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ノンキャンセラブル・フルペイアウトとは|新リース基準での位置づけ

2026-09-02
目次

ノンキャンセラブル(解約不能)とフルペイアウトは、リースをファイナンス・リースに分類するための2つの要件です。契約期間の中途で契約を解除できないこと(解約不能)と、借手が原資産からの経済的利益をほとんどすべて享受し、そのコストをほとんどすべて負担すること(フルペイアウト)の両方を満たしたときにのみ、ファイナンス・リースに該当します(リースに関する会計基準 第11項、リースに関する会計基準の適用指針 第59項)。

実務上の判定は数値基準で行います。現在価値基準(概ね90パーセント以上)または経済的耐用年数基準(概ね75パーセント以上)のいずれかに該当すれば、ファイナンス・リースと判定されます(リースに関する会計基準の適用指針 第62項)。

そして2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」では、この2要件は貸手の分類判定にだけ残り、借手の会計処理からは分類そのものがなくなります(リースに関する会計基準 第33項、第43項、第58項)。本記事では、用語の意味と判定基準、そして新基準での位置づけを公認会計士の視点から整理します。

ノンキャンセラブル・フルペイアウトの定義

企業会計基準第34号は、ファイナンス・リースを「契約に定められた期間(契約期間)の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリースで、借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース」と定義しています(リースに関する会計基準 第11項)。

適用指針は、この定義の前半を「解約不能のリース」、後半を「フルペイアウトのリース」と呼び、両方を満たすリースがファイナンス・リースであると整理しています(リースに関する会計基準の適用指針 第59項)。ノンキャンセラブルは解約不能のリースを指す英語由来の呼び方で、基準の条文に登場する正式な用語は「解約不能」です。

解約不能(ノンキャンセラブル)の意味

解約不能とは、契約期間の中途で借手が一方的に契約を解除できない状態をいいます。ここで重要なのは、契約書に「中途解約できる」と書かれていても、ただちに解約不能でないと判断されるわけではない点です。

法的形式上は解約可能であっても、解約に際して相当の違約金(規定損害金)を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリースは、解約不能のリースに準ずるリースとして取り扱われます(リースに関する会計基準の適用指針 第60項、リースに関する会計基準 BC26項)。適用指針は、次の2つを事実上解約不能と認められる典型例として挙げています(リースに関する会計基準の適用指針 第60項)。

  • 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を規定損害金として支払うこととされているリース
  • 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過の契約期間に係る利息等として一定の算式により算出した額を差し引いたものの概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース

つまり、判定の実質は「解約できるか」ではなく「解約したときに残りのリース料をほぼ全額払わされるか」にあります。契約書の解約条項と違約金の算式を必ずセットで確認してください。

フルペイアウトの意味

フルペイアウトは、借手が原資産を自ら所有していた場合とほぼ同じ経済的な立場に置かれている状態を指します。基準は2つの側面から定義しており、いずれも「ほとんどすべて」という水準が求められます(リースに関する会計基準の適用指針 第61項、リースに関する会計基準 BC26項)。

  • 経済的利益の実質的な享受:当該原資産を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受すること
  • コストの実質的な負担:当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担すること

「利益だけ」でも「コストだけ」でもなく、両方を実質的に引き受けている点がフルペイアウトの本質です。物件を買ったのと変わらない状態だからこそ、売買取引に準じた会計処理が求められるという構造になっています。

具体的な判定基準(現在価値基準・経済的耐用年数基準)

解約不能とフルペイアウトは概念的な要件であり、そのままでは判定できません。そこで適用指針は、経済的実質に基づく判断を前提としたうえで、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合にはファイナンス・リースと判定するという具体的な数値基準を置いています(リースに関する会計基準の適用指針 第62項)。

判定基準 該当する要件
現在価値基準 貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上であること
経済的耐用年数基準 貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること

現在価値基準は、次の関係が成り立つかどうかで判定します。

貸手のリース料の現在価値 ÷ 原資産の現金購入価額 ≧ 概ね90パーセント

ここでいう貸手のリース料とは、借手が貸手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払であり、リースにおいて合意された使用料をいいます(リースに関する会計基準 第23項)。リースに残価保証が含まれる場合、貸手は残価保証額を貸手のリース料に含めて判定します(リースに関する会計基準の適用指針 第64項)。現在価値の算定に用いる割引率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計額が原資産の現金購入価額等と等しくなるような利率、すなわち貸手の計算利子率です(リースに関する会計基準の適用指針 第66項)。

