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IFRS15号 収益認識の「測定」を徹底解説!取引価格の算定と配分

2024-10-15
目次

IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」における5ステップ・アプローチのうち、ステップ3「取引価格の算定」とステップ4「取引価格の履行義務への配分」は、収益として認識する金額を決定する重要なプロセスです。本記事では、この「測定」に関する要求事項について、中心的な原則と詳細を、関連する条項番号を網羅しながら分かりやすく解説いたします。

収益認識の金額の基本原則

企業は、個々の履行義務が充足された時、または充足されるにつれて、その履行義務に配分された取引価格の金額を収益として認識しなければなりません(第46項)。これは収益測定の最も基本的な原則です。ただし、後述する変動対価の見積りに対する制限第56項から第58項)が適用される場合は、その制約に従う必要があります。つまり、約束した財やサービスを提供する見返りとして、いくらの対価を受け取る権利があるかを正確に算定し、それを適切なタイミングで収益計上することが求められます。

取引価格の算定方法と考慮事項

取引価格とは、顧客への財又はサービスの移転と交換に、企業が権利を得ると見込んでいる対価の金額です。この金額には、第三者のために回収する売上税などは含まれません(第47項)。取引価格の算定にあたっては、契約が取消しや変更なく、約束どおりに履行されることを前提とします(第49項)。

取引価格算定で考慮すべき5つの影響

取引価格を正確に算定するためには、契約条件が対価の金額と時期に与える影響をすべて考慮する必要があります(第48項)。具体的には、以下の5つの要素を慎重に検討しなければなりません。

考慮すべき影響 概要
変動対価 値引き、リベート、インセンティブ、ペナルティなどにより、対価の金額が変動する可能性。(第50項~第55項、第59項)
変動対価の見積りの制限 変動対価を収益に含めることができるのは、将来、重大な収益の減額(戻入れ)が生じない可能性が非常に高い範囲に限定されるという制約。(第56項~第58項)
契約における重大な金融要素の存在 支払時期と財・サービスの移転時期が著しく異なり、資金提供の便益が生じる場合の時間価値の影響。(第60項~第65項)
現金以外の対価 現金以外の資産(物品、サービス、株式など)で対価が支払われる場合。(第66項~第69項)
顧客に支払われる対価 企業が顧客に対して支払う対価(クーポン、リベートなど)がある場合。(第70項~第72項)

変動対価の会計処理

約束された対価に、値引き、リベート、返品権、業績ボーナス、ペナルティといった変動要素が含まれる場合、企業は権利を得ることになる対価の金額を見積もる必要があります(第50項、第51項)。

見積り方法(第53項)

見積りには、契約の特性に応じて、より適切に予測できるいずれかの方法を首尾一貫して適用します。

方法 内容
期待値 起こり得る対価の金額の範囲について、それぞれの確率で加重平均した金額。多数の類似した契約がある場合に適しています。
最も可能性の高い金額 起こり得る対価の金額の範囲のうち、最も可能性の高い単一の金額。結果が2つしかない場合に適しています。

変動対価の見積りの制限(第56項)

変動対価を見積もる上で最も重要な制約がこの規定です。企業は、変動対価に関連する不確実性が事後的に解消される際に、それまでに認識した収益の累計額に重大な減額(戻入れ)が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ、変動対価を取引価格に含めなければなりません。この評価は、各報告期間の末日に見直す必要があります(第59項)。

ロイヤルティの例外(第58項)

知的財産のライセンス供与における売上高ベースまたは使用量ベースのロイヤルティについては、上記の制限は適用されず、その後の売上や使用が発生した時点で収益を認識するという例外的な取扱いが定められています(付録B B63項)。

重大な金融要素の存在

顧客への財・サービスの移転時期と顧客からの支払時期が大きく異なることで、契約当事者の一方が他方に対して重大な金融上の便益を提供している場合、約束された対価の金額を貨幣の時間価値を反映するように調整しなければなりません(第60項)。ただし、実務上の便法として、財・サービスの移転から支払までの期間が1年以内と見込まれる場合には、この調整は不要です(第63項)。この調整によって生じる金利収益や金利費用は、顧客との契約から生じる収益とは区別して表示する必要があります(第65項)。

現金以外の対価

顧客が約束した対価が現金以外(例えば、物品、設備、サービスなど)である場合、その対価を公正価値で測定します(第66項)。公正価値を合理的に見積もることができない場合には、その対価と交換に提供する財又はサービスの独立販売価格を参照して間接的に測定します(第67項)。

顧客に支払われる対価

企業が顧客に支払う対価(リベート、クーポン、棚代など)は、原則として取引価格(すなわち収益)の減額として処理します(第70項)。ただし、その支払が、顧客から受け取る別個の財又はサービスとの交換である場合は、通常の購入取引として会計処理します。その場合でも、支払額が顧客から受け取る財・サービスの公正価値を超える部分は、収益の減額となります(第71項)。

