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資産除去債務の割引率|無リスク税引前利率の決め方と見積り変更

2026-09-02
目次

資産除去債務の算定に用いる割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率です(資産除去債務に関する会計基準 第6項(2))。実務では、除去に係る支出が発生すると見込まれる時期までの期間に対応した利付国債の流通利回りなどを参考に決定します(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第5項、第23項)。自社の信用リスクや借入利子率は反映しません。

この一文だけで答えは出ていますが、決算実務では「何年物の国債を引くのか」「見積りを変更したときにどの割引率を使うのか」「時の経過による調整額はどの利率で計算するのか」で毎期迷いが生じます。監査でも、割引率の根拠資料は必ず確認される論点です。

本コラムでは、資産除去債務の割引率について、無リスクの利率を用いる理由、参照する国債の年限と税引前の意味、当初計上から時の経過による調整までの仕訳、見積りの変更時の使い分け、注記と適用時期までを、条項番号を示しながら整理します。

資産除去債務の割引率の定義

資産除去債務は、それが発生したときに、有形固定資産の除去に要する割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、割引後の金額(割引価値)で算定します(資産除去債務に関する会計基準 第6項)。このうち割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とされています(同 第6項(2))。

適用指針では、この定義がさらに具体化されています。割引率は、将来キャッシュ・フローが発生すると予想される時点までの期間に対応する貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の割引率とされ(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第5項)、原則として将来キャッシュ・フローが発生するまでの期間に対応した利付国債の流通利回りなどを参考に決定することとされています(同 第23項)。

ここで押さえておきたいのは、割引率の「無リスク」と、割引前将来キャッシュ・フローの「リスク調整」の役割分担です。将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクは、割引率ではなく将来キャッシュ・フローの見積りに反映されます(同 第5項)。見積金額には、生起する可能性の最も高い単一の金額(最頻値)又は生起し得る複数のキャッシュ・フローをそれぞれの発生確率で加重平均した金額(期待値)を用います(資産除去債務に関する会計基準 第6項(1))。

割引前将来
キャッシュ・フロー
自己の支出見積りにより、最頻値又は期待値で見積る。見積値から乖離するリスク、インフレ率、技術革新による影響額はここに織り込む
割引率 貨幣の時間価値のみを反映した無リスクの税引前の利率。支出見込時期までの期間に対応する利付国債の流通利回りなどを参考にする

割引前将来キャッシュ・フローの見積りは、除去に必要な平均的な処理作業に対する価格の見積り、取得時に取引価額から控除された除去費用の算定の基礎となった数値、類似資産で過去に発生した除去費用の実績、投資の意思決定時に見積られた除去費用、除去サービスを行う業者など第三者からの情報を基礎とします(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第3項)。

自社の信用リスクを反映しない理由

借入金の返済スケジュールを現在価値に直すときは自社の調達金利を使うのに、なぜ資産除去債務では無リスクの利率なのか。基準はこの点を明示的に検討したうえで、無リスクの割引率が適当であると結論づけています(資産除去債務に関する会計基準 第40項)。

示されている理由は、大きく次の3点です。第一に、同じく将来の支出を割り引いて測定する退職給付債務の算定においても無リスクの割引率が使用されていること。第二に、同一の内容の債務について信用リスクの高い企業の方が高い割引率を用いることにより負債計上額が少なくなるという結果は、財政状態を適切に示さないと考えられること。第三に、資産除去債務の性格上、自らの不履行の可能性を前提とする会計処理は適当ではないことです(同 第40項)。

加えて、資産除去債務は有利子負債やそれに準ずるものと考えられるリース負債と異なり、明示的な金利キャッシュ・フローを含まない債務です。この性格からも、退職給付債務と同様に無リスクの割引率を用いることが会計基準全体の体系と整合的である、と整理されています(同 第40項)。

実務上の帰結は明快です。自社の借入利子率、社債利回り、加重平均資本コストは資産除去債務の割引率になりません。信用力の異なるグループ会社が同種の設備について同じ時期に同じ除去支出を見込むのであれば、原則として同じ割引率になります。

参照する国債の年限と「税引前」の意味

割引率は、将来キャッシュ・フローが発生すると予想される時点までの期間に対応させます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第5項)。したがって参照する国債は、決算期末までの期間でも、有形固定資産の耐用年数そのものでもなく、除去に係る支出が発生すると見込まれる時期までの残存期間に対応するものを選びます。

たとえば、20X1年4月1日に取得した設備を5年後に除去する見込みであれば、取得時点における残存期間5年程度の利付国債の流通利回りを参照します。10年後の除去を見込むのであれば残存期間10年の利付国債の流通利回りが基礎になります(同 第23項)。適用指針の設例でも、残存期間が見込支出時期と対応する利付国債の流通利回りを用いる形が示されています。

