連結の範囲の全体像
連結の範囲とは、親会社が連結財務諸表を作成する際に、どの会社を子会社として連結し、どの会社を関連会社として持分法の対象とするかを画定する枠組みです。判定の軸は二つあり、子会社かどうかは支配力基準で、関連会社かどうかは影響力基準で判断します。いずれも議決権割合という形式面だけでなく、意思決定機関を実質的に支配・影響できるかという実質面を加味して判定するのが特徴です。
この考え方は、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」と、その具体的な当てはめを定めた企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」に定められています。両基準はいずれも公表後に改正を経たうえで、現在は既に適用されています企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準。
上場準備企業が初めて連結決算を組む場面では、まずこの「範囲の確定」でつまずくことが少なくありません。持株比率が過半数でない出資先や、資本関係の薄い取引先をどう扱うかは、実質判定を伴うため判断に迷いやすい論点です。本記事では、子会社・関連会社それぞれの判定基準と、連結範囲から外れる非連結子会社の取扱いまでを、実務の順序に沿って整理します。
支配力基準による子会社の判定
子会社の判定に用いるのが支配力基準です。他の企業の意思決定機関(株主総会や取締役会)を実質的に支配しているかどうかを、議決権割合と支配の実態の両面から判断します。議決権の所有割合は、原則として「所有する議決権の数 ÷ 行使し得る議決権の総数」で算定し、自己株式や完全無議決権株式に係る議決権は分母から除きます。
支配力基準は、議決権割合の水準に応じて次の三つのケースに整理できます。
| 議決権の過半数(50%超)を所有 | 原則として子会社に該当 |
|---|---|
| 議決権40%以上50%以下を所有 | 一定の支配要件を満たす場合に子会社に該当 |
| 議決権40%未満を所有 | 緊密な者等と合わせ過半数、かつ一定の支配要件を満たす場合に子会社に該当 |
議決権の過半数所有による判定
もっとも基本的なのは、自己の計算において他の企業の議決権の過半数を所有している場合です。この場合は、原則としてその企業を子会社と判定します。株主総会の普通決議を単独で成立させられる状態であり、意思決定機関を支配していると考えられるためです。上場準備の実務でも、出資比率が過半数の会社はまず子会社として連結対象に含める前提で整理を始めます企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準。
議決権40%以上50%以下での実質判定
議決権が過半数に満たなくても、自己の計算で40%以上50%以下を所有し、かつ次のいずれかの要件を満たす場合には子会社に該当します。これがいわゆる実質支配の判定であり、持株比率だけでは判断しません企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針。
- 緊密な者および同意している者が所有する議決権と合わせて、過半数を占めていること
- 役員や使用人(またはその経験者)で自己が影響を与えられる者が、取締役会その他これに準ずる機関の構成員の過半数を占めていること
- 重要な財務および営業または事業の方針の決定を支配する契約等が存在すること
- 資金調達額(負債計上分)の総額の概ね過半について、自己が融資(債務保証・担保提供を含む)を行っていること
- その他、意思決定機関を支配していることが推測される事実が存在すること
実務では、役員派遣や主要取引・資金支援の状況を一つずつ確認し、これらの要件に該当しないかを検討します。持株比率が50%以下であることを理由に安易に連結対象から外すと、後の監査で子会社該当を指摘されることがあるため、実態の裏づけを文書で残しておくことが重要です。
議決権40%未満でも子会社となる場合
さらに、自己の計算での所有割合が40%未満であっても、緊密な者および同意している者が所有する議決権と合わせて過半数を占め、かつ上記の役員構成・支配契約・融資などの要件のいずれかを満たす場合には、子会社に該当します。資本関係が薄く見えても、グループ内外の協力者を通じて実質的に意思決定機関を支配しているケースを捕捉するための定めです企業会計基準委員会 企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準。
一方で、支配の要件を形式的に満たしても、財務・営業・事業上の関係からみて意思決定機関を支配していないことが明らかな場合には、子会社に該当しないものとされています。例えば、ほかに議決権の過半数を自己の計算で所有する株主が存在するときは、一般に子会社には当たりません(ただし関連会社に該当する余地はあります)。
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影響力基準による関連会社の判定
子会社に該当しない出資先については、次に関連会社かどうかを影響力基準で判定します。関連会社とは、子会社以外の他の企業の財務および営業または事業の方針の決定に対して、重要な影響を与えることができる場合の当該企業をいい、該当すれば持分法の適用対象となります。判定の構造は支配力基準と同様に、議決権割合と実質判定の組み合わせです。
| 議決権20%以上を所有 | 原則として関連会社に該当(持分法適用) |
|---|---|
| 議決権15%以上20%未満を所有 | 一定の影響力要件を満たす場合に関連会社に該当 |
| 議決権15%未満を所有 | 緊密な者等と合わせ20%以上、かつ一定の影響力要件を満たす場合に関連会社に該当 |
議決権20%以上による判定
自己の計算において子会社以外の他の企業の議決権の20%以上を所有している場合は、原則としてその企業を関連会社と判定します。ただし、その20%以上の所有が一時的であると認められる場合は、関連会社には該当しません。持分法は連結の範囲に含めた後の会計処理であり、範囲の判定とは区別して考える点に注意が必要です企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針。
議決権15%以上での実質判定
議決権の所有が20%未満であっても、自己の計算で15%以上を所有し、かつ次のような要件のいずれかを満たす場合には、重要な影響を与えることができるとして関連会社に該当します企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針。
