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所有権移転外ファイナンス・リースの例外処理とは?10%基準を解説

2026-08-28
目次

企業がリース取引を行う際、原則としてリース資産とリース債務を計上するオンバランス処理が求められます。しかし、リース資産総額が全体の規模に比べて小さい場合、厳密な計算は企業にとって過度な実務負担となります。本記事では、実務負担を軽減するために認められている「所有権移転外ファイナンス・リースの例外処理(重要性が乏しい場合)」について、適用要件である10パーセント基準や具体的な会計処理方法を詳細に解説いたします。

例外処理(重要性が乏しい場合の取扱い)の概要

借手が所有権移転外ファイナンス・リース取引を貸借対照表に計上する際、原則的な会計処理では、将来のリース料を現在価値に割り引いてリース資産およびリース債務を測定し、利息相当額を「利息法」によって各期に配分する必要があります。しかし、企業全体の規模に対してリース資産総額の重要性が乏しいと認められる場合には、実務上の負担を軽減する目的で、簡便的な会計処理(例外処理)の適用が容認されています。参考:リース適用指針第31項、リース適用指針第108項

原則的な処理と例外処理の違い

原則的な処理と例外処理では、計上額の算定方法や利息の配分方法に大きな違いがあります。例外処理を適用することで、複雑な割引計算や利息法の適用を省略することが可能となります。

項目 内容
原則的な処理 現在価値で測定し、利息法で各期に配分する
例外処理 現在価値への割引や利息法を省略する簡便的な処理

選択可能な2つの例外処理方法

リース資産総額に重要性が乏しいと判定された場合、企業は以下の2つの簡便的な会計処理からいずれかを選択して適用することができます。参考:リース適用指針第31項

利息相当額を控除しない方法(リース料総額計上)

第一の方法は、リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除せず、現在価値に割り引かない方法です。この方法では、リース料総額がそのままリース資産およびリース債務の計上額となります。リース期間中の支払いに際して支払利息は一切計上されず、リース資産の減価償却費のみが毎期の損益計算書に費用計上されます。参考:リース適用指針第31項(1)

利息相当額の定額法による配分

第二の方法は、リース資産およびリース債務の計上額は原則通り現在価値等を用いて算定し、利息相当額を分離した上で、その利息相当額を各期へ配分する方法において定額法を採用するものです。原則とされる複雑な利息法によらず、リース期間中の各期に利息相当額を均等に配分するため、計算の手間が大幅に削減されます。参考:リース適用指針第31項(2)

例外処理の方法 特徴
リース料総額計上 利息を分離せず、総額で資産・負債を計上。支払利息は計上しない。
利息の定額法配分 利息を分離するが、各期への配分は均等額(定額法)で行う。

「重要性が乏しい」と認められる判定基準(10パーセント基準)

例外処理を適用するためには、客観的な基準に基づいて重要性が乏しいことを証明する必要があります。この判定には、未経過リース料の残高と固定資産の残高を用いた厳密な計算が行われます。

10パーセント基準の具体的な計算方法

「リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合」とは、期末における未経過リース料の期末残高が、当該期末の有形固定資産および無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合と定義されています。なお、この未経過リース料の残高には、少額リース資産や短期のリース取引としてオフバランス処理を行っているものの残高は含めずに計算します。参考:リース適用指針第32項、リース適用指針第34項

計算要素 対象となる金額
分子 未経過リース料の期末残高(オフバランス処理分を除く)
分母 有形固定資産および無形固定資産の期末残高の合計額

連結財務諸表における重要性の判定と修正

企業グループ全体で作成する連結財務諸表においては、重要性の判定を各個別企業の数値ではなく、連結財務諸表の数値を基礎として見直すことが認められています。見直しの結果、個別財務諸表と異なる会計処理の判定結果となった場合でも、個別財務諸表自体を遡及修正する必要はなく、連結決算のプロセスにおいて連結修正仕訳によって修正を行うことが規定されています。参考:リース適用指針第33項

背景と結論の根拠(実務的負担の軽減)

この例外処理が規定されている背景には、企業に対する費用対効果の配慮と、実務的負担の軽減という強い要請が存在します。

費用対効果と実務的負担の考慮

すべての所有権移転外ファイナンス・リース取引を原則通りに処理しようとすると、追加借入利子率を用いた割引計算や、未返済元本残高に応じた利息法による支払利息の計算など、極めて煩雑な債務管理システムが必要となります。リース資産の金額が小さく財務諸表全体に与える影響が乏しいケースにおいて、厳密な金利計算を強制することは企業に過度な負担を強いるため、10パーセント未満という基準を下回る場合には簡便な会計処理が妥当と結論付けられました。参考:リース適用指針第115項、リース適用指針第116項