「税引前」の意味も、割引前将来キャッシュ・フローとの対応関係で理解すると迷いません。将来キャッシュ・フローの見積りには法人税等の影響額を含めません(同 第4項)。割引前将来キャッシュ・フローが税引前の数値であることに対応して、割引率も税引前の数値を用いる必要があります(同 第23項)。国債の表面利回り・流通利回りはもともと税引前の数値ですから、実務上は所得課税を織り込む調整を行わないという理解で足ります。

割引現在価値の計算自体は複利現価によります。除去支出見込額3,000千円、支出見込時期までの期間5年、対応する利付国債の流通利回り2.0%という前提で当初の資産除去債務を算定すると、次のようになります。

複利現価の分母 = (1 + 0.02) の5乗 = 1.104081
資産除去債務 = 3,000千円 ÷ 1.104081 = 2,717千円

参照した利回りの出所(公表元・基準日・残存期間)は、後日の監査で必ず確認されます。決定した割引率とあわせて、根拠となる利回りデータを資産ごとに保存しておくことをおすすめします。

当初計上と時の経過による調整額の会計処理

資産除去債務は、有形固定資産の取得、建設、開発又は通常の使用によって発生した時に負債として計上します(資産除去債務に関する会計基準 第4項)。同時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加えます(同 第7項)。資産計上された除去費用は、減価償却を通じて当該有形固定資産の残存耐用年数にわたり各期に費用配分します(同 第7項)。

次の仕訳は、20X1年4月1日に取得原価20,000千円・耐用年数5年・残存価額ゼロ・定額法の設備を取得し、5年後の除去支出見込額3,000千円、支出見込時期に対応する利付国債の流通利回り2.0%を割引率としたときの当初計上です(単位:千円)。数値は説明のための自社作例です。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
有形固定資産 22,717 現金預金 20,000
資産除去債務 2,717

翌期以降は、時の経過による資産除去債務の調整額を発生時の費用として処理します。この調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定します(資産除去債務に関する会計基準 第9項)。毎期見直した利回りではなく、当初計上時に決めた割引率で固定される点が重要です。基準は、割引率を負債計上時の割引率に固定する方法が、時の経過によって一定の利息相当額を配分するものであり、関連する有形固定資産について減価償却という費用配分が行われることとも整合的であると説明しています(同 第49項)。

時の経過による調整額 = 2,717千円 × 2.0% = 54千円
減価償却費 = 22,717千円 ÷ 5年 = 4,543千円

20X2年3月31日の決算整理は次のとおりです(単位:千円)。時の経過による調整額と、除去費用を含む取得原価に基づく減価償却費をあわせて示しています。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
利息費用 54 資産除去債務 54
減価償却費 4,543 減価償却累計額 4,543

表示区分にも定めがあります。資産計上された除去費用に係る費用配分額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(資産除去債務に関する会計基準 第13項)。時の経過による調整額も同様に、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(同 第14項)。営業外費用として支払利息と並べる処理ではありません。この調整額は、退職給付会計における利息費用と同様の性格を有するものと整理されています(同 第48項)。

貸借対照表上は、貸借対照表日後1年以内にその履行が見込まれる場合を除き、固定負債の区分に資産除去債務等の適切な科目名で表示します。1年以内の履行が見込まれる場合は流動負債の区分に表示します(同 第12項)。

見積りの変更時に適用する割引率の使い分け

割引前の将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じた場合、その変更による調整額は、資産除去債務の帳簿価額及び関連する有形固定資産の帳簿価額に加減して処理します(資産除去債務に関する会計基準 第10項)。過年度に遡らず将来に向かって修正するプロスペクティブ・アプローチによる処理です(同 第51項)。資産除去債務が法令の改正等により新たに発生した場合も、見積りの変更と同様に取り扱います(同 第10項)。

このとき適用する割引率は、キャッシュ・フローが増えるのか減るのかで分かれます(同 第11項)。

見積りが増加する場合 その時点の割引率を適用する。増加部分は新たな負債の発生と同様に扱うため、変更時点の支出見込時期に対応する利率で割り引く
見積りが減少する場合 負債計上時の割引率を適用する。当初計上した負債の一部が消えると考えるため、当初の利率をそのまま用いる
過去に増加があり
減少部分の割引率を特定できない場合
加重平均した割引率を適用する

この扱いは、キャッシュ・フローの増加部分については新たな負債の発生と同様のものとしてその時点の割引率を適用し、キャッシュ・フローが減少する場合は負債計上時の割引率を適用することとした、という結論の背景の説明と整合します(同 第53項)。結果として、見積りを何度も変更した資産では複数の割引率が併存することになりますから、資産除去債務の残高を「いつ・いくらを・何%で計上したか」の層に分けて管理する台帳が実務上不可欠になります。

