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投資事業組合の連結範囲|支配力基準・影響力基準の判定実務

2026-08-03
目次

CVCやベンチャーファンドへ出資している事業会社から、投資事業組合を連結しなければならないのかというご相談を数多くいただきます。投資事業組合には株式会社のような議決権が存在しないため、連結財務諸表に関する会計基準の支配力基準をそのまま当てはめることができません。本記事では、企業会計基準委員会が公表した実務対応報告第20号を軸に、投資事業組合の連結範囲の判定について、根拠となる条項番号とともに整理します。

投資事業組合と連結範囲の論点

結論から申し上げると、投資事業組合は連結や持分法の対象となる子会社・関連会社の範囲に含まれ得ます。連結財務諸表に関する会計基準では、子会社・関連会社の判定対象となる企業を「会社及び会社に準ずる事業体」と定義し、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む)を指すとしています(連結財務諸表に関する会計基準 第5項、持分法に関する会計基準 第4-2項)。企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準

この会社に準ずる事業体には、投資事業組合が該当するものと考えられており、子会社または関連会社の範囲に該当するかどうかの判定は、会社の場合の取扱いに準じて行うこととされています(連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針 第28項)。つまり、組合であることを理由に判定を免れるという整理は成り立ちません。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針

実務対応報告第20号によれば、投資事業組合は一般に、投資事業有限責任組合契約に関する法律による投資事業有限責任組合、民法上の任意組合(民法第667条以下)、商法上の匿名組合(商法第535条以下)として組成され、投資育成や企業再生支援など様々な投資事業を行っている場合が多いとされています(実務対応報告第20号 Q1のA)。CVC向けのファンド、独立系ベンチャーファンド、再生ファンドへの出資は、いずれもこの射程に入ります。

支配力基準と影響力基準の原則

投資事業組合の判定を考える前に、会社を前提とした原則を確認します。判定の物差しは、子会社については支配力基準、関連会社については影響力基準の二つです。

支配力基準による子会社の判定

親会社とは、他の企業の財務および営業または事業の方針を決定する機関(意思決定機関)を支配している企業をいい、子会社とは当該他の企業をいいます。親会社および子会社または子会社が他の企業の意思決定機関を支配している場合における当該他の企業も、その親会社の子会社とみなされます(連結財務諸表に関する会計基準 第6項)。

意思決定機関を支配している企業とは、原則として次の三つの類型に該当する企業です(連結財務諸表に関する会計基準 第7項)。

  1. 他の企業の議決権の過半数を自己の計算において所有している場合
  2. 議決権の100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において所有し、かつ、緊密な者および同意している者と合わせて議決権の過半数を占めていること、役員等が取締役会の構成員の過半数を占めていること、重要な方針の決定を支配する契約等が存在すること、資金調達額の総額の過半について融資を行っていること、その他支配が推測される事実が存在することのいずれかに該当する場合
  3. 自己の計算で議決権を所有していない場合を含め、緊密な者および同意している者が所有する議決権と合わせて過半数を占め、かつ、上記2の後半に掲げた要件のいずれかに該当する場合

ただし、財務上または営業上もしくは事業上の関係からみて意思決定機関を支配していないことが明らかであると認められる企業は、子会社に該当しません(連結財務諸表に関する会計基準 第7項ただし書き)。親会社は原則としてすべての子会社を連結の範囲に含めますが、支配が一時的であると認められる企業と、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある企業は連結の範囲に含めません(同 第13項、第14項)。

関連コラム連結の範囲|子会社・関連会社の判定基準を解説

影響力基準による関連会社の判定

関連会社とは、企業が出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の企業の財務および営業または事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該子会社以外の他の企業をいいます(持分法に関する会計基準 第5項)。重要な影響を与えることができる場合とは、原則として、議決権の100分の20以上を自己の計算において所有している場合、100分の15以上100分の20未満を所有し一定の要件に該当する場合、緊密な者および同意している者と合わせて100分の20以上を占め一定の要件に該当する場合をいいます(同 第5-2項)。非連結子会社および関連会社に対する投資には、原則として持分法を適用します(同 第6項)。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準

