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ソフトウェア資産計上の基準【区分別】|勘定科目と償却年数

2025-08-31
目次

ソフトウェアの開発費を資産計上すべきか、費用として処理すべきか。この判断は、制作目的の区分によって答えが変わります。日本基準では、ソフトウェア制作費を受注制作・市場販売目的・自社利用の3つに区分し、区分ごとに資産計上できる範囲・勘定科目・償却方法を定めています(研究開発費等に係る会計基準 四)。

本記事では、3区分別の判断基準を表で整理したうえで、勘定科目と償却年数、制作段階ごとの費用区分、資産計上しなかった場合の影響までを、会計基準と実務指針の条項に沿って解説します。

ソフトウェア開発費の資産計上と費用処理の全体像

最初に押さえるべきは、判断の順序です。ソフトウェア制作費は、まず「研究開発に該当する部分」を切り出して費用処理し、残りの部分について制作目的別の会計処理を適用します。研究開発に該当する部分は、制作目的が何であっても資産計上できません(研究開発費等に係る会計基準 三)。

そのうえで、研究開発費に該当しないソフトウェア制作費を、受注制作のソフトウェア・市場販売目的のソフトウェア・自社利用のソフトウェアの3区分に分けて処理します(研究開発費等に係る会計基準 四)。区分は取得形態(自社制作か外部購入か)ではなく制作目的で決まる点が実務上の落とし穴です。

制作目的による3区分と資産計上の範囲

区分ごとに、どこまでが資産計上の対象になるかを整理すると次のとおりです。

制作目的の区分 資産計上の対象となる範囲
受注制作のソフトウェア 請負工事の会計処理に準じて処理し、収益を認識するまでに集計した制作費が資産となる
市場販売目的のソフトウェア 最初に製品化された製品マスターの完成後に発生した制作費(機能維持に要した費用を除く)
自社利用のソフトウェア 将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた時点以後に発生した制作費

受注制作のソフトウェアの制作費は請負工事の会計処理に準じて処理し、市場販売目的のソフトウェアは製品マスターの制作費のうち研究開発費に該当する部分を除いて資産計上します。自社利用のソフトウェアは、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合に資産計上します(研究開発費等に係る会計基準 四 1、四 2、四 3)。

区分別の勘定科目

「システム開発費はどの勘定科目で処理するのか」という疑問は、区分が決まれば自動的に答えが出ます。

費用・資産の区分 主な計上科目
研究開発に該当する部分 研究開発費(原則として一般管理費。製造現場で発生した場合は当期製造費用に算入できる)
受注制作のソフトウェア 棚卸資産(仕掛品)。収益認識時に売上原価へ振り替える
市場販売目的のソフトウェア 製品マスターはソフトウェア(無形固定資産)、制作仕掛品はソフトウェア仮勘定。販売する製品・仕掛品は棚卸資産
自社利用のソフトウェア ソフトウェア(無形固定資産)。制作途中はソフトウェア仮勘定
機器組込みソフトウェア 機械及び装置等(機械等の取得原価に算入する)

研究開発費は、原則として一般管理費に計上し、製造現場で研究開発活動が行われている場合には当期製造費用に算入することが認められています(移管指針第8号 第4項)。市場販売目的及び自社利用のソフトウェアを資産計上する場合は無形固定資産の区分に計上し、制作途中のものは無形固定資産の仮勘定として計上します(研究開発費等に係る会計基準 四 4、同注解(注4)、移管指針第8号 第10項)。受注制作のソフトウェアの制作費は棚卸資産として計上されることがあります(移管指針第11号 Q24)。機器に組み込まれ有機的一体として機能するソフトウェアは、区分せず機械及び装置等の科目で処理します(移管指針第8号 第17項)。

区分別の償却方法と年数

制作目的の区分 償却方法と年数の目安
市場販売目的のソフトウェア 見込販売数量又は見込販売収益に基づく方法。残存有効期間に基づく均等配分額が下限。見込有効期間は原則3年以内
自社利用のソフトウェア 一般的には定額法。耐用年数は利用可能期間により、原則5年以内
受注制作のソフトウェア 減価償却は行わず、収益認識に対応して売上原価として費用化する

