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製品保証の会計処理|収益認識基準の保証型・サービス型の判定と仕訳

2026-08-27
目次

製品に付ける保証は、収益認識に関する会計基準のもとで二つの道に分かれます。無償修理の約束にとどまるものは従来どおり製品保証引当金として処理し、それを超えるサービスを提供するものは履行義務として取引価格を配分します。同じ「保証」という言葉でも、売上高の計上額と計上時期がまったく変わる論点です。

結論を先に示します。約束した財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証のみである場合、その保証は企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第34項)。これに対し、保証又はその一部が、合意された仕様に従っているという保証に加えて顧客にサービスを提供する保証(保証サービス)を含む場合には、保証サービスは履行義務であり、取引価格を財又はサービス及び当該保証サービスに配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第35項)。

製品保証を分ける二つの型

実務では前者を「保証型(品質保証型)」、後者を「サービス型(保証サービス)」と呼び分けることが一般的です。基準上の呼称ではありませんが、判定の議論を整理するうえで有用な区分です。両者の違いを整理すると次のとおりです。

保証型(品質保証) サービス型(保証サービス)
財又はサービスが合意された仕様に従っていることの保証にとどまる 合意された仕様に従っているという保証に加えて、顧客にサービスを提供する
企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理する 独立した履行義務として識別し、取引価格を配分する
販売時に取引価格の全額を製品の売上高として認識する 配分額をいったん契約負債とし、保証期間にわたり収益を認識する
見積費用は製品保証引当金繰入として売上原価又は販売費に計上する 保証の履行に要した費用は発生時の費用として計上する

保証型は、収益認識に関する会計基準の適用後も引当金の枠組みが維持されている点が実務上の要点です。企業会計原則注解(注18)は、将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合に、当期の負担に属する金額を引当金に繰り入れると定めており、製品保証引当金はその代表例として明記されています(企業会計原則注解 注18)。

保証型とサービス型の判定手順

判定は、顧客が保証を単独で購入できるかどうかを最初に確かめ、そこに該当しない場合に三つの要因を評価する、という順序で進めると整理しやすくなります。

顧客が保証を単独で購入できるか

顧客が財又はサービスに対する保証を単独で購入するオプションを有している場合、たとえば保証が個別に価格設定される又は交渉される場合には、当該保証は別個のサービスです。この場合は履行義務として識別し、取引価格の一部を当該履行義務に配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第38項)。この定めは第34項から第37項の定めにかかわらず適用されるため、判定の入口として先に確認する必要があります。

顧客が価格を選べる形になっているかどうかが分かれ目です。カタログやシステム上で保証の有無や年数を顧客が選択でき、それに応じて請求額が変わるのであれば、単独購入のオプションが存在すると評価される可能性が高くなります。

三つの判定要因

単独購入のオプションがない場合には、保証が合意された仕様に従っているという保証に加えて保証サービスを含むかどうかを、次の要因を考慮して判断します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第37項)。

保証が法律で要求されているか 法律で要求されている場合、当該法律は通常、欠陥のある財又はサービスを購入するリスクから顧客を保護するために存在するため、その保証は履行義務でないことを示す
保証の対象となる期間の長さ 期間が長いほど、仕様への適合の保証に加えて保証サービスを顧客に提供している場合が多く、その場合の保証サービスは履行義務となる
企業が履行を
約束している作業の内容
仕様への適合を保証するために、欠陥のある商品又は製品に係る返品の配送サービス等、特定の作業を行う必要がある場合、その作業は通常、履行義務を生じさせない

実務でよく判断に迷うのが期間の長さです。基準は具体的な年数の線引きを置いていないため、自社の製品の耐用年数や業界の一般的な保証期間と比べて明らかに長い保証を無償で付けている場合には、サービス型に該当しないかを検討することになります。逆に、法令上の契約不適合責任に対応する範囲にとどまる短期の保証であれば、保証型と整理されるのが通常です。

なお、保証が合意された仕様に従っているという保証と保証サービスの両方を含む場合で、それぞれを区分して合理的に処理できないときは、両方を一括して単一の履行義務として処理し、取引価格の一部を当該履行義務に配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第36項)。区分できないことを理由に全額を引当金処理してよいわけではない点に注意が必要です。

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保証型の会計処理と仕訳

保証型と判定した場合、製品の販売による収益は保証を切り離さずに認識し、将来発生が見込まれる無償修理費用を製品保証引当金として計上します。引当金の計上は企業会計原則注解(注18)の四つの要件、すなわち将来の特定の費用又は損失であること、発生が当期以前の事象に起因すること、発生の可能性が高いこと、金額を合理的に見積ることができることを満たす場合に行います。

