公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

新リース会計基準の申告調整|別表四・別表五(一)の記載と仕訳

2026-09-01
目次

新リース会計基準(企業会計基準第34号)を適用すると、これまで賃貸借処理していたオペレーティング・リースも借手の貸借対照表に載ります。一方で法人税は、その取引が税務上のリース取引に当たらない限り、従来どおり支払リース料を損金とします。会計と税務がずれる以上、法人税申告書での申告調整が避けられません。

この記事では、その申告調整を最初に結論として示したうえで、別表四・別表五(一)への記載、会計と税務を突き合わせる訂正仕訳、税効果会計の仕訳までを、基準の条項と法令の条文に基づいて確認します。

結論|オペレーティング・リースの申告調整は3項目

税務上のリース取引に該当しないリース(オペレーティング・リース)について使用権資産とリース負債を計上した場合、借手の申告調整は次の3項目に整理できます。会計上の費用(減価償却費と支払利息)を打ち消し、税務上の損金(債務の確定した支払リース料)を入れ直す、という構造です。

加算(留保)
減価償却費否認
会計上、使用権資産について計上した減価償却費を所得に加算します
加算(留保)
支払利息否認
会計上、リース負債について計上した支払利息を所得に加算します
減算(留保)
賃貸借取引に係る
費用の損金算入額
その事業年度において債務の確定した支払リース料を所得から減算します

3項目はいずれも留保の調整です。社外流出は生じません。したがって別表五(一)に使用権資産・リース負債・減価償却累計額の残高が積み上がり、リース期間の全体を通じて差異は解消します。

会計と税務で処理が分かれる理由

会計はすべてのリースをオンバランスする

借手は、リース開始日に、未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定した額によりリース負債を計上します。使用権資産は、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加算した額により計上します(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。この取扱いに、ファイナンス・リースかオペレーティング・リースかという区別はありません。

その後、利息相当額はリース期間にわたり原則として利息法により配分し、使用権資産は減価償却します(リースに関する会計基準 第36項、第38項)。所有権が借手に移転すると認められるリース以外では、原則として借手のリース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとします(リースに関する会計基準 第38項)。つまり損益計算書には、支払リース料ではなく減価償却費と支払利息が並びます。

税務は賃貸借のまま支払リース料を損金とする

法人税法上のリース取引とは、資産の賃貸借のうち、中途解約ができないこと(またはこれに準ずること)と、賃借人が経済的利益を実質的に享受し使用に伴う費用を実質的に負担すべきこととされていること、の両方に該当するものをいいます(法人税法 第64条の2第3項)。この2要件を満たさない賃貸借は、税務上のリース取引ではありません。

そして、内国法人が税務上のリース取引以外の賃貸借取引により資産の賃借を行った場合、その契約に基づき支払うこととされている金額のうち、その事業年度において債務の確定した部分の金額は、その事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されます(法人税法 第53条第1項)。この規定は2025年度の税制改正で設けられたもので、2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。会計上オンバランスしたかどうかは、損金算入額に影響しません。

会計(企業会計基準第34号) 法人税
(オペレーティング・リースの場合)
リース開始日に使用権資産とリース負債を計上する 資産・負債を認識しない
費用は減価償却費と支払利息に分かれる 損金は債務の確定した支払リース料
費用は前倒し(初期に大きく、後期に小さい) 損金は契約どおりの支払額

関連コラム新リース会計基準と税務の差異|法人税・税効果の実務

設例|使用権資産5,000万円のオペレーティング・リース

数値で確認します。前提は次のとおりです(単位:千円)。リース開始日はX1年4月1日、決算日は3月31日、借手のリース期間は5年、リース料は年額11,550千円で毎期末払い(総額57,750千円)、借手の追加借入利子率は年5%、付随費用および見積残存価額はゼロとします。この条件で現在価値により算定したリース開始日のリース負債および使用権資産は50,000千円です(リースに関する会計基準 第33項、第34項、リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。使用権資産は借手のリース期間5年、残存価額ゼロの定額法で償却するため、年間の減価償却費は10,000千円となります(リースに関する会計基準 第38項)。当該取引は税務上のリース取引には該当しないものとします。