議決権を前提にできない投資事業組合の特殊性

ここで実務上の壁になるのが、投資事業組合には株式会社の議決権に相当するものが存在しないという点です。実務対応報告第20号は、投資事業組合の場合、株式会社のように出資者が業務執行者を選任するのではなく、意思決定を行う出資者が業務執行の決定も直接行うことなどから、株式会社における議決権を想定している連結財務諸表に関する会計基準等を投資事業組合に適用する場合には、基本的には業務執行の権限を用いることによって支配力または影響力を判断することが適当であるとしています(実務対応報告第20号 会計処理、Q1のAの2、Q6のAの2)。企業会計基準委員会 実務対応報告第20号 投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い

業務執行の決定を誰が行うかは、組合の法形式によって異なります。投資事業有限責任組合として組成される場合、業務執行の決定は無限責任組合員が行い、無限責任組合員(すなわち業務執行組合員)が複数いる場合にはその過半数をもって行われます(投資事業有限責任組合契約に関する法律 第7条第1項、第7条第2項)。民法上の任意組合では組合員の過半数をもって行われますが、組合契約で業務執行組合員を定めた場合は当該業務執行組合員の過半数によります(民法第670条第1項、第670条第2項、第3項)。商法上の匿名組合では、業務執行は営業者によって行われます(商法第536条第3項)。

実務では、組合契約書の業務執行条項、投資委員会や諮問委員会の議決要件、キーマン条項、GP交代条項まで確認しないと、業務執行の権限の割合を確定できないケースが少なくありません。契約書を読み込む作業がそのまま判定作業になる、という点が投資事業組合の連結判定の特徴です。

業務執行の権限に基づく子会社判定

実務対応報告第20号は、業務執行者が当該投資事業組合の財務および営業または事業の方針を決定できないことが明らかであると認められる場合を除き、次のいずれかに該当するときは、当該投資事業組合は業務執行者の子会社に該当するとしています(実務対応報告第20号 Q1のAの2)。

業務執行の権限の過半を有する場合

第一の類型は、当該投資事業組合の業務の執行を決定することができる場合です。業務執行者が複数いる場合にはその過半数をもって業務執行が決定されるため、業務執行を決定する権限全体のうち過半の割合を自己(自己の子会社を含みます)の計算において有している場合が該当します(実務対応報告第20号 Q1のAの2(1))。組合への出資の名義が当該会社以外の者となっていても、自己の計算で業務執行の権限を有し、その権限の過半の割合を有している場合や、組合契約で定めた業務執行者ごとの権限の割合により過半の割合を有している場合も含まれます。

100分の40以上100分の50以下と一定の要件

第二の類型は、業務執行の権限全体のうち100分の40以上、100分の50以下を自己の計算において有している場合であって、かつ次のいずれかの要件に該当する場合です(実務対応報告第20号 Q1のAの2(2))。

  • 緊密な者および同意している者が有している業務執行の権限と合わせて、業務執行の権限の過半の割合を占めていること
  • 当該投資事業組合の重要な財務および営業または事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること(単なる事務管理契約など、終了しても投資事業の継続に重要な影響を及ぼさない契約等は該当しません)
  • 資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているもの)の総額の概ね過半について融資を行っていること
  • 資金調達額(貸借対照表の負債に計上されているものに限りません)の総額の概ね過半について融資および出資を行っていること
  • 投資事業から生ずる利益または損失の概ね過半について享受または負担することとなっていること
  • その他、当該投資事業組合の財務および営業または事業の方針の決定を左右すると推測される事実が存在すること

ここでいう緊密な者とは、自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより、自己の意思と同一の内容の業務執行の権限を行使すると認められる者をいい、緊密な関係の有無は、両者の関係に至った経緯、関係状況の内容、過去の業務執行の権限の行使の状況、自己の商号との類似性等を踏まえて実質的に判断します(実務対応報告第20号 Q1のAの2(2)①)。出資者である会社の役員もしくは使用人である者、またはこれらであった者など、会社の意向に沿って業務執行の権限を行使すると認められる個人も含まれる点は、CVCの運営体制を検討するうえで見落としやすい論点です。

