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財務会計

新リース会計基準と不動産賃貸借|オフィス・店舗の計上額と敷金

目次
  1. 賃貸借契約がリースに該当するかの判定
  2. 特定された資産と実質的な代替権
  3. 不動産賃貸借における借手のリース期間の考え方
  4. 使用権資産とリース負債の計上額
  5. 借手のリース料に含めるもの・含めないもの
  6. フリーレントと段階的な賃料改定
  7. 共益費など非リース構成部分の区分
  8. リース開始日の仕訳例
  9. 開始後の各期の会計処理
  10. 敷金・保証金と原状回復義務の扱い
  11. 短期リース・少額リースの簡便的取扱い
  12. 影響額の見積りと準備の進め方
  13. 適用時期と関連する基準の改正
  14. まとめ
  15. 参考文献
  16. よくある質問
  17. 普通借家契約のオフィス賃貸借も使用権資産を計上しますか。
  18. 共益費はリース負債に含めますか。
  19. フリーレント期間がある場合の計上額はどうなりますか。
  20. 敷金と原状回復費用はどのように処理しますか。

オフィスや店舗の賃貸借契約は、新リース会計基準のもとでも多くの場合「リース」に該当し、借手は使用権資産とリース負債を計上することになります。リースとは、原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分をいい、契約が特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合、その契約はリースを含みます(リースに関する会計基準 第6項、第26項)。

事務所等の不動産賃貸借はサービス性が強いという意見もありましたが、サービスの要素を区分した後にリースの定義を満たす部分が含まれるとされました(リースに関する会計基準 第BC31項)。本会計基準は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用され、2025年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用できます(リースに関する会計基準 第58項)。本稿では、リースに該当するかの判定、計上額の決め方、共益費の区分、敷金と原状回復の扱いを条項と仕訳例で整理します。

賃貸借契約がリースに該当するかの判定

判定は契約の締結時に行い、契約期間中は契約条件が変更されない限り見直しません(リースに関する会計基準 第25項、第27項)。判断の枠組みは、使用期間全体を通じて、借手が原資産の使用による経済的利益のほとんどすべてを享受する権利と、使用を指図する権利の両方を有するかどうかです(リースに関する会計基準の適用指針 第5項)。通常の事務所賃貸借では、区画を専有し営業時間や内装の使い方を借手が決められるため、この二つは満たされるのが一般的です。

特定された資産と実質的な代替権

前提として、対象が「特定された資産」である必要があります。資産は通常、契約に明記されることにより特定されますが、貸手が資産を入れ替える実質上の能力を有し、かつ入替えによる経済的利益がそのコストを上回る場合には、実質的な代替権があるものとして特定された資産に該当しません(リースに関する会計基準の適用指針 第6項)。オフィスビルの賃貸借では、貸手が借手の同意なく別フロアへ移転させ、その費用も負担しないという契約は稀であり、実質的な代替権は否定される場合が多くなります。

建物の一部を借りる場合も押さえておく必要があります。物理的に別個ではない資産の稼働能力の一部は特定された資産に該当しませんが、稼働能力のほとんどすべてを占める場合は該当します(リースに関する会計基準の適用指針 第7項)。フロアや区画のように物理的に区別された部分を専有する契約であれば該当し得ます。一方、共用会議室を空き状況に応じて使う権利のように場所が特定されないものは、リースに該当しない方向に働きます。

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不動産賃貸借における借手のリース期間の考え方

借手のリース期間は、解約不能期間に、行使が合理的に確実な延長オプションの対象期間と、行使しないことが合理的に確実な解約オプションの対象期間を加えた期間です(リースに関する会計基準 第15項)。行使の可能性は、契約条件、大幅な賃借設備の改良の有無、解約コスト、原資産の重要性、オプションの行使条件といった経済的インセンティブに影響する要因から評価します(リースに関する会計基準の適用指針 第17項)。

不動産賃貸借では、契約書上の期間がそのままリース期間になるとは限らない点が最大の論点です。1年更新の普通借家契約でも、多額の内装投資や移転コストの大きさから、契約期間を超える期間がリース期間になることがあります。なお貸手のみが解約権を有する期間は、借手の解約不能期間に含まれます(リースに関する会計基準 第31項)。

