四半期報告制度が廃止され、上場会社等の期中開示は半期報告書に含まれる中間財務諸表へ移行しました。中間決算の実務で最も判断に迷いやすい論点のひとつが、法人税等をどのように見積り、計上するかという税金費用の計算です。年度決算と同じ手順を6か月分に置き換えるのか、それとも年間の見通しから逆算するのかで、決算作業の量も計上額も変わります。
本記事では、中間財務諸表における税効果会計の現在の枠組みを整理したうえで、原則法と年度見積実効税率法の使い分け、見積実効税率の算定手順、中間期における繰延税金資産の回収可能性の判断、表示と注記までを、根拠となる条項番号とともに実務手順として解説します。
中間財務諸表と税効果会計の現在の枠組み
税金費用の計算方法を選ぶ前に、自社の中間財務諸表がどの会計基準に基づいて作成されるものなのかを確認しておく必要があります。四半期報告制度の廃止から現在に至るまでに、根拠となる会計基準が二段階で切り替わっているためです。
四半期報告制度の廃止と半期報告書への一本化
2022年12月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、上場企業について金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)を廃止し、取引所規則に基づく四半期決算短信に一本化すること、および開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出することが示されました。これを受けて2023年11月に「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)が成立し、金融商品取引法が改正されています。
この改正を踏まえて2024年3月に公表されたのが、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」です。同基準は、金融商品取引法第24条の5第1項の表の第1号に掲げる上場会社等が半期報告書制度に基づき作成する中間財務諸表に適用され(中間財務諸表に関する会計基準 第4項)、改正後の金融商品取引法により半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用されています(同 第37項)。ここでいう中間会計期間とは、年度が6か月を超える場合に、当該年度が開始した日以後6か月の期間をいいます(同 第5項(1))。
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期中財務諸表に関する会計基準への統合
その後、中間決算と四半期決算を同じ会計基準等で処理できるようにするため、企業会計基準第33号等と四半期会計基準等を統合した企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」が2025年10月16日に公表され、2026年1月9日に改正されています。本基準は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間から適用されています(期中財務諸表に関する会計基準 第34項)。3月決算会社であれば、2026年4月1日に開始した事業年度が適用初年度に当たります。
この適用により、企業会計基準第12号「四半期財務諸表に関する会計基準」、企業会計基準適用指針第14号、企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第32号は、いずれも適用を終了します(期中財務諸表に関する会計基準 第36項)。つまり、適用初年度を迎えた会社では、半期報告書に含める中間財務諸表の会計処理と開示は企業会計基準第37号とその適用指針である企業会計基準適用指針第34号に基づいて行うことになります。事業年度の開始日が2026年4月1日より前の会社は、その事業年度については引き続き企業会計基準第33号等によることになるため、自社の決算期に応じた確認が必要です。
第一種中間財務諸表と第二種中間財務諸表の区分
実務で混同しやすいのが、「中間財務諸表」という言葉が二つの異なるものを指している点です。上場会社等が半期報告書で開示するものは、連結財務諸表規則および財務諸表等規則に規定する第一種中間連結財務諸表および第一種中間財務諸表に当たります(期中財務諸表に関する会計基準 第13項)。これらは期中財務諸表として企業会計基準第37号の適用対象です。
一方、特定事業会社などが従来から作成してきた中間財務諸表は第二種中間連結財務諸表および第二種中間財務諸表と呼ばれ、企業会計基準第37号の適用対象からは除かれ、中間連結財務諸表作成基準などが引き続き適用されます(期中財務諸表に関する会計基準 第3項、第4項(6)(7))。税効果会計についても、企業会計基準適用指針第29号「中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針」は第二種中間連結財務諸表および第二種中間財務諸表を対象としています(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第1項、第2項)。
もっとも、後述するとおり、第一種中間財務諸表等における見積実効税率の算定方法は適用指針第29号の定めに準じて処理することとされているため(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第20項)、実質的な計算手順は共通しています。適用指針第29号には、2026年7月7日に公表された企業会計基準等の改正を反映した修正が加えられており、用語は企業会計基準第27号「法人税等に関する会計基準」および税効果会計に係る会計基準の適用指針の定義に従うこととされています(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第4項)。
