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研究開発費・ソフトウェアの会計処理|費用処理と資産計上の区分

2026-07-18
目次

研究開発費は、その支出が将来の収益獲得につながるかどうかが不確実であるため、原則としてすべて発生時に費用として処理します。一方でソフトウェアの制作費は、その制作目的によって将来の収益との対応関係が異なるため、費用処理と資産計上が分かれます。本稿では、研究開発費の費用処理と、ソフトウェア制作費の三つの区分(受注制作・市場販売目的・自社利用)ごとの会計処理、そして資産計上後の減価償却までを、日本基準に沿って整理します。

研究開発費とソフトウェア会計処理の全体像

研究開発費等に係る会計基準は、研究開発費に関する企業間の比較可能性を確保し、あわせてソフトウェア制作費の会計処理を明らかにすることを目的として設定されました。要点は二つです。第一に、研究開発費はすべて発生時に費用として処理します。第二に、研究開発費に該当しないソフトウェア制作費は、取得形態ではなく制作目的別に会計処理を定め、一定の要件を満たす場合に無形固定資産として資産計上します。

ソフトウェアの制作費は、その制作目的により将来の収益との対応関係が異なることから、会計基準は取得形態(自社制作・外部購入)別ではなく制作目的別に設定されています。この制作目的別の考え方が、以降の区分判断の出発点になります。

研究開発費は発生時に費用処理する

研究・開発の定義

研究とは、新しい知識の発見を目的とした計画的な調査及び探究をいいます。開発とは、新しい製品・サービス・生産方法についての計画若しくは設計、又は既存の製品等を著しく改良するための計画若しくは設計として、研究の成果その他の知識を具体化することをいいます。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

実務上の典型例としては、従来にない製品・サービスに関する発想を導き出すための調査・探究や、新製品の試作品の設計・製作及び実験などが研究・開発に該当します。他方、製品を量産化するための試作、品質管理活動や完成品の製品検査、既存製品の不具合の修正に係る設計変更などは、研究・開発には該当しないとされています。企業会計基準委員会 移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

原価要素と費用処理・注記

研究開発費には、人件費、原材料費、固定資産の減価償却費及び間接費の配賦額等、研究開発のために費消されたすべての原価が含まれます。特定の研究開発目的にのみ使用され、他の目的に使用できない機械装置や特許権等を取得した場合の原価も、取得時の研究開発費とします。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

これらの研究開発費は、すべて発生時に費用として処理しなければなりません。費用として処理する方法には、一般管理費として処理する方法と当期製造費用として処理する方法があります。また、一般管理費及び当期製造費用に含まれる研究開発費の総額は、財務諸表に注記する必要があります。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

なお、ソフトウェアの制作費であっても、研究開発に該当する部分は研究開発費として費用処理します。市場販売目的のソフトウェアの場合、最初に製品化された製品マスターの完成までの費用が研究開発費に該当します。

ソフトウェア制作費の三つの区分

研究開発費に該当しないソフトウェア制作費は、まず販売目的のソフトウェアと自社利用のソフトウェアに区分し、販売目的のソフトウェアをさらに受注制作のソフトウェアと市場販売目的のソフトウェアに区分します。すなわち、受注制作・市場販売目的・自社利用の三つの区分で会計処理を判断します。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

区分 基本的な会計処理
受注制作のソフトウェア 請負工事の会計処理に準じて処理する
市場販売目的のソフトウェア 製品マスターの制作費のうち研究開発費に該当する部分を除き資産計上する
自社利用のソフトウェア 将来の収益獲得又は費用削減が確実な場合に資産計上する

受注制作のソフトウェア

受注制作のソフトウェアの制作費は、請負工事の会計処理に準じて処理します。特定の顧客からの注文に応じて個別に制作するソフトウェアが該当します。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

市場販売目的のソフトウェア

ソフトウェアを市場で販売する場合には、複写可能な完成品である製品マスターを制作し、これを複写したものを販売します。製品マスターの制作過程には、研究開発に該当する部分と製品の製造に相当する部分があるため、研究開発の終了時点をどこで区切るかが問題になります。

研究開発の終了時点は、製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち「最初に製品化された製品マスター」が完成した時点です。この時点までに発生した費用は研究開発費として処理します。企業会計基準委員会 移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

市場販売目的のソフトウェアである製品マスターの制作費は、研究開発費に該当する部分を除き、資産として計上しなければなりません。ただし、製品マスターの機能維持に要した費用は、資産として計上してはなりません。製品マスターは、それ自体が販売の対象物ではなく、機械装置等と同様に利用して製品を作成するものであり、法的権利(著作権)を有すること等から、無形固定資産として計上します。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

研究開発の終了後に発生する製品マスターの機能の改良・強化を行う制作活動のための費用は、著しい改良と認められない限り、資産に計上しなければなりません。他方、バグ取り等の機能維持に要した費用は、機能の改良・強化には該当せず、発生時に費用として処理します。