業務執行の権限を有していない出資者の取扱い

第三の類型は、自己の計算において有している業務執行の権限(有していない場合を含みます)と、緊密な者および同意している者が有している業務執行の権限とを合わせて過半の割合を占め、かつ、上記の二つ目から六つ目までの要件のいずれかに該当する場合です(実務対応報告第20号 Q1のAの2(3))。業務執行の権限をまったく持たない有限責任組合員であっても、緊密な者と合わせて資金調達額の総額の概ね過半について融資および出資を行っている場合や、投資事業から生ずる利益または損失の概ね過半を享受または負担することとなっている場合等には、通常、当該投資事業組合は子会社に該当することとなります。

さらに実務対応報告第20号は、出資者が業務執行の権限の100分の40以上を有していない場合でも、出資額または資金調達額の総額の半分を超える多くの額を拠出している場合や、投資事業から生ずる利益もしくは損失の半分を超える多くの額を享受または負担する場合等には、業務執行の権限の過半の割合を有する者が当該出資者の緊密な者に該当することが多いと考えられ、この場合には当該投資事業組合は当該出資者の子会社に該当するとしています(実務対応報告第20号 Q1のAの3(1))。単独LPとしてファンドの大部分を出資しているケースは、まさにここに当たります。

また、出資者の子会社に該当しない他の会社や組合、公益法人、特定非営利活動法人などの事業体や個人を介在させている場合であっても、当該出資者が投資事業組合の方針を決定しているときは、当該投資事業組合は当該出資者の子会社に該当します(実務対応報告第20号 Q1のAの3(2))。スキームに一枚挟んだから連結を外れる、という整理は成り立ちません。

無限責任組合員と有限責任組合員で異なる着眼点

同じ投資事業組合でも、判定の入口は立場によって変わります。判定の着眼点を整理すると次のとおりです。

無限責任組合員
(業務執行組合員)の立場
有限責任組合員
(業務執行の権限がない立場)
業務執行の決定を行う立場であり、自己の計算において有する業務執行の権限の割合が判定の出発点になります 業務執行の決定に加わらないため、緊密な者および同意している者が有する業務執行の権限を合算できるかどうかが出発点になります
権限の過半の割合を有していれば子会社、100分の40以上100分の50以下であれば一定の要件との組合せで判定します 権限がなくても、合算して過半の割合を占め一定の要件に該当すれば子会社に該当し得ます
権限が100分の20以上であれば関連会社に該当し得ます 出資額や資金調達額の総額の半分を超える拠出、損益の半分を超える享受または負担の状況から、業務執行者が緊密な者に当たらないかを検討します

子会社に該当しないことが明らかであると認められる場合

支配していることに該当する要件のいずれかを満たしていても、当該投資事業組合の財務および営業または事業の方針を決定できないことが明らかであると認められる場合には、子会社に該当しません。実務対応報告第20号は、通常、次のような場合が該当すると考えられるとしています(実務対応報告第20号 Q2のA)。

  1. 他に業務執行の権限の過半の割合を自己の計算において有している組合員が存在し、当該業務執行組合員が独立して方針を決定していることが明らかな場合
  2. 業務執行者の執行する業務が管理業務に準ずる業務であることが明らかであると認められる場合。組合員が方針を形式的にも実質的にも決定しており、業務執行者は単に組合員によって意思決定された方針を遂行するに過ぎないことが明らかである場合などが該当します

もっとも、2の場合でも、業務執行者による出資や、投資事業から生ずる損益の享受または負担が概ね過半を超えているときには該当しないこととされており、単に「自分たちは事務方だ」という説明だけでは足りません。また、投資事業組合の組成が独立企業要件、契約要件、対価要件およびその他の支配要件のすべてを満たす場合には共同支配企業の形成に該当し、出資者である企業は当該投資事業組合を支配していないため、その子会社には該当しません(企業結合に関する会計基準 第37項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第175項)。

加えて、ベンチャーキャピタルなどの投資企業が投資育成や事業再生を図りキャピタルゲイン獲得を目的とする営業取引として他の企業の株式や出資を有している場合、売却等により議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること、当該営業取引として行っている投資または融資以外の取引がほとんどないこと、当該他の企業が自己の事業を単に移転したり自己に代わって行うものとはみなせないこと、シナジー効果も連携関係も見込まれないことのすべてを満たすときは、子会社にも関連会社にも該当しないこととされています(連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針 第16項(4)、第24項)。ただし、株主総会その他これに準ずる機関を支配する意図や重要な影響を与える意図が明確であると認められる場合は除かれ、投資企業自身が実質的な営業活動を行っている企業であることも必要です。企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針