無形固定資産を分母に含める理由

判定の分母となる固定資産について、近年ではソフトウェアのリースなど無形固定資産のリース取引が増加している実態があります。これを踏まえ、有形固定資産だけでなく無形固定資産も分母に加えることで、より実態に即した精緻な重要性判定が行えるよう制度が設計されています。参考:リース適用指針第115項

実務ケーススタディ(中堅企業のPCリース)

実際のビジネスや会計実務において、これらの規定がどのように適用されるのか、具体的なケーススタディを通じて解説します。決算期末において有形固定資産が2億円、無形固定資産が8億円(合計10億円)ある企業が、リース料総額6,000万円(月額100万円、期間5年)、期末の未経過リース料残高5,000万円のPC・サーバー機器一括リースを契約したケースを想定します。

10パーセント基準の判定手順

まず、経理担当者は重要性の判定を行います。期末の未経過リース料残高5,000万円を、固定資産残高合計10億円で除して割合を算出します。計算結果は5パーセント(5,000万円 ÷ 10億円)となり、10パーセント未満であるため「重要性が乏しいと認められる場合」に該当すると判定されます。参考:リース適用指針第32項

例外処理の選択と仕訳例

重要性が乏しいと判定されたため、実務負担軽減を目的として「利息相当額を控除しない方法」を選択します。リース取引開始日には割引計算を行わず、リース料総額6,000万円をリース資産およびリース債務として計上します。期中の支払時(月額100万円)は全額をリース債務の元本返済とし、支払利息は計上しません。決算時には、リース期間5年で残存価額ゼロの定額法により減価償却費1,200万円を計上します。参考:リース適用指針第31項(1)、リース適用指針 設例1の1(2)②

取引のタイミング 借方・貸方の仕訳例
期中のリース料支払時 (借方)リース債務 100万円 / (貸方)現金預金 100万円
決算時の減価償却処理 (借方)減価償却費 1,200万円 / (貸方)減価償却累計額 1,200万円

まとめ

所有権移転外ファイナンス・リース取引において、リース資産総額の重要性が乏しい場合(10パーセント未満)には、実務負担を軽減するための例外処理が認められています。利息相当額を控除しない方法や、利息の定額法による配分を選択することで、複雑な割引計算や利息法を省略し、効率的かつ適正な決算業務を実現することが可能です。自社の固定資産残高と未経過リース料残高を正確に把握し、適切な会計処理を選択することが重要です。

所有権移転外ファイナンス・リースの例外処理に関するよくある質問まとめ

Q.所有権移転外ファイナンス・リースの例外処理とは何ですか?

A.リース資産総額の重要性が乏しい場合に、現在価値への割引や利息法による配分といった複雑な計算を省略し、実務負担を軽減できる簡便的な会計処理のことです。参考:リース適用指針第31項

Q.例外処理を適用するための「10パーセント基準」とはどのような計算ですか?

A.期末の未経過リース料残高が、期末の有形固定資産および無形固定資産の残高合計額に占める割合が10パーセント未満であるかどうかを判定する基準です。参考:リース適用指針第32項

Q.例外処理として選択できる2つの方法を教えてください。

A.リース料総額をそのまま資産・負債に計上し支払利息を計上しない方法と、利息相当額を分離した上で各期へ定額法で均等配分する方法の2種類があります。参考:リース適用指針第31項

Q.10パーセント基準の計算において、短期リースや少額リースの残高は含めますか?

A.いいえ、賃貸借取引に準じてオフバランス処理を行っている少額リース資産や短期のリース取引の残高は、未経過リース料の残高に含めずに計算します。参考:リース適用指針第34項

Q.連結財務諸表において重要性の判定結果が変わった場合、個別財務諸表を修正する必要はありますか?

A.個別財務諸表自体を遡って修正する必要はなく、連結決算のプロセスにおいて連結修正仕訳によって必要な修正を行います。参考:リース適用指針第33項

Q.10パーセント基準の分母に無形固定資産が含まれるのはなぜですか?

A.ソフトウェアのリースなど無形固定資産のリース取引が増加している実態を踏まえ、より実態に即した精緻な重要性判定を行うためです。参考:リース適用指針第115項

実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。

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