中間会計期間における法人税等の計算方法
期中会計期間の法人税等は、原則として年度決算と同様の方法により計算し、繰延税金資産および繰延税金負債は回収可能性等を検討したうえで期中貸借対照表に計上します(期中財務諸表に関する会計基準 第16項本文)。ただし、期中会計期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前期中純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することもできます(同 第16項ただし書き)。この二つが、いわゆる原則法と年度見積実効税率法です。
原則法(年度決算と同様の方法)
原則法は、中間会計期間を一事業年度とみなして、年度決算と同様の方法により税金費用を計算する方法です(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第5項)。具体的には、法人税等の額を年度決算と同様の方法で計算したうえで、そこから生じた将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金等について繰延税金資産を、将来加算一時差異について繰延税金負債を計上します。この場合、税効果会計に係る会計基準の適用指針の定めにおける「期末」は「中間決算日」に読み替えて適用します(同 第6項)。
実務上の負担を考慮して、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、納付税額の算出にあたり加味する加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定するといった簡便的な方法によることも認められています(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第16項)。
以下は原則法による中間決算の仕訳例です。3月決算のA社が、X1年4月1日からX1年9月30日までの中間会計期間について税金費用を計算するものとします。単位は千円、法定実効税率は30%、税引前中間純利益は60,000千円、賞与引当金繰入超過額(将来減算一時差異)は10,000千円、交際費等(一時差異等に該当しない項目)は2,000千円、期首の繰延税金資産および繰延税金負債はないものとします。中間会計期間に係る課税所得は72,000千円、法人税等は21,600千円、中間決算日の繰延税金資産は3,000千円となります(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第6項、税効果会計に係る会計基準の適用指針 第8項(1)、第9項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等 | 21,600 | 未払法人税等 | 21,600 |
| 繰延税金資産 | 3,000 | 法人税等調整額 | 3,000 |
年度見積実効税率法(見積実効税率を用いる方法)
年度見積実効税率法は、期首からの累計期間に係る税金費用について、年度決算と同様の方法に代えて、同期間を含む年度の税引前当期純利益に対する税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前期中純利益に当該見積実効税率を乗じて計算する方法です(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第19項)。適用指針第29号では簡便法と呼ばれています(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第5項)。
この方法では、税金費用が法人税等の額と法人税等調整額に区分されることなく一括して計算されます。そのため中間会計期間における一時差異等の変動は税引前中間純利益に対する税金費用の比率に影響を与えず、見積実効税率の算定にあたっては一時差異等に該当しない差異のみを考慮すれば足りることになります(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第37項)。中間決算日時点で一時差異のスケジューリングを行う必要がないため、決算日程が短い会社ほど採用しやすい方法です。
ただし、前年度末に計上された繰延税金資産および繰延税金負債については、繰延税金資産の回収見込額を各期中決算日時点で見直したうえで期中貸借対照表に計上する必要があります(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第19項)。この点は年度見積実効税率法を採用しても省略できません。
先ほどのA社が年度見積実効税率法を採用する場合の仕訳例です。前提は同じく単位千円、法定実効税率30%、税引前中間純利益は60,000千円とし、当中間会計期間を含む事業年度の予想年間税引前当期純利益は100,000千円、交際費等の年間予想額は4,000千円と見込んでいるものとします。見積実効税率は31.2%、税金費用は18,720千円となり、その相手勘定は流動負債に一括して計上されます(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第11項、第20項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等 | 18,720 | 未払法人税等 | 18,720 |
二つの方法の選択と連結会社ごとの適用