経済的耐用年数基準には2つの調整弁があります。第一に、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等を勘案すると現在価値基準の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合は、経済的耐用年数基準の対象から除かれます(リースに関する会計基準の適用指針 第62項(2))。第二に、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であっても、借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合には、現在価値基準のみにより判定を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第63項)。

数値基準は形式的に見えますが、あくまで解約不能とフルペイアウトという実質を測るための代理指標です。90パーセント・75パーセントに機械的に当てはめるのではなく、除外規定まで含めて判断する必要があります。

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新リース会計基準における位置づけ

ノンキャンセラブル・フルペイアウトという概念は、新リース会計基準でも維持されます。ただし、その使いどころが借手と貸手で大きく分かれる点が最大の変更です。

借手:分類を行わず単一のモデルへ

借手は、リース開始日に、算定されたリース負債を計上するとともに、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。この取扱いはファイナンス・リースかオペレーティング・リースかを問わず適用されるため、借手にはファイナンス・リースとオペレーティング・リースを分類する手続そのものがなくなります

したがって借手にとって、ノンキャンセラブル・フルペイアウトの判定はオンバランスするか否かの分岐点ではなくなります。もっとも、概念が完全に消えるわけではありません。契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに係る使用権資産は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により減価償却費を算定し、耐用年数は経済的使用可能予測期間とします(リースに関する会計基準 第37項)。これ以外のリースでは、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。所有権移転の有無という視点は、償却の場面に残ります。

貸手:分類判定がそのまま残る

一方、貸手はリースをファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類します(リースに関する会計基準 第43項)。さらにファイナンス・リースについて、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類します(リースに関する会計基準 第44項)。ファイナンス・リースは通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行い、リース開始日に所有権移転ファイナンス・リースはリース債権、所有権移転外ファイナンス・リースはリース投資資産として計上します(リースに関する会計基準 第45項、第46項)。オペレーティング・リースは通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行います(リースに関する会計基準 第48項)。

所有権移転ファイナンス・リースに分類されるのは、契約上の所有権移転条項があるリース、割安購入選択権が与えられておりその行使が確実に予想されるリース、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設され借手によってのみ使用されることが明らかなリースのいずれかに該当する場合です(リースに関する会計基準の適用指針 第70項)。

貸手の会計処理がこのように維持されたのは、IFRS第16号及びTopic 842のいずれにおいても貸手の会計処理に抜本的な改正が行われていないため、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲することとされたためです(リースに関する会計基準 BC13項)。ノンキャンセラブル・フルペイアウトは、貸手側では引き続き最重要の判定概念であり続けます。

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旧基準(企業会計基準第13号)との違い

企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」は、ファイナンス・リース取引を「リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース取引」と定義していました(リース取引に関する会計基準 第5項)。解約不能とフルペイアウトという2要件の骨格は、旧基準から一貫しています。

旧基準の具体的な判定基準も、解約不能のリース期間中のリース料総額の現在価値が見積現金購入価額の概ね90パーセント以上であること(現在価値基準)、又は解約不能のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(経済的耐用年数基準)とされており、水準そのものは同じでした(リース取引に関する会計基準の適用指針 第9項)。変わったのは、判定に用いる期間と金額の定義、そして判定を行う当事者です。

判定に用いる期間 旧基準は解約不能のリース期間、新基準は貸手のリース期間を用います。
現在価値基準の分子 旧基準はリース料総額の現在価値、新基準は貸手のリース料の現在価値です。
現在価値基準の分母 旧基準は見積現金購入価額、新基準は原資産の現金購入価額です。
判定を行う当事者 旧基準は借手と貸手の双方が判定していました。新基準では貸手のみが判定します。
借手の会計処理
への影響
旧基準は判定結果により売買処理と賃貸借処理に分かれました。新基準は分類にかかわらず使用権資産とリース負債を計上します。
数値基準の水準 概ね90パーセント以上・概ね75パーセント以上という水準は変わっていません。

貸手のリース期間は、借手のリース期間と同様に決定する方法、又は借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に再リース期間を加えて決定する方法のいずれかを貸手が選択して決定します(リースに関する会計基準 第32項)。旧基準の「解約不能のリース期間」を機械的に置き換えると判定結果がずれる可能性があるため、新基準への移行時には期間の定義から確認する必要があります。

なお、企業会計基準第13号は2007年3月に公表され(リースに関する会計基準 BC6項)、企業会計基準第34号は2023年5月に公表された企業会計基準公開草案第73号に寄せられた意見を踏まえて公表されたものです(リースに関する会計基準 BC11項)。第34号の適用により、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に従って会計処理されている取引については、これらの会計基準等の適用を終了することとされています(リースに関する会計基準 第59項)。