自社利用のソフトウェア

自社利用のソフトウェアについては、その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められるかどうかを判断する必要があります。将来の収益獲得又は費用削減が確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実であると認められない場合又は確実であるかどうか不明の場合には費用として処理します。企業会計基準委員会 移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

資産計上される典型的な例としては、ソフトウェアを用いて外部へ業務処理等のサービスを提供する契約が締結されている場合や、完成品を購入した場合が挙げられます。これらは将来の収益獲得又は費用削減が確実と考えられるため、取得に要した費用を資産として計上します。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

市場販売目的のソフトウェア及び自社利用のソフトウェアを資産として計上する場合には、いずれも無形固定資産の区分に計上します。なお、制作途中のソフトウェアの制作費については、無形固定資産の仮勘定として計上します。

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資産計上したソフトウェアの減価償却

無形固定資産として計上したソフトウェアの取得原価は、当該ソフトウェアの性格に応じて、見込販売数量に基づく償却方法その他合理的な方法により償却しなければなりません。ただし、毎期の償却額は、残存有効期間に基づく均等配分額を下回ってはなりません。企業会計審議会 研究開発費等に係る会計基準

市場販売目的のソフトウェア

市場販売目的のソフトウェアは、見込販売数量に基づく方法のほか、見込販売収益に基づく償却方法も合理的な方法として認められます。毎期の減価償却額は、見込販売数量(又は見込販売収益)に基づく償却額と、残存有効期間に基づく均等配分額とを比較し、いずれか大きい額を計上します。

見込販売数量に基づく償却額 = 未償却残高 × 当期の実績販売数量 ÷ 期首の見込販売数量
残存有効期間に基づく均等配分額 = 未償却残高 ÷ 残存有効期間

この場合、当初における販売可能な有効期間の見積りは、原則として3年以内の年数とし、3年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要です。また、いずれの減価償却方法による場合にも、毎期見込販売数量等の見直しを行い、減少が見込まれる販売数量等に相当する取得原価は、費用又は損失として処理しなければなりません。企業会計基準委員会 移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

自社利用のソフトウェア

自社利用のソフトウェアについては、一般的には、定額法による償却が合理的であると考えられます。償却の基礎となる耐用年数は、当該ソフトウェアの利用可能期間によるべきですが、原則として5年以内の年数とし、5年を超える年数とするときには、合理的な根拠に基づくことが必要です。企業会計基準委員会 移管指針第8号 研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針

企業結合で受け入れたソフトウェアの取扱い

企業会計基準第23号は、研究開発費等に係る会計基準の「六 適用範囲」を改正し、企業結合により被取得企業から受け入れた資産(受注制作、市場販売目的及び自社利用のソフトウェアを除く。)については本基準を適用しないことを定めました。これにより、企業結合で受け入れたソフトウェアは、原則として研究開発費等会計基準の定めに従って会計処理することになります。企業会計基準委員会 企業会計基準第23号 「研究開発費等に係る会計基準」の一部改正

この改正は、平成22年4月1日以後実施される企業結合及び事業分離等から適用されます。企業結合の取得対価の一部を研究開発費等に配分して費用処理する会計処理が廃止されたことを踏まえた措置です。企業会計基準委員会 企業会計基準第23号 「研究開発費等に係る会計基準」の一部改正

まとめ

研究開発費はすべて発生時に費用として処理し、その総額は財務諸表に注記します。ソフトウェア制作費は、受注制作・市場販売目的・自社利用の三つの区分により会計処理が分かれ、要件を満たす場合に無形固定資産として資産計上します。市場販売目的のソフトウェアは見込販売数量等に基づき償却しつつ均等配分額を下限とし、自社利用のソフトウェアは一般に定額法で償却します。特に上場準備企業では、開発段階のどこまでが研究開発費で、どこからが資産計上かの判断が財務諸表に大きく影響します。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

研究開発費は資産計上できますか。

研究開発費は、将来の収益を獲得できるか否かが不明であり、その獲得が確実とはいえないことから、すべて発生時に費用として処理します。一定の要件による資産計上を強制する処理は採用されていません。

市場販売目的のソフトウェアで、どこまでが研究開発費になりますか。

製品番号を付すこと等により販売の意思が明らかにされた製品マスター、すなわち最初に製品化された製品マスターが完成する時点までの制作費が研究開発費に該当します。それ以降の製品マスターの制作費は、機能維持費用を除き無形固定資産として計上します。

自社利用ソフトウェアを資産計上する基準は何ですか。

その利用により将来の収益獲得又は費用削減が確実であると認められるかどうかで判断します。確実と認められる場合は無形固定資産に計上し、確実でない場合又は不明の場合には費用として処理します。

資産計上したソフトウェアの償却期間に上限はありますか。

市場販売目的のソフトウェアの見込有効期間は原則として3年以内、自社利用のソフトウェアの耐用年数は原則として5年以内とされ、これを超える年数とする場合には合理的な根拠が必要です。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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