原則法と年度見積実効税率法は、いずれかに統一して適用することが求められているわけではありません。期中連結財務諸表における税金費用は、連結会社ごとに、年度決算と同様の方法、年度見積実効税率法、または重要性が乏しい連結会社に認められる方法のいずれかにより計算します(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第23項)。適用指針第29号でも、連結会社ごとに原則法または簡便法のいずれかの方法により計算することとされています(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第17項(1))。なお、連結手続上生じる一時差異に係る法人税等調整額は、期中会計期間を含む年度の税率に基づいて計算します(同 第17項(2))。
連結財務諸表における重要性が乏しい連結会社については、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転または悪化その他の経営環境の著しい変化が発生しておらず、かつ一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がない場合に限り、税引前期中純利益に前年度の税効果会計適用後の法人税等の負担率を乗じて計算する方法によることができます(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第22項)。
二つの方法の性格の違いは次のとおりです。
| 原則法 | 年度見積実効税率法 |
|---|---|
| 期中会計期間を一事業年度とみなし、年度決算と同様の方法により計算する | 税引前期中純利益に、年度の見積実効税率を乗じて計算する |
| 法人税等の額と法人税等調整額を区分して計算し、それぞれ表示する | 両者を区分せずに一括して計算するため、区分表示はできない |
| 中間決算日時点での一時差異のスケジューリングが必要になる | 年間の予想値に基づくため、中間決算日の一時差異把握は要しない |
| 実績に基づく計算のため、期間損益への対応関係が明確になる | 決算負担は軽い一方、年間業績見通しの精度に結果が左右される |
実務では、年間の業績見通しが安定している会社は年度見積実効税率法、期中に一時差異が大きく動く会社や連結子会社の税務ポジションが複雑な会社は原則法を選ぶ傾向があります。いずれの方法も会計方針として継続適用が前提となるため、初回の選択時に自社の見積能力と決算日程を踏まえて判断しておくことが重要です。
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年度見積実効税率の算定手順
年度見積実効税率法を採用する場合、見積実効税率の算定方法、税率が変更された場合の算定方法、および見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合の取扱いは、適用指針第29号第12項から第16項に準じて処理します(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第20項)。
見積実効税率の算式
見積実効税率は、原則として次の算式により計算します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第12項)。
分子となる予想年間税金費用は、予想年間税引前当期純利益の額と予想年間課税所得の額との差異のうち一時差異等に該当しない項目に係る税金費用を含むもので、次の算式により計算します。ここでいう法定実効税率は、中間会計期間を含む事業年度における法人税等の額を計算する際に適用される税率に基づくものをいいます(同 第12項(1))。
先ほどのA社の数値を当てはめると、次のように計算されます。
一時差異等に該当しない項目と税額控除の織り込み
見積実効税率の算定にあたっては、必要に応じて税額控除を考慮します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第12項(1))。第一種中間財務諸表等を作成する場合も、見積実効税率の算定において税額控除を考慮することに留意する必要があるとされ、あわせて、財務諸表利用者の判断を誤らせない限り、一時差異等に該当しない項目や税額控除等の算定にあたって重要な項目に限定する方法によることも認められています(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第20項)。
また、期首において繰延税金資産を計上していなかった重要な一時差異等について、当該期中会計期間において将来の税金負担額を軽減する効果を有することとなったと判断された場合には、見積実効税率の算定にあたり、税金の回収が見込まれる金額を予想年間税金費用の額から控除します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第12項(2))。前事業年度末に回収可能性がないとして繰延税金資産を計上していなかった税務上の繰越欠損金が、当年度に充当されることが確実になった場合などが典型例です。
なお、前事業年度の期末において税務上の繰越欠損金を有する場合、当該繰越欠損金は中間会計期間に係る課税所得(税務上の繰越欠損金控除前)から控除して税金費用を計算します(同 第10項)。上期の課税所得から優先的に控除する考え方が採られています(同 第35項)。
税率が変更された場合の取扱い
期中会計期間において繰延税金資産および繰延税金負債の計算に用いる税法が改正された場合、予想年間税金費用については、前述の算式に代えて、予想年間納付税額と予想年間法人税等調整額との合計額を用いて計算します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第13項)。
ただし、期首の繰延税金資産および繰延税金負債の大部分が当該事業年度の期末における繰延税金資産および繰延税金負債を構成することが見込まれる場合には、通常どおり見積実効税率を用いて計算した税金費用を計上したうえで、税法が改正されたことによる期首の繰延税金資産および繰延税金負債の修正差額を計算し、その額を加減する処理も認められています(同 第13項ただし書き)。