会計上の仕訳(第1年度)

第1年度の支払利息は期首リース負債50,000千円に年5%を乗じた2,500千円、リース負債の元本返済額は11,550千円との差額9,050千円です。利息相当額はリース期間にわたり利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項、リースに関する会計基準の適用指針 第38項、第39項)。第1年度末のリース負債残高は40,950千円になります。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 50,000 リース負債 50,000
リース負債 9,050 現金預金 11,550
支払利息 2,500
減価償却費 10,000 減価償却累計額 10,000

第1年度の会計上の費用は、減価償却費10,000千円と支払利息2,500千円の合計12,500千円です。一方、税務上の損金は債務の確定した支払リース料11,550千円ですから、差額950千円が申告調整の対象になります。

税務上の取扱いに引き直す訂正仕訳

申告調整の内容は、会計上の仕訳を税務上の姿へ引き直す訂正仕訳として整理すると把握しやすくなります。使用権資産とリース負債を消し、減価償却費と支払利息を賃借料に置き換える、という組み替えです(法人税法 第53条第1項、法人税法 第64条の2第3項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
リース負債 50,000 使用権資産 50,000
賃借料 11,550 リース負債 9,050
支払利息 2,500
減価償却累計額 10,000 減価償却費 10,000

この訂正仕訳の損益項目(賃借料11,550千円、支払利息の取消2,500千円、減価償却費の取消10,000千円)がそのまま別表四の加算・減算になり、資産・負債項目(使用権資産、リース負債、減価償却累計額)がそのまま別表五(一)の増減になります。

別表四への記載

別表四「所得の金額の計算に関する明細書」には、第1年度について次の3行を立てます。区分名は法令上の様式で定められた固定の文言ではないため、社内で統一できていれば表現の細部は問いません。金額はいずれも「総額」欄と「留保」欄の両方に記載します。

加算
減価償却費否認
10,000千円(留保)
加算
支払利息否認
2,500千円(留保)
減算
賃貸借取引に係る
費用の損金算入額
11,550千円(留保)
差引の影響額 加算950千円(減価償却費否認と支払利息否認の合計から損金算入額を差し引いた金額)

初年度は会計上の費用が税務上の損金を上回るため、所得は増える方向に働きます。リース期間の後半になるとリース負債の残高が減り支払利息が小さくなるため、加算額は逓減し、やがて減算に転じます。リース期間を通算すると、会計上の費用の累計(減価償却費50,000千円+支払利息7,750千円=57,750千円)と税務上の損金の累計(支払リース料57,750千円)は一致します。

別表五(一)への記載

別表四の3項目がすべて留保である以上、別表五(一)「利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書」に残高が残ります。会計上の貸借対照表に計上されている科目を、税務上ゼロへ戻すための調整と考えると分かりやすくなります。

リース負債 当期の増50,000千円、当期の減9,050千円、差引翌期首現在利益積立金額40,950千円
使用権資産 当期の増△50,000千円、差引翌期首現在利益積立金額△50,000千円
減価償却累計額 当期の増10,000千円、差引翌期首現在利益積立金額10,000千円
差引合計額への影響 950千円(リース負債と減価償却累計額の合計から使用権資産を差し引いた金額)

差引合計額への影響950千円は、別表四の差引の影響額と一致します。第2年度以降も同じ考え方で増減を記載し、リース期間の最終年度末には3科目の残高がすべてゼロになります。実務では、この3科目の残高がリース台帳の使用権資産・リース負債・減価償却累計額と毎期一致しているかを、決算のたびに突合しておくことが安全です。

公認会計士事務所プライムパートナーズ 新リース会計基準対応支援 新リース会計基準の対応、影響額の簡易試算から 公認会計士が対応方針までご案内|公認会計士事務所プライムパートナーズ 無料試算・ご相談はこちら