市場販売目的のソフトウェアの見込有効期間は原則として3年以内、自社利用のソフトウェアの耐用年数は原則として5年以内とされ、これを超える年数とする場合には合理的な根拠が必要です(移管指針第8号 第18項、第21項)。

研究開発費とは|開発費との違いと費用処理の根拠

資産計上の可否を判断する起点は、その支出が研究開発に該当するかどうかです。

会計基準における研究・開発の定義

研究 新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究
開発 新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化すること

研究及び開発は上表のとおり定義されています(研究開発費等に係る会計基準 一 1)。実務指針では、従来にはない製品・サービスに関する発想を導き出すための調査・探究、新製品の試作品の設計・製作及び実験、商業生産化するために行うパイロットプラントの設計・建設等の計画などが典型例として示されています(移管指針第8号 第2項)。

逆に、製品を量産化するための試作、品質管理活動や完成品の製品検査に関する活動、既存製品の不具合の修正に係る設計変更、客先の要望等による仕様変更、通常の製造工程の維持活動などは研究・開発に含まれません(移管指針第8号 第26項)。「著しい」と判断できない改良・改善は研究開発ではない、という線引きが基本です。

研究開発費が資産計上されない理由

研究開発費は、人件費、原材料費、固定資産の減価償却費及び間接費の配賦額等、研究開発のために費消されたすべての原価を含み、すべて発生時に費用として処理しなければなりません(研究開発費等に係る会計基準 二、三)。特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価も、取得時の研究開発費として処理します(同注解(注1)、移管指針第8号 第5項)。

資産計上が認められないのは、研究開発費は発生時には将来の収益を獲得できるか否かが不明であり、研究開発計画が進行して収益の獲得期待が高まったとしても、その獲得が確実とはいえないためです。また、客観的に判断可能な資産計上の要件を規定することが困難であり、抽象的な要件のもとで資産計上を求めると企業間の比較可能性が損なわれるおそれがあることも理由とされています(研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書 三 2)。

外部に研究開発を委託した場合は、研究開発の内容について検収を行い、利用可能になった時点で費用として処理し、契約金等は前渡金として処理します(移管指針第8号 第3項)。大きな研究開発テーマ全体の完了まで前渡金として資産に計上しておくことは認められません(移管指針第11号 Q2)。

繰延資産の「開発費」との違い

決算書に出てくる「開発費」と「研究開発費」は別物です。財務諸表等規則には、繰延処理できる繰延資産の範囲として開発費の科目名が掲げられています。これは、従来用いられていた「開発費」の用語が、新技術の採用、新経営組織の採用、資源の開発及び市場の開拓までをも包含する広範な内容を有しており、会計基準における「開発」の定義の範囲に含まれない費用が発生することが想定されるためです(移管指針第8号 第27項)。

つまり、会計基準の定義に当てはまる研究開発費は必ず発生時費用処理となり、繰延資産に計上できるのは市場の開拓費用など定義の範囲外のものに限られます。実務では、両者を同じ勘定科目でまとめて処理していないかを確認する必要があります。

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自社利用ソフトウェアの資産計上基準

3区分のうち、実務で最も判断が難しいのが自社利用のソフトウェアです。基幹システムの刷新やSaaS基盤の内製など、上場準備企業からの相談が集中する領域でもあります。

資産計上の要件と具体例

自社利用のソフトウェアは、ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約等が締結されている場合のように、その提供により将来の収益獲得が確実であると認められる場合には、適正な原価を集計したうえで制作費を資産として計上しなければなりません。完成品を購入した場合のように、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合も同様です(研究開発費等に係る会計基準 四 3)。

実務指針では、資産計上される場合の一般的な例として、第三者への業務処理サービスの提供に用いるソフトウェアにより対価を得る場合、自社で利用するために制作し当初意図した使途に継続して利用することで業務を効率的又は効果的に遂行できると明確に認められる場合、市場で販売されているソフトウェアを購入して継続利用する場合が挙げられています(移管指針第8号 第11項)。反対に、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明な場合には費用処理します。

独自仕様の社内利用ソフトウェアでは、直接的にキャッシュ・フローが生じるとは考えられないため判断は容易ではありません。手作業で行っていた業務をコンピュータ処理に置き換えて取扱高の増加が可能になる場合や、遠隔保守のシステム構築により保守要員が減少する場合などは、費用削減が確実であると認められる要件を満たすものと考えられます(移管指針第11号 Q15)。

