公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

グローバル・ミニマム課税の会計処理と開示|実務対応報告第46号の要点

2026-07-17
目次

グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理と開示は、企業会計基準委員会(ASBJ)が2024年3月22日に公表した実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」に従います。結論を先に述べると、対象会計年度となる連結会計年度・事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき当該法人税等の合理的な金額を見積もって損益に計上し、四半期・中間財務諸表では当面の間、計上しないことができます。また、同制度に関する税効果会計については、改正実務対応報告第44号により、繰延税金資産・繰延税金負債を認識しない特例的な取扱いが定められています。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

本稿では、対象大企業グループや上場企業の経理・税務担当の方に向けて、制度の概要から会計処理の考え方、開示(表示・注記)の具体的な取扱い、適用時期、実務対応の手順と落とし穴までを、原典である実務対応報告第46号に沿って整理します。決算・開示スケジュールへの組み込みを検討する際の判断材料としてご活用ください。

グローバル・ミニマム課税制度の概要

グローバル・ミニマム課税は、2021年10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において国際的に合意された仕組みです。法人税の国際的な引下げ競争に歯止めをかけ、税制面における企業間の公平な競争条件を確保するため、一定の要件を満たす多国籍企業グループ等の国別の利益に対して最低15%の法人税を負担させることを目的としています。これを受けて、我が国でもグローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正が数年にわたって行われる予定とされています。

国際的に合意されたルールには、所得合算ルール(IIR)、軽課税所得ルール(UTPR)、国内ミニマム課税(QDMTT)の3つがあります。このうち所得合算ルール(IIR)に係る取扱いは、2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)において定められ、2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用することとされました。IIRは、多国籍企業グループ等を構成する会社等について国別に算定された実効税率が基準税率(15%)を下回る場合に、基準税率に至るまでの税額を親会社等がその所在地国の税務当局に支払う仕組みです。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

追加課税のイメージ=国別の純所得(利益) × (基準税率15% − 国別実効税率)

この制度の大きな特徴は、課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業(軽課税国の子会社等)と、納税義務が生じる企業(親会社等)が相違する点にあります。従来の法人税等とは性格が異なる新たな税制であるため、既存の法人税等会計基準や税効果会計の適用指針では取扱いが明らかでないとの意見が聞かれ、ASBJが会計処理・開示のルールを整備することになりました。

実務対応報告第46号の対象と適用範囲

実務対応報告第46号は、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税及び地方法人税(法人税等)に関する会計処理及び開示に適用されます。「法人税」「地方法人税」「所得」などの用語は、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」における定義と同様とされています。また「対象会計年度」とは、法人税法第15条の2に規定する多国籍企業グループ等の最終親会社等の連結等財務諸表の作成に係る期間をいいます。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

実務上の第一歩は、自社グループが制度の対象範囲に含まれるかの判定です。ここで注意すべきは、国別実効税率が各国の税額控除等を反映した後の税率である点です。所在地国の法定実効税率が15%以上であっても、税額控除等の影響でグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等が課せられることがあるため、法定実効税率のみで対象外と判断することはできません。恒久的施設等や共同支配会社等・被少数保有構成会社等・各種投資会社等といった特殊な会社等に関する国別の情報収集も求められます。

関連コラム法人税等に関する会計基準とは?会計処理と表示をわかりやすく解説

会計処理の取扱い

年度の財務諸表における見積り計上

グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づく合理的な金額を見積もり、損益に計上します。同制度の申告・納付期限は各対象会計年度終了の日の翌日から1年3か月(最初の申告の場合は1年6か月)以内と長く、決算時点で税額が確定していないため、「法令に従い算定した額」ではなく会計上の見積りによる計上とされた点が通常の法人税等との大きな違いです。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

見積額と翌事業年度の見積額又は確定額との間に差額が生じる場合があります。各事業年度において財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的な金額を見積もっている限り、当該差額は誤謬にはあたらず、当期の損益として処理することになると考えられています。また、会計上の見積りの変更にあたって当該差額に重要性がある場合には、企業会計基準第24号第18項の定めに従い注記を行うこととなると考えられます。

四半期・中間財務諸表における計上不要の特例

四半期財務諸表及び中間財務諸表においては、当面の間、当四半期会計期間等・当中間会計期間等を含む対象会計年度に関するグローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができます。同制度は対象会計年度の年間の利益や税額控除等を用いて対象範囲の判定や見積りを行うため、四半期・中間の限られた情報で年度と同様に計算することが困難な場合があると考えられたためです。この特例を適用するときは、その旨の注記が必要です(後述)。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

税効果を認識しない特例(実務対応報告第44号)

グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計については、実務対応報告第46号とは別に、改正実務対応報告第44号「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い」が定められています。同報告により、同制度に関しては繰延税金資産・繰延税金負債を認識しないという特例的な取扱いが適用されるため、当期税金(第46号)と税効果(第44号)の2つの取扱いをセットで押さえる必要があります。企業会計基準委員会 改正実務対応報告第44号 グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱いの公表

開示(表示・注記)の取扱い

貸借対照表における表示

グローバル・ミニマム課税制度に係る未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、法人税等会計基準第11項の定めにかかわらず、連結貸借対照表及び個別貸借対照表の固定負債の区分に「長期未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示します。申告・納付期限が対象会計年度終了後1年3か月又は1年6か月以内と長いため、通常の未払法人税等(流動負債)とは区分の考え方が異なる点に注意が必要です。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

損益計算書における表示と注記

連結損益計算書では、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示し、金額が重要な場合には当該金額を注記します。一方、個別損益計算書では、原則として「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目の次にその内容を示す科目をもって区分して表示するか、当該科目に含めて表示したうえで金額を注記します。個別においても金額の重要性が乏しい場合には、区分表示・注記を行わず「法人税、住民税及び事業税」等の科目に含めて表示することができます。