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使用権資産とリース負債の計上額

借手はリース開始日にリース負債を計上し、これにリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第18項)。リース開始日は、貸手が借手による原資産の使用を可能にする日であり、契約締結日ではありません(リースに関する会計基準 第18項)。

リース負債は、リース開始日において未払である借手のリース料から、これに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定します(リースに関する会計基準 第34項)。割引率は、貸手の計算利子率を知り得る場合は当該利率、知り得ない場合は借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によります(リースに関する会計基準の適用指針 第37項)。不動産賃貸借では貸手の計算利子率を知り得ないことがほとんどのため、追加借入利子率の決定方針を先に固めます。

借手のリース料に含めるもの・含めないもの

借手のリース料は次の五つで構成され、リースを構成しない部分に配分される対価は含まれません(リースに関する会計基準 第19項、第35項)。オフィス・店舗の契約では、多くが固定リース料に集約されますが、賃料改定条項や中途解約条項の読み方で結論が変わります。

固定リース料 変動リース料以外の支払。基本賃料が該当し、リース負債の測定の中心になります
指数又はレートに応じて
決まる変動リース料
消費者物価指数連動の賃料など。市場賃料の変動を反映するよう協議で見直される契約条項も含まれます
残価保証に係る支払見込額 不動産賃貸借では通常生じません
購入オプションの行使価額 行使が合理的に確実である場合に含めます
解約に対する違約金 リース期間に解約オプションの行使を反映している場合の違約金

指数又はレートに応じて決まる変動リース料には、消費者物価指数に連動する賃料のほか、市場賃料の変動を反映するよう協議により見直される契約条項も含まれます(リースに関する会計基準の適用指針 第24項)。これらはリース開始日現在の指数又はレートに基づき算定します(リースに関する会計基準の適用指針 第25項)。将来の指数又はレートを合理的に見積ることができる場合は、見積りに基づき算定する方法も選択できます(リースに関する会計基準の適用指針 第26項)。これに対し、店舗の売上高に連動する歩合賃料のように指数又はレート以外の要因で変動するリース料は、リース負債に含めず発生時に損益に計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第51項)。ただし、形式上は指標に連動していても実質的に支払が不可避で固定化されている部分は、固定リース料と同様に扱います(リースに関する会計基準 第BC43項)。

フリーレントと段階的な賃料改定

フリーレント(賃料の無償期間)や賃料の段階的改定について、借手側の個別の定めは適用指針に置かれていません。各期の借手のリース料をそのまま現在価値の計算に織り込む建付けであり、無償期間はその期のリース料が生じないもの、段階的改定は各期の予定額のままとしてリース負債を算定します(リースに関する会計基準 第34項)。使用権資産の減価償却費は借手のリース期間にわたり毎期定額で計上されるため(リースに関する会計基準 第38項)、支払額が生じない期にも費用が計上されます。ただし利息相当額は利息法により配分されるため(リースに関する会計基準 第36項)、減価償却費と支払利息の合計はリース期間の前半ほど大きくなり、旧基準のように支払額を期間按分して毎期同額の費用とする結果にはなりません。

一方、貸手から受け取ったリース・インセンティブに該当する場合は、使用権資産から控除します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第18項)。どちらの性質かは契約の文言によって変わるため、内装工事費の補助など金銭以外の便益の有無まで確認しておくことをおすすめします。

共益費など非リース構成部分の区分

契約には、原則としてリースを構成する部分と構成しない部分に分けて会計処理を行います(リースに関する会計基準 第28項)。借手はリース構成部分に本会計基準を、非リース構成部分に他の会計基準を適用し、契約における対価を各構成部分の独立価格の比率で配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第10項、第11項)。ここでいう独立価格は、貸手等がその財又はサービスを個々に請求するであろう価格です。

実務上の変更点として、旧基準における維持管理費用相当額を控除する取扱いは借手には引き継がれておらず、独立価格の比率による配分に一本化されています(リースに関する会計基準の適用指針 第BC19項から第BC21項)。また、固定資産税や保険料の負担額のように借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストの支払額は、控除せず対価の一部として各構成部分へ配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第11項)。