履行義務への取引価格の配分(ステップ4)

算定した取引価格を、契約に含まれる複数の履行義務に配分します。この目的は、それぞれの履行義務の充足に対して、企業が権利を得ると見込む対価の金額を描写することにあります(第73項)。

配分の原則:独立販売価格

取引価格は、契約に含まれる各履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格の相対的な比率に基づいて、比例的に配分するのが原則です(第74項、第76項)。独立販売価格とは、企業がその財又はサービスを顧客に単独で販売する場合の価格を指します(第77項)。

独立販売価格の見積り

独立販売価格が直接観察できない場合は、見積りが必要です(第78項)。見積り方法には以下のようなアプローチがあります(第79項)。

アプローチ 内容
調整後市場評価アプローチ 競合他社の価格や市場の状況を考慮して見積る方法。
予想コストにマージンを加算するアプローチ 履行義務を充足するための予想コストを見積り、適切なマージンを加算する方法。
残余アプローチ 契約全体の取引価格から、観察可能な他の履行義務の独立販売価格の合計額を控除する方法。特定の要件を満たす場合にのみ限定的に使用できます。

値引きの配分

契約全体の取引価格が、各履行義務の独立販売価格の合計額を下回る場合、その差額(値引き)は、原則としてすべての履行義務に比例的に配分します(第81項)。ただし、値引きが特定の1つまたは一部の履行義務にのみ関連することが明確な証拠がある場合には、その履行義務にのみ値引きを配分します(第82項)。

変動対価の配分

変動対価についても、原則として契約開始時の配分比率に従いますが、変動対価が特定の履行義務に個別に関連している場合には、その履行義務にのみ配分することができます(第85項)。

取引価格の事後的な変動

契約開始後に取引価格が変動した場合、その変動額は契約開始時と同じ基礎(独立販売価格の比率)により各履行義務に配分します(第87項、第88項)。重要な点は、契約開始後の独立販売価格の変動を反映するための再配分は行わないということです。既に履行済みの義務に配分された変動額は、変動が生じた期間の収益(または収益の減額)として認識します(第88項)。

まとめ

IFRS第15号における「測定」は、ステップ3「取引価格の算定」ステップ4「履行義務への配分」から構成されます。取引価格の算定では、変動対価、重大な金融要素、現金以外の対価など、契約の経済的実態を反映するための複雑な論点を考慮する必要があります。そして、算定された取引価格を、各履行義務の独立販売価格を基礎として適切に配分することで、収益を正確に認識することが可能となります。これらの規定を正しく理解し適用することが、IFRS第15号に準拠した財務報告の鍵となります。

IFRS第15号「収益認識」の測定に関するよくある質問まとめ

Q. IFRS第15号における「取引価格」とは何ですか?

A. 顧客への財やサービスの移転と交換に、企業が権利を得ると見込む対価の金額です。ただし、売上税など第三者のために回収する金額は除きます(第47項)。

Q. 取引価格に変動する可能性のある金額(変動対価)が含まれる場合、どうすればよいですか?

A. 「期待値」または「最も可能性の高い金額」のいずれか適切な方法で見積もります(第53項)。ただし、後で収益の大きな減額(重大な戻入れ)が生じない可能性が非常に高い範囲でのみ、取引価格に含めることができます(第56項)。

Q. 顧客からの入金が1年以上先になる場合、会計処理で注意すべき点はありますか?

A. はい、支払時期の取り決めが当事者に重大な金融上の便益を与えている場合(重大な金融要素)、貨幣の時間価値を考慮して取引価格を調整する必要があります(第60項)。ただし、財やサービスの移転から支払いまでの期間が1年以内と見込まれる場合は、実務上の便法として調整は不要です(第63項)。

Q. 複数の商品をセットで販売する場合、売上(取引価格)はどのように配分すればよいですか?

A. 原則として、それぞれの商品の「独立販売価格」(単独で販売する場合の価格)の比率に基づいて、取引価格を比例配分します(第74項、第76項)。

Q. セット販売の値引きは、どのように会計処理しますか?

A. 原則として、セットに含まれるすべての商品に比例的に配分します(第81項)。ただし、値引きが特定の商品グループにのみ関連することが客観的な証拠から明らかな場合は、その商品グループにのみ値引きを配分することができます(第82項)。

Q. 契約後に取引価格が変動した場合、どのように会計処理しますか?

A. 契約開始時と同じ基礎(独立販売価格の比率など)で、各履行義務に配分し直します。既に履行した義務に配分された変動額は、変動があった期間の収益(または収益の減額)として認識します(第88項)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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