次の仕訳は、上記の設例について、20X3年3月31日に残り3年後の除去支出見込額が3,000千円から3,600千円へ増加し、その時点の残存期間3年に対応する利付国債の流通利回りが1.5%であった場合の見積りの変更です(単位:千円)。増加分600千円を変更時点の割引率で割り引きます(資産除去債務に関する会計基準 第10項、第11項)。

複利現価の分母 = (1 + 0.015) の3乗 = 1.045678
調整額 = 600千円 ÷ 1.045678 = 574千円
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
有形固定資産 574 資産除去債務 574

なお、法令の改正等により資産除去債務が新たに発生した場合や、これまで合理的に見積ることができなかった金額を合理的に見積ることができるようになった場合において、影響が特に重要であれば、重要な法律改正又は規制強化による法律的環境の著しい悪化として減損の兆候に該当することとなります(同 第52項)。割引率の見直しだけで完結せず、減損の検討に波及する点は見落とされがちです。

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減損・リースの割引率との違い

同じ「割引率」でも、基準ごとに求められる性質は異なります。資産除去債務だけを見ていると混同しやすいため、決算期に併走する3つの論点を並べて確認しておきます。

資産除去債務 貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率。支出見込時期までの期間に対応する利付国債の流通利回りなどを参考にする(資産除去債務に関する会計基準 第6項(2)、同適用指針 第5項、第23項)
固定資産の減損
(使用価値の算定)
リスクを将来キャッシュ・フローに反映していない場合は、貨幣の時間価値と見積値から乖離するリスクの両方を反映した税引前の割引率。資産固有のリスクを反映した収益率や資本コスト等による(固定資産の減損に係る会計基準の適用指針 第43項、第45項)
リース
(借手のリース負債)
貸手の計算利率を知り得る場合は当該利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率(リースに関する会計基準 第34項、同適用指針 第37項)

整理すると、資産除去債務だけが信用リスクも資産固有のリスクも織り込まない純粋な無リスク利率です。減損の使用価値はリスクを割引率側に反映する実務が多く、リースの借手は自社の追加借入利子率という信用リスクを含む利率を使います。同じ設備をめぐる論点でも、参照する利率がまったく異なる点に注意してください。

なお、リースにおいても資産除去債務は登場します。借手が資産除去債務を負債として計上する場合において、関連する有形固定資産が使用権資産であるときは、資産除去債務に関する会計基準第7項に従い、当該負債の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加えます(リースに関する会計基準の適用指針 第28項)。この場合でも、加算される資産除去債務そのものの算定に用いる割引率は無リスクの税引前の利率であり、リース負債の割引率とは別に決定します。

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注記事項と監査で確認されるポイント

資産除去債務の会計処理に関連して、重要性が乏しい場合を除き、次の事項を注記します(資産除去債務に関する会計基準 第16項)。割引率は、このうち「前提条件」として明示的に注記が求められている項目です。

  • 資産除去債務の内容についての簡潔な説明(同 第16項(1))
  • 支出発生までの見込期間、適用した割引率等の前提条件(同 第16項(2))
  • 資産除去債務の総額の期中における増減内容(同 第16項(3))
  • 資産除去債務の見積りを変更したときは、その変更の概要及び影響額(同 第16項(4))
  • 資産除去債務は発生しているが、その債務を合理的に見積ることができないため貸借対照表に資産除去債務を計上していない場合には、当該資産除去債務の概要、合理的に見積ることができない旨及びその理由(同 第16項(5))

注記事項の(1)については、資産除去債務の発生原因となっている法的規制又は契約等の概要(法令等の条項及び契約条件等)を簡潔に記載します(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第10項)。多数の有形固定資産について資産除去債務が生じている場合には、有形固定資産の種類や場所等に基づいて、注記をまとめて記載することができます(同 第10項)。

基準が支出発生までの見込期間と割引率の注記を求めたのは、見積りの不確実性そのものを注記するよりも、見積りに関する情報の開示のほうが有用であると考えられたためです(資産除去債務に関する会計基準 第59項)。裏を返せば、割引率の数値と、その根拠である見込期間の整合性は、注記の中核として読まれるということです。

監査対応の観点では、次の点を事前に説明できるよう準備しておくと、決算期の往査がスムーズになります。第一に、支出見込時期の根拠(契約期間、法令上の義務発生時期、除却計画)と、参照した国債の残存期間が対応していること。第二に、参照した利回りの出所と基準日。第三に、時の経過による調整額が当初負債計上時の割引率で計算されていること(同 第9項)。第四に、見積りを変更した資産について、増加部分と減少部分でそれぞれ適用した割引率が第11項の定めに沿っていること。第五に、注記の割引率が計算に使用した利率と一致していることです。

