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使用権資産とは|認識・当初測定と償却・減損・表示の実務

2026-08-20
目次

使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいいます(リースに関する会計基準 第10項)。2024年9月13日に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」では、借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分によらず、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上することとされました。

従来はオンバランスの対象外だった不動産賃借や車両の賃貸借も、この基準のもとでは資産・負債として貸借対照表に現れます。そのため経理部門にとっては、「どの契約が対象になるか」だけでなく、「使用権資産をいくらで計上し、その後どう償却し、どこに表示するか」までを一連の流れとして押さえておく必要があります。

この記事では、使用権資産の定義と計上範囲から、当初測定に含める項目、所有権移転の有無で分かれる償却方法、減損の適用、貸借対照表での表示と注記までを、条項番号とともに実務目線で整理します。

使用権資産とは

使用権資産は、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産と定義されています(リースに関する会計基準 第10項)。ここでいうリースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約またはその一部分をいい、原資産とは、リースの対象となる資産で、貸手によって借手にその使用する権利が移転されているものを指します(リースに関する会計基準 第6項、第9項)。

実務で押さえておきたいのは、使用権資産が「借りている物そのもの」ではなく、「一定期間その物を使える権利」を資産として捉えたものだという点です。所有権が移転しない賃貸借契約であっても、借手が期間中にその資産を使う権利を得ている以上、経済的な資源として資産計上する、という考え方が基準の出発点になっています。

関連する用語の定義は次のとおりです。

使用権資産 借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産(リースに関する会計基準 第10項)
原資産 リースの対象となる資産で、貸手によって借手にその使用する権利が移転されているもの(リースに関する会計基準 第9項)
リース開始日 貸手が、借手による原資産の使用を可能にする日(リースに関する会計基準 第18項)
借手のリース料 借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払(リースに関する会計基準 第19項)

使用権資産を計上する時点は、契約締結日ではなくリース開始日です。契約書に署名した日と、実際に物件の引渡しを受けて使用できるようになった日がずれる契約は珍しくありません。実務では、契約管理台帳にリース開始日を独立した項目として持たせておくと、期首一括での計上漏れを防ぎやすくなります。

使用権資産を計上しないことができる場合

借手は、リース開始日に、リース負債の計上額に一定の項目を加減した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。これが原則的な取扱いであり、対象はファイナンス・リースに限られません。

ただし、実務負担への配慮から、次の2つについては使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用計上することが認められています。

短期リース リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であるリース。対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごと、または性質および用途が類似する原資産のグループごとに、この取扱いを適用するかどうかを選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)
少額リース 重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合の基準額以下のリース、または企業の事業内容に照らして重要性が乏しくリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース等(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)

この2つは「対象外」ではなく「簡便的な取扱い」である点に注意が必要です。適用するかどうかは企業の選択であり、選択した方針は会計方針として整理し、首尾一貫して適用することが求められます。上場準備企業では、監査対応を見据えて、どの単位でこの選択を行ったかを説明できる資料を残しておくことが実務上重要になります。

リース開始日の当初測定

使用権資産の計上額は、リース負債の計上額を出発点として、次のように算定します(リースに関する会計基準 第33項)。

使用権資産の計上額 = リース負債の計上額 + リース開始日までに支払った借手のリース料 + 付随費用 + 資産除去債務に対応する除去費用 - 受け取ったリース・インセンティブ

リース負債は、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料から、そこに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。したがって、使用権資産の金額は「支払総額」ではなく「割引後の金額に前払分と付随費用を加えた金額」になります。

現在価値計算の基礎となる借手のリース料は、次の5つで構成されます(リースに関する会計基準 第35項)。

  • 借手の固定リース料
  • 指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料
  • 残価保証に係る借手による支払見込額
  • 借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額
  • リースの解約に対する違約金の借手による支払額(借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合)

実務でつまずきやすいのは、割引率と付随費用です。割引率は現在価値の水準を通じて使用権資産とリース負債の両方の金額を左右するため、算定根拠の文書化が欠かせません。

関連コラム借手の割引率と追加借入利子率|新リース会計基準の決定手順

付随費用は、契約書上の賃料以外の支出であるため、契約担当部署の管理資料にしか記録が残っていないことがあります。仲介手数料や初期の設置費用などが該当し得るため、契約情報を経理へ集約する仕組みをあわせて整えておくと安全です。

