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不動産賃貸借のリース期間|普通借家・定期借家の判断

2026-08-21
目次

オフィスや店舗の賃貸借契約は、契約書に「期間2年、以後自動更新」とだけ書かれていることが少なくありません。新リース会計基準では、この契約書上の期間がそのまま会計上のリース期間になるとは限らず、更新される期間まで含めて判断する必要があります。リース期間の長短は使用権資産とリース負債の計上額に直接影響するため、不動産賃貸借は影響額が最も大きくなりやすい領域です。

本記事では、普通借家契約と定期借家契約という契約形態の違いを軸に、不動産賃貸借のリース期間をどのように決めるかを整理します。借地借家法の法定更新や中途解約予告条項の扱い、判断が変わったときの再測定までを、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」および同適用指針の条項に沿って解説します。

不動産賃貸借でリース期間の判断が難しい理由

新リース会計基準では、借手はすべてのリースについて、リース開始日に使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第33項)。このとき計上額の基礎になるのが、借手のリース期間中に支払う借手のリース料です(同 第34項、第35項)。つまりリース期間を何年とみるかで、貸借対照表に載る金額が大きく変わります。

不動産賃貸借が難しいのは、契約書に書かれた期間と、借手が実際にその物件を使い続ける期間が一致しないことが多いためです。日本の事務所等の不動産賃貸借契約については、基準の開発過程でもサービス性が強いこと、借手が無条件の支払義務を負わないこともあることが論点として取り上げられました。もっとも審議の結果、これらの契約について国際的な会計基準と異なる取扱いを設けないこととされています(リースに関する会計基準 第BC31項)。国内特有の商慣行があっても、リース期間の判断枠組み自体は原則どおり適用されます。

関連コラム新リース会計基準とは|使用権資産とリース負債をわかりやすく解説

借手のリース期間を構成する3つの要素

借手のリース期間は、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、次の2つの期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。契約書の期間をそのまま使うのではなく、3つの要素を積み上げて算定するのが出発点です。

解約不能期間 借手が原資産を使用する権利を有する、解約することができない期間
延長オプションの対象期間 借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
解約オプションの対象期間 借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間

ここで見落とされやすいのが、解約する権利をどちらが持っているかで扱いが分かれる点です。借手のみがリースを解約する権利を有している場合、その権利は借手が利用可能なオプションとして、リース期間を決定するにあたって考慮します。これに対し、貸手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該期間は借手の解約不能期間に含めます(リースに関する会計基準 第31項)。不動産賃貸借では貸手からの解約が法律上制限されているため、この区別が実務上の分かれ目になります。

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普通借家契約のリース期間

法定更新と解約不能期間の関係

普通借家契約では、期間の定めがある建物の賃貸借について、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます(借地借家法 第26条第1項)。さらに、貸手による更新拒絶の通知や解約の申入れは、正当の事由があると認められる場合でなければできません(借地借家法 第28条)。これらの規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とされます(借地借家法 第30条)。

実務上の意味はこうです。契約書に「期間2年」と書かれていても、貸手の側から一方的に契約を終わらせることは容易ではありません。したがって、契約期間の満了によって借手の使用権が当然に終わると考えるのではなく、更新される期間を延長オプションの対象期間として捉え、行使が合理的に確実かどうかを評価するのが基本的な進め方になります。この評価を経ずに契約期間の2年をそのままリース期間とすると、使用権資産とリース負債が過小に計上されるおそれがあります。

借手の中途解約予告条項の扱い

オフィスの賃貸借契約では、借手が6か月前に予告すれば中途解約できる旨の条項が置かれることがよくあります。これは借手のみが解約する権利を有している状況にあたるため、借手が利用可能な解約オプションとして扱い、その行使をしないことが合理的に確実である期間をリース期間に含めます(リースに関する会計基準 第31項)。

解約に伴って違約金の支払が生じる契約も同様に検討します。リースの解約に対する違約金の借手による支払額は、借手のリース期間に借手による解約オプションの行使を反映している場合に、借手のリース料に含めます(リースに関する会計基準 第19項、第35項)。違約金の水準が高いほど解約しにくくなるため、この点はリース期間の判断そのものにも影響します。

定期借家契約・定期借地権のリース期間

定期建物賃貸借では、期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができます(借地借家法 第38条第1項)。貸手はあらかじめ、更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法 第38条第3項)。