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業務執行の権限に基づく関連会社判定

子会社に該当しない場合でも、関連会社に該当すれば持分法の適用対象になります。実務対応報告第20号は、投資事業組合が子会社にあたる場合または方針の決定に対して重要な影響を与えることができないことが明らかであると認められる場合を除き、次のいずれかに該当するときは、当該投資事業組合は業務執行者の関連会社に該当するとしています(実務対応報告第20号 Q6のAの2)。

  1. 当該投資事業組合に係る業務執行の権限の100分の20以上を自己の計算において有している場合
  2. 業務執行の権限の100分の15以上、100分の20未満を自己の計算において有している場合であって、かつ、方針の決定に重要な影響を与える契約が存在すること、当該投資事業組合に対して重要な融資または出資を行っていること、多くの投資先との間に重要な投資育成や再生支援等の営業上または事業上の取引があること、その他重要な影響を与えることができることが推測される事実が存在することのいずれかに該当する場合
  3. 自己の計算において有している業務執行の権限(100分の15未満である場合を前提とし、有していない場合を含みます)と、緊密な者および同意している者が有している業務執行の権限とを合わせて100分の20以上を占め、かつ、上記2に掲げた要件のいずれかに該当する場合

上記2の四つ目の要件には、当該投資事業組合の組成への関与を通じて、その後も重要な影響を与えている場合が含まれる点に注意が必要です(実務対応報告第20号 Q6のAの2(2)④)。ファンドの設計段階から関与した事業会社は、出資割合が小さくても関連会社に該当する余地があります。

関連コラム持分法に関する会計基準|適用範囲と未実現利益消去の実務

連結・持分法を適用する場合の実務対応

投資事業組合が子会社に該当すると判定された場合、原則としてすべての子会社が連結の範囲に含まれます(連結財務諸表に関する会計基準 第13項)。連結の範囲から除かれるのは、支配が一時的であると認められる場合と、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある場合に限られ、後者は一般に限定的であると考えられています(同 第14項、実務対応報告第20号 Q5のA)。

支配が一時的であるかどうかは、直前連結会計年度において支配に該当しておらず、かつ翌連結会計年度以降相当の期間にわたって支配に該当しないことが確実に予定されている場合をいいます(連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針 第18項)。なお、投資事業組合が直前連結会計年度以降に組成されている場合には、当連結会計年度または翌連結会計年度に解散が予定されているときであっても、組合の存続期間の大部分を支配していることになるため、支配が一時的であることには該当しません(実務対応報告第20号 Q4のA)。ファンドの残存期間が短いことを理由に連結を外す、という整理は通りにくいということです。

もう一点、実務で誤解が多いのが個別財務諸表との関係です。組合等への出資は、原則として組合等の財産の持分相当額を出資金として計上し、組合等の営業により獲得した損益の持分相当額を有限責任の範囲内で当期の損益として計上することとされていますが(移管指針第9号 金融商品会計に関する実務指針 第132項)、個別財務諸表に組合に対する出資等に対応する数値が反映されていることと、子会社に該当し連結の範囲に含まれることとは別個に判断すべきであり、子会社に該当するか否かはあくまでも支配力基準によって判定します(実務対応報告第20号 Q1のAの3)。持分法を適用する場合も、個別財務諸表で総額法や折衷法を採用しているときは、その処理をそのまま連結財務諸表に取り込むこととなります(実務対応報告第20号 Q6のAの2)。

持分法を適用する場合、連結財務諸表上、持分法による投資損益は営業外収益または営業外費用の区分に一括して表示し、持分法を適用した非連結子会社および関連会社の範囲に関する事項ならびにこれらに重要な変更があったときはその旨および理由を注記します(持分法に関する会計基準 第16項、第17項(1))。企業会計基準委員会 企業会計基準第16号 持分法に関する会計基準

