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連結キャッシュ・フロー計算書の作成基準|直接法・間接法と3区分

2026-07-20
目次

連結キャッシュ・フロー計算書は、企業集団の一会計期間におけるキャッシュ・フローの状況を報告するために作成する財務諸表です。貸借対照表・損益計算書と並ぶ基本財務諸表として、資金の動きを営業・投資・財務の三つの活動に区分して表示します。本稿では、上場準備企業の経理・財務担当者や連結決算担当者に向けて、資金の範囲、三区分、営業キャッシュ・フローの直接法と間接法という作成の要点を、原典である作成基準に沿って整理します。

結論から申し上げると、実務上の設計ポイントは三つに集約されます。第一に「資金の範囲=現金及び現金同等物」をどこまで含めるかを定義すること、第二にキャッシュ・フローを三区分へ正しく振り分けること、第三に営業キャッシュ・フローの表示方法として直接法か間接法かを選択することです。いずれも継続適用が前提となる重要な会計方針の判断を含みます。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書

キャッシュ・フロー計算書の位置付けと作成目的

連結キャッシュ・フロー計算書は、企業集団の一会計期間におけるキャッシュ・フローの状況を報告するために作成するものです。キャッシュ・フロー計算書は、一会計期間におけるキャッシュ・フローの状況を一定の活動区分別に表示するものであり、貸借対照表及び損益計算書と同様に企業活動全体を対象とする重要な情報を提供します。従来は資金収支表が財務諸表外の情報として位置付けられてきましたが、キャッシュ・フロー計算書はこれに代えて財務諸表の一つとして位置付けられています。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書

連結キャッシュ・フロー計算書の作成に当たっては、連結会社相互間のキャッシュ・フローを相殺消去しなければなりません。また、在外子会社における外貨によるキャッシュ・フローは、外貨建取引等会計処理基準における収益及び費用の換算方法に準じて換算します。これらは個別ベースの計算書にはない連結固有の手続であり、連結決算実務で特に留意すべき点です。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

資金の範囲=現金及び現金同等物

連結キャッシュ・フロー計算書が対象とする資金の範囲は、現金及び現金同等物です。ここでいう現金とは、手許現金及び要求払預金をいいます。要求払預金には、例えば当座預金、普通預金、通知預金が含まれます。資金の範囲を明確に定義することが、作成実務の出発点となります。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

現金同等物の定義と具体例

現金同等物とは、容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資をいいます。価格変動リスクの高い株式等は、資金の範囲から除かれます。現金同等物に具体的に何を含めるかは経営者の判断に委ねることが適当とされていますが、比較可能性を考慮して、取得日から満期日又は償還日までの期間が三か月以内の短期投資が一般的な例として示されています。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

現金同等物の具体例としては、取得日から満期日又は償還日までの期間が三か月以内の短期投資である定期預金、譲渡性預金、コマーシャル・ペーパー、売戻し条件付現先、公社債投資信託が挙げられています。資金の範囲に含めた現金及び現金同等物の内容やその期末残高の連結貸借対照表科目別の内訳、資金の範囲を変更した場合のその旨・理由・影響額は、注記事項とされています。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

現金の範囲に加わった特定の電子決済手段(第32号改正)

資金の範囲については、企業会計基準第32号「連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準」の一部改正により見直しが行われました。この改正では、現金の定義が「手許現金、要求払預金及び特定の電子決済手段」と改められています。いわゆるステーブルコインの登場を受けた資金決済法の改正を背景とした対応です。企業会計基準委員会 実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」等の公表

ここでの特定の電子決済手段とは、資金決済法第2条第5項第1号から第3号に規定される電子決済手段をいい、外国電子決済手段については利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限られます。これらは通貨に類似する性格と要求払預金に類似する性格を有する資産であることから、現金に含めることが経済実態を的確に反映すると整理されました。適用時期は、2023年に公表された実務対応報告第45号と同様とされています。企業会計基準委員会 実務対応報告第45号「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」等の公表

三区分(営業活動・投資活動・財務活動)の考え方

連結キャッシュ・フロー計算書には、「営業活動によるキャッシュ・フロー」「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分を設けなければなりません。一会計期間のキャッシュ・フローをこの三つの活動に区分して表示することで、資金の源泉と使途を活動別に把握できます。区分の判断はキャッシュ・フロー計算書の骨格を左右するため、取引の性質に即した振り分けが求められます。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

営業活動によるキャッシュ・フローの範囲

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、商品及び役務の販売による収入、商品及び役務の購入による支出等、営業損益計算の対象となった取引のほか、投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載します。商品及び役務の販売により取得した手形の割引による収入等、営業活動に係る債権・債務から生ずるキャッシュ・フローも、この区分に表示します。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

具体例としては、商品及び役務の販売による収入、商品及び役務の購入による支出、従業員及び役員に対する報酬の支出、災害による保険金収入、損害賠償金の支払が記載されます。また、法人税等(住民税及び利益に関連する金額を課税標準とする事業税を含む)に係るキャッシュ・フローは、活動ごとに課税所得を分割することが一般的には困難であるため、営業活動によるキャッシュ・フローの区分に一括して記載します。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