資産計上の開始時点・終了時点と証憑

資産計上の開始時点は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる状況になった時点であり、それを立証できる証憑に基づいて決定します。証憑としては、ソフトウェアの制作予算が承認された社内稟議書や、制作原価を集計するための制作番号を記入した管理台帳等が考えられます(移管指針第8号 第12項)。

終了時点は、実質的にソフトウェアの制作作業が完了したと認められる状況になった時点であり、ソフトウェア作業完了報告書、最終テスト報告書等の証憑に基づいて決定します(移管指針第8号 第13項)。

ここで見落とされやすいのが遡及計上の禁止です。制作活動が開始された後に初めて資産計上の要件を満たすことが判明した場合、資産計上すべき取得価額は、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた時点以後の費用に限られます。確実と認められた時点から過去に遡ってソフトウェアの取得価額を資産計上することは認められません(移管指針第11号 Q16)。判断が遅れるほど資産計上できる金額が減るため、稟議のタイミングと工数記録の整備が実務上の要になります。

導入費用・データ移行費用・研修費用の扱い

設定作業・付随的な
修正作業の費用
購入ソフトウェアを取得するための費用として取得価額に含める。重要性が乏しい場合は費用処理できる
大幅な変更により
自社仕様にする費用
将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合を除き、購入ソフトウェアの価額も含めて費用処理する
データ移行費用 旧システムのデータをコンバートするための費用は、発生した事業年度の費用とする
操作研修の費用 ソフトウェアの操作をトレーニングするための費用は、発生した事業年度の費用とする

外部から購入したソフトウェアの導入に当たって必要とされる設定作業及び自社の仕様に合わせるために行う付随的な修正作業等の費用は、取得価額に含めます。一方、データのコンバート費用とトレーニング費用は発生した事業年度の費用として処理します(移管指針第8号 第14項、第15項、第16項)。

自社利用ソフトウェアの仕訳例

自社利用のソフトウェアを外部委託により制作し、資産計上の開始時点以後に制作費12,000千円を支払い、制作作業の完了時に本勘定へ振り替えた場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。制作途中は無形固定資産の仮勘定に計上します(研究開発費等に係る会計基準注解(注4)、移管指針第8号 第12項、第13項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
ソフトウェア仮勘定 12,000 現金預金 12,000
ソフトウェア 12,000 ソフトウェア仮勘定 12,000

資産計上の開始時点より前に発生した企画・構想段階の費用は、この仕訳には含めず、発生時に費用として処理します。

市場販売目的ソフトウェアの費用区分

パッケージソフトやSaaSの製品開発では、研究開発の終了時点をどこに置くかで損益が大きく変わります。

研究開発の終了時点は「最初に製品化された製品マスター」

市場販売目的のソフトウェアの制作に係る研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」の完成時点であり、この時点までに発生した費用は研究開発費として処理します(移管指針第8号 第8項)。

完成時点は、次の2点で判断します。第一に、製品性を判断できる程度のプロトタイプが完成していること。第二に、プロトタイプを制作しない場合は、製品として販売するための重要な機能が完成しており、かつ重要な不具合を解消していることです(移管指針第8号 第8項)。入力画面や出力帳票が完全なものではない、操作性に改良の余地がある、といった状態でも、問題を解消するための方法が明確になっており、それが製品の完成に当たって重要なものではないことが確認されていれば、資産計上の要件を満たしていると考えられます(移管指針第8号 第32項)。

製品マスター完成後の費用区分

著しい改良に
要した費用
新しいマスターの制作のためのコストとみなされる費用であり、研究開発費として処理する
著しい改良を除く
機能の改良・強化の費用
製品マスターの取得原価として無形固定資産に計上する
機能維持に要した費用 バグ取り、ウィルス防止等の修繕・維持・保全のための費用であり、発生時の費用として処理する
製品としての制作原価 保存媒体のコスト、複写に必要な経費等であり、ソフトウェアの製造原価として処理する

製品マスター又は購入したソフトウェアの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は原則として資産に計上しますが、著しい改良と認められる場合は研究開発費として処理します。機能維持に要した費用は資産に計上してはなりません(研究開発費等に係る会計基準 四 2、同注解(注3)、移管指針第8号 第9項、第34項)。

