グループ通算制度の会計処理は、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」に定められています。2020年3月27日に成立した改正法人税法により連結納税制度が見直され、グループ通算制度へ移行したことに対応するために公表された基準です。本記事では、通算税効果額の取扱いから繰延税金資産の回収可能性、表示・注記までを原典にもとづいて整理します。
企業会計基準委員会 実務対応報告第42号 グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
グループ通算制度の会計処理の全体像
実務対応報告第42号は、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的としています。適用範囲は、グループ通算制度を適用する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表と、連結納税制度から単体納税制度に移行する企業の財務諸表です。なお、本実務対応報告は通算税効果額の授受を行うことを前提としており、授受を行わない場合の会計処理及び開示は取り扱っていません。
グループ通算制度は、連結納税制度が企業グループ全体を1つの納税単位とするのに対し、法人格を有する各法人を納税単位として課税所得金額や法人税額の計算・申告を各法人がそれぞれ行う個別申告方式を基本としています。この相違点に起因する処理を除き、基準の開発にあたっては従来の連結納税制度に関する取扱いが踏襲されました。
主な用語の定義
本実務対応報告では、グループ通算制度に関する主要な用語を次のように定義しています。いずれも法人税法上の概念にもとづくものです。
| 通算会社 | グループ通算制度を適用する企業をいいます。 |
|---|---|
| 通算親会社 | 通算会社のうち、法人税法第2条第12号の6の7に規定する通算親法人をいいます。 |
| 通算子会社 | 通算会社のうち、法人税法第2条第12号の7に規定する通算子法人をいいます。 |
| 通算グループ | 通算親会社及び通算親会社との間に完全支配関係がある通算子会社により構成される企業集団をいいます。 |
| 通算税効果額 | 損益通算や欠損金の通算等の適用により減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として、通算会社と他の通算会社との間で授受される金額をいいます。 |
適用時期
実務対応報告第42号は、2022年(令和4年)4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています。グループ通算制度自体が同日以後に開始する事業年度から適用される制度であり、本実務対応報告も同時期に適用が開始しています。連結納税制度からグループ通算制度へ移行する場合の本実務対応報告の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しますが、会計方針の変更による影響はないものとみなされます。
| 原則適用 | 2022年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています。 |
|---|---|
| 早期適用 | 税効果会計に関する会計処理及び開示については、2022年3月31日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の期末の財務諸表から適用することができました。 |
あわせて、本実務対応報告の適用により、連結納税制度に関する実務対応報告第5号・第7号・第39号は、これらを適用する企業が存在しなくなった段階で廃止することとされました。
法人税及び地方法人税に関する会計処理
法人税及び地方法人税に関する会計処理は、本実務対応報告に定めのあるものを除き、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(法人税等会計基準)の定めに従います。グループ通算制度に特有の論点は通算税効果額の取扱いです。
個別財務諸表においては、通算税効果額は当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱います。通算会社が申告納付する税額は、通算前所得に対して損益通算や欠損金の通算を行った後の課税所得を基に算定されるため、その通算等による税額の減少額を通算税効果額として通算会社間で授受することが想定されています。
税効果会計に関する会計処理
税効果会計に関する会計処理は、本実務対応報告に定めのあるものを除き、税効果会計基準等(税効果会計に係る会計基準及び同注解、企業会計基準第28号、税効果適用指針、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針)の定めに従います。グループ通算制度の対象とされていない住民税及び事業税については、それぞれ法人税及び地方法人税とは区別して税効果会計基準等を適用します。
繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は、税効果適用指針の定めに従い、税金の種類ごとに適用する税率を算定します。回収可能性が法人税及び地方法人税と事業税とで異なる場合等で、かつ重要な影響があるときは、その影響を考慮した税率で繰延税金資産の計算を行います。
個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性
個別財務諸表における将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断は、原則として回収可能性適用指針第6項から第34項の定めに従います。そのうえで、企業の分類に応じた回収可能性の判断にあたっては、通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を1つに束ねた単位(通算グループ全体)の分類と、各通算会社の分類をそれぞれ判定します。
将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、通算グループ全体の分類が通算会社の分類と同じか上位にある場合は通算グループ全体の分類に応じた判断を行い、通算グループ全体の分類が下位にある場合は当該通算会社の分類に応じた判断を行います。通算会社の分類は、損益通算や欠損金の通算を考慮せず、自社の通算前所得又は通算前欠損金に基づいて判定します。
