使用権資産とは【仕訳例】計上額・減価償却・表示区分の一覧表
目次
- 使用権資産の計上額・減価償却・表示区分の一覧表
- 使用権資産の勘定科目と表示区分の一覧表
- 使用権資産とは
- 使用権資産を計上しないことができる場合
- リース開始日の当初測定
- 使用権資産の償却
- 使用権資産と減損会計
- 貸借対照表での表示と注記
- 適用時期と準備の進め方
- 実務で見落とされやすい論点
- まとめ
- 参考文献
- よくある質問
- 使用権資産とは何ですか。
- 使用権資産の計上額はどう計算しますか。
- 使用権資産は貸借対照表のどこに表示しますか。
- 使用権資産の耐用年数は何年になりますか。
- すべてのリースで使用権資産を計上する必要がありますか。
- 使用権資産は減損会計の対象になりますか。
- 使用権資産は無形固定資産にも計上されますか。
使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産です(リースに関する会計基準 第10項)。英語では right-of-use asset(ROU資産)と呼ばれ、IFRS第16号「リース」と同じ考え方に立つ資産です。2024年9月13日に公表された企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」では、借手はファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分によらず、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上することとされました(リースに関する会計基準 第33項)。
不動産の賃借や車両の賃貸借も、この基準のもとでは使用権資産として貸借対照表に載ります。経理部門が押さえるべきなのは「いくらで計上し、どう償却し、どこに表示するか」の3点です。この記事では、その3点を最初に一覧表で示し、続けて勘定科目、計上しないことができる場合、当初測定と償却の仕訳例、表示と注記の順に、条項番号とともに整理します。
使用権資産の計上額・減価償却・表示区分の一覧表
借手が使用権資産について決める事項を、基準の条項ごとにまとめると次のとおりです。
| 計上する時点 | リース開始日(貸手が借手による原資産の使用を可能にする日)に計上します(リースに関する会計基準 第18項、第33項) |
|---|---|
| 計上額 | リース負債の計上額に、リース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額です(リースに関する会計基準 第33項) |
| 減価償却 (所有権が移転するリース) |
自ら所有していたと仮定した場合と同一の減価償却方法で、経済的使用可能予測期間を耐用年数とします(リースに関する会計基準 第37項) |
| 減価償却 (上記以外のリース) |
定額法等から企業の実態に応じた方法を選び、原則として借手のリース期間を耐用年数、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項) |
| 表示区分 | 原資産の科目に含めるか、原資産の表示区分(有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産等)の中で使用権資産として区分します(リースに関する会計基準 第49項) |
| 計上しないことが できるリース |
短期リースと少額リースは、簡便的な取扱いとして使用権資産・リース負債を計上せず費用処理できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項) |
| 適用時期 | 2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する年度の期首からの早期適用も認められます(リースに関する会計基準 第58項) |
計上額と減価償却の具体的な数字の動きは、後半の「リース開始日の当初測定」「使用権資産の償却」で自社作例の仕訳とともに確認します。
使用権資産の勘定科目と表示区分の一覧表
使用権資産は固定資産として貸借対照表に計上されますが、固定資産に「使用権資産」という新しい大区分が設けられたわけではありません。有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産という現行の区分を前提に、対応する原資産の科目に含めるか、原資産の表示区分の中で使用権資産として区分するかのいずれかで表示します(リースに関する会計基準 第49項、BC59項)。
借手の会計処理で登場する主な勘定科目と、財務諸表での表示を一覧にすると次のとおりです。
| 使用権資産 | 原資産の表示区分(有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産等)に表示します。原資産の科目に含める方法と、使用権資産として区分する方法のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第49項) |
|---|---|
| リース負債 | 貸借対照表日後1年以内に支払期限が到来する部分は流動負債、1年を超えて到来する部分は固定負債です。区分して表示するか、含まれる科目と金額を注記します(リースに関する会計基準 第50項) |
| 減価償却費 | 使用権資産の償却額です。所有権が移転すると認められるリースかどうかで償却方法と耐用年数が分かれます(リースに関する会計基準 第37項、第38項) |
| 支払利息 (リース負債に係る利息費用) |
利息相当額を原則として利息法で各期に配分した額です。損益計算書で区分して表示するか、含まれる科目と金額を注記します(リースに関する会計基準 第36項、第51項) |
