03-6773-5062

受付時間 平日 10:00〜18:00

お問い合わせ フォームは24時間受付
財務会計

株式交換の会計処理|個別・連結の仕訳と取得企業の決定

目次
  1. 株式交換の会計処理の全体像
  2. 会社法上の位置づけと企業結合日
  3. 企業結合会計上の3分類
  4. 個別財務諸表と連結財務諸表の役割分担
  5. 取得企業の決定
  6. 対価が株式である場合の考慮要素
  7. 完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
  8. 子会社株式の取得原価と払込資本
  9. 完全親会社の個別財務諸表の仕訳例
  10. 取得関連費用と株式交付費
  11. 完全子会社の個別財務諸表上の会計処理
  12. 連結財務諸表上の会計処理とのれん
  13. 投資と資本の相殺消去とのれんの算定
  14. のれんの償却・表示とみなし取得日
  15. 逆取得となる株式交換
  16. 完全親会社の個別財務諸表
  17. 連結財務諸表
  18. 実務上の留意点
  19. 株式価値算定と取得原価の配分
  20. 子会社株式に係る税効果と注記
  21. 適用時期と改正の経緯
  22. まとめ
  23. 参考文献
  24. よくある質問
  25. 株式交換で完全親会社の個別財務諸表にのれんは計上されますか。
  26. 子会社株式の取得原価は、いつの株価を使って算定しますか。
  27. 完全子会社の個別財務諸表では何か処理が必要ですか。
  28. 株式を交付した完全親会社が取得企業にならないことはありますか。
  29. グループ内の子会社を株式交換で完全子会社化する場合も同じ処理ですか。
  30. 株式交換に伴って支払った費用はどこに計上しますか。

株式交換の会計処理は、完全親会社の個別財務諸表では「子会社株式の取得と払込資本の増加」、連結財務諸表では「パーチェス法によるのれんの計上」という二層構造で整理できます。のれんは個別財務諸表には計上されず、連結財務諸表を作成する段階で初めて姿を現します。

この二層構造が成り立つのは、その株式交換が企業結合会計上の「取得」に該当する場合です。どちらが取得企業になるかで、測定の基礎が「時価」か「適正な帳簿価額」かに変わります。本稿では、取得企業の決定から個別・連結の処理、逆取得の取扱いまでを仕訳例とともに整理します。

株式交換の会計処理の全体像

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社又は合同会社に取得させることをいい(会社法 第2条第31号)、発行済株式の全部を取得する株式交換完全親会社との間で株式交換契約を締結します(会社法 第767条)。完全親会社が株式会社であるときは、対価が完全親会社の株式であればその数又は算定方法、資本金及び準備金の額に関する事項などを契約で定めます(会社法 第768条第1項)。対価と増加資本はこの契約で決まります。会計上の企業結合日も、会社法上の効力発生日と同じ株式交換日です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第31項)。

企業結合会計上の3分類

取得とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいい(企業結合に関する会計基準 第9項)、共同支配企業の形成および共通支配下の取引以外の企業結合が取得となってパーチェス法により処理されます(企業結合に関する会計基準 第17項)。

取得 支配の獲得を伴う企業結合。取得原価を企業結合日の時価で測定し、識別可能資産及び負債に配分する
共同支配企業の形成 複数の独立した企業が契約等に基づき共同支配企業を形成する企業結合。資産及び負債は移転直前の適正な帳簿価額により計上する
共通支配下の取引 結合当事企業のすべてが企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、その支配が一時的でない場合の企業結合

実務で多いのは、外部の会社を完全子会社化する「取得」と、支配済みの子会社を100%子会社化する「共通支配下の取引」です。後者は資産及び負債を原則として移転直前の適正な帳簿価額により計上するため(企業結合に関する会計基準 第41項)、時価評価ものれんも生じません。本稿は前者を扱います。

関連コラム共通支配下の取引とは|グループ内再編の会計処理と簿価引継ぎ▸

個別財務諸表と連結財務諸表の役割分担

株式交換は、相手企業の株式の取得を通じた間接取得の形式です。この形式の相違は、原則として連結財務諸表上の会計処理には影響しないものの、個別財務諸表上の会計処理には影響します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第34項)。