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適用時期と改正の経緯

企業会計基準第18号は2008年3月31日に公表され、2010年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(資産除去債務に関する会計基準 第17項)。2010年3月31日以前に開始する事業年度から適用することもできるとされていました(同 第17項)。適用初年度の期首残高の算定と期首差額の特別損失計上に関する経過的な定めも置かれていましたが(同 第18項)、いずれも適用開始からすでに相当期間が経過しています。

適用指針についても、2008年公表の適用指針の適用時期は会計基準と同様とされ(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第14項)、2011年改正の適用指針は2011年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されています(同 第15-2項)。2011年改正では、四半期財務諸表に関する会計基準の改正に伴い、四半期財務諸表における注記を定めた項が削除されました(同 第30-2項)。

その後、2024年に本会計基準の改正が行われています。これはリースに関する会計基準(企業会計基準第34号)の公表に伴うもので、結論の背景における「用語の定義」及び「会計処理」の一部について所要の改正が行われました(資産除去債務に関する会計基準 第22-2項)。割引率を定める第6項(2)や、見積りの変更時の割引率を定める第11項の内容は変更されていません。

2024年改正会計基準の適用時期は、リース会計基準の適用時期と同様とされています(同 第20-2項)。リース会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。使用権資産に係る資産除去債務を扱う会社は、リース会計基準の適用時期と歩調を合わせて対応することになります。

まとめ

資産除去債務の割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率であり、支出見込時期までの期間に対応する利付国債の流通利回りなどを参考に決定します(資産除去債務に関する会計基準 第6項(2)、同適用指針 第5項、第23項)。自社の信用リスクを反映しないのは、信用リスクの高い企業ほど負債計上額が小さくなる結果が財政状態を適切に示さないためです(同会計基準 第40項)。

時の経過による調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定し、関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に計上します(同 第9項、第14項)。見積りの変更では、キャッシュ・フローが増加する場合はその時点の割引率、減少する場合は負債計上時の割引率を適用し、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは加重平均した割引率を用います(同 第11項)。適用した割引率と支出発生までの見込期間は注記事項です(同 第16項(2))。

実際の判断は、支出見込時期の根拠づけや、複数回の見積り変更を経た資産の割引率管理など、会社ごとの事情に左右されます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

参考文献

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よくある質問

資産除去債務の割引率は何年物の国債利回りを使いますか

除去に係る支出が発生すると予想される時点までの期間に対応する利付国債の流通利回りなどを参考にします(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第5項、第23項)。5年後の除去を見込むなら残存期間5年程度、10年後なら残存期間10年程度の利付国債が基礎になります。有形固定資産の耐用年数や決算期末までの期間ではなく、支出見込時期に対応させる点がポイントです。

自社の借入利子率を割引率に使うことはできますか

できません。資産除去債務の割引率は貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率です(資産除去債務に関する会計基準 第6項(2))。信用リスクの高い企業の方が高い割引率を用いることで負債計上額が少なくなる結果は財政状態を適切に示さないこと、資産除去債務の性格上、自らの不履行の可能性を前提とする会計処理は適当でないことなどから、無リスクの割引率が適当であると結論づけられています(同 第40項)。借手のリース負債で用いる追加借入利子率とは考え方が異なります。

毎期末に割引率を見直す必要はありますか

時の経過による資産除去債務の調整額は、期首の負債の帳簿価額に当初負債計上時の割引率を乗じて算定します(資産除去債務に関する会計基準 第9項)。割引率は変更を行わずに負債計上時の割引率を用いる方法によることとされているため(同 第49項)、市場金利が動いたという理由だけで毎期末に割引率を洗い替えることはありません。割引率が動くのは、割引前将来キャッシュ・フローに重要な見積りの変更が生じ、その額が増加する場合です(同 第11項)。

見積りを変更したとき、増加と減少で割引率が違うのはなぜですか

キャッシュ・フローの増加部分は新たな負債の発生と同様のものと考えるため、その時点の割引率を適用します。これに対し、キャッシュ・フローが減少する場合は当初計上した負債の一部が消えると考えるため、負債計上時の割引率を適用します(資産除去債務に関する会計基準 第11項、第53項)。過去に割引前将来キャッシュ・フローの見積りが増加した場合で、減少部分に適用すべき割引率を特定できないときは、加重平均した割引率を適用します(同 第11項)。

時の経過による調整額は営業外費用に計上しますか

営業外費用ではありません。時の経過による資産除去債務の調整額は、損益計算書上、当該資産除去債務に関連する有形固定資産の減価償却費と同じ区分に含めて計上します(資産除去債務に関する会計基準 第14項)。資産計上された除去費用に係る費用配分額も同じ区分です(同 第13項)。この調整額は退職給付会計における利息費用と同様の性格を有するものと整理されています(同 第48項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。