賃料(基本使用料) リース構成部分。借手のリース料としてリース負債の測定に含めます
共益費・管理費 清掃や警備などのサービスの対価が含まれる場合、その部分は非リース構成部分となります
固定資産税・保険料の
負担額
借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストであり、控除せず対価の一部として各構成部分に配分します
個別契約の清掃・警備 非リース構成部分として他の会計基準を適用します

もっとも、多数の店舗を賃借する企業が契約ごとに独立価格を集めるのは負担が重くなります。そこで借手は、科目ごと又は類似する原資産のグループごとに、リース構成部分と非リース構成部分を分けず、合わせて単一のリース構成部分として処理することを選択できます(リースに関する会計基準 第29項)。この選択をするとリース負債は共益費相当分だけ大きくなりますが、実務負担は軽くなります。選択した場合は会計方針として注記します(リースに関する会計基準の適用指針 第97項)。なお、リース構成部分を非リース構成部分として処理することは認められていません(リースに関する会計基準 第BC33項)。

リース開始日の仕訳例

オフィス1フロアを賃借し、リース期間5年、年間の支払総額6,600千円(独立価格の比率で配分した結果、リース構成部分6,000千円・非リース構成部分である共益費600千円)、支払は各年度末、借手の追加借入利子率は年3.0パーセント、仲介手数料200千円をリース開始日に現金で支払ったと仮定します(単位:千円)。リース負債は現在価値により、使用権資産は付随費用を加算して算定します(リースに関する会計基準 第34項、第33項)。

年金現価係数 = (1 − 1 ÷ 1.03の5乗) ÷ 0.03 = 4.5797
リース負債の当初計上額 = 6,000 × 4.5797 = 27,478(千円未満四捨五入)
使用権資産の当初計上額 = 27,478 + 200 = 27,678
借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
使用権資産 27,678 リース負債 27,478
現金預金 200

年間のリース料に年金現価係数を乗じるというこの単純な計算が、影響額の簡易試算の出発点になります。契約件数が多い企業でも、リース期間の目安と割引率をいくつか置いて年間賃料の合計に係数を乗じれば、使用権資産とリース負債の概算規模はつかめます。自社の契約でどの程度がオンバランスされるのか、まずは概算を把握したい場合はご相談ください。

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開始後の各期の会計処理

リース負債に係る利息相当額は、借手のリース期間にわたり原則として利息法により配分します(リースに関する会計基準 第36項)。使用権資産は、所有権移転と認められるリース以外の場合、定額法等の減価償却方法の中から企業の実態に応じたものを選択し、原則として借手のリース期間を耐用年数、残存価額をゼロとして償却します(リースに関する会計基準 第38項)。通常のオフィス・店舗の賃貸借はこの類型に当たります。

1年目の利息相当額 = 27,478 × 3.0% = 824
1年目の元本返済額 = 6,000 − 824 = 5,176
各年度の減価償却費 = 27,678 ÷ 5年 = 5,536

1年度末に年間支払総額6,600千円を支払い、共益費600千円を非リース構成部分として費用計上し、減価償却を行った場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。共益費を区分する処理は、リース構成部分と非リース構成部分を分けて会計処理する原則に基づきます(リースに関する会計基準 第28項、リースに関する会計基準の適用指針 第10項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
リース負債 5,176 現金預金 6,600
支払利息 824
共益費 600
減価償却費 5,536 使用権資産 5,536

従来は支払家賃として一本で計上していた費用が、減価償却費と支払利息と共益費に分かれる点が損益計算書上の大きな変化です。利息法により初期ほど支払利息が大きくなるため、リース期間の前半は費用が重くなります。なお使用権資産は、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に計上される科目に含める方法か、原資産の表示区分において使用権資産として区分する方法のいずれかで表示します(リースに関する会計基準 第49項)。リース負債は区分表示又は注記により示し、貸借対照表日後1年以内に支払期限が到来するものは流動負債、1年を超えるものは固定負債に属するものとします(リースに関する会計基準 第50項)。