なお、匿名組合として組成される場合、通常は営業者が方針を決定していますが、匿名組合事業は営業者の個別財務諸表に反映されていることから、営業者においては当該匿名組合を子会社とする必要はないこととされています(実務対応報告第20号 Q1のAの3)。一方、営業者が匿名組合員の緊密な者と認められ、かつ匿名組合員が当該匿名組合を支配している一定の事実が認められる場合には、匿名組合は当該匿名組合員の子会社に該当し、連結の範囲に含まれます。

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CVC・上場準備で論点になる場面

上場準備の過程では、連結範囲の網羅性が監査上の重点論点になります。実務でとくに議論になりやすいのは、次のような場面です。

  • 自社が単独のLPとしてファンド総額の大部分を出資しているCVCファンド。業務執行の権限がなくても、出資額の状況からGPが緊密な者に該当し、子会社と判定される可能性があります
  • GPの運営会社に自社の役職員が出向・兼務している場合。出資者である会社の役員もしくは使用人である者、またはこれらであった者は緊密な者に含まれ得ます
  • 自社と連結子会社が同一の投資事業組合に出資している場合。親会社と子会社が有する業務執行の権限を合算して過半の割合となるときは、親会社の子会社とみなされます(実務対応報告第20号 Q3のA(1))
  • 組合の損益がほぼすべて特定の出資者に帰属する設計になっている場合。投資事業から生ずる利益または損失の概ね過半の享受・負担は、単独で判定要素となります

いずれの場面でも、判定の結論は組合契約の具体的な定めと出資・融資・損益分配の実態によって変わります。連結すべきかどうかを一般論で断定できる論点ではなく、契約書と実態の両方を突き合わせた個別判断が欠かせません。判定を誤ると、連結範囲の遡及的な見直しという重い手戻りにつながるため、監査法人との協議の前に論点を整理しておくことをおすすめします。

適用時期と改正の経緯

投資事業組合の連結範囲の判定に関する枠組みは、すでに適用されています。実務対応報告第20号は2006年(平成18年)に公表され、その後、2008年(平成20年)12月の連結財務諸表に関する会計基準の公表および持分法に関する会計基準の改正に表現等を合わせるための技術的な改正が2009年(平成21年)3月に、連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱いの三の見直しによる連結財務諸表に関する会計基準の改正に伴う所要の改正が2011年(平成23年)に行われました。2011年(平成23年)改正は2013年(平成25年)4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されており、同時に改正された企業会計基準適用指針第22号も同じ時期から適用されています(実務対応報告第20号 適用時期等、連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針 第32-3項)。その後は、他の会計基準等の公表に伴う修正が反映されています。企業会計基準委員会 実務対応報告第20号 投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い

連結財務諸表に関する会計基準は2008年(平成20年)12月に公表された後、2010年(平成22年)、2011年(平成23年)、2013年(平成25年)と改正され、2013年(平成25年)改正は2015年(平成27年)4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用されています(連結財務諸表に関する会計基準 第44-5項)。持分法に関する会計基準は2008年(平成20年)3月の公表後、同年12月に改正され、2010年(平成22年)4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度から適用されています(持分法に関する会計基準 第18項、第18-2項)。

直近では、2026年6月2日に連結財務諸表に関する会計基準が改正され、特別目的会社に資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定する定めについて、特別目的会社が発行する証券の所有者に、資産の流動化に関する法律第2条第12項に規定する特定借入れに係る債権者を含める旨が追加されました(連結財務諸表に関する会計基準 第7-2項、第49-8項)。この2026年改正は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から将来にわたって適用され、2026年4月1日以後開始する連結会計年度の期首からの早期適用が認められています(同 第44-7項)。投資事業組合が第7-2項の要件を満たす特別目的会社にあたる場合には、資産を譲渡した企業の子会社に該当しないものと推定されるため(実務対応報告第20号 Q1のAの3)、証券化スキームに組合を用いている場合は改正内容の確認が必要です。企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準

まとめ

投資事業組合の連結範囲の判定は、議決権ではなく業務執行の権限を軸に、支配力基準と影響力基準を当てはめる作業です。業務執行の権限の割合という形式的な指標に加えて、緊密な者の範囲、資金調達額に占める融資・出資の割合、投資事業から生ずる損益の享受・負担の割合という実質的な要素を、組合契約の定めに即して確認する必要があります。