税務上のリース取引に該当する場合の取扱い

同じリースでも、中途解約不能とフルペイアウトの2要件を満たせば税務上のリース取引に当たり、扱いが変わります。この場合、リース資産の賃貸人から賃借人への引渡しの時に売買があったものとして所得を計算します(法人税法 第64条の2第1項)。所有権移転外リース取引に係るリース資産については、償却方法はリース期間定額法とされます(法人税法施行令 第48条の2第1項第6号)。

ここで論点になるのが、会計上は「減価償却費」と「支払利息」に分かれる費用を、税務上どう受け止めるかです。法人税法上のリース資産について賃借人が賃借料その他当該リース資産を賃借するために支出した費用として損金経理をした金額は、償却費として損金経理をした金額に含まれます(法人税法施行令 第131条の2第3項)。さらに、使用権資産について減価償却費として経理した金額も、リース資産の償却費として損金経理をした金額に含まれる旨が明らかにされています(法人税基本通達 7-5-3)。

したがって、会計上の減価償却費と支払利息の合計を償却費として損金経理をした金額とみなし、リース期間定額法による償却限度額と比較します。合計額が償却限度額を超える部分は償却超過額として加算(留保)し、翌期以降に償却限度額に達しない年度が来た時点で認容減算します。オペレーティング・リースのように使用権資産とリース負債をまるごと否認するわけではない点が、大きな違いです。

なお、フルペイアウトの判定は、解約不能期間に賃借人が支払う賃借料の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%に相当する金額を超えるかどうかによります(法人税法施行令 第131条の2第2項)。会計上のリース期間と税務上のリース期間が一致しない契約もあるため、判定は契約ごとに行う必要があります。

関連コラムセールアンドリースバックの税務|金銭の貸借とされる要件と会計の差異

税効果会計の適用と繰延税金資産

一時差異とは、貸借対照表および連結貸借対照表に計上されている資産および負債の金額と、課税所得計算上の資産および負債の金額との差額をいいます(税効果会計に係る会計基準 第二 一 2)。オペレーティング・リースをオンバランスした場合、使用権資産・リース負債・減価償却累計額のそれぞれに一時差異が生じ、別表五(一)の差引合計額への影響がその純額に対応します。

一時差異のうち、解消するときにその期の課税所得を減額させる効果を持つものが将来減算一時差異です(税効果会計に係る会計基準 第二 一 3)。先ほどの設例では、第1年度末に950千円の将来減算一時差異が残ります。法定実効税率を30%とすると、計上する繰延税金資産は285千円です(単位:千円)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
繰延税金資産 285 法人税等調整額 285

将来減算一時差異に係る繰延税金資産の金額は、回収が行われると見込まれる期の税率に基づいて計算します(税効果会計に係る会計基準 第二 二 2)。また、繰延税金資産については、将来の回収の見込みについて毎期見直しを行います(税効果会計に係る会計基準 第二 二 1)。リースのオンバランスで生じる一時差異はリース期間の経過に応じて機械的に解消するため、解消時期のスケジューリングは比較的容易ですが、回収可能性の判断そのものは企業の分類に従って行う必要があります。

関連コラム繰延税金資産の回収可能性と企業分類の実務ポイント

実務上の留意点

簡便的な取扱いを使えば差異は生じない

短期リースについては、使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合の基準額以下のリースや、企業の事業内容に照らして重要性が乏しいリースについても、同様の簡便的な取扱いが認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

これらを適用したリースは会計上も費用処理となるため、税務上の損金と一致し、申告調整も税効果も生じません。契約本数の多い企業では、どこまで簡便的な取扱いに寄せるかが、申告調整の作業量を左右します。

関連コラム短期リース・少額リースの免除規定|適用要件と実務上の判断ポイント

会計と税務で適用開始のタイミングがずれる

企業会計基準第34号は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。上場準備企業では、監査対象期間との関係で早期適用を選ぶ例もあります。

一方、賃貸借取引に係る費用の損金算入の規定は、2025年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています(法人税法 第53条第1項)。税務側の受け皿は先に整っているため、早期適用を選んだ企業もそのまま申告調整に進めます。会計基準を適用する初年度から申告調整が必要になるので、税務申告のスケジュールを組む段階で作業を織り込んでおくことをおすすめします。