ここで、当初測定の流れを数値例で確認します。以下は自社作例です(単位:千円)。借手であるA社が本社オフィスを賃借し、リース開始日から借手のリース期間は5年、借手のリース料は年12,000を各年度末に支払う条件とします。追加借入利子率は年3%、リース開始日までに支払った付随費用は500、リース・インセンティブの受取りはないものとします。リース負債は年12,000を年3%で5年間割り引いた54,956、使用権資産はこれに付随費用500を加えた55,456となります(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 55,456 リース負債 54,956
現金預金 500

使用権資産の償却

リース開始日以後、使用権資産は減価償却の対象となります。償却方法と耐用年数は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかで分かれます。

所有権が移転すると
認められるリース
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定します。耐用年数は経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)
上記以外のリース 定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、自ら所有していたと仮定した場合と同一の方法による必要はありません。原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額はゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)

実務上の大半は後者に該当し、借手のリース期間が耐用年数となります。つまり、リース期間の判定を誤ると、使用権資産の計上額(現在価値計算の期間)と減価償却費の両方が同時にずれることになります。延長オプションや解約オプションを含む契約では、この判定が金額に与える影響が特に大きくなります。

関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準

また、リース負債に含まれる利息相当額は、借手のリース期間にわたり、原則として利息法により各期に配分します(リースに関する会計基準 第36項)。使用権資産の減価償却費とリース負債に係る利息費用は別々に計上されるため、従来のオペレーティング・リース取引のように支払リース料を一本の費用として処理する形にはなりません。

先ほどの作例で、初年度末の会計処理を確認します(単位:千円、千円未満は四捨五入)。使用権資産55,456を借手のリース期間5年・残存価額ゼロの定額法で償却するため、減価償却費は11,091となります(リースに関する会計基準 第38項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
減価償却費 11,091 使用権資産 11,091

同じ日にリース料12,000を支払います。利息相当額は期首のリース負債54,956に年3%を乗じた1,649、残額10,351がリース負債の返済部分となります(リースに関する会計基準 第36項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
リース負債 10,351 現金預金 12,000
支払利息 1,649

この作例では、初年度の費用合計は減価償却費11,091と支払利息1,649の合計12,740となり、支払額12,000を上回ります。利息費用は期間の経過とともに逓減するため、費用は前倒しで発生する形になります。損益への影響を見積もる際は、この費用パターンの変化まで含めて確認しておくことをおすすめします。

使用権資産と減損会計

使用権資産は貸借対照表に計上される固定資産であるため、固定資産の減損に係る会計基準の対象となります。リースに関する会計基準の公表に合わせて、企業会計基準第35号「固定資産の減損に係る会計基準の一部改正」が同じく2024年9月13日に公表され、減損会計基準注解の(注12)が改正されました(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 第1項、第2項)。

改正後の(注12)では、リース取引開始日が企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」の適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱いにより、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合について、そのリースに係る未経過リース料の現在価値を使用権資産の帳簿価額とみなして減損会計基準を適用することとされています。使用権資産の重要性が低い場合には、未経過リース料の現在価値に代えて、割引前の未経過リース料を帳簿価額とみなすことができます(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 第2項)。

実務上の論点は、資産のグルーピングです。店舗や事業所を賃借している企業では、使用権資産がその拠点の資産グループに含まれることになり、これまで簿価がほとんど載っていなかった賃借拠点にも減損の検討が及びます。減損の兆候の把握単位を、賃借物件を含む形で見直しておく必要があります。

関連コラム新リース会計基準対応!使用権資産の減損処理と実務ポイント

貸借対照表での表示と注記

使用権資産の表示方法は、次のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第49項)。

対応する原資産の
科目に含める方法
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含めて表示します(リースに関する会計基準 第49項(1))
使用権資産として
区分する方法
対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等)において、使用権資産として区分して表示します(リースに関する会計基準 第49項(2))

いずれの方法でも、有形固定資産・無形固定資産といった大区分をまたいで一つの科目にまとめることはできません。原資産の性質に応じた表示区分の中で処理する点が共通しています。

リース負債については、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債、1年を超えて到来するものは固定負債に属するものとされています(リースに関する会計基準 第50項)。リース負債に係る利息費用も、損益計算書において区分して表示するか、含まれる科目および金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。

注記については、リースが財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎となる情報を開示することが開示目的とされています(リースに関する会計基準 第54項)。借手は、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記します(リースに関する会計基準 第55項(1))。