投資活動・財務活動の範囲と子会社株式の取扱い

「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、固定資産の取得及び売却、現金同等物に含まれない短期投資の取得及び売却等によるキャッシュ・フローを記載します。具体例には、有形固定資産及び無形固定資産の取得・売却、有価証券(現金同等物を除く)及び投資有価証券の取得・売却、貸付けによる支出、貸付金の回収による収入が含まれます。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、資金の調達及び返済によるキャッシュ・フローを記載します。具体例には、株式の発行による収入、自己株式の取得による支出、配当金の支払、社債の発行及び借入れによる収入、社債の償還及び借入金の返済による支出が含まれます。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

連結固有の論点として、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取得又は売却に係るキャッシュ・フローは、投資活動によるキャッシュ・フローの区分に独立の項目として記載します。この場合、新たに連結子会社となった会社の現金及び現金同等物の額は株式の取得による支出額から控除し、連結子会社でなくなった会社の現金及び現金同等物の額は株式の売却による収入額から控除して記載します。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

関連コラム企業結合に関する会計基準|取得法とのれん・取得原価の配分の実務

利息及び配当金の表示区分

利息及び配当金に係るキャッシュ・フローは、継続適用を条件として、次の二つの方法のいずれかを選択適用できます。第一の方法は、受取利息、受取配当金及び支払利息を「営業活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払配当金を「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法です。第二の方法は、受取利息及び受取配当金を「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載し、支払利息及び支払配当金を「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に記載する方法です。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

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営業キャッシュ・フローの作り方(直接法・間接法)

「営業活動によるキャッシュ・フロー」の表示方法には直接法と間接法があり、継続適用を条件として、これらの方法の選択適用が認められています。直接法とは、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法です。間接法とは、税金等調整前当期純利益に非資金損益項目、営業活動に係る資産及び負債の増減、「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に含まれる損益項目を加減して表示する方法です。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

いずれの方法を採用するかは会計方針の選択であり、両者の長所と短所を踏まえた判断が求められます。直接法による表示方法は、営業活動に係るキャッシュ・フローが総額で表示される点に長所が認められます。一方で、直接法により表示するためには親会社及び子会社において主要な取引ごとにキャッシュ・フローに関する基礎データを用意することが必要であり、実務上手数を要すると考えられます。間接法による表示方法は、純利益と営業活動に係るキャッシュ・フローとの関係が明示される点に長所が認められます。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書

直接法 間接法
主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法 税金等調整前当期純利益に必要な調整項目を加減して表示する方法
営業活動に係るキャッシュ・フローが総額で表示される点に長所 純利益と営業活動に係るキャッシュ・フローとの関係が明示される点に長所
主要な取引ごとの基礎データの用意が必要で実務上手数を要する 調整計算により純利益との連続性を示しやすい

間接法により表示する場合には、法人税等を控除する前の当期純利益から開始する形式によることとされ、法人税等の支払額は独立の項目として明示します。実務では、基礎データ整備の負担が相対的に軽い間接法を採用する企業が多いのが実情ですが、いずれの方法でも継続適用が前提となる点は共通です。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準の設定に関する意見書

投資・財務キャッシュ・フローと換算差額の表示

「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」は、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示しなければなりません。営業活動のように間接法を選択する余地はなく、総額表示が原則となります。また、現金及び現金同等物に係る換算差額は、他と区別して表示します。金融庁 連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準

期末の現金及び現金同等物の残高は、次の算式のイメージで検証できます。作成後は連結貸借対照表上の科目との整合性を注記で確認することが実務上重要です。

期末残高 = 期首残高 + 営業CF + 投資CF + 財務CF + 換算差額

関連コラム持分法に関する会計基準|適用範囲と未実現利益消去の実務

まとめ

連結キャッシュ・フロー計算書は、資金の範囲を現金及び現金同等物と定義し、キャッシュ・フローを営業・投資・財務の三区分に振り分けたうえで、営業活動については直接法か間接法かを継続適用の前提で選択して作成します。連結会社相互間のキャッシュ・フローの相殺消去、連結範囲の変動を伴う子会社株式の取扱い、在外子会社の外貨換算といった連結固有の手続にも注意が必要です。第32号の一部改正により現金の範囲に特定の電子決済手段が加わった点も、最新の実務では押さえておくべき論点です。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

参考文献

よくある質問(FAQ)

連結キャッシュ・フロー計算書の資金の範囲はどこまでですか。

資金の範囲は現金及び現金同等物です。現金は手許現金及び要求払預金(当座預金、普通預金、通知預金等)をいい、現金同等物は容易に換金可能で価値変動リスクが僅少な短期投資をいいます。取得日から満期日又は償還日までの期間が三か月以内の短期投資が一般的な例として示されています。

営業キャッシュ・フローの直接法と間接法はどちらを選ぶべきですか。

継続適用を条件に、いずれの方法も選択適用が認められています。直接法は総額表示される点に長所がある一方、主要な取引ごとの基礎データの用意が必要で実務上手数を要します。間接法は純利益と営業キャッシュ・フローとの関係が明示される点に長所があります。基礎データ整備の負担から間接法を採用する企業が多く見られます。

利息及び配当金はどの区分に表示しますか。

二つの方法から継続適用を条件に選択できます。受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動、支払配当金を財務活動に記載する方法と、受取利息・受取配当金を投資活動、支払利息・支払配当金を財務活動に記載する方法です。

第32号の一部改正で何が変わりましたか。

現金の定義に特定の電子決済手段が加えられました。資金決済法第2条第5項第1号から第3号に規定される電子決済手段(外国電子決済手段は利用者が電子決済手段等取引業者に預託しているものに限る)が現金に含まれます。適用時期は実務対応報告第45号と同様とされています。

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公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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