著しく合理性を欠く結果となる場合
見積実効税率を用いて中間会計期間に係る税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合には、法定実効税率を用いて税金費用を計算します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第14項)。該当する場合として、次の三つが示されています。
| 予想年間税引前当期純利益が ゼロまたは損失となる場合 |
算式の分母がゼロまたはマイナスとなり、見積実効税率を算定できません |
|---|---|
| 予想年間税金費用が ゼロまたはマイナスとなる場合 |
算式の分子がゼロまたはマイナスとなり、合理的な税率が得られません |
| 上期と下期の損益が 相殺される場合 |
一時差異等に該当しない項目に係る税金費用の影響が、予想年間税引前当期純利益に対して著しく重要となります |
法定実効税率を用いる場合、中間損益計算書上が税引前中間純利益のときは、税引前中間純利益に法定実効税率を乗じて税金費用を計算します。ただし、一時差異等に該当しない項目が重要な場合は、当該項目の額を税引前中間純利益に加減したうえで法定実効税率を乗じます(同 第15項(1))。税引前中間純損失のときも同様に計算しますが、これに対応する中間貸借対照表上の資産の額については、期首における繰延税金資産の額と合算して回収可能性を判断し、回収が見込まれる額を計上します(同 第15項(2))。
さらに、これらの定めを適用するにあたって期中に税法が改正された場合には、当該中間会計期間を含む事業年度の期末に存在すると見込まれる一時差異等の額を見積り、税法の改正による繰延税金資産および繰延税金負債の修正差額を上期と下期に合理的な方法により配分し、上期に配分した修正差額を中間会計期間に係る税金費用に加減します(同 第16項)。
中間期における繰延税金資産の回収可能性
年度見積実効税率法を採用しても、繰延税金資産の回収可能性の判断そのものが免除されるわけではありません。繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針は、期中財務諸表に関する会計基準等および適用指針第29号に定められた期中・中間の取扱いにかかわらず適用されるとされています(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第2項(1-2)、第2項(2-2))。
企業の分類の見直しの要否
繰延税金資産の回収可能性は、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得、タックス・プランニングに基づく一時差異等加減算前課税所得、および将来加算一時差異の三つに基づいて判断します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第6項)。そのうえで、企業を要件に応じて分類し、当該分類に応じて回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定します(同 第15項)。分類ごとの取扱いは次のとおりです。
| (分類1) | 原則として、繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとします(第18項) |
|---|---|
| (分類2) | スケジューリングの結果として見積る繰延税金資産は回収可能性があるものとします(第20項) |
| (分類3) | 将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)以内の見積額に基づく範囲で回収可能性があるものとします(第23項) |
| (分類4) | 翌期の一時差異等加減算前課税所得の見積額に基づく範囲で回収可能性があるものとします(第27項) |
| (分類5) | 原則として、繰延税金資産の回収可能性はないものとします(第31項) |
分類の要件をいずれも満たさない場合には、過去の課税所得または税務上の欠損金の推移、当期の見込み、将来の一時差異等加減算前課税所得の見込み等を総合的に勘案し、各分類の要件からの乖離度合いが最も小さいと判断される分類に分類します(同 第16項)。また、(分類4)の要件を満たす企業でも、将来において5年超にわたり一時差異等加減算前課税所得が安定的に生じることを合理的な根拠をもって説明できるときは(分類2)に該当するものとして、おおむね3年から5年程度は生じることを説明できるときは(分類3)に該当するものとして取り扱います(同 第28項、第29項)。
中間決算で分類の見直しが必要になるのは、業績が計画から大きく乖離した場合や、重要な税務上の欠損金が生じた場合です。繰延税金資産から控除すべき金額は毎期見直すこととされており、将来の税金負担額を軽減する効果を有さなくなったと判断された場合には、計上していた繰延税金資産のうち回収可能性がない金額を取り崩します(同 第8項)。
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前年度末の業績予測を利用できる場合
期中決算のたびに業績予測とタックス・プランニングを一から作り直すのは現実的ではありません。そこで、重要な企業結合や事業分離、業績の著しい好転または悪化その他の経営環境の著しい変化が生じておらず、かつ一時差異等の発生状況について前年度末から大幅な変動がないと認められる場合には、繰延税金資産の回収可能性の判断にあたり、前年度末の検討において使用した将来の業績予測やタックス・プランニングをそのまま利用することができます(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第17項)。