契約単位のデータを申告まで持ち回る

申告調整に必要なのは、契約ごとの減価償却費・支払利息・支払リース料の3つの数値です。会計システムから出てくるのは前二者、支払データから出てくるのは後者であることが多く、両者が契約単位で紐づいていないと調整額が組めません。リース台帳の設計段階で、税務側が使う支払リース料の欄まで用意しておくと、決算のたびの手戻りが減ります。

また、別表五(一)に3科目分の残高が積み上がるため、契約数が増えるほど別表の行数も増えます。契約単位で行を立てるのか、科目単位で合計を立てて明細を別途保管するのかは、早い段階で方針を決めておくとよいでしょう。

まとめ

新リース会計基準の適用でオペレーティング・リースをオンバランスしても、税務上のリース取引に該当しない限り、法人税の損金は債務の確定した支払リース料のままです(法人税法 第53条第1項)。その差は、減価償却費否認・支払利息否認の加算と、賃貸借取引に係る費用の損金算入額の減算という3項目で調整します。

3項目はいずれも留保であるため、別表五(一)に使用権資産・リース負債・減価償却累計額の残高が残り、リース期間の全体を通じて差異は解消します。将来減算一時差異として繰延税金資産の計上対象になりますが、回収可能性の判断は従来どおり企業の分類に従います。

税務上のリース取引に該当する場合は、会計上の減価償却費と支払利息の合計を償却費として損金経理をした金額とみなし、リース期間定額法による償却限度額と比較する形になります(法人税法施行令 第131条の2第3項、法人税基本通達 7-5-3)。同じ「リース」でも調整の型がまったく異なるため、まず契約が税務上のリース取引に当たるかどうかを整理することが出発点になります。判定や調整の要否は契約条件によって結論が変わりますので、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

新リース会計基準対応の無料相談はこちら

参考文献

よくある質問

申告調整の3項目はすべて留保でよいのですか

いずれも留保です。会計上の使用権資産・リース負債・減価償却累計額は、税務上は存在しない資産・負債であるため、社外へ流出した金額ではなく企業内部に残る差異として扱います。したがって別表四の加算・減算はすべて留保欄に記載し、対応する残高を別表五(一)に立てます。リース期間の全体を通算すれば会計上の費用累計と税務上の損金累計は一致するため、差異は必ず解消します。

初年度は所得が増えるということですか

オペレーティング・リースをオンバランスした場合、リース期間の前半は会計上の費用(減価償却費と支払利息の合計)が支払リース料を上回るため、差引では加算となり所得は増える方向に働きます。支払利息はリース負債の未返済元本残高に利率を乗じて算定するため、期間の経過とともに逓減します(リースに関する会計基準の適用指針 第39項)。その結果、後半では減算に転じます。

税務上のリース取引に該当するかどうかはどう判定しますか

賃貸借に係る契約が賃貸借期間の中途で解除できないこと(またはこれに準ずること)と、賃借人が経済的利益を実質的に享受でき、資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担すべきこととされていることの、両方に該当するかどうかで判定します(法人税法 第64条の2第3項)。後者については、解約不能期間に支払う賃借料の合計額が資産の取得のために通常要する価額のおおむね90%を超える場合に該当するものとされています(法人税法施行令 第131条の2第2項)。

短期リースや少額リースでも申告調整は必要ですか

簡便的な取扱いを適用して使用権資産およびリース負債を計上せず、借手のリース料をリース期間にわたり費用として計上している場合は、会計上の費用と税務上の損金がおおむね一致するため、申告調整は生じません(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。ただし、費用計上の方法が定額法で、支払時期が期末に偏るなど期ずれが生じる場合は、債務の確定した金額との差を確認する必要があります。

繰延税金資産はいつから計上することになりますか

企業会計基準第34号を適用した事業年度から、使用権資産等に係る一時差異が生じます。同基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することができます(リースに関する会計基準 第58項)。早期適用を選んだ場合は、その事業年度から税効果の検討が必要になります。回収可能性の判断は毎期見直しを行います(税効果会計に係る会計基準 第二 二 1)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。