公認会計士事務所プライムパートナーズ
お問い合わせ

短期リース・少額リースの免除規定|適用要件と実務上の判断ポイント

2026-08-26
目次

新リース会計基準(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」)では、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上することが原則です。ただし短期リースと少額リースについては、これらを計上せずにリース料を費用として処理できる簡便的な取扱いが用意されています。本記事では、この免除規定を使うための適用要件、選択の単位、費用処理の仕訳、注記と経過措置の取扱いを、条項単位で整理します。

免除規定の全体像

借手は、リース開始日にリース負債を計上し、これに開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。使用権資産とは、借手が原資産をリース期間にわたり使用する権利を表す資産をいい、従来は費用処理していた賃貸借契約も貸借対照表に載せる点が新基準の中心的な変更です(リースに関する会計基準 第10項)。

この原則に対する例外が、短期リースと少額リースの簡便的な取扱いです。いずれも「使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上する」という同じ効果をもたらしますが、要件と選択の単位は別々に定められています(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

原則的な取扱い リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上し、利息相当額の配分と使用権資産の償却を行います(リースに関する会計基準 第33項、第36項、第38項)。
短期リースの
簡便的な取扱い
借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まないリースについて、計上を省略して費用処理できます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第20項)。
少額リースの
簡便的な取扱い
基準額以下のリース、又は事業内容・契約金額に重要性が乏しいリース等について、計上を省略して費用処理できます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

どちらも「できる」規定であり、適用は任意です。適用する場合は、どの範囲に適用するかをあらかじめ決め、会計方針として継続的に運用することが実務上の出発点になります。

短期リースの適用要件

リース期間12か月以内と購入オプションの不存在

短期リースとは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいいます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。判定の基準日はリース開始日であり、契約書に記載された契約期間ではなく、会計上の「借手のリース期間」で測る点が要点です。

借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、行使することが合理的に確実な延長オプションの対象期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの対象期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第31項、リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。したがって、契約上は12か月でも自動更新が繰り返される見込みであれば、借手のリース期間が12か月を超え、短期リースに該当しないことがあります。

関連コラムリース期間の判定|延長・解約オプションと新リース会計基準

もう一つの要件である購入オプションは、金額の多寡を問いません。行使が合理的に確実かどうかにかかわらず、購入オプションを含むリースは短期リースの定義から外れます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。契約書の買取条項の有無を、期間の確認と同じ工程で洗い出しておく必要があります。

選択の単位と連結上の取扱い

短期リースの簡便的な取扱いは、リース1件ごとに選ぶものではありません。借手は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、適用するか否かを選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。

例えば、車両運搬具に係る短期リースには適用し、工具器具備品に係る短期リースには適用しないという選択は可能ですが、同じ科目の中で契約ごとに扱いを変えることはできません。連結財務諸表においては、個別財務諸表において個別貸借対照表に表示するであろう科目ごと、又は性質及び用途が類似する原資産のグループごとに行った選択を見直さないことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第21項)。

少額リースの適用要件

少額リースの簡便的な取扱いには、性格の異なる2つの入り口があります。いずれか一方を満たせば、使用権資産及びリース負債を計上せずに費用処理できます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

重要性が乏しい減価償却資産の
基準額による判定
重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリースが対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))。
事業内容と契約1件当たりの
金額による判定
事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、又は新品時の原資産の価値が少額であるリースが対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(2))。

基準額による判定と単位

1つ目の入り口は、自社が既に採用している購入時費用処理の基準額をそのまま持ち込む方法です。ここでの基準額は、当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より、利息相当額だけ高めに設定することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))。リース料には利息相当額が含まれるため、購入価額ベースの基準額と同水準では判定が厳しくなりすぎることへの手当てです。

判定の単位は、通常取引される単位ごとです。1つのリース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合には、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))。パソコンを複数台まとめて1本の契約でリースする場合でも、1台ごとに判定できるという意味になります。

重要性による判定と首尾一貫した適用

2つ目の入り口は、①企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース、又は②新品時の原資産の価値が少額であるリースです。①については、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれるときは、異なる科目ごとに判定することができます。②については、リース1件ごとにこの方法を適用するか否かを選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(2))。