敷金・保証金と原状回復義務の扱い

差し入れた敷金のうち将来返還される部分は、使用権資産に含めず取得原価をもって計上します(リースに関する会計基準の適用指針 第33項)。一方、返還されないことが契約上定められている金額は、使用権資産の取得価額に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第34項)。契約書に償却額や敷引きが明記されている場合は、その部分だけが使用権資産に乗る点が実務の分岐です。なお建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く)は、支払額と当初時価との差額を使用権資産に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第29項)。

原状回復義務は資産除去債務の論点です。資産除去債務とは、有形固定資産の取得等によって生じ、その除去に関して法令又は契約で要求される法律上の義務及びそれに準ずるものをいい、発生時に負債として計上します(資産除去債務に関する会計基準 第3項、第4項)。内部造作等の原状回復が求められている場合、割引前の将来キャッシュ・フローを見積り、無リスクの税引前の利率で割り引いて算定します(資産除去債務に関する会計基準 第6項)。この除去費用は使用権資産の当初測定に加算されます(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第28項)。

ただし、敷金が資産計上されている場合には簡便的な取扱いがあります。資産除去債務の負債計上及び除去費用の資産計上に代えて、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用計上する方法によることができます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第9項)。当期の負担に属する金額は、同種の賃借建物等への平均的な入居期間などの合理的な償却期間に基づいて算定します(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第27項)。この簡便法を選択する場合は、新リース会計基準のもとでも同項に従って処理します(リースに関する会計基準の適用指針 第35項)。

敷金3,000千円を差し入れ、そのうち回収が最終的に見込めないと認められる金額を1,200千円と見積り、平均的な入居期間5年で費用配分する場合の仕訳は次のとおりです(単位:千円)。1行目が差入時、2行目が各年度末の処理で、簡便法の定めに基づきます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第9項、第27項)。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
敷金 3,000 現金預金 3,000
敷金償却 240 敷金 240

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短期リース・少額リースの簡便的取扱い

すべての賃貸借契約をオンバランスする必要はありません。短期リースは、リース開始日において借手のリース期間が12か月以内であり購入オプションを含まないリースをいい、使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を原則として定額法により費用計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第4項、第20項)。少額リースについても、重要性が乏しい減価償却資産を購入時に費用処理する場合の当該基準額以下のリースなどを対象に簡便的な取扱いがあります(リースに関する会計基準の適用指針 第22項、第23項)。

もっとも、オフィスや基幹店舗は金額的な重要性が高いため、実際に簡便法へ乗るのは駐車場や小規模な倉庫といった契約に限られることが多くなります。短期リースに係る費用の発生額は注記の対象です(リースに関する会計基準の適用指針 第100項)。

影響額の見積りと準備の進め方

不動産賃貸借は金額が大きく件数も多いため、財務諸表への影響が最も出やすい領域です。使用権資産とリース負債が両建てで増えて総資産が膨らみ、自己資本比率やD/Eレシオが悪化する一方、支払家賃が減価償却費と支払利息に置き換わることで営業利益とEBITDAは改善します。財務制限条項がある借入契約では、指標の定義が新基準の影響を受けるかを金融機関と事前に確認しておくことが要点です。

準備は契約の棚卸しから始まります。賃貸借契約書と覚書を集め、解約不能期間と各オプション、賃料改定条項、共益費の内訳、敷金と原状回復条項を一覧化し、各方針を会計方針として文書化します。適用初年度は会計方針の変更として原則遡及適用としますが、期首の累積的影響額を利益剰余金に加減する方法も認められています(リースに関する会計基準の適用指針 第118項)。従来オペレーティング・リース取引に分類していた不動産賃貸借は、期首時点の残りの借手のリース料を同時点の追加借入利子率で割り引いた現在価値によりリース負債を計上できます(リースに関する会計基準の適用指針 第123項)。使用権資産の科目別の金額などの注記も求められるため、契約単位で数値を取得できる管理台帳を先に設計しておくと手戻りが減ります(リースに関する会計基準の適用指針 第99項、第102項)。

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適用時期と関連する基準の改正

企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」は2024年9月13日に公表され、2025年4月23日には両者の修正が公表と同時に適用されています。この修正は会計処理及び開示に関する定めを実質的に変更するものではありません。適用時期は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からで、2025年4月1日以後開始する年度の期首から早期適用できます(リースに関する会計基準 第58項、リースに関する会計基準の適用指針 第112項)。適用により企業会計基準第13号等の適用は終了します(リースに関する会計基準 第59項)。