| 短期リース・ 少額リースの費用 |
簡便的な取扱いを選んだリースは使用権資産・リース負債を計上せず、借手のリース料を原則として定額法で費用計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項) |
原資産の種類ごとに見ると、使用権資産が入る表示区分は次のようになります。借地権は土地に関する使用権資産として扱われ、無形固定資産のリースには当たらない点が実務上の注意点です(リースに関する会計基準の適用指針 第27項、BC7項)。また、無形固定資産のリースについては、リースに関する会計基準を適用しないことも認められています(リースに関する会計基準 第4項)。
| 原資産の例 | 使用権資産の表示区分 |
|---|---|
| 本社オフィス・店舗・倉庫などの建物 | 有形固定資産 |
| 機械装置・車両運搬具・工具器具備品 | 有形固定資産 |
| 土地(借地権の設定に係る権利金等を含む) | 有形固定資産 |
| ソフトウェアなどの無形固定資産 | 無形固定資産(基準を適用しない選択も可) |
どちらの表示方法を選んでも、原資産の種類別に金額を把握する必要は変わりません。貸借対照表で区分表示しない場合は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとに使用権資産の帳簿価額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第99項(1))。表示方法と注記の関係は、後半の「貸借対照表での表示と注記」で詳しく整理します。
使用権資産とは
使用権資産は、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産と定義されています(リースに関する会計基準 第10項)。ここでいうリースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約またはその一部分をいい、原資産とは、リースの対象となる資産で、貸手によって借手にその使用する権利が移転されているものを指します(リースに関する会計基準 第6項、第9項)。
実務で押さえておきたいのは、使用権資産が「借りている物そのもの」ではなく、「一定期間その物を使える権利」を資産として捉えたものだという点です。所有権が移転しない賃貸借契約であっても、借手が期間中にその資産を使う権利を得ている以上、経済的な資源として資産計上する、という考え方が基準の出発点になっています。
関連する用語の定義は次のとおりです。
| 使用権資産 | 借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産(リースに関する会計基準 第10項) |
|---|---|
| 原資産 | リースの対象となる資産で、貸手によって借手にその使用する権利が移転されているもの(リースに関する会計基準 第9項) |
| リース開始日 | 貸手が、借手による原資産の使用を可能にする日(リースに関する会計基準 第18項) |
| 借手のリース料 | 借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払(リースに関する会計基準 第19項) |
使用権資産を計上する時点は、契約締結日ではなくリース開始日です。契約書に署名した日と、実際に物件の引渡しを受けて使用できるようになった日がずれる契約は珍しくありません。実務では、契約管理台帳にリース開始日を独立した項目として持たせておくと、期首一括での計上漏れを防ぎやすくなります。
使用権資産を計上しないことができる場合
借手は、リース開始日に、リース負債の計上額に一定の項目を加減した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。これが原則的な取扱いであり、対象はファイナンス・リースに限られません。
ただし、実務負担への配慮から、次の2つについては使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用計上することが認められています。
| 短期リース | リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であるリース。対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごと、または性質および用途が類似する原資産のグループごとに、この取扱いを適用するかどうかを選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項) |
|---|---|
| 少額リース | 重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合の基準額以下のリース、または企業の事業内容に照らして重要性が乏しくリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース等(リースに関する会計基準の適用指針 第22項) |
この2つは「対象外」ではなく「簡便的な取扱い」である点に注意が必要です。適用するかどうかは企業の選択であり、選択した方針は会計方針として整理し、首尾一貫して適用することが求められます。上場準備企業では、監査対応を見据えて、どの単位でこの選択を行ったかを説明できる資料を残しておくことが実務上重要になります。
リース開始日の当初測定
使用権資産の計上額は、リース負債の計上額を出発点として、次のように算定します(リースに関する会計基準 第33項)。