①と②はいずれかを選択するものとされ、選択した方法は首尾一貫して適用しなければなりません(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(2))。年度や契約の性質によって①と②を使い分けることはできないため、どちらを採用するかは基準適用の準備段階で決めておく論点です。

①に該当するリースについて、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として借手のリース期間です。ただし、これに代えて契約上定められた契約期間とすることができ、また金額の算定にあたって維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第23項)。保守料込みのリース料をそのまま集計すると判定が不利になるため、この控除の可否は実務上の効き目が大きい定めです。

免除規定を適用した場合の会計処理と仕訳

免除規定を適用する場合、借手のリース料を借手のリース期間にわたり原則として定額法により費用として計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。支払額と費用計上額が一致するため、各期の費用は次の式で求められます。

1か月当たりの費用計上額 = 借手のリース料の総額 ÷ 借手のリース期間の月数

以下は自社作例です。A社が複合機を借手のリース期間12か月(購入オプションなし)でリースし、月額リース料は50,000円、支払は毎月末とします(単位:円)。短期リースの簡便的な取扱いを適用した場合の毎月の仕訳は次のとおりです(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
支払リース料 50,000 現金預金 50,000

比較のため、同じ複合機を借手のリース期間36か月でリースし、免除規定に該当しないケースを示します。月額リース料50,000円、借手の追加借入利子率は年3パーセント、付随費用及びリース・インセンティブはなく、未払のリース料を現在価値に割り引いた額が1,719,286円と算定されたとします(単位:円)。リース開始日の仕訳は次のとおりです(リースに関する会計基準 第33項、第34項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 1,719,286 リース負債 1,719,286

原則処理では、この後に利息相当額の各期への配分と使用権資産の償却が続き、支払リース料は貸借対照表と損益計算書に分解されて表れます(リースに関する会計基準 第36項、第38項)。免除規定を適用すれば、この一連の計算とその後の再測定が不要になる点が、実務上の最大の効果です。

関連コラム新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説

免除規定に関する注記

免除規定を適用しても、注記が不要になるわけではありません。損益計算書において区分して表示していない場合、第20項を適用して会計処理した短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第100項(1))。

この費用には、借手のリース期間が1か月以下のリースに係る費用及び少額リースに係る費用を含めることを要しません(リースに関する会計基準の適用指針 第100項(1))。集計対象から外せる範囲が明示されているため、リース管理台帳の設計時に1か月以下の契約と少額リースを識別できるようにしておくと集計負担を抑えられます。

また、当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報として、リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額を注記しますが、ここから少額リースに係るキャッシュ・アウトフローは除かれます(リースに関する会計基準の適用指針 第102項(1))。会計方針に関する情報として明示的に注記が求められているのは、リースを構成しない部分を分けない選択、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの選択、借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択の3つです(リースに関する会計基準の適用指針 第97項)。

適用時期と経過措置における取扱い

新リース会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。適用指針の適用時期も同様です(リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。

適用初年度は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用します。ただし、期首より前に遡及適用した場合の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から適用することもできます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。

後者を選択する借手には、免除規定に関連する経過的な取扱いが3つ用意されています。第一に、企業会計基準適用指針第16号において個々のリース資産に重要性が乏しいとして通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていたリースは、第20項又は第22項にかかわらず、当該会計処理を継続することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第122項)。

第二に、少額リースの簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上しないリースについては、移行時の修正を行いません(リースに関する会計基準の適用指針 第123項(4))。第三に、適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについては、現在価値による測定を行わず、第20項の方法により会計処理することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第124項(2))。移行作業の対象契約を実質的に絞り込める定めであり、初期対応の負担を大きく左右します。

関連コラム新リース会計基準の経過措置|適用初年度の選択肢と遡及適用の実務

実務上の落とし穴

第一の落とし穴は、契約期間と借手のリース期間の取り違えです。短期リースの判定はリース開始日の借手のリース期間で行うため、1年契約でも延長オプションを行使することが合理的に確実であれば12か月を超えます(リースに関する会計基準 第31項、リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。オフィスや駐車場のように更新が常態化している契約は、要注意の類型です。