反対に、経営環境に著しい変化が生じ、または一時差異等の発生状況に前年度末から大幅な変動があると認められる場合には、財務諸表利用者の判断を誤らせない範囲において、前年度末に使用した業績予測やタックス・プランニングに当該変化または変動による影響を加味したものを使用します(同 第18項)。中間決算での判断は、この二つのいずれに当たるかを整理することから始めるのが実務的です。
期首残高の見直しと取崩しの会計処理
年度見積実効税率法を採用する場合であっても、期首における繰延税金資産および繰延税金負債については、中間決算日において繰延税金資産の回収可能性を見直し、将来減算一時差異および税務上の繰越欠損金等に係る繰延税金資産の全部または一部が将来の税金負担額を軽減する効果を有さなくなったと判断された場合には、計上していた繰延税金資産のうち回収可能性がない金額を取り崩します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第11項)。
次はA社の期首の繰延税金資産8,000千円について、中間決算日に回収可能性を見直した結果、2,500千円は回収が見込まれないと判断した場合の仕訳例です。単位は千円で、見直しにより生じた差額は原則として見直しを行った年度の法人税等調整額に計上します(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第8項、第10項)。
| 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
|---|---|---|---|
| 法人税等調整額 | 2,500 | 繰延税金資産 | 2,500 |
表示と注記の実務
計算方法の選択は、中間損益計算書と中間貸借対照表の表示、そして注記にも影響します。ここを見落とすと、計算は正しくても開示で指摘を受けることになります。
年度見積実効税率法による場合の表示
年度見積実効税率法では、法人税等の額と法人税等調整額が併せて計算されるため、両者を区分して表示することはできません(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第45項)。この方法による税金費用は、中間連結損益計算書または中間損益計算書において「法人税等」などの適切な科目をもって表示し、その旨を注記します(同 第20項)。
相手勘定については、中間連結貸借対照表または中間貸借対照表において負債に計上される場合は流動負債の区分に「未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示し、資産に計上される場合は投資その他の資産の区分に繰延税金資産などその内容を示す科目をもって表示します(同 第20項)。期中財務諸表に関する会計基準でも、見積実効税率を乗じて計算する場合の期中貸借対照表計上額は、未払法人税等その他適当な科目により流動負債として、または繰延税金資産その他適当な科目により投資その他の資産として表示することとされています(期中財務諸表に関する会計基準 第16項ただし書き)。
期中特有の会計処理に関する注記
期中財務諸表作成のための特有の会計処理は、原価差異の繰延処理および税金費用の計算とされています(期中財務諸表に関する会計基準 第14項)。そして、期中特有の会計処理を採用している場合には、その旨およびその内容を注記しなければなりません(同 第24項(6))。
この注記を記載する際には質的および金額的な重要性を考慮することとされ、具体的には、税金費用の計算における年度と異なる処理方法、すなわち年度見積実効税率法を採用している場合と、原価差異を繰延処理する方法を採用している場合が対象になります(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第38項)。年度見積実効税率法を選択した会社は、重要な会計方針の記載とあわせて、この注記の要否を必ず確認しておく必要があります。
なお、中間会計期間において租税特別措置法上の諸準備金等の積立てまたは取崩しを行わず、これらを積み立てたものまたは取り崩したものとみなして税金費用を計算している場合には、その旨を注記します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第21項)。
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実務で押さえておきたい判断ポイント
上期と下期で損益が相殺される会社の留意点
季節性が強く、上期と下期で損益が相殺される会社では、予想年間税引前当期純利益が上期または下期に計上される税引前純利益に比べて著しく小さくなり、一時差異等に該当しない項目に係る税金費用の影響が相対的に大きくなります。その結果、見積実効税率が100%を超えたり、0%に近くなったりすることが起こり得ます(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第39項(2))。
このような場合は、年度見積実効税率法をそのまま適用するのではなく、法定実効税率を用いて計算する取扱いに切り替える必要があります(同 第14項(3)、第15項)。年度予算を確定させた時点で見積実効税率を試算し、著しく合理性を欠く結果とならないかを事前に確認しておくことをおすすめします。
上場準備企業が中間開示に向けて整えるもの
上場準備企業の場合、上場後に半期報告書を提出することになるため、申請期の前から中間決算を実際に回してみることが有効です。実務で論点になりやすいのは、年間業績見通しの承認プロセス、税額控除や一時差異等に該当しない項目の年間見積り、そして繰延税金資産の回収可能性の判断に用いる業績予測の整備です。
