企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」の適用に伴い、リース契約に付随する保守やメンテナンスなどのサービス部分の取扱いが重要な実務課題となります。本記事では、リースを構成する部分と構成しない部分の区分の原則から、経理部門の実務負担を軽減する例外規定(実務上の便法)、そして具体的なケーススタディまでを詳細に解説いたします。
リース構成部分と非構成部分の区分の原則
リース契約には、単に資産を借りるだけでなく、様々なサービスが付随しているケースが多く見受けられます。まずは、会計基準が求める原則的な対応について確認します。
リース要素と非リース要素の明確な区分
リースを含む契約の中には、原資産の使用権を移転するリースを構成する部分と、保守やメンテナンスといった役務提供などのリースを構成しない部分(非リース要素)が混在している場合があります。本会計基準では、借手及び貸手は、このような契約について、原則として両者を明確に区分して会計処理を行わなければならないと定めています(企業会計基準第34号 第28項、企業会計基準適用指針第33号 第9項)。
区分による会計処理への影響
両者を区分した場合、リース部分のみが本会計基準の対象となり、非リース部分は別の適切な会計基準(役務提供など)に従って処理されます。借手の場合、リース部分に配分された対価のみを基礎として使用権資産およびリース負債を計上(オンバランス)するため、貸借対照表に計上される負債額を適正な規模に抑えることが可能です。
| 構成要素 | 会計処理の原則 |
|---|---|
| リースを構成する部分 | 使用権資産およびリース負債として計上(オンバランス) |
| リースを構成しない部分 | 発生時の費用として損益計算書に計上(オフバランス) |
借手における実務上の便法(例外規定)
原則的な区分は理論的である反面、実務においては各契約の対価を正確に見積もり配分する作業が非常に煩雑となります。そのため、借手には負担軽減のための例外規定が設けられています。
区分せずに一括処理する選択肢
借手は、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと、又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに、リース部分と非リース部分を分けずに、これらを合わせて「リースを構成する部分」として一括して会計処理を行うことが認められています(企業会計基準第34号 第29項)。これにより、契約書上の総額をベースに計算できるため、実務負担が大幅に軽減されます。
連結財務諸表における取扱いの簡素化
さらに、企業グループで作成する連結財務諸表においても配慮がなされています。個別財務諸表の作成段階で科目ごと又はグループごとに行った「分けずに処理する選択」を、連結の過程で改めて見直したり修正したりしないことが認められています(企業会計基準第34号 第30項)。これにより、子会社間の会計方針の統一にかかる調整コストを削減できます。
基準設定の背景と結論の根拠(BC)
なぜこのような原則と例外が設けられたのか、その背景には国際的な会計基準との整合性と、日本のビジネス慣行における実務的負担への配慮が存在します。
区分を原則とした国際的な整合性
実際のビジネス、特に自動車のリース契約などでは、リースとメンテナンスサービスが混在していることが多々あります。リースの会計処理を定める本基準の目的上、リース部分のみに適用し、サービス提供は別基準で処理することが理論的に妥当です。また、国際財務報告基準(IFRS第16号)における定めと完全に整合させるためにも、原則として両者を区分することが求められました(企業会計基準第34号 BC32項)。
実務的負担に配慮した例外規定の導入
一方で、借手がすべてのリース契約から非リース要素の独立販売価格を見積もって対価を配分することは、多大なコストと複雑性を伴います。そこで、IFRS第16号でも認められている実務上の便法を採用しました。ただし、この例外を選択すると、本来費用処理されるべきサービス部分の対価までがリース料に含まれ、借手の貸借対照表に計上されるリース負債の金額が大きく増大します。したがって、この便法が選択されるのは、一般的に非リース構成部分が契約全体に占める割合が比較的小さい場合のみと想定されています(企業会計基準第34号 BC33項)。
実務ケーススタディ:車両のメンテナンス付きリース