ここでいう著しい改良とは、研究及び開発の要素を含む大幅な改良を指しており、完成に向けて相当程度以上の技術的な困難が伴うものです。具体例として、機能の改良・強化を行うために主要なプログラムの過半部分を再制作する場合や、ソフトウェアが動作する環境(オペレーティングシステム、言語、プラットフォームなど)を変更・追加するために大幅な修正が必要になる場合が挙げられています(移管指針第8号 第33項)。

市場販売目的ソフトウェアの仕訳例

製品マスターの完成までに制作費8,000千円が発生し、完成後に著しい改良に該当しない機能の改良・強化のため4,500千円を支出した場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。前者は研究開発費、後者は製品マスターの取得原価として処理します(研究開発費等に係る会計基準 三、四 2、移管指針第8号 第9項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
研究開発費 8,000 現金預金 8,000
ソフトウェア 4,500 現金預金 4,500

バージョンアップの費用も同じ考え方で区分します。製品の大部分を作り直す大幅なバージョンアップは著しい改良に該当し、新しいバージョンで最初に製品化された製品マスターの完成時点までの費用を研究開発費として処理します。この場合、旧バージョンの販売を中止するときは残存価額の除却が必要です(移管指針第11号 Q13)。

受注制作ソフトウェアの会計処理

受注制作のソフトウェアとは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制作され、提供されるソフトウェアをいいます(収益認識に関する会計基準 第14項)。その制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理します(研究開発費等に係る会計基準 四 1)。

ここで注意したいのが収益認識に関する会計基準の適用による実務の変化です。同基準は2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(収益認識に関する会計基準 第81項)。従来の工事進行基準・工事完成基準という枠組みではなく、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものか一時点で充足されるものかを判定して収益を認識します(収益認識に関する会計基準 第36項)。

一定の期間にわたり充足される履行義務に該当するのは、顧客が企業の履行につれて便益を享受する場合、企業の履行により資産が生じ又は価値が増加し顧客がその資産を支配する場合、企業の履行により別の用途に転用することができない資産が生じ、かつ履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有する場合のいずれかです(収益認識に関する会計基準 第38項)。いずれも満たさない場合は、一時点で充足される履行義務として処理します(収益認識に関する会計基準 第39項)。

一定の期間にわたり充足される履行義務については、進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ収益を認識します。進捗度を合理的に見積ることができないが、履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、進捗度を合理的に見積ることができる時まで原価回収基準により処理します(収益認識に関する会計基準 第41項、第44項、第45項)。収益を認識するまでに集計した制作費は、棚卸資産として計上されることがあります(移管指針第11号 Q24)。

関連コラム一定の期間にわたり充足される履行義務|進捗度と原価回収基準

ソフトウェアの減価償却と耐用年数

無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければなりません。ただし、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはなりません(研究開発費等に係る会計基準 四 5)。

自社利用|定額法・原則5年以内

自社利用のソフトウェアについては、利用の実態に応じて最も合理的と考えられる減価償却の方法を採用すべきですが、一般的には定額法による償却が合理的であると考えられます。償却の基礎となる耐用年数は利用可能期間によるべきですが、原則として5年以内の年数とし、5年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要です(移管指針第8号 第21項)。

年間の減価償却額 = 取得原価 ÷ 利用可能期間(年数)

取得原価12,000千円のソフトウェアを利用可能期間5年、定額法で償却する場合の年間償却額は次のとおりです(単位:千円)。

12,000 ÷ 5年 = 2,400
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
ソフトウェア償却 2,400 ソフトウェア 2,400

利用可能期間は適宜見直しを行い、見直しの結果として耐用年数を変更した場合には、当事業年度及び残存耐用年数にわたる将来の期間の損益で認識します。ただし、過去に定めた耐用年数がその時点での合理的な見積りに基づくものでなく、これを事後的に合理的な見積りに基づいたものに変更する場合には、会計上の見積りの変更ではなく過去の誤謬の訂正に該当します(移管指針第8号 第21項)。