財務諸表 株式交換で生じる主な処理
完全親会社の個別財務諸表 子会社株式の計上と、交付株式に対応する払込資本の増加。のれんは計上されない
完全子会社の個別財務諸表 株主が入れ替わるだけで、資産及び負債の帳簿価額は原則として変動しない
完全親会社の連結財務諸表 識別可能資産及び負債の時価評価、投資と資本の相殺消去、のれん又は負ののれんの計上

取得企業の決定

取得企業の決定には連結会計基準の考え方を用い、それによって明確でない場合には第19項から第22項の要素を考慮します(企業結合に関する会計基準 第18項)。ここには、結合後企業に支配株主が存在するとき、当該株主により企業結合前から支配されていた結合当事企業を取得企業とすることも含まれます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第32項)。

対価が株式である場合の考慮要素

主な対価が現金若しくは他の資産の引渡し等となる企業結合では、通常、当該資産を引き渡す企業が取得企業となります(企業結合に関する会計基準 第19項)。一方、株式交換の対価は通常、完全親会社の株式です。この場合も通常は株式を交付する企業が取得企業となりますが、そうならないとき(逆取得)もあるため、次の要素を総合的に勘案します(企業結合に関する会計基準 第20項)。

総体としての株主が占める
相対的な議決権比率の大きさ
ある結合当事企業の総体としての株主が、結合後企業の議決権比率のうち最も大きい割合を占める場合
最も大きな議決権比率を
有する株主の存在
過半には至らないものの最も大きな議決権比率を有する株主がおり、他に重要な議決権比率を有する者がいない場合
取締役等を選解任できる
株主の存在
結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を選任又は解任できる株主がいる場合
取締役会等の構成 結合当事企業の役員若しくは従業員である者又はこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関を事実上支配する場合
株式の交換条件 ある結合当事企業が他の結合当事企業の企業結合前における株式の時価を超えるプレミアムを支払う場合

いずれも、該当する株主・役員がいた結合当事企業が通常、取得企業となります。議決権比率の判断では潜在株式の存在も考慮しますが、権利行使の可能性がないと見込まれる場合は考慮しないことが適切と考えられます。また「株式の交換条件」でいうプレミアムとは、交換比率の算定にあたり、主要条件が合意された日などの企業結合前における株式の市場価格に加えて、支配する対価としてのプレミアムが反映されている場合です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第32-2項、第32-4項)。交換比率算定書の内容が、そのまま取得企業の決定の判断材料になります。

また、いずれかの企業の相対的な規模(例えば、総資産額、売上高あるいは純利益)が著しく大きい場合には、通常、当該企業が取得企業となります(企業結合に関する会計基準 第21項)。

完全親会社の個別財務諸表上の会計処理

子会社株式の取得原価と払込資本

完全子会社株式の取得原価は、取得の対価に付随費用を加算して算定します。株式交換日の前日に完全子会社となる企業の株式を保有していた場合には、その前日の適正な帳簿価額により子会社株式に振り替えます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第110項)。株式の交付の場合、取得の対価は、支払対価となる財の時価と被取得企業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定し(企業結合に関する会計基準 第23項)、市場価格のある取得企業等の株式が交付される場合は原則として企業結合日における株価を基礎とします(企業結合に関する会計基準 第24項)。交換比率の算定に用いた基準日の株価ではない点に注意が必要です。

対価として新株を発行した場合は払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として処理し、内訳項目は会社法の規定に基づき決定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第111項)。株式交換が支配取得に該当する場合、株主資本等変動額は吸収型再編対価時価又は完全子会社の株式の時価を基礎として算定し(会社計算規則 第39条第1項)、資本金及び資本剰余金の増加額は株主資本等変動額の範囲内で株式交換契約の定めに従い定めた額とし、利益剰余金の額は変動しません(会社計算規則 第39条第2項)。

対価として自己株式を処分した場合は、増加すべき株主資本の額から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加として処理します。自社の株式以外の財産を交付した場合は、その財産の時価と企業結合日の前日における適正な帳簿価額との差額を株式交換日に損益へ計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第112項、第113項)。