実務上の留意点

用語の理解を実務に落とし込む際、監査の現場で論点になりやすいのは次の3点です。

第一に、解約条項の読み方です。前述のとおり、解約可能と書かれた契約でも規定損害金の水準によっては事実上解約不能と判断されます(リースに関する会計基準の適用指針 第60項)。契約書の解約条項だけを見て一律にオペレーティング・リースと整理してしまう誤りは、実務で最も多く見られます。

第二に、不動産の取扱いです。土地、建物等の不動産のリースについても、原則として同じ手順でファイナンス・リースに該当するかオペレーティング・リースに該当するかを判定します。ただし土地については、所有権移転条項がある場合又は割安購入選択権がある場合を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定されます(リースに関する会計基準の適用指針 第68項)。土地と建物等を一括したリースは、原則として貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割したうえで、建物等について現在価値基準の判定を行います(リースに関する会計基準の適用指針 第69項)。

第三に、連結財務諸表での判定です。連結財務諸表において現在価値基準の判定を行う場合、必要に応じて、親会社における貸手のリース料及び連結子会社における貸手のリース料を合算した金額に基づき判定を行います。ただし重要性が乏しい場合には、親会社及び連結子会社の個別財務諸表における結果の修正を要しません(リースに関する会計基準の適用指針 第67項)。グループ内でリースを行っている場合は、個別と連結で結論が変わり得る点に注意してください。

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適用時期

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。3月決算会社であれば、適用初年度は2027年4月1日に開始する事業年度です。

本記事の執筆時点では強制適用の前であり、貸手の分類判定は引き続き企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に従って行われます。適用初年度に向けては、既存契約について新基準の定義に基づく再判定が必要かどうかを、貸手のリース期間・貸手のリース料の定義の違いを踏まえて確認しておくことが有効です。

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まとめ

ノンキャンセラブル(解約不能)とフルペイアウトは、ファイナンス・リースを構成する2つの要件であり、両方を満たしたときにのみファイナンス・リースに該当します(リースに関する会計基準 第11項、リースに関する会計基準の適用指針 第59項)。実務判定は現在価値基準(概ね90パーセント以上)と経済的耐用年数基準(概ね75パーセント以上)で行い、いずれかに該当すればファイナンス・リースと判定されます(リースに関する会計基準の適用指針 第62項)。

企業会計基準第34号では、この2要件は貸手の分類判定にそのまま残る一方、借手はすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上するため、分類の手続自体がなくなります(リースに関する会計基準 第33項、第43項)。用語は同じでも役割が変わるという点が、新基準を読むうえでの要点です。

解約条項の読み方や不動産リースの分割など、個別の契約条件によって結論が変わる論点も少なくありません。具体的なケースの判断にあたっては、公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

ノンキャンセラブルとフルペイアウトは、どちらか一方を満たせばファイナンス・リースになりますか。

いいえ、両方を満たす必要があります。ファイナンス・リースとは、解約不能のリースとフルペイアウトのリースのいずれも満たすリースをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第59項)。解約不能であってもフルペイアウトに該当しない場合、あるいはその逆の場合は、オペレーティング・リースに分類されます(リースに関する会計基準 第14項)。

契約書に中途解約条項があれば、解約不能には該当しませんか。

該当しないとは限りません。法的形式上は解約可能であっても、解約に際して相当の違約金である規定損害金を支払わなければならない等の理由から事実上解約不能と認められるリースは、解約不能のリースに準ずるリースとして取り扱われます(リースに関する会計基準の適用指針 第60項)。未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を支払う設計になっていないかを確認してください。

90パーセント・75パーセントという水準は新基準で変わりましたか。

水準自体は変わっていません。新基準でも、現在価値基準は概ね90パーセント以上、経済的耐用年数基準は概ね75パーセント以上とされています(リースに関する会計基準の適用指針 第62項)。ただし、旧基準が解約不能のリース期間中のリース料総額と見積現金購入価額を用いていたのに対し(リース取引に関する会計基準の適用指針 第9項)、新基準では貸手のリース料と原資産の現金購入価額、貸手のリース期間を用いる点が異なります。

新リース会計基準では、借手もノンキャンセラブル・フルペイアウトの判定を行いますか。

行いません。借手はリース開始日に使用権資産及びリース負債を計上することとされており(リースに関する会計基準 第33項)、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの分類は貸手が行うものとされています(リースに関する会計基準 第43項)。ただし、所有権が借手に移転すると認められるリースかどうかは、借手の使用権資産の償却方法と耐用年数に影響します(リースに関する会計基準 第37項、第38項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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