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連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性
連結財務諸表における将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性については、通算グループ全体について回収可能性適用指針第6項から第34項に従って判断を行い、個別財務諸表において計上した繰延税金資産の合計額との差額は連結上で修正します。回収可能性適用指針を適用する際は、「将来減算一時差異」を「通算グループ全体の将来減算一時差異の合計」と読み替えるなど、通算グループ全体を単位として判断する点が特徴です。
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未実現損益及び投資簿価修正の取扱い
連結財務諸表における未実現損益の消去に係る連結財務諸表固有の一時差異については、税効果適用指針第34項から第37項に従って処理します。ただし、繰延税金資産及び繰延税金負債の計上対象となる法人税及び地方法人税に係る未実現損益の消去に係る一時差異の上限については、売却元の課税所得を「通算グループ全体の課税年度における課税所得の合計」と読み替えたうえで適用します。
また、投資簿価修正による他の通算会社の株式等の帳簿価額の修正額は、投資簿価修正が行われる年度の課税所得を増減する効果を有します。このため、期末時点における他の通算会社の株式等の帳簿価額と税務上の簿価純資産価額との差額は、一時差異と同様に取り扱い、個別財務諸表において一定の要件のもとで繰延税金資産又は繰延税金負債を計上します。連結財務諸表では、個別上で計上したこれらを取り崩したうえで、通算子会社に対する投資の連結貸借対照表上の価額と税務上の簿価純資産価額との差額を連結財務諸表固有の一時差異と同様に取り扱います。
適用時・加入時・離脱時の取扱い
グループ通算制度を新たに適用する場合には、適用の承認があった日等の前日を含む連結会計年度及び事業年度の財務諸表から、翌年度よりグループ通算制度を適用するものとして税効果会計を適用します。適用の承認を受けていない場合でも、翌年度より適用することが明らかで、かつ合理的に会計処理が行われると認められるときは、翌年度より適用するものと仮定して税効果会計を適用できます。
株式の取得等により新たに通算子会社となる加入の場合や、株式の売却等により通算子会社でなくなる離脱の場合には、将来通算子会社となる(又はでなくなる)ことについての意思決定がなされ、かつ実行される可能性が高いと認められる時点を含む会計期間の財務諸表から、その影響を考慮して税効果会計を適用します。加入・離脱では、繰越欠損金の引継制限や特定資産に係る譲渡等損失額の損金算入制限といった税務上の制限も考慮します。
表示及び注記
表示については、通算税効果額を損益に計上する場合は法人税及び地方法人税を示す科目に含めて個別財務諸表の損益計算書に表示し、株主資本又は評価・換算差額等に計上する場合は純資産の部の対応する内訳項目から控除して表示します。通算税効果額に係る債権及び債務は、未収入金や未払金などに含めて貸借対照表に表示します。
連結財務諸表においては、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債について、企業会計基準第28号第2項の定めによらず、通算グループ全体の合計を相殺して連結貸借対照表の投資その他の資産の区分又は固定負債の区分に表示します。
注記については、グループ通算制度の適用により本実務対応報告に従って会計処理を行っている場合はその旨を注記します。税効果会計に関する注記は、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分せずに税金全体で行います。また、通算会社が負っている連帯納付義務については、偶発債務としての注記を要しません。
グループ通算制度と同じく国際的な税制改正に対応する会計基準として、グローバル・ミニマム課税に関する取扱いも整備されています。あわせて確認しておくと理解が深まります。
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まとめ
グループ通算制度の会計処理は、実務対応報告第42号にもとづき、法人税及び地方法人税並びに税効果会計の取扱いとして整理されています。通算税効果額を当期の法人税等に準じて取り扱うこと、繰延税金資産の回収可能性を通算グループ全体と各通算会社の分類の両面から判断すること、連結では通算グループ全体で相殺して表示することが実務上の要点です。基準は2022年4月1日以後に開始する事業年度から適用されており、加入・離脱や投資簿価修正など個社ごとに判断を要する論点も多く含みます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
グループ通算制度の会計処理はどの基準に定められていますか。
実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」に定められています。法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにするもので、2022年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています。
通算税効果額はどのように会計処理しますか。
個別財務諸表においては、通算税効果額を当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱います。損益に計上する場合は法人税及び地方法人税を示す科目に含めて表示し、通算税効果額に係る債権及び債務は未収入金や未払金などに含めて表示します。
繰延税金資産の回収可能性はどのように判断しますか。
個別財務諸表では原則として回収可能性適用指針に従いつつ、企業の分類を通算グループ全体と各通算会社の双方について判定します。連結財務諸表では、通算グループ全体について回収可能性を判断し、個別で計上した繰延税金資産の合計額との差額を連結上で修正します。
連結財務諸表では繰延税金資産をどのように表示しますか。
法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債について、通算グループ全体の合計を相殺し、連結貸借対照表の投資その他の資産の区分又は固定負債の区分に表示します。