完全親会社の個別財務諸表の仕訳例

P社がS社の発行済株式の全部を取得し、対価としてP社の新株のみを交付したものとします(単位:百万円)。株式交換日のP社株価に交付株式数を乗じた取得の対価は2,000、付随費用はないものとします(企業結合に関する会計基準 第24項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第110項)。株式交換契約により、資本金の増加額を1,000、残額をその他資本剰余金と定めています(会社計算規則 第39条第2項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
子会社株式 2,000 資本金 1,000
その他資本剰余金 1,000

借方は子会社株式の一行だけで、S社の個々の資産・負債ものれんも登場しません。個別上は「株式を発行して子会社株式を取得した」取引にすぎません。

取得関連費用と株式交付費

取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用として処理します(企業結合に関する会計基準 第26項)。一方、株式の交付に伴い発生する費用(登録免許税、証券会社への業務委託手数料等)は、取得原価には含めず、別途、株式交付費として会計処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第49項)。

完全子会社の個別財務諸表上の会計処理

株主が入れ替わっても完全子会社の法人格も資産・負債も存続するため、個別財務諸表で資産及び負債を時価評価し直すことはなく、のれんも計上されません。定めがあるのは、次の限定的な場面です。

完全親会社が完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合等には、完全子会社は、株式交換日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第115-2項)。また、完全子会社が自己株式を完全親会社に取得される場合には、株式交換後のその他資本剰余金の額を調整します(会社計算規則 第41条)。

連結財務諸表上の会計処理とのれん

投資と資本の相殺消去とのれんの算定

取得原価は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点において識別可能なものの同日の時価を基礎として、企業結合日以後1年以内に配分します(企業結合に関する会計基準 第28項)。法律上の権利など分離して譲渡可能な無形資産は、識別可能なものとして取り扱います(企業結合に関する会計基準 第29項)。

資本連結手続では、完全親会社の投資と完全子会社の資本を相殺消去します。投資は取得の対価の算定方法に準じて算定し、完全子会社の資本は取得原価の配分方法に準じて算定された識別可能資産及び負債の差額とします(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第116項)。取得原価が配分された純額を上回る場合にはのれん、下回る場合には負ののれんとなります(企業結合に関する会計基準 第31項)。

先の作例を続けます(単位:百万円)。株式交換日のS社の株主資本は資本金500と利益剰余金800の合計1,300、S社が保有する土地に300の評価益があり、その他の資産・負債に時価と帳簿価額の差はないものとします。識別可能資産及び負債の差額は1,600となり、P社の投資2,000との差額400がのれんです(企業結合に関する会計基準 第28項、第31項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第116項)。連結修正仕訳は次のとおりです。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
土地 300 評価差額 300
資本金 500 子会社株式 2,000
利益剰余金 800
評価差額 300
のれん 400

1行目が識別可能資産の時価評価、2行目以下が投資と資本の相殺消去です。完全子会社化のための株式交換では非支配株主持分は生じません。なお、株式交換日の前日に完全子会社となる企業の株式を保有していた場合は、株式交換日の時価に基づく額を取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は当期の段階取得に係る損益として処理されます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第116項)。

関連コラム資本連結手続とは|投資と資本の相殺消去・のれん・非支配株主持分の実務▸

のれんの償却・表示とみなし取得日

のれんは資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。ただし、金額に重要性が乏しい場合は、生じた事業年度の費用として処理できます。表示は無形固定資産の区分、当期償却額は販売費及び一般管理費の区分です(企業結合に関する会計基準 第32項、第47項)。負ののれんは、識別可能資産及び負債の把握と取得原価の配分を見直してもなお生じる場合に、生じた事業年度の利益として処理し、原則として特別利益に表示します(企業結合に関する会計基準 第33項、第48項)。

株式交換日が完全子会社の決算日以外の日である場合は、その前後いずれかの決算日(みなし取得日)に株式交換が行われたものとみなして会計処理できます。ただし、みなし取得日は、企業結合の主要条件が合意されて公表された日以後としなければなりません(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第117項)。

逆取得となる株式交換

完全親会社の個別財務諸表

逆取得とは、完全親会社が被取得企業、完全子会社が取得企業となる場合をいいます。規模の大きい非上場会社を規模の小さい上場会社が完全子会社化し、非上場会社の旧株主が結合後企業の議決権の大半を握るケースが典型です(企業結合に関する会計基準 第20項、第21項)。