とりわけ繰延税金資産の回収可能性の判断では、合理的な仮定に基づく業績予測によって将来の課税所得または税務上の欠損金を見積ることとされ、適切な権限を有する機関の承認を得た業績予測の前提となった数値を、経営環境等の外部要因に関する情報や企業が用いている内部情報と整合的に修正して見積る必要があります(繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針 第32項)。年度決算だけを前提とした予算統制では、中間決算のスケジュールに間に合わないことが少なくありません。
まとめ
中間財務諸表における税金費用は、期中会計期間を一事業年度とみなして年度決算と同様に計算する原則法と、税引前期中純利益に年度の見積実効税率を乗じる年度見積実効税率法のいずれかで計算します。上場会社等の中間財務諸表は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の最初の期中会計期間から企業会計基準第37号「期中財務諸表に関する会計基準」に基づいて作成されており、適用初年度を迎えた会社では企業会計基準第33号等および四半期会計基準等の適用が終了しています。もっとも、見積実効税率の算定方法は適用指針第29号第12項から第16項に準じるとされ、四半期実務との連続性は保たれています。
年度見積実効税率法を採用する場合でも、前年度末に計上した繰延税金資産の回収可能性の見直しは省略できず、経営環境に著しい変化があれば業績予測の修正が必要になります。加えて、見積実効税率が著しく合理性を欠く結果となる場合には法定実効税率へ切り替える判断が求められ、期中特有の会計処理としての注記も欠かせません。計算方法の選択、回収可能性の判断、開示の三つをセットで設計しておくことが、中間決算を安定して回すための近道です。
参考文献
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第37号 期中財務諸表に関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第34号 期中財務諸表に関する会計基準の適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準第33号 中間財務諸表に関する会計基準
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第29号 中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第26号 繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針
- 企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第28号 税効果会計に係る会計基準の適用指針
よくあるご質問
中間会計期間の法人税等は原則法と年度見積実効税率法のどちらで計算しますか。
原則として年度決算と同様の方法により計算しますが、期中会計期間を含む年度の税効果会計適用後の実効税率を合理的に見積り、税引前期中純利益に当該見積実効税率を乗じて計算することもできます(期中財務諸表に関する会計基準 第16項)。期中連結財務諸表では、連結会社ごとにいずれかの方法を選択適用できます(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第23項)。
年度見積実効税率はどのように算定しますか。
予想年間税金費用を予想年間税引前当期純利益で除して算定します。予想年間税金費用は、予想年間税引前当期純利益に一時差異等に該当しない項目を加減した金額に法定実効税率を乗じて計算し、必要に応じて税額控除を考慮します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第12項)。
見積実効税率が100%を超える場合はどうしますか。
見積実効税率を用いて税金費用を計算すると著しく合理性を欠く結果となる場合に当たるため、法定実効税率を用いて計算します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第14項)。上期と下期で損益が相殺され、一時差異等に該当しない項目の影響が著しく重要となる場合が典型例です(同 第14項(3))。
年度見積実効税率法を採用すると繰延税金資産の回収可能性の検討は不要になりますか。
不要にはなりません。期首に計上されている繰延税金資産および繰延税金負債については、中間決算日において回収可能性を見直し、回収可能性がない金額を取り崩します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第11項)。前年度末から経営環境に著しい変化がない場合には、前年度末の業績予測やタックス・プランニングを利用できます(期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第17項)。
年度見積実効税率法を採用した場合に必要な注記は何ですか。
税金費用の計算は期中特有の会計処理に当たるため、これを採用している旨およびその内容を注記します(期中財務諸表に関する会計基準 第14項、第24項(6)、期中財務諸表に関する会計基準の適用指針 第38項)。また、この方法による税金費用は「法人税等」などの適切な科目をもって表示し、その旨を注記します(中間財務諸表等における税効果会計に関する適用指針 第20項)。
税金費用の計算方法の選択は、会計方針として継続適用が求められる一方、会社の業績変動や組織再編によって適切な方法が変わることもあります。判断が分岐する論点が多く、個別性も高い領域ですので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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