連結損益計算書 「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目で表示。重要な場合は金額を注記
個別損益計算書 「法人税、住民税及び事業税」等の次に区分表示、又は同科目に含めて表示し金額を注記(重要性が乏しい場合は注記不要)
貸借対照表 支払期限が1年超の未払額は固定負債に「長期未払法人税等」等で表示
四半期・中間財務諸表 計上しない特例(第7項)を適用するときは、その旨を注記

連結と個別で取扱いが異なるのは、制度の性格によるものです。グローバル・ミニマム課税は、課税の源泉となる利益が生じる子会社等と納税義務が生じる親会社等が相違するため、親会社等の個別財務諸表では自社の所得に対する税に直接的には該当しません。そのため個別では区分表示又は注記により内容を示すことが原則とされる一方、連結ではグループの利益(所得)に対する課税額という点で他の法人税等と同様であることから、通常の科目に含めて表示する整理となっています。

四半期・中間財務諸表における注記

当四半期会計期間等及び当中間会計期間等において、法人税等を計上しない特例(第7項)を適用するときは、その旨を注記します。この注記は、前連結会計年度・前事業年度において同制度に係る法人税等を計上しているかどうかにかかわらず求められるため、初めて対象範囲に入る可能性があるグループでも注記の要否検討が必要です。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

適用時期

実務対応報告第46号は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。これは、グローバル・ミニマム課税制度(IIR)自体が2024年4月1日以後開始する対象会計年度から適用されることに対応したものです。ただし、四半期・中間財務諸表における注記の定め(第13項)については、適用初年度は判断が困難であることを考慮し、1年遅れの2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとされています。企業会計基準委員会 実務対応報告第46号 グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い等の公表

実務対応の手順と落とし穴

実務対応は、次の手順で進めるのが効率的です。第一に、グループが制度の対象範囲に含まれるかの判定です。国別実効税率は税額控除等を反映した後の税率であるため、法定実効税率のみで判断せず、恒久的施設等や特殊な会社等を含む国別の会計数値・調整項目の情報を収集します。第二に、各構成会社等の個別計算所得等の金額と調整後対象租税額等の算定に必要な調整項目を洗い出し、所在地国の税制の理解を含めた情報収集体制を構築します。第三に、決算スケジュール上、財務諸表作成時に入手可能な情報の範囲を確定し、見積りのプロセスと文書化のルールを整えます。

落とし穴として、まず適用初年度は新たな調整項目の把握や各構成会社等からの情報入手体制の構築が間に合わず、限られた情報での見積りを余儀なくされる場合があります。この場合でも、財務諸表の作成時点で入手可能な情報に基づいて合理的な金額を見積もっていれば足り、事後の差額は誤謬にはあたらず当期の損益として処理すると整理されています。また、適用初年度の翌年度以降は申告に向けて入手可能となる情報が増加し、より精緻な見積りが可能となるため、見積りプロセスは毎期見直す前提で設計することが重要です。未払額の流動・固定の区分や、個別損益計算書での区分表示・注記の要否判定を決算チェックリストに組み込んでおくことも、開示漏れの防止に有効です。

まとめ

グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等は、実務対応報告第46号に基づき、対象会計年度となる連結会計年度・事業年度において入手可能な情報に基づく合理的な見積額を損益に計上し、四半期・中間では当面の間計上しないことができます。開示面では、1年超の未払額の固定負債表示、連結・個別それぞれの損益計算書における表示・注記、四半期・中間の特例適用時の注記が求められます。税効果については改正実務対応報告第44号により繰延税金資産・負債を認識しない取扱いとなるため、両報告をあわせて理解することが不可欠です。

対象範囲の判定や見積りプロセスの構築は、グループの構成や各国税制により対応の難易度が大きく異なります。具体的なケースへの適用にあたっては、公認会計士事務所プライムパートナーズ/株式会社プライムパートナーズコンサルティングのような専門家、すなわち公認会計士へのご相談をおすすめします。

参考文献

FAQ

グローバル・ミニマム課税の法人税等はいつ計上しますか。

対象会計年度となる連結会計年度及び事業年度において、財務諸表作成時に入手可能な情報に基づく合理的な金額を見積もり、損益に計上します。申告・納付期限は対象会計年度終了後1年3か月(最初の申告は1年6か月)以内であり、税額確定を待たずに見積りで計上する点が特徴です。

四半期決算でも計上が必要ですか。

四半期財務諸表及び中間財務諸表では、当面の間、グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等を計上しないことができます。この特例を適用するときは、その旨を注記します。注記の定めは2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。

税効果会計はどのように扱いますか。

改正実務対応報告第44号により、グローバル・ミニマム課税制度に関しては繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しない特例的な取扱いが定められています。当期税金の会計処理・開示を定める実務対応報告第46号とあわせて適用します。

貸借対照表ではどの区分に表示しますか。

未払法人税等のうち、貸借対照表日の翌日から起算して1年を超えて支払の期限が到来するものは、固定負債の区分に「長期未払法人税等」などその内容を示す科目をもって表示します。1年以内に支払期限が到来するものは流動負債に表示します。

法定実効税率が15%以上の国なら対象外と考えてよいですか。

いいえ。国別実効税率は各国の税額控除等を反映した後の税率であるため、法定実効税率が15%以上でも課税対象となることがあります。法定実効税率のみで判断せず、国別の会計数値や調整項目に関する情報を収集して判定する必要があります。

お問い合わせはこちら
事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

士業の先生向け専門家AI
士業AI【会計】
▼▼▼ まずは専門家に相談 ▼▼▼