市場販売目的|見込販売数量と均等配分額の下限

市場販売目的のソフトウェアは、見込販売数量に基づく方法のほか、見込販売収益に基づく償却方法も認められます。毎期の減価償却額は、見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく償却額と残存有効期間に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を計上します。当初における販売可能な有効期間の見積りは、原則として3年以内の年数とし、3年を超える年数とするときには合理的な根拠に基づくことが必要です(移管指針第8号 第18項)。

見込販売数量に基づく償却額 = 未償却残高 × (当期の実績販売数量 ÷ 期首の見込販売数量)
均等配分額 = 未償却残高 ÷ 残存有効期間(年数)

販売期間の経過に伴い、減価償却を実施した後の未償却残高が翌期以降の見込販売収益の額を上回った場合、その超過額は一時の費用又は損失として処理します(移管指針第8号 第20項)。

なお、採用した減価償却の方法は重要な会計方針として記載し、見込有効期間の年数及び見込利用可能期間の年数も併せて記載することが適当とされています(移管指針第8号 第22項、第46項)。

税務上の耐用年数との関係

法人税法上、ソフトウエアは無形減価償却資産に該当し、耐用年数は複写して販売するための原本及び研究開発用のものが3年、その他のものが5年とされています(国税庁 No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数)。会計上の見積りと税務上の法定耐用年数は目的が異なるため一致するとは限りませんが、自社利用のソフトウェアで会計上5年以内の定額法を採用すれば、実務上は税務との差異が生じにくくなります。

取得価額の範囲についても差異が生じ得ます。税務上は、製作計画の変更により不要となった仕損じ費用や、製作原価のおおむね3パーセント以内の間接費・付随費用について取得価額に算入しないことができるとされています(国税庁 No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数)。会計上の取得原価の集計方法と突合しておくことが必要です。

制作段階ごとの費用区分と実務の判断

「要件定義までは費用、設計以降は資産」といった段階基準を社内ルールにしている企業がありますが、これは会計基準の考え方とは異なります。

段階による機械的な区分は採用されていない

実務指針では、制作段階により区分する方法について、ソフトウェア制作には多様な制作実態が存在し、それらを明確に区分することは困難であり、結果として実態に合致しなくなると考えられるため採用していないことが明らかにされています(移管指針第8号 第37項)。判断すべきは段階の名称ではなく、市場販売目的であれば最初に製品化された製品マスターが完成したか、自社利用であれば将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められたか、という要件の充足です。

そのうえで、一般的な開発の流れと費用区分の考え方を整理すると次のようになります。

企画・構想の段階 収益獲得又は費用削減が確実と認められる前の支出であり、費用として処理する
要件定義・設計の段階 稟議の承認等により要件充足が立証できる時点以後の支出が資産計上の対象となる
開発・テストの段階 制作作業が完了したと認められるまでの適正な原価を集計して資産計上する
運用・保守の段階 バグ取り等の機能維持費用は発生時の費用、機能の改良・強化は資産計上の対象

アジャイル開発・段階的リリースでの考え方

アジャイル開発のように短い周期で開発とリリースを繰り返す場合も、判断の枠組みは変わりません。制作段階で機械的に区分する方法は採用されていないため(移管指針第8号 第37項)、リリース単位ごとに、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められるか、その判断を立証できる証憑があるかを確認することになります(移管指針第8号 第12項)。

実務上の要点は、開発の周期にかかわらず要件を満たした時点を都度記録し、その時点以後の工数を集計できる体制を持つことです。要件充足の判断が後追いになると、遡って資産計上することはできず(移管指針第11号 Q16)、本来資産計上できたはずの原価がすべて費用となります。プロジェクト管理台帳と工数記録を制作番号単位で紐付けておく運用が有効です。

資産計上しなかった場合に起きること

要件を満たすにもかかわらず資産計上しない処理は、会計基準に照らして認められません。自社利用のソフトウェアについて将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる場合には、制作費を資産として計上しなければならないと定められているためです(研究開発費等に係る会計基準 四 3)。

影響は次の3点に及びます。第一に、費用が発生年度に集中し、期間損益が実態から乖離します。第二に、監査対応や上場審査において、会計方針の適切性と工数集計の証憑が論点になります。第三に、研究開発費として当期製造費用に算入した結果、その大部分が期末仕掛品等として資産計上されることとなる場合には、繰延資産等として資産計上する処理と結果的に変わらないため、妥当な会計処理とは認められない点にも留意が必要です(移管指針第8号 第4項、移管指針第11号 Q5)。