次の設例で仕訳を確認します。単位は千円です。当社は産業用機器1台を10,000千円で販売し、当期中に引き渡して検収が完了しました。保証は法令上の契約不適合責任に対応する1年間の無償修理のみで、顧客が単独で購入できるオプションはありません。過去の実績から、売上高の2%に相当する200千円の修理費用が保証期間中に発生すると合理的に見積られています。保証型であるため、取引価格の全額を製品の売上高として認識します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第34項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 10,000 売上高 10,000
製品保証引当金繰入 200 製品保証引当金 200

翌期に実際の修理費用が発生した場合は、引当金を取り崩して充当し、見積りを超えた部分はその期の費用として処理します。引当額と実績の乖離が継続的に大きい場合には、見積りの前提そのものを見直す必要があります。上場準備の局面では、この見積りの合理性を裏づける不具合発生率のデータが整備されているかが、監査上の論点になりやすい部分です。

サービス型の会計処理と仕訳

サービス型と判定した場合、保証サービスは履行義務であるため、取引価格を製品と保証サービスに配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第35項)。配分は、それぞれの財又はサービスの独立販売価格の比率に基づいて行います(収益認識に関する会計基準 第66項)。独立販売価格とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいいます(収益認識に関する会計基準 第9項)。

保証サービスを単独で販売した実績がなく独立販売価格を直接観察できない場合には、市場の状況や企業固有の要因等を考慮し、観察可能な入力数値を最大限利用して見積ります(収益認識に関する会計基準 第69項)。見積方法には、調整された市場評価アプローチ、予想コストに利益相当額を加算するアプローチ、残余アプローチがあります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第31項)。保証サービスでは、想定される修理・点検コストに利益相当額を加算する方法が採りやすい場面が多くなります。

配分した額は、顧客に保証サービスを移転する前に対価を受け取ることになるため、契約負債として貸借対照表に計上します(収益認識に関する会計基準 第78項)。契約負債とは、財又はサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいいます(収益認識に関する会計基準 第11項)。保証サービスは通常、保証期間にわたって顧客が便益を享受するため、一定の期間にわたり充足される履行義務に該当し、進捗度に応じて収益を認識することになります(収益認識に関する会計基準 第38項(1)、第41項)。

関連コラム契約資産と契約負債の違い|売掛金との区分と表示・仕訳

次の設例で仕訳を確認します。単位は千円です。当社は機器本体と2年間の保守点検付き保証をセットで販売し、対価は11,400千円です。独立販売価格は、機器本体が10,000千円、保証サービスが2,000千円で、合計12,000千円です。保証サービスは仕様への適合の保証を超える定期点検と消耗部品の交換を含むため、履行義務として識別しました。取引価格11,400千円を独立販売価格の比率で配分すると、機器本体が9,500千円、保証サービスが1,900千円となります。保証サービスの収益は保証期間2年にわたり均等に認識するものとし、次の仕訳は引渡時と保証期間1年目の期末を示しています。

機器本体への配分額 = 11,400 × 10,000 ÷ 12,000 = 9,500
保証サービスへの配分額 = 11,400 × 2,000 ÷ 12,000 = 1,900
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
売掛金 11,400 売上高 9,500
契約負債 1,900
契約負債 950 売上高 950

保証型と比べると、引渡時に計上する売上高が10,000千円から9,500千円へ減り、差額が契約負債として繰り延べられます。売上高の総額は変わらなくても計上時期が動くため、期ずれの影響は決算数値に直接効いてきます。あわせて、保証の履行に要した実際のコストは発生時の費用として処理し、保証型のように引当金を計上することはありません。

関連コラム自社ポイントの会計処理|契約負債への配分と仕訳

延長保証を別売りする場合の取扱い

近年増えているのが、製品の販売とは別に延長保証プランを有償で販売するケースです。顧客が保証を単独で購入するオプションを有している場合、当該保証は別個のサービスであり、履行義務として識別して取引価格の一部を配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第38項)。この場合、履行義務の識別は、顧客が単独で便益を享受できること、及び契約に含まれる他の約束と区分して識別できることという二つの要件で判断します(収益認識に関する会計基準 第32項、第34項)。

延長保証だけを別の取引として販売した場合は、その対価がそのまま当該履行義務への配分額になります。次の設例で仕訳を確認します。単位は千円です。当社は、メーカー保証の終了後に適用される2年間の延長保証プランを600千円で販売し、代金を現金で受け取りました。保証期間の開始前に対価を受け取っているため、受領時は全額を契約負債に計上し、保証期間にわたり均等に収益を認識します。次の仕訳は代金受領時と延長保証期間1年目の期末を示しています。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
現金預金 600 契約負債 600
契約負債 300 売上高 300

実務で見落とされやすいのが、延長保証を販売した時点で全額を売上高に計上してしまうパターンです。保証期間の到来前は履行義務が充足されていないため、受け取った対価は契約負債にとどまります。延長保証の販売が伸びるほど繰延べの金額が大きくなるため、販売管理システム側で保証期間と残存月数を管理できる状態にしておくことが前提になります。