更新の仕組みがないため、定期借家契約では原則として契約期間がそのまま解約不能期間となり、リース期間の判断は普通借家契約より単純になります。ただし、期間満了後に同じ物件を再契約する場合、それは当初のリースの延長ではありません。契約の締結時に、当該契約がリースを含むか否かを改めて判断することになります(リースに関する会計基準 第25項、第26項)。

普通借家契約 定期借家契約
期間満了時に法定更新の仕組みがあり、貸手からの更新拒絶には正当の事由が必要 書面によることで契約の更新がないと定められ、期間の満了により終了する
更新後の期間を延長オプションの対象期間として、行使が合理的に確実かを評価する 原則として契約期間が解約不能期間となり、再契約は新たにリースの識別を行う

土地の賃借についても考え方は共通です。適用指針では、借地権を建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権とし、定期借地権を借地借家法第22条第1項、第23条第1項および第2項または第24条第1項の規定による定めのある借地権と定義しています(リースに関する会計基準の適用指針 第4項)。なお、借地権の設定に際して支払った権利金等は使用権資産の取得価額に含め、原則として借手のリース期間を耐用年数として償却します(同 第27項)。ここでもリース期間の決定が、その後の費用配分の前提になります。

合理的に確実かを判断する5つの要因

延長オプションを行使すること、または解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかを判定するにあたっては、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮します。適用指針は、その要因として次の5つを例示しています(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。以下では、各要因を不動産賃貸借に当てはめたときの着眼点を整理します。

適用指針が例示する要因 不動産賃貸借での着眼点
延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど) 更新後の賃料が周辺相場に比べて有利か。中途解約時の違約金がどの程度の水準か
大幅な賃借設備の改良の有無 内部造作や専用設備への投資額が大きく、移転すると回収できなくなるか
リースの解約に関連して生じるコスト 原状回復費用、移転費用、営業の中断によって生じるコストの大きさ
企業の事業内容に照らした原資産の重要性 本社機能や基幹店舗など、代替となる立地を確保することが難しいか
延長オプション又は解約オプションの行使条件 更新に貸手の承諾が必要か。行使期限や通知期間にどのような定めがあるか

「合理的に確実」という表現は、国際的な会計基準における蓋然性の水準を取り入れていることを明らかにするために用いられたものです(リースに関する会計基準 第BC37項)。実務では「更新する可能性が高い」といった感覚的な判断ではなく、上記の要因ごとに事実を拾い、その物件を使い続ける経済的な誘因がどれだけ強いかを説明できる形で文書化しておくことが求められます。上場準備企業では、この判断根拠の文書化が監査対応の負担になりやすい部分です。

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敷金・原状回復義務とリース期間の関係

不動産賃貸借に特有の論点として、敷金と原状回復義務があります。差入敷金のうち、貸手から借手に返還されないことが契約上定められている金額は、使用権資産の取得価額に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第34項)。また、資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資産であるときは、当該負債の計上額と同額を使用権資産の帳簿価額に加えます(同 第28項)。

いずれも取得価額に含まれる金額であるため、リース期間が変われば、その後の費用配分の期間も変わります。敷金の償却や原状回復に係る見積りの検討と、リース期間の判断は切り離して考えられません。

関連コラム原状回復義務と資産除去債務|賃借建物の計上要否と敷金の簡便法

リース期間を見直す場面と再測定の会計処理

リース期間はリース開始日に決めて終わりではありません。リースの契約条件の変更が生じていない場合でも、借手のリース期間に変更があるときは、リース負債の計上額の見直しを行います(リースに関する会計基準 第40項)。

見直しの引き金となるのは、次の2つをいずれも満たす重要な事象または重要な状況が生じたときです(リースに関する会計基準 第41項)。

  • 借手の統制下にあること
  • 延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの借手の決定に影響を与えること

不動産賃貸借であれば、大規模な内部造作を実施した、その拠点を主力店舗に位置づける経営判断を行った、といった事象が該当し得ます。また、延長オプションの行使等により解約不能期間そのものに変更が生じた結果、リース期間を変更するときにも、リース負債の計上額の見直しを行います(同 第42項)。