使用権資産に直接かかわる注記として、貸借対照表で区分して表示していない場合には、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの使用権資産の帳簿価額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第99項(1))。さらに、使用権資産の増加額や、同じく表示科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額も注記の対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第102項(2)、(3))。

ここから分かるのは、表示方法の選択と注記の負担が連動しているということです。貸借対照表で区分表示しない方法を選ぶ場合、科目ごとの内訳を注記で示す必要があるため、いずれにしても使用権資産を原資産の種類別に集計できる管理体制が前提になります。契約管理台帳の設計段階で、原資産の科目区分を持たせておくことが実務上の近道です。

適用時期と準備の進め方

リースに関する会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。本基準は2024年9月13日に公表され、その後2025年4月23日に「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の修正について」が公表されており、現行の基準本文にはこの修正が反映されています。

関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説

準備の実務は、会計処理そのものよりも情報収集に時間がかかります。上場準備企業の支援で多いのは、契約書が各部署や各拠点に分散していて、対象契約の全量を把握するところで数か月を要するケースです。使用権資産の金額を試算するには、契約ごとにリース開始日、借手のリース期間、借手のリース料、付随費用、割引率の5点が揃っている必要があります。

影響額の試算は、まず賃借不動産のように金額が大きく件数の限られる契約から着手すると、全体像を早期につかめます。使用権資産とリース負債の増加は、総資産や自己資本比率、有利子負債に関する財務制限条項にも影響し得るため、経理部門だけでなく財務・経営企画とも早い段階で情報を共有しておくことが望ましいといえます。

実務で見落とされやすい論点

最後に、使用権資産をめぐって判断に迷いやすい点を整理します。

  • 契約書に「リース」と書かれていない契約:判断の起点は契約の名称ではなく、原資産を使用する権利が一定期間にわたり移転しているかどうかです(リースに関する会計基準 第6項)。賃貸借契約書だけを集めても対象契約は揃いません。
  • 付随費用の把握漏れ:使用権資産の計上額にはリース開始日までに支払った付随費用が含まれます(リースに関する会計基準 第33項)。賃料以外の支出は経理側で自動的に把握できないことが多い項目です。
  • 耐用年数の設定:所有権が移転すると認められるリース以外では、原則として借手のリース期間が耐用年数となります(リースに関する会計基準 第38項)。原資産の法定耐用年数を機械的に当てはめると誤りになります。
  • 減損の検討単位:賃借拠点にも使用権資産という簿価が乗るため、資産のグルーピングと減損の兆候の把握単位を見直す必要があります。
  • 簡便的な取扱いの適用単位:短期リース・少額リースの簡便的な取扱いは、適用の可否を選択できる単位が定められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。契約ごとに場当たり的に判断すると、方針の一貫性を説明できなくなります。

まとめ

使用権資産は、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産であり、リース開始日にリース負債の計上額へ前払リース料・付随費用・資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で計上します(リースに関する会計基準 第10項、第33項)。その後は所有権移転の有無に応じた方法で減価償却し、減損会計の対象にもなります。

基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されるため、いま取り組むべきは対象契約の洗い出しと、リース期間・割引率・付随費用といった測定要素を集める仕組みづくりです。表示方法の選択が注記の負担に直結する点も、早めに方針を固めておきたいところです。

使用権資産の金額や減損の検討単位は個別の契約条件や事業の実態によって結論が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

使用権資産は貸借対照表のどこに表示しますか。

対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に表示するであろう科目に含める方法と、対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第49項)。有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産といった表示区分をまたいで一つにまとめることはできません。

使用権資産の耐用年数は何年になりますか。

契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースでは、経済的使用可能予測期間を耐用年数とし、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースでは、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額はゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。

すべてのリースで使用権資産を計上する必要がありますか。

原則としてすべてのリースについて計上します(リースに関する会計基準 第33項)。ただし、借手のリース期間が12か月以内の短期リースと、一定の要件を満たす少額リースについては、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたり原則として定額法により費用計上する簡便的な取扱いが認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

使用権資産は減損会計の対象になりますか。

対象になります。使用権資産は貸借対照表に計上される固定資産であり、リースに関する会計基準の公表に合わせて企業会計基準第35号「固定資産の減損に係る会計基準の一部改正」が公表され、減損会計基準注解の(注12)が改正されています(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 第1項、第2項)。賃借拠点にも簿価が計上されるため、資産のグルーピングの見直しが実務上の論点になります。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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