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IFRS第5号 売却目的保有非流動資産の測定と減損の解説

2025-05-13
目次

国際財務報告基準(IFRS)第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」における、売却目的保有に分類された非流動資産(又は処分グループ)の測定に関する規定は、企業の財務諸表や業績評価に重大な影響を与えます。本記事では、第15項から第29項に基づく測定の基本原則、減損損失の認識と配分ルール、計画変更時の厳格な会計処理、そして具体的な適用ガイダンスに基づくケーススタディを交えて詳細に解説いたします。

IFRS第5号における非流動資産の測定の基本原則

測定の基本ルール

売却目的保有や所有者分配目的保有に分類された非流動資産(又は処分グループ)は、原則として「帳簿価額」と「売却(または分配)コスト控除後の公正価値」のいずれか低い金額で測定しなければなりません。これにより、資産の回収が継続的な事業活動での使用ではなく、売却等によって行われるという経済的実態を財務諸表に適切に反映させることが目的とされています(IFRS5.15、IFRS5.15A)。

分類目的 測定の基準(いずれか低い金額)
売却目的保有 帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値
所有者分配目的保有 帳簿価額と分配コスト控除後の公正価値

新規取得資産の特例と現在価値測定

企業結合の一部として新規に取得した資産(又は処分グループ)が、取得直後に売却目的保有の要件を満たす場合、企業は当初認識時において必然的に売却コスト控除後の公正価値で測定しなければなりません。また、売却が1年以上先に行われると見込まれる例外的なケースでは、売却コストを現在価値で測定することが求められます。この場合、時の経過に伴って生じる売却コストの現在価値の増加分は、財務コストとして純損益に表示する必要があります(IFRS5.16、IFRS5.17)。

状況 測定の取り扱い
新規取得資産の即時分類 売却コスト控除後の公正価値で当初測定
売却が1年以上先の場合 売却コストを現在価値で測定し増加分は財務コスト処理

分類直前および事後の各IFRSに基づく事前測定

資産(又は処分グループ)を初めて売却目的保有に分類する直前には、該当する各IFRSに従ってすべての資産及び負債の帳簿価額を正確に測定しておかなければなりません。さらに、分類後の事後的な再測定の際にも、IFRS第5号の測定対象外となる金融資産などの帳簿価額は、処分グループ全体の売却コスト控除後の公正価値を再測定する前に、各IFRSに従って事前に測定しておくことが厳格に求められます(IFRS5.18、IFRS5.19)。

減損損失の認識と戻入れのルール

減損損失の認識と利得(戻入れ)の上限

企業は、資産の売却コスト控除後の公正価値が帳簿価額を下回る場合、事前の各IFRSに基づく測定で認識していない範囲において減損損失を認識しなければなりません。その後に公正価値が増加した場合には利得(戻入れ)を認識しますが、認識できる利得の額は、IFRS第5号または過去にIAS第36号「資産の減損」に従って認識した減損損失累計額を上限として制限されます(IFRS5.20、IFRS5.21、IFRS5.22)。

処分グループにおける減損損失の配分順序

処分グループについて認識した減損損失やその後の利得は、IFRS第5号の測定範囲に含まれる非流動資産の帳簿価額にのみ配分しなければなりません。配分の順序はIAS第36号に準拠し、まず「のれん」の帳簿価額をゼロになるまで優先して減額し、残額をその他の対象資産の帳簿価額の比率に応じて比例配分します。非流動資産の売却日までに認識していなかった利得や損失は、認識の中止の日に純損益として認識します(IFRS5.23、IFRS5.24)。

配分順位 対象資産
第1順位 のれん(帳簿価額を上限に全額減額)
第2順位 その他のIFRS第5号測定対象の非流動資産(比例配分)

分類期間中の減価償却の停止と費用の継続認識

極めて重要な実務上の留意点として、非流動資産が売却目的保有に分類されている期間中、又は処分グループの一部である期間中は、企業は当該非流動資産を減価償却(又は償却)してはなりません。ただし、処分グループに含まれる負債に起因する支払利息やその他の費用については、分類期間中であっても継続して認識し続ける義務があります(IFRS5.25)。