逆に、資産計上した後に使用する見込みがなくなった場合は、機械装置等の固定資産と同様に除却処理を行います。ソフトウェアの機能が陳腐化した等の理由で事業の用に供しないこととなった場合には、資産としての価値が失われたことになるため、速やかに損失として計上することが必要です(移管指針第11号 Q19)。一部の機能を使用しなくなった場合には、消去又は削除した部分の帳簿価額を合理的に算定して部分的な除却の会計処理を行うことが適切と考えられます(移管指針第11号 Q20)。

基準の適用時期と改正の経緯

研究開発費等に係る会計基準は1998年3月13日に企業会計審議会から公表され、1999年4月1日以後開始する事業年度から実施されています(研究開発費等に係る会計基準の設定に関する意見書 五)。実務指針も1999年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(移管指針第8号 第23項)。いずれも適用開始から相当期間が経過した基準です。

その後、2008年に公表された企業会計基準第23号により「六 適用範囲」が改正され、企業結合により被取得企業から受け入れた資産(受注制作、市場販売目的及び自社利用のソフトウェアを除く。)については本基準を適用しないこととされました。この改正は2010年4月1日以後実施される企業結合及び事業分離等から適用されています(企業会計基準第23号 第2項、第3項)。

実務指針は2011年3月29日及び2014年11月28日に改正された後(移管指針第8号 第23-2項、第23-3項)、日本公認会計士協会から企業会計基準委員会へ移管され、現在は移管指針第8号として定められています(移管指針第8号 第23-4項)。Q&Aも同様に移管指針第11号として定められています。条項を参照する際は、旧・会計制度委員会報告第12号ではなく現行の移管指針の項番号を用いる点に注意してください。

まとめ

ソフトウェア開発費は、まず研究開発に該当する部分を切り出して費用処理し、残りを受注制作・市場販売目的・自社利用の3区分に分けて処理します。自社利用は将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められた時点以後の制作費を無形固定資産に計上し、原則5年以内の定額法で償却します。市場販売目的は最初に製品化された製品マスターの完成後の制作費を資産計上し、見込販売数量等に基づき原則3年以内で償却します。受注制作は収益認識に関する会計基準に従い、履行義務の充足に応じて収益と原価を認識します。判断の分かれ目は制作段階の名称ではなく要件の充足であり、その時点を立証できる証憑と工数記録の整備が実務の要になります。具体的なケースは個別性が高いため、公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

システム開発費はどの勘定科目で処理しますか。

研究開発に該当する部分は研究開発費、自社利用及び市場販売目的で資産計上する部分はソフトウェア(無形固定資産)、制作途中はソフトウェア仮勘定で処理します。受注制作のソフトウェアの制作費は棚卸資産として計上されることがあり、機器に組み込まれたソフトウェアは機械及び装置等の科目で処理します。

ソフトウェアを資産計上しないとどうなりますか。

将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められる自社利用のソフトウェアは、制作費を資産として計上しなければならないとされています。要件を満たすのに費用処理すると期間損益が実態から乖離し、監査や上場審査で会計方針と工数集計の証憑が論点になります。

ソフトウェアの耐用年数は何年ですか。

会計上は、自社利用のソフトウェアが原則5年以内、市場販売目的のソフトウェアの見込有効期間が原則3年以内とされ、これを超える場合は合理的な根拠が必要です。税務上の耐用年数は、複写して販売するための原本及び研究開発用が3年、その他が5年とされています。

アジャイル開発でも資産計上できますか。

制作段階により機械的に区分する方法は採用されていないため、開発手法にかかわらず、将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められた時点以後の制作費が資産計上の対象になります。要件を満たした時点を証憑で立証できることが前提であり、遡って資産計上することは認められません。

研究開発費と繰延資産の開発費は何が違いますか。

会計基準の定義に当てはまる研究開発費はすべて発生時に費用として処理します。財務諸表等規則が繰延資産として掲げる開発費は、新技術・新経営組織の採用や市場の開拓など、会計基準の「開発」の定義に含まれない費用を対象とするものです。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。