この場合、完全親会社の個別財務諸表では、完全子会社の株式交換直前における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて、取得企業株式(完全子会社株式)の取得原価を算定します(企業結合に関する会計基準 第36項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第118項)。時価ではなく適正な帳簿価額が使われる点が最大の相違です。新株を発行した場合は払込資本の増加として処理し、増加すべき株主資本の額はこの取得原価に準じて算定します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第117-2項)。

A社(完全親会社・被取得企業)がB社(完全子会社・取得企業)を株式交換により完全子会社化し、逆取得と判定されたものとします(単位:百万円)。株式交換日の前日のB社の適正な帳簿価額による株主資本の額は1,300、A社は新株のみを交付し、株式交換契約により資本金の増加額を600、残額をその他資本剰余金と定めています(企業結合に関する会計基準 第36項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第118項、第117-2項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
子会社株式 1,300 資本金 600
その他資本剰余金 700

取得の対価がA社株式の時価ではなくB社の株主資本の額で測られるため、子会社株式も払込資本も、通常の取得とは大きく異なる金額になります。

連結財務諸表

逆取得では、完全子会社(取得企業)が完全親会社を被取得企業としてパーチェス法を適用します。株式交換日の前日における完全子会社の連結財務諸表上の金額(作成していない場合は個別財務諸表上の金額)に、取得原価の算定、取得原価の配分、増加すべき株主資本の会計処理により算定された額を加算します。取得の対価となる財の時価は、完全親会社の株主が結合後企業に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の完全子会社株式を、完全子会社が交付したものとみなして算定します。連結財務諸表上の資本金は完全親会社の資本金とし、株式交換直前の連結財務諸表上の資本金と異なる場合は、その差額を資本剰余金に振り替えます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第119項)。

実務上の留意点

株式価値算定と取得原価の配分

非公開企業同士の株式の交換で、企業結合会計上の測定値として妥当と認められる時価純資産が算定されている場合には、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び負債の企業結合日の時価を基礎とした正味の評価額をもって評価することもできます。また、交換比率を算定する目的で算定された価額であっても、被取得企業の時価や取得の対価となる財の時価に適切に調整しており、かつ企業結合日までに重要な変動が生じていないと認められる場合は、取得の対価とすることができます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第38項、第39項)。時価評価の対象資産と識別すべき無形資産の洗い出しが、1年以内という配分期限の管理の起点になります。

関連コラム【株式価値算定を徹底解説】M&A、事業承継で失敗しないためのバリュエーション戦略▸

子会社株式に係る税効果と注記

完全親会社が受け入れた子会社株式に係る一時差異(取得のときから生じていたものに限る)に関する税効果は認識しません。ただし、予測可能な期間に当該子会社株式を売却する予定がある場合、又は売却その他の事由によりその他有価証券として分類されることとなる場合には、当該一時差異に対する税効果を認識します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第115項)。

注記としては、企業結合の概要、取得原価の算定等に関する事項、取得原価の配分に関する事項、比較損益情報などが求められます。株式を交付した場合は株式の種類別の交換比率及びその算定方法並びに交付又は交付予定の株式数を、のれんについては金額、発生原因、償却方法及び償却期間を注記します(企業結合に関する会計基準 第49項)。

適用時期と改正の経緯

企業結合に関する会計基準は複数回の改正を経ています。2003年に公表された会計基準は2006年4月1日以後実施される企業結合から、2008年改正の会計基準は2010年4月1日以後実施される企業結合から適用されました(企業結合に関する会計基準 第56項、第57項)。2008年改正では、持分プーリング法の廃止及び取得企業の決定方法、株式の交換の場合における取得原価の算定方法、段階取得における取得原価の会計処理、負ののれんの会計処理等が見直されています(企業結合に関する会計基準 第64項)。

2013年改正の会計基準は2015年4月1日以後開始する事業年度の期首から(企業結合に関する会計基準 第58-2項)、最新である2019年改正の会計基準は2019年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用されています(企業結合に関する会計基準 第58-3項)。企業会計基準適用指針第10号も、2019年の企業結合会計基準の改正に伴い改正されています(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第1-2項)。現在の株式交換には、これらの改正後の定めが適用されます。