敷金・原状回復に関わる企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」は2008年3月31日に公表され、2010年4月1日以後開始する事業年度から適用されています(資産除去債務に関する会計基準 第17項)。同基準は2024年9月13日に新リース会計基準の公表に伴い改正されており、この改正部分の適用時期は企業会計基準第34号と同様です(資産除去債務に関する会計基準 第20-2項)。企業会計基準適用指針第21号は2008年3月31日に公表され、2011年に改正されています。資産除去債務の枠組み自体はすでに適用されている一方、新リース会計基準に対応した改正部分はこれから適用される、という二層構造になっている点に注意が必要です。

まとめ

オフィス・店舗の賃貸借契約は、特定された資産の使用を支配する権利が移転している限りリースに該当し、借手は使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第26項、第33項)。計上額は、借手のリース料の五つの構成要素を漏れなく拾い、指数又はレートに応じて決まる変動リース料は含め、売上高連動の歩合賃料は含めないという線引きで決まります(リースに関する会計基準 第19項、リースに関する会計基準の適用指針 第51項)。共益費などの非リース構成部分は独立価格の比率で配分するのが原則ですが、区分せず単一のリース構成部分として処理する選択もできます(リースに関する会計基準 第28項、第29項)。

敷金は返還される部分を取得原価で計上し、返還されないことが契約上定められている金額を使用権資産に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第33項、第34項)。原状回復義務については、敷金が資産計上されている場合の簡便法を引き続き選択できます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第9項)。2027年4月1日以後開始する年度の期首からの適用に向け、契約の棚卸しと各方針の文書化を早めに進めることが要点です(リースに関する会計基準 第58項)。契約条件によって結論が変わる論点が多いため、具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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参考文献

よくある質問

普通借家契約のオフィス賃貸借も使用権資産を計上しますか。

契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、その契約はリースを含み、借手は使用権資産とリース負債を計上します(リースに関する会計基準 第26項、第33項)。事務所等の不動産賃貸借についても国際的な取扱いと異なる定めは設けられておらず、サービスの要素を区分した後にリースの定義を満たす部分が含まれるとされています(リースに関する会計基準 第BC31項)。短期リース又は少額リースの簡便的取扱いに該当する場合を除き、計上が必要です(リースに関する会計基準の適用指針 第20項、第22項)。

共益費はリース負債に含めますか。

原則として、契約はリースを構成する部分と構成しない部分に分けて会計処理し、共益費のうち清掃や警備などのサービスの対価に当たる部分は非リース構成部分として区分します(リースに関する会計基準 第28項、リースに関する会計基準の適用指針 第10項)。対価は各構成部分の独立価格の比率で配分します(リースに関する会計基準の適用指針 第11項)。ただし借手は、科目ごと又は類似する原資産のグループごとに、区分せず単一のリース構成部分として処理することを選択でき、その場合は共益費相当額を含めてリース負債を測定します(リースに関する会計基準 第29項)。

フリーレント期間がある場合の計上額はどうなりますか。

借手側のフリーレントに関する個別の定めは適用指針に置かれておらず、各期の借手のリース料をそのまま現在価値の計算に織り込みます。無償期間はその期のリース料が生じないものとしてリース負債を算定します(リースに関する会計基準 第34項)。貸手から受け取ったリース・インセンティブに該当する場合は、使用権資産から控除します(リースに関する会計基準 第33項、リースに関する会計基準の適用指針 第18項)。

敷金と原状回復費用はどのように処理しますか。

差入敷金のうち将来返還される部分は取得原価をもって計上し、返還されないことが契約上定められている金額は使用権資産の取得価額に含めます(リースに関する会計基準の適用指針 第33項、第34項)。原状回復義務に係る資産除去債務に対応する除去費用は使用権資産の当初測定に加算されますが(リースに関する会計基準の適用指針 第28項)、敷金が資産計上されている場合は、回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り当期の負担に属する金額を費用計上する簡便法を選択できます(資産除去債務に関する会計基準の適用指針 第9項)。

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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