収益計上ロジックの確認、経過措置の選択の3点を早めに進めておくと、適用初年度の負担を平準化できます。会計処理は契約条件による個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第16号 リース取引に関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準等の修正について
よくある質問
新リース会計基準で貸手の会計処理は大きく変わりますか。
枠組み自体は大きく変わりません。貸手の会計処理は、収益認識会計基準との整合性を図る点並びにリースの定義及びリースの識別を除き、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲しています(リースに関する会計基準 BC53項)。ただし、リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法の廃止や、販売益相当額を繰り延べる方法の不採用など、収益計上に直結する変更があります(リースに関する会計基準の適用指針 BC114項、BC117項)。
リース債権とリース投資資産はどのように使い分けますか。
所有権移転ファイナンス・リースについてはリース債権として、所有権移転外ファイナンス・リースについてはリース投資資産として計上します(リースに関する会計基準 第46項)。リース投資資産は、将来のリース料を収受する権利と見積残存価額から構成される複合的な資産です(リースに関する会計基準 BC56項)。所有権移転外の判定は、所有権移転条項、割安購入選択権、特別仕様の原資産のいずれにも該当しないかどうかで行います(リースに関する会計基準の適用指針 第70項)。
借手がオンバランスしたリースは、貸手も必ずファイナンス・リースになりますか。
なりません。借手はリースの分類を行わず、すべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。一方、貸手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類します(リースに関する会計基準 第43項)。したがって、借手が使用権資産を計上している契約について、貸手がオペレーティング・リースとして通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことは十分にあり得ます(リースに関する会計基準 第48項)。
利息相当額を定額で配分する簡便的な取扱いは使えますか。
貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合に限り、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第74項)。重要性が乏しいとは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が、当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第75項)。なお、リースを主たる事業としている企業はこの取扱いを適用することができません(リースに関する会計基準の適用指針 第74項)。
貸手はいつから新リース会計基準を適用しますか。
2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用初年度は、原則として過去の期間のすべてに遡及適用しますが、累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法も認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。