表示と注記の実務

貸借対照表上、保証型で計上する製品保証引当金は引当金として、サービス型で計上する契約負債は顧客との契約から生じた負債として、それぞれ性質が異なります。契約負債は適切な科目をもって貸借対照表に表示し、他の負債と区分して表示しない場合には残高を注記します(収益認識に関する会計基準 第79項)。前受金や預り金と一括りにせず、収益認識の対象であることが分かる区分を維持することが実務上の要点です。

注記についても手当てがあります。収益を理解するための基礎となる情報のうち履行義務に関する情報を注記するにあたり、財又はサービスに対する保証及び関連する義務が契約に含まれる場合には、その内容を注記します(収益認識に関する会計基準 第80-14項(3))。保証をサービス型として履行義務に含めた場合はもちろん、保証の取扱いが収益の金額及び時期の理解に影響する場合には、注記の要否を検討することになります。

関連コラム収益認識に関する注記|3区分の記載事項と省略できる場合

適用時期と改正の経緯

収益認識に関する会計基準は、2018年3月30日に企業会計基準第29号として公表され、2020年3月31日に改正されました。2020年に改正した会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(収益認識に関する会計基準 第81項)。したがって、製品保証の取扱いも、これから始まる論点ではなく、すでに各社の会計方針として整理されているべき論点です。

2020年改正会計基準 2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用(第81項)
早期適用 2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの適用が認められていた(第82項)
2018年会計基準 2021年3月31日以前に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができた(第83-2項)
2024年改正会計基準 適用時期は2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とされている(第83-3項)

その後、2024年にリース会計基準(企業会計基準第34号)が公表されたことに伴う改正が行われています。この2024年改正の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とされています(収益認識に関する会計基準 第83-3項)。保証の定めに係る取扱いを変更する改正ではないため、判定と会計処理の考え方は現行のまま維持されます。

まとめ

製品保証の会計処理は、顧客が保証を単独で購入できるか、法律で要求される保証か、期間の長さと約束した作業の内容はどうか、という順で判定します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第37項、第38項)。仕様への適合の保証のみであれば企業会計原則注解(注18)の引当金として処理し、保証サービスを含むのであれば履行義務として取引価格を配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第34項、第35項)。

本記事の設例では、同じ製品でも保証型なら引渡時の売上高が10,000千円、サービス型なら9,500千円となり、1,900千円が契約負債として2年にわたり繰り延べられました。判定は契約書の文言だけで決まるものではなく、実際に提供している役務の内容と価格設定の実態から評価します。延長保証や有償の保守プランを新たに販売し始めたタイミングは、従来どおり引当金で処理してよいかを見直す好機です。判定の根拠と独立販売価格の見積方法を文書化しておくことが、監査対応と会計方針の一貫性の両面で効いてきます。

保証の判定は、契約書の文言と実際の提供内容、価格設定の実態を突き合わせて行うため、個別性の高い論点です。延長保証や有償保守プランを新たに始めた場面、上場準備で過年度分の整理が必要な場面など、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

無償の修理保証を付けているだけの場合、処理は従来と変わりますか。

基本的には変わりません。保証が、財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証のみである場合には、企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第34項)。製品保証引当金の枠組みがそのまま維持されるため、売上高の計上額と計上時期にも影響しません。

保証期間が長ければ必ずサービス型になりますか。

必ずしもそうではありません。保証の対象となる期間の長さは判定要因の一つであり、期間が長いほど保証サービスを提供している場合が多いとされていますが、法律で要求されているかどうかや、企業が履行を約束している作業の内容とあわせて判断します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第37項)。基準は具体的な年数の基準値を示していないため、製品の性質と自社の提供実態から評価することになります。

保証型とサービス型を区分して処理できない場合はどうしますか。

両方を一括して単一の履行義務として処理し、取引価格の一部を当該履行義務に配分します(収益認識に関する会計基準の適用指針 第36項)。区分できないことを理由に、全額を引当金処理にまとめることはできません。

保証サービスの独立販売価格が分からない場合はどう見積りますか。

市場の状況、企業固有の要因、顧客に関する情報等を考慮し、観察可能な入力数値を最大限利用して見積ります(収益認識に関する会計基準 第69項)。具体的な方法としては、調整された市場評価アプローチ、予想コストに利益相当額を加算するアプローチ、残余アプローチがあります(収益認識に関する会計基準の適用指針 第31項)。保証サービスでは、想定される修理・点検コストに利益相当額を加算する方法が用いられることが多くなります。

製品保証引当金と契約負債は貸借対照表でどのように区分しますか。

製品保証引当金は企業会計原則注解(注18)に基づく引当金として、契約負債は顧客との契約から生じた負債として区分します。契約負債は適切な科目をもって貸借対照表に表示し、他の負債と区分して表示しない場合には、その残高を注記します(収益認識に関する会計基準 第79項)。

事務所概要
社名
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住所
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対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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