リース負債は、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料から、そこに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。したがって、使用権資産の金額は「支払総額」ではなく「割引後の金額に前払分と付随費用を加えた金額」になります。
現在価値計算の基礎となる借手のリース料は、次の5つで構成されます(リースに関する会計基準 第35項)。
- 借手の固定リース料
- 指数またはレートに応じて決まる借手の変動リース料
- 残価保証に係る借手による支払見込額
- 借手が行使することが合理的に確実である購入オプションの行使価額
- リースの解約に対する違約金の借手による支払額(借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合)
実務でつまずきやすいのは、割引率と付随費用です。割引率は現在価値の水準を通じて使用権資産とリース負債の両方の金額を左右するため、算定根拠の文書化が欠かせません。
関連コラム借手の割引率と追加借入利子率|新リース会計基準の決定手順▸
付随費用は、契約書上の賃料以外の支出であるため、契約担当部署の管理資料にしか記録が残っていないことがあります。仲介手数料や初期の設置費用などが該当し得るため、契約情報を経理へ集約する仕組みをあわせて整えておくと安全です。
ここで、当初測定の流れを数値例で確認します。以下は自社作例です(単位:千円)。借手であるA社が本社オフィスを賃借し、リース開始日から借手のリース期間は5年、借手のリース料は年12,000を各年度末に支払う条件とします。追加借入利子率は年3%、リース開始日までに支払った付随費用は500、リース・インセンティブの受取りはないものとします。リース負債は年12,000を年3%で5年間割り引いた54,956、使用権資産はこれに付随費用500を加えた55,456となります(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 使用権資産 | 55,456 | リース負債 | 54,956 |
| 現金預金 | 500 |
使用権資産の償却
リース開始日以後、使用権資産は減価償却の対象となります。償却方法と耐用年数は、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるかどうかで分かれます。
| 所有権が移転すると 認められるリース |
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定します。耐用年数は経済的使用可能予測期間とし、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項) |
|---|---|
| 上記以外のリース | 定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択適用した方法により算定し、自ら所有していたと仮定した場合と同一の方法による必要はありません。原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額はゼロとします(リースに関する会計基準 第38項) |
実務上の大半は後者に該当し、借手のリース期間が耐用年数となります。つまり、リース期間の判定を誤ると、使用権資産の計上額(現在価値計算の期間)と減価償却費の両方が同時にずれることになります。延長オプションや解約オプションを含む契約では、この判定が金額に与える影響が特に大きくなります。
関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準▸
また、リース負債に含まれる利息相当額は、借手のリース期間にわたり、原則として利息法により各期に配分します(リースに関する会計基準 第36項)。使用権資産の減価償却費とリース負債に係る利息費用は別々に計上されるため、従来のオペレーティング・リース取引のように支払リース料を一本の費用として処理する形にはなりません。
先ほどの作例で、初年度末の会計処理を確認します(単位:千円、千円未満は四捨五入)。使用権資産55,456を借手のリース期間5年・残存価額ゼロの定額法で償却するため、減価償却費は11,091となります(リースに関する会計基準 第38項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 減価償却費 | 11,091 | 使用権資産 | 11,091 |
同じ日にリース料12,000を支払います。利息相当額は期首のリース負債54,956に年3%を乗じた1,649、残額10,351がリース負債の返済部分となります(リースに関する会計基準 第36項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| リース負債 | 10,351 | 現金預金 | 12,000 |
| 支払利息 | 1,649 |
この作例では、初年度の費用合計は減価償却費11,091と支払利息1,649の合計12,740となり、支払額12,000を上回ります。利息費用は期間の経過とともに逓減するため、費用は前倒しで発生する形になります。損益への影響を見積もる際は、この費用パターンの変化まで含めて確認しておくことをおすすめします。
使用権資産と減損会計
使用権資産は貸借対照表に計上される固定資産なので、固定資産の減損に係る会計基準の対象になります(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 BC4項)。これまで簿価がほとんど載っていなかった賃借店舗や事業所にも使用権資産が計上されるため、資産のグルーピングや減損の兆候の把握単位を見直すことになります。