とくに、業務執行の権限をまったく持たない有限責任組合員であっても子会社と判定され得る点、スキームに他の事業体を介在させても結論が変わらない点は、判定を保守的に見直すきっかけになります。一方で、共同支配企業の形成に該当する場合やベンチャーキャピタルとしての要件をすべて満たす場合など、子会社にも関連会社にも該当しない整理が成り立つ場面もあり、結論は個別事情によって大きく分かれます。

会計処理は個別性が高いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングでは、CVCやファンド出資の連結範囲の判定について、組合契約の確認から監査法人との協議資料の整理まで支援しています。

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参考文献

よくある質問

投資事業組合に議決権がない場合、何を基準に子会社かどうかを判定しますか。

業務執行の権限を用いて判断します。投資事業組合では、株式会社のように出資者が業務執行者を選任するのではなく、意思決定を行う出資者が業務執行の決定も直接行うことなどから、株式会社の議決権を想定した連結財務諸表に関する会計基準等を適用する際には、基本的に業務執行の権限によって支配力または影響力を判断することが適当とされています(実務対応報告第20号 Q1のAの2、Q6のAの2)。業務執行の決定を誰が行うかは、投資事業有限責任組合であれば無限責任組合員、民法上の任意組合であれば組合員または業務執行組合員、匿名組合であれば営業者となります。

業務執行の権限を持たない有限責任組合員でも、投資事業組合を連結する必要がありますか。

連結が必要となる場合があります。自己の計算において業務執行の権限を有していない場合でも、緊密な者および同意している者が有している業務執行の権限と合わせて過半の割合を占め、かつ、資金調達額の総額の概ね過半についての融資および出資や、投資事業から生ずる利益または損失の概ね過半の享受または負担などの要件に該当するときは、通常、当該投資事業組合は子会社に該当します(実務対応報告第20号 Q1のAの2(3))。さらに、出資額の総額の半分を超える多くの額を拠出している場合等には、業務執行の権限の過半の割合を有する者が緊密な者に該当することが多いと考えられています(同 Q1のAの3(1))。

CVCとして投資育成目的で出資している投資先を、連結や持分法の範囲から除くことはできますか。

要件をすべて満たす場合に限り可能です。ベンチャーキャピタルなどの投資企業が投資育成や事業再生を図りキャピタルゲイン獲得を目的とする営業取引として他の企業の株式や出資を有している場合、売却等により議決権の大部分を所有しないこととなる合理的な計画があること、当該営業取引として行っている投資または融資以外の取引がほとんどないこと、当該他の企業が自己の事業を単に移転したり自己に代わって行うものとはみなせないこと、シナジー効果も連携関係も見込まれないことのすべてを満たすときは、子会社にも関連会社にも該当しません(連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針 第16項(4)、第24項)。株主総会等を支配する意図や重要な影響を与える意図が明確な場合は除かれ、投資企業自身が実質的な営業活動を行っていることも必要です。

匿名組合として組成された投資事業組合は、営業者が連結する必要がありますか。

通常は必要ありません。匿名組合では営業者が財務および営業または事業の方針を決定していますが、匿名組合事業は営業者の個別財務諸表に反映されていることから、営業者においては当該匿名組合を子会社とする必要はないこととされています(実務対応報告第20号 Q1のAの3)。ただし、営業者が匿名組合員の緊密な者と認められ、かつ匿名組合員が当該匿名組合を支配している一定の事実が認められる場合には、匿名組合は当該匿名組合員の子会社に該当し、連結の範囲に含まれます。

個別財務諸表で組合出資の持分相当額を取り込んでいれば、連結の検討は不要ですか。

不要にはなりません。組合等への出資は、原則として組合等の財産の持分相当額を出資金として計上し、損益の持分相当額を有限責任の範囲内で当期の損益として計上することとされていますが(移管指針第9号 金融商品会計に関する実務指針 第132項)、個別財務諸表に出資等に対応する数値が反映されていることと、子会社に該当し連結の範囲に含まれることとは別個に判断すべきであり、子会社に該当するか否かはあくまでも支配力基準によって判定することとされています(実務対応報告第20号 Q1のAの3)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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