関連コラム企業結合に関する会計基準|取得法とのれん・取得原価の配分の実務▸

まとめ

株式交換の会計処理は、次の順序で組み立てると整理できます。まず、その企業結合が取得・共同支配企業の形成・共通支配下の取引のいずれかを判定し(企業結合に関する会計基準 第17項)、取得であれば連結会計基準の考え方と5つの考慮要素により取得企業を決定します(企業結合に関する会計基準 第18項、第20項)。

完全親会社の個別財務諸表では、株式交換日の株価等を基礎とした取得の対価に付随費用を加えた額で子会社株式を計上し、対応する額を払込資本の増加として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第110項、第111項)。連結財務諸表では、識別可能資産及び負債を企業結合日の時価で評価し、投資と資本を相殺消去して差額をのれんとして計上します(企業結合に関する会計基準 第28項、第31項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第116項)。

逆取得では、子会社株式の取得原価が時価ではなく完全子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定されます(企業結合に関する会計基準 第36項、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第118項)。この一点を見落とすと、個別・連結の双方で数値が大きく食い違います。具体的なケースについては、公認会計士へのご相談をおすすめします。

お問い合わせはこちら

参考文献

よくある質問

株式交換で完全親会社の個別財務諸表にのれんは計上されますか。

計上されません。個別財務諸表に計上されるのは、取得の対価に付随費用を加算して算定した子会社株式です。のれんは、連結財務諸表を作成する段階で、投資と資本を相殺消去した差額として計上されます(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第110項、第116項、企業結合に関する会計基準 第31項)。

子会社株式の取得原価は、いつの株価を使って算定しますか。

市場価格のある取得企業等の株式が対価として交付される場合には、取得の対価となる財の時価は、原則として企業結合日における株価を基礎にして算定します(企業結合に関する会計基準 第24項)。株式交換の企業結合日は株式交換日です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第31項)。

完全子会社の個別財務諸表では何か処理が必要ですか。

資産及び負債を時価評価し直す処理はありません。定めがあるのは、完全親会社が完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合等に、株式交換日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権等の額を利益に計上する処理です(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第115-2項)。自己株式を完全親会社に取得される場合は、その他資本剰余金の額の調整が必要です(会社計算規則 第41条)。

株式を交付した完全親会社が取得企業にならないことはありますか。

あります。主な対価が株式である企業結合では通常、株式を交付する企業が取得企業となりますが、逆取得もあるため、議決権比率の大きさ、最も大きな議決権比率を有する株主の存在、取締役等を選解任できる株主の存在、取締役会等の構成、株式の交換条件の5要素を総合的に勘案します。相対的な規模が著しく大きい結合当事企業がある場合は、通常、その企業が取得企業となります(企業結合に関する会計基準 第20項、第21項)。

グループ内の子会社を株式交換で完全子会社化する場合も同じ処理ですか。

異なります。結合当事企業のすべてが企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、その支配が一時的でない場合は共通支配下の取引に該当し、企業集団内を移転する資産及び負債は原則として移転直前に付されていた適正な帳簿価額により計上します(企業結合に関する会計基準 第16項、第41項)。会社計算規則上も、共通支配下関係にある場合の株主資本等変動額は、完全子会社の財産の株式交換直前の帳簿価額を基礎として算定します(会社計算規則 第39条第1項)。

株式交換に伴って支払った費用はどこに計上しますか。

取得関連費用(外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料等)は、発生した事業年度の費用として処理します(企業結合に関する会計基準 第26項)。株式の交付に伴い発生する登録免許税や証券会社への業務委託手数料等は、取得原価に含めず株式交付費として処理します(企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針 第49項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

Office

公認会計士事務所プライムパートナーズ

大手監査法人出身の公認会計士が、会計・監査・株価算定のご相談をお受けしています。

  • オフィスが入居する IsaI AkasakA のエントランス
  • 代表 公認会計士 島本 雅史
  • プライムパートナーズの会議室
事務所名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
所在地
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2-33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062(平日 10:00〜18:00)
対応責任者
公認会計士 島本 雅史