減損の兆候の判定、割引前将来キャッシュ・フローの見積り、減損損失の仕訳といった具体的な手順は、次の関連コラムで解説しています。
関連コラム使用権資産の減損|新リース会計基準での適用範囲と計算例・仕訳▸
関連コラム新リース会計基準対応!使用権資産の減損処理と実務ポイント▸
貸借対照表での表示と注記
使用権資産の表示方法は、次のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第49項)。
| 対応する原資産の 科目に含める方法 |
原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目に含めて表示します(リースに関する会計基準 第49項(1)) |
|---|---|
| 使用権資産として 区分する方法 |
対応する原資産の表示区分(有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産等)において、使用権資産として区分して表示します(リースに関する会計基準 第49項(2)) |
いずれの方法でも、有形固定資産・無形固定資産といった大区分をまたいで一つの科目にまとめることはできません。原資産の性質に応じた表示区分の中で処理する点が共通しています。
リース負債については、貸借対照表において区分して表示するか、リース負債が含まれる科目および金額を注記します。このとき、貸借対照表日後1年以内に支払の期限が到来するリース負債は流動負債、1年を超えて到来するものは固定負債に属するものとされています(リースに関する会計基準 第50項)。リース負債に係る利息費用も、損益計算書において区分して表示するか、含まれる科目および金額を注記します(リースに関する会計基準 第51項)。
注記については、リースが財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに与える影響を財務諸表利用者が評価するための基礎となる情報を開示することが開示目的とされています(リースに関する会計基準 第54項)。借手は、会計方針に関する情報、リース特有の取引に関する情報、当期および翌期以降のリースの金額を理解するための情報を注記します(リースに関する会計基準 第55項(1))。
使用権資産に直接かかわる注記として、貸借対照表で区分して表示していない場合には、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの使用権資産の帳簿価額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第99項(1))。さらに、使用権資産の増加額や、同じく表示科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額も注記の対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第102項(2)、(3))。
ここから分かるのは、表示方法の選択と注記の負担が連動しているということです。貸借対照表で区分表示しない方法を選ぶ場合、科目ごとの内訳を注記で示す必要があるため、いずれにしても使用権資産を原資産の種類別に集計できる管理体制が前提になります。契約管理台帳の設計段階で、原資産の科目区分を持たせておくことが実務上の近道です。
適用時期と準備の進め方
リースに関する会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。本基準は2024年9月13日に公表され、その後2025年4月23日に「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』等の修正について」が公表されており、現行の基準本文にはこの修正が反映されています。
関連コラム新リース会計基準はいつから?適用時期と対象会社の範囲を解説▸
準備の実務は、会計処理そのものよりも情報収集に時間がかかります。上場準備企業の支援で多いのは、契約書が各部署や各拠点に分散していて、対象契約の全量を把握するところで数か月を要するケースです。使用権資産の金額を試算するには、契約ごとにリース開始日、借手のリース期間、借手のリース料、付随費用、割引率の5点が揃っている必要があります。
影響額の試算は、まず賃借不動産のように金額が大きく件数の限られる契約から着手すると、全体像を早期につかめます。使用権資産とリース負債の増加は、総資産や自己資本比率、有利子負債に関する財務制限条項にも影響し得るため、経理部門だけでなく財務・経営企画とも早い段階で情報を共有しておくことが望ましいといえます。
実務で見落とされやすい論点
最後に、使用権資産をめぐって判断に迷いやすい点を整理します。
- 契約書に「リース」と書かれていない契約:判断の起点は契約の名称ではなく、原資産を使用する権利が一定期間にわたり移転しているかどうかです(リースに関する会計基準 第6項)。賃貸借契約書だけを集めても対象契約は揃いません。
- 付随費用の把握漏れ:使用権資産の計上額にはリース開始日までに支払った付随費用が含まれます(リースに関する会計基準 第33項)。賃料以外の支出は経理側で自動的に把握できないことが多い項目です。
- 耐用年数の設定:所有権が移転すると認められるリース以外では、原則として借手のリース期間が耐用年数となります(リースに関する会計基準 第38項)。原資産の法定耐用年数を機械的に当てはめると誤りになります。
- 減損の検討単位:賃借拠点にも使用権資産という簿価が乗るため、資産のグルーピングと減損の兆候の把握単位を見直す必要があります(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 BC4項)。