見直しを行う場合、該当する事象が生じた日に、当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値までリース負債を修正し、その修正額に相当する金額を使用権資産に加減します(リースに関する会計基準の適用指針 第46項)。使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなおリース負債の測定の減額がある場合には、残額を損益に計上します(同 第46項)。

次の設例で流れを確認します。事務所の賃貸借について、当初は借手のリース期間を5年としていた企業が、2年経過した時点で大幅な内部造作を実施し、5年の延長オプションの行使が合理的に確実になったと判断した場合を想定します。年間のリース料は12,000千円、割引率は年3%とし、見直し直前の残存リース期間は3年、見直し後は8年とします(単位:千円)。

見直し後のリース負債 84,236 − 見直し直前のリース負債 33,943 = 50,293
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 50,293 リース負債 50,293

このように、リース期間の判断が変わると、その時点で使用権資産とリース負債が両建てで増減します。損益への影響は増減後の帳簿価額をもとに翌期以降へ配分されるため、判断の変更が期末近くに生じた場合は、開示までのスケジュールに余裕がなくなる点にも注意が必要です。

関連コラムIFRS第16号リース負債の事後測定と再測定の実務解説

適用時期と実務の準備

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期に適用することもできます(リースに関する会計基準 第58項)。本基準の適用により、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」および企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」等に従って会計処理されている取引については、これらの適用を終了します(同 第59項)。

本基準は2024年9月13日に公表され、その後2025年4月23日に修正が行われていますが、これは会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更するものではありません。したがって、適用時期・判断枠組みともに公表時のまま準備を進めることになります。

不動産賃貸借は契約件数が多く、契約書の保管部署も総務・店舗開発・経理に分散しがちです。適用初年度に慌てないためには、契約書の棚卸しと、更新条項・中途解約条項・違約金条項の抽出から着手し、物件ごとにリース期間の判断根拠を残せる様式を整えておくことが現実的な進め方です。

まとめ

不動産賃貸借のリース期間は、契約書の期間をそのまま使うのではなく、解約不能期間に延長オプション・解約オプションの対象期間を加えて決定します(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。普通借家契約では法定更新の仕組みがあるため更新後の期間の評価が要点となり、定期借家契約では更新がないため契約期間が基礎になります。

判断の中心は、適用指針が例示する5つの経済的インセンティブの要因を、物件ごとの事実に当てはめて説明できるかどうかです(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。また、リース開始日の判断で完結せず、重要な事象または重要な状況が生じた時点で見直しと再測定を行う運用まで含めて設計しておく必要があります(リースに関する会計基準 第41項、第42項)。

参考文献

よくある質問

契約期間2年で自動更新の事務所賃貸借は、リース期間を2年としてよいですか

機械的に2年とすることはできません。自動更新の定めがある普通借家契約では、更新後の期間が延長オプションの対象期間にあたるかを検討し、行使が合理的に確実であればその期間を借手のリース期間に含めます(リースに関する会計基準 第15項、第31項)。判断は物件ごとの経済的インセンティブに基づいて行います。

借手だけが中途解約できる条項があるとき、リース期間はどうなりますか

借手のみがリースを解約する権利を有している場合、当該権利は借手が利用可能なオプションとして、リース期間を決定するにあたって考慮します(リースに関する会計基準 第31項)。行使しないことが合理的に確実であれば、その対象期間をリース期間に含めます。反対に貸手のみが解約する権利を有している場合、当該期間は借手の解約不能期間に含まれます。

定期借家契約の再契約は、当初のリース期間に含めますか

含めません。定期建物賃貸借は、書面によって契約の更新がないこととする旨を定めるものです(借地借家法 第38条第1項)。更新オプションが存在しないため、再契約は当初のリースの延長ではなく、契約の締結時に改めて当該契約がリースを含むか否かを判断することになります(リースに関する会計基準 第25項)。

リース期間はどのようなときに見直しますか

契約条件の変更が生じていない場合でも、借手の統制下にあり、かつオプション行使の決定に影響を与える重要な事象または重要な状況が生じたときに見直します(リースに関する会計基準 第41項)。延長オプションの行使等により解約不能期間に変更が生じた結果、リース期間を変更するときも見直しの対象です(同 第42項)。

新リース会計基準はいつから適用されますか

2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。あわせて、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も認められています(リースに関する会計基準 第58項)。

リース期間の判断は、契約条件と個々の物件の事情によって結論が変わります。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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社名
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住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

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