本会計基準の規定が、実際のビジネスや会計実務においてどのように適用されるか、具体的なケーススタディを用いて解説します。ここでは、製造業を営む借手が、リース会社と5年間の営業用車両のリース契約(月額リース料に車検代や定期メンテナンス費用を含む)を締結したケースを想定します(企業会計基準適用指針第33号 設例7参照)。
原則的な対応(区分する場合)
経理担当者は、契約における総対価を、車両の使用(リース部分)とメンテナンス(非リース部分)それぞれの独立販売価格の比率等に基づいて配分します。例えば、月額リース料50,000円のうち、リース部分が40,000円、メンテナンス部分が10,000円と見積もられた場合、40,000円のみを基礎としてリース開始日に使用権資産およびリース負債を計上します。10,000円についてはリース負債に含めず、毎月サービスの提供を受ける都度、「支払手数料」などの費用として計上します(企業会計基準第34号 第28項、企業会計基準適用指針第33号 第9項)。
例外的な対応(実務上の便法を適用する場合)
全国の営業所で多数の車両をリースしており、全契約の金額を厳密に分解することが過度な事務負担となる場合、例外規定を適用できます。「車両」という原資産のグループについて、リース部分とメンテナンス部分を一切分けず、月額50,000円の全額を「リースを構成する部分」とみなして処理する方針を選択します。これにより、月額リース料総額を基礎として使用権資産とリース負債を計算し一括してオンバランスするため、簡便な実務が実現します。ただし、貸借対照表上の負債総額は、原則法を採用した場合よりも大きくなる点に留意が必要です(企業会計基準第34号 第29項、企業会計基準第34号 BC33項)。
| 実務対応の選択 | メリット・デメリット |
|---|---|
| 原則的対応(区分する) | 負債の増大を防げるが、価格配分の見積りなど実務負担が大きい |
| 例外的対応(区分しない) | 計算が簡便で実務負担が減るが、リース負債の計上額が大きくなる |
まとめ
新リース会計基準においては、リースを構成する部分と構成しない部分を区分することが原則とされています。しかし、借手においては実務上の負担を考慮し、特定の科目やグループごとに区分せずに一括処理する実務上の便法が認められています。企業は、自社のリース契約の状況、非リース要素が占める割合、および経理部門の実務処理能力を総合的に勘案し、原則法と例外法のどちらを採用するかを慎重に検討・決定する必要があります。
リース構成部分の区分に関するよくある質問まとめ
Q.リース構成部分と非構成部分の区分とは何ですか?
A.リース契約に含まれる「原資産の使用権を移転する部分(リース部分)」と「保守やメンテナンスなどの役務提供部分(非リース部分)」を分けて会計処理を行う原則のことです(企業会計基準第34号 第28項)。
Q.非リース部分を区分した場合、どのように会計処理しますか?
A.リース部分の対価のみを基礎として使用権資産およびリース負債を計上し、非リース部分の対価は発生時の費用として損益計算書に計上します(企業会計基準第34号 第28項)。
Q.借手において区分を行わない例外処理は認められていますか?
A.はい、実務負担軽減のため、科目ごと又は原資産のグループごとに、リース部分と非リース部分を分けずに一括して「リースを構成する部分」として処理する便法が認められています(企業会計基準第34号 第29項)。
Q.例外処理(区分しない便法)を選択した場合のデメリットは何ですか?
A.本来は費用処理されるべきサービス部分の対価までがリース料として取り込まれるため、貸借対照表に計上されるリース負債の金額が原則法に比べて大きく増大することです(企業会計基準第34号 BC33項)。
Q.連結財務諸表を作成する際、個別財務諸表での選択を見直す必要はありますか?
A.個別財務諸表の作成段階で科目ごと又はグループごとに行った「分けずに処理する選択」は、連結の過程で改めて見直さない(修正しない)ことが認められています(企業会計基準第34号 第30項)。
Q.どのような場合に例外処理(便法)を選択すべきですか?
A.契約ごとの価格配分にかかる実務コストが非常に高く、かつ非リース構成部分が契約全体に占める割合が比較的小さく、負債の増大が許容できる場合に選択することが一般的と想定されます(企業会計基準第34号 BC33項)。
実際の会計処理は個別事情によって判断が分かれます。具体的なケースは公認会計士へのご相談をおすすめします。
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