- 簡便的な取扱いの適用単位:短期リース・少額リースの簡便的な取扱いは、適用の可否を選択できる単位が定められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。契約ごとに場当たり的に判断すると、方針の一貫性を説明できなくなります。
まとめ
使用権資産は、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産であり、リース開始日にリース負債の計上額へ前払リース料・付随費用・資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で計上します(リースに関する会計基準 第10項、第33項)。その後は所有権移転の有無に応じた方法で減価償却し、減損会計の対象にもなります。
基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されるため、いま取り組むべきは対象契約の洗い出しと、リース期間・割引率・付随費用といった測定要素を集める仕組みづくりです。表示方法の選択が注記の負担に直結する点も、早めに方針を固めておきたいところです。
使用権資産の金額や減損の検討単位は個別の契約条件や事業の実態によって結論が変わるため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
新リース会計基準対応の無料相談はこちら参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第34号 リースに関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第33号 リースに関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第35号 固定資産の減損に係る会計基準の一部改正
よくある質問
使用権資産とは何ですか。
借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産です(リースに関する会計基準 第10項)。借りている物そのものではなく、一定期間その物を使える権利を資産として計上します。英語では right-of-use asset(ROU資産)と呼ばれます。
使用権資産の計上額はどう計算しますか。
リース開始日に、リース負債の計上額へリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用、資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額で計上します(リースに関する会計基準 第33項)。リース負債は、未払の借手のリース料から利息相当額を控除した現在価値で算定します(リースに関する会計基準 第34項)。
使用権資産は貸借対照表のどこに表示しますか。
対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に表示するであろう科目に含める方法と、対応する原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法のいずれかを選択します(リースに関する会計基準 第49項)。有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産といった表示区分をまたいで一つにまとめることはできません。
使用権資産の耐用年数は何年になりますか。
契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースでは、経済的使用可能予測期間を耐用年数とし、残存価額は合理的な見積額とします(リースに関する会計基準 第37項)。それ以外のリースでは、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額はゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。
すべてのリースで使用権資産を計上する必要がありますか。
原則としてすべてのリースについて計上します(リースに関する会計基準 第33項)。ただし、借手のリース期間が12か月以内の短期リースと、一定の要件を満たす少額リースについては、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたり原則として定額法により費用計上する簡便的な取扱いが認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。
使用権資産は減損会計の対象になりますか。
対象になります。貸借対照表に計上される使用権資産には固定資産の減損に係る会計基準が適用されます(固定資産の減損に係る会計基準の一部改正 BC4項)。具体的な判定と計算は、使用権資産の減損を扱う関連コラムをご覧ください。
使用権資産は無形固定資産にも計上されますか。
ソフトウェアなど無形固定資産のリースについて基準を適用する場合は、原資産の表示区分である無形固定資産に使用権資産を表示します(リースに関する会計基準 第49項)。ただし、無形固定資産のリースには基準を適用しないことも認められています(リースに関する会計基準 第4項)。なお、借地権は土地に関する使用権資産として有形固定資産の区分で扱います(リースに関する会計基準の適用指針 第27項、BC7項)。
本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。