第二に、サブリース取引への影響があります。ヘッドリースについて短期リース又は少額リースの簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合、サブリースはオペレーティング・リースに分類されます(リースに関する会計基準の適用指針 第91項)。借手側の簡便法の選択が、貸手側の分類まで連動する点は見落としやすい論点です。

第三に、選択単位の不統一があります。短期リースは科目又は原資産のグループ単位、少額リースは基準額であれば通常取引される単位、重要性による判定であれば契約1件単位と、単位の考え方が異なります(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。運用ルールを文書化しないまま各拠点に判断を委ねると、同種資産で扱いが分かれ、監査上の指摘につながります。

第四に、少額リースの2つの方法の混用があります。事業内容と契約金額による判定と、新品時の原資産の価値による判定は、いずれかを選択して首尾一貫して適用する必要があります(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(2))。有利な方を契約ごとに選ぶ運用は認められません。

まとめ

短期リースの免除規定は、リース開始日の借手のリース期間が12か月以内で購入オプションを含まないことを要件とし、科目又は原資産のグループごとに適用の可否を選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第20項)。少額リースの免除規定は、購入時費用処理の基準額による判定と、事業内容及び契約1件当たりの金額等による判定の2つの入り口を持ちます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項)。

免除規定を適用しても注記は残り、短期リースに係る費用の発生額や少額リースを除いたキャッシュ・アウトフローの合計額を把握できる体制が必要です(リースに関する会計基準の適用指針 第100項、第102項)。適用初年度には、旧基準での重要性判断の継続や、期首から12か月以内に終了するリースの費用処理といった経過的な取扱いも用意されています(リースに関する会計基準の適用指針 第122項、第124項)。

免除規定は移行作業と日常の管理負担を大きく減らせる一方、選択単位と首尾一貫性の設計を誤ると後戻りが難しくなります。強制適用は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からであり、契約の棚卸しと運用ルールの整備を先に進めておくことが有効です(リースに関する会計基準 第58項)。具体的なケースについては公認会計士へのご相談をおすすめします。

新リース会計基準対応の無料相談はこちら

参考文献

よくある質問

短期リースの免除規定は、リース1件ごとに選べますか。

選べません。借手は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、適用するか否かを選択します(リースに関する会計基準の適用指針 第20項)。連結財務諸表においては、個別財務諸表で行った選択を見直さないことができます(リースに関する会計基準の適用指針 第21項)。

少額リースの判定に用いる基準額は、どのように決めますか。

重要性が乏しい減価償却資産について購入時に費用処理する方法を採用している場合、その基準額以下のリースが対象になります。この基準額は、当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より、利息相当額だけ高めに設定することができます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))。判定は通常取引される単位ごとに行い、1つの契約に複数の単位の原資産が含まれる場合は原資産の単位ごとに適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第22項(1))。

契約期間が12か月の賃貸借は、必ず短期リースになりますか。

なりません。判定はリース開始日における借手のリース期間で行い、行使することが合理的に確実な延長オプションの対象期間を含めて決定します(リースに関する会計基準 第31項、リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2)、第17項)。また、購入オプションを含むリースは短期リースに該当しません(リースに関する会計基準の適用指針 第4項(2))。

免除規定を適用した場合、注記は不要になりますか。

不要にはなりません。短期リースに係る費用の発生額を損益計算書で区分表示していない場合は、含まれる科目及び発生額を注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第100項(1))。ただし、借手のリース期間が1か月以下のリース及び少額リースに係る費用は含めることを要しません。また、リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記からは、少額リースに係るものが除かれます(リースに関する会計基準の適用指針 第102項(1))。

適用初年度に、移行作業を軽くする定めはありますか。

あります。累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する方法を選択する借手は、適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて、現在価値による測定を行わず費用処理する方法を適用できます(リースに関する会計基準の適用指針 第118項、第124項(2))。また、旧基準で個々のリース資産に重要性が乏しいとして賃貸借処理していたリースは、その処理を継続できます(リースに関する会計基準の適用指針 第122項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

士業の先生向け専門家AI
士業AI【会計】
▼▼▼ まずは専門家に相談 ▼▼▼