- 自己の役員や使用人(またはその経験者)が、代表権のある役員などとして派遣されていること
- 重要な資金(借入金その他)について融資を行っていること
- 重要な技術を提供していること
- 重要な販売、仕入その他の営業上または事業上の取引があること
- その他、財務および営業または事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができることが推測される事実が存在すること
加えて、議決権の所有が15%未満であっても、緊密な者および同意している者と合わせて20%以上を占め、上記の要件のいずれかを満たす場合には関連会社に該当します。取引依存度が高い仕入先や、役員を送り込んでいる出資先などは、持株比率が低くても関連会社と判定される可能性があるため、取引関係の全体像を踏まえて検討します。
連結の範囲から除外される子会社(非連結子会社)
子会社と判定された会社は、原則としてすべて連結の範囲に含めます。もっとも、一定の要件に当てはまる子会社は連結の範囲に含めないものとされ、これらを非連結子会社と呼びます。連結範囲の判定は「子会社かどうか」と「連結に含めるかどうか」の二段階で考える点を押さえておくと整理しやすくなります。
支配が一時的な子会社・利害関係者の判断を誤らせる子会社
まず、支配が一時的であると認められる子会社は、連結の範囲に含めません。これは、当連結会計年度では支配に該当しても、直前連結会計年度には支配しておらず、かつ翌連結会計年度以降相当の期間にわたって支配に該当しないことが確実に予定されている場合をいいます。次に、連結することにより利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれのある子会社も範囲から除きますが、こちらは一般に限定的な取扱いと考えられています企業会計基準委員会 企業会計基準適用指針第22号 連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針。
重要性が乏しい子会社
また、子会社のうち、その資産・売上高などからみて連結の範囲から除いても利害関係者の判断を誤らせない程度に重要性が乏しいものは、連結の範囲に含めないことができます。実務では、複数の非連結子会社を合算した重要性も確認し、全体として重要でないかを判断します。上場準備では、当初は重要性が乏しくても事業拡大で重要になることがあるため、除外の判断は毎期見直す姿勢が求められます。
連結範囲判定の実務上の留意点
実質判定の鍵を握るのが「緊密な者」と「同意している者」です。緊密な者とは、出資・人事・資金・技術・取引などにおいて緊密な関係があることにより、自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者をいい、同意している者とは、契約や合意等により同一内容の議決権行使に同意していると認められる者をいいます。これらを議決権割合に合算するかどうかで判定結果が変わるため、関係の実態を丁寧に確認する必要があります。
なお、更生会社や破産会社その他これらに準ずる企業で、有効な支配従属関係が存在しないと認められる企業は、議決権を過半数所有していても子会社に該当しません。逆に、清算中の会社であっても意思決定機関を支配していると認められれば子会社に該当し得ます。形式だけでなく支配・影響の実態で判断するという基準の考え方は、こうした例外的な場面でも一貫しています。
これらの判定基準は、企業会計基準第22号および適用指針第22号として整備され、いずれもその後の改正を経たうえで既に適用されています。連結範囲を確定した後は、子会社の取込みや関連会社への持分法適用、さらに連結キャッシュ・フロー計算書の作成へと実務が続きます。関連する会計処理は次のコラムもあわせてご確認ください。
関連コラム企業結合に関する会計基準|取得法とのれん・取得原価の配分の実務▸
関連コラム連結キャッシュ・フロー計算書の作成基準|直接法・間接法と3区分▸
まとめ
連結の範囲は、支配力基準で子会社を、影響力基準で関連会社を判定します。子会社は議決権の過半数所有が基本ですが、40%以上50%以下や40%未満でも実質的に意思決定機関を支配していれば該当します。関連会社は議決権20%以上が基本で、15%以上でも重要な影響を与えられれば該当します。さらに、子会社であっても支配が一時的な場合や重要性が乏しい場合は非連結子会社として範囲から外れます。いずれも議決権割合と実質判定の組み合わせで決まるため、資本関係だけでなく役員・取引・資金の実態を含めて検討することが、正確な連結範囲の確定につながります。
連結範囲の判定は個別性が高く、緊密な者の認定や実質支配の評価など専門的な判断を伴います。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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よくある質問
支配力基準と影響力基準の違いは何ですか。
支配力基準は子会社かどうかを判定する基準で、他の企業の意思決定機関を実質的に支配しているかをみます。影響力基準は関連会社かどうかを判定する基準で、財務および営業または事業の方針の決定に重要な影響を与えることができるかをみます。子会社は連結、関連会社は持分法の対象となります。
議決権が50%以下でも子会社になることはありますか。
あります。自己の計算で議決権の40%以上50%以下を所有し、役員構成や支配契約、資金調達の過半についての融資など一定の要件を満たす場合は子会社に該当します。40%未満でも、緊密な者や同意している者と合わせて過半数を占め、かつ一定の要件を満たせば子会社となります。
非連結子会社とは何ですか。
子会社と判定されたものの、連結の範囲に含めない子会社をいいます。支配が一時的な場合、連結により利害関係者の判断を著しく誤らせるおそれがある場合、また資産・売上高などからみて重要性が乏しい場合が該当します。重要性は複数の非連結子会社を合算して判断します。
持株比率が低い取引先も関連会社になりますか。
なり得ます。議決権15%以上20%未満の所有でも、役員派遣、重要な融資、重要な技術提供、重要な営業上の取引などの要件を満たせば関連会社に該当します。取引依存度が高い相手先は、持株比率が低くても影響力基準で判定される可能性があります。