売却計画又は所有者への分配計画の変更時の会計処理

分類要件を満たさなくなった場合の分類中止と例外規定

企業が資産を売却目的保有等に分類していたにもかかわらず、その要件を満たさなくなった場合、直ちにその分類を中止しなければなりません。ただし例外として、売却目的保有から所有者分配目的保有へ直接分類変更する場合(またはその逆)は、「当初の処分計画の継続」とみなされます。この場合、分類中止の会計処理は行わず、新たな処分方法の要求事項を適用し、要件判定の起点となる分類日も変更してはなりません(IFRS5.26、IFRS5.26A)。

分類を中止する非流動資産の測定方法

分類を中止する非流動資産(又は処分グループ)は、以下の2つの金額のうち、いずれか低い金額で測定しなければなりません。これにより、過去に発生していたかもしれない減価償却費等の影響を適切に反映させ、過大評価を防ぐよう設計されています(IFRS5.27)。

測定の比較対象 金額の算定方法
修正後の帳簿価額 分類されなかったと仮定した場合の減価償却等を反映した金額
回収可能価額 売却または分配をしないと決定した時点の金額

継続事業からの純損益への修正と処分グループからの除外

分類中止に伴う非流動資産の帳簿価額に対する修正額は、要件を満たさなくなった期間における「継続事業からの純損益」に含めて表示しなければなりません。また、処分グループから個別の資産や負債を除外する場合、残りのグループが引き続き要件を満たす場合に限りグループとしての測定を継続します。要件を満たさない個別の非流動資産は、分類を中止して個別に測定し直す必要があります(IFRS5.28、IFRS5.29)。

IFRS第5号の測定ルール制定の背景(結論の根拠)

米国会計基準(SFAS第144号)とのコンバージェンス

国際会計基準審議会(IASB)は、測定のルールを定めるにあたり、米国会計基準(SFAS第144号)とのコンバージェンスを強く意識しました。売却予定資産の残存期間における事業活動への使用は、売却により回収される金額に付随するものであるため、その会計処理は費用配分(減価償却)ではなく評価のプロセスであるべきと結論付けられました(IFRS5.BC42、IFRS5.BC43)。

減価償却の停止と減損モデルの整合性

減価償却を直ちに停止し、帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値の低い方で測定する措置は、資産の帳簿価額が主に売却によって回収されるという本基準書の基本原則に合致するものです。また、分類中止時の測定において過去の減価償却を考慮し、現在の回収可能価額と比較する手法は、IAS第36号の減損モデルとの整合性を図り、他のIFRS基準と一貫した処理を行うための設計となっています(IFRS5.BC47、IFRS5.BC50)。

処分グループの減損損失配分に関する具体的なケーススタディ

処分グループの事前測定と減損損失の算出

適用ガイダンス(設例10)に基づく具体的なケーススタディを解説します。企業が処分グループを売却目的保有に分類する直前に各IFRSに基づき再測定した結果、帳簿価額の合計が14,900(のれん1,500、有形固定資産(再評価モデル)4,000、有形固定資産(取得原価モデル)5,700、棚卸資産2,200、資本性金融商品に対する投資1,500)となりました。その後、処分グループ全体の売却コスト控除後の公正価値を13,000と測定したため、帳簿価額との差額である1,900を減損損失として認識します(IFRS5.IG Example 10)。

項目 金額
再測定後の帳簿価額合計 14,900
売却コスト控除後の公正価値 13,000

IAS第36号に基づく減損損失の具体的な配分手順

算出された減損損失1,900は、IFRS第5号の測定適用外である「棚卸資産」と「資本性金融商品に対する投資」には配分されません。企業はIAS第36号の配分順序に従い、まず「のれん」の帳簿価額1,500を全額減額してゼロにします。残りの減損損失400は、対象となる2つの有形固定資産の帳簿価額(4,000と5,700)の比率に応じて比例配分されます。結果として、再評価モデルの有形固定資産は165減額されて3,835に、取得原価モデルの有形固定資産は235減額されて5,465となり、処分グループ全体の帳簿価額が13,000として正確に測定されます(IFRS5.IG Example 10)。

減損配分の対象資産 配分される減損損失額
のれん 1,500(全額減額)
有形固定資産(2資産合計) 400(比例配分)

まとめ

IFRS第5号における売却目的保有に分類された非流動資産(又は処分グループ)の測定は、帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値の比較が基本となります。減損損失の厳密な認識と配分順序、減価償却の即時停止、そして計画変更時の厳格なルールを遵守することで、財務諸表利用者に透明性の高い情報を提供することが可能です。実務においては、対象資産の識別や各IFRSとの関連性を正確に把握し、適切な会計処理を実施することが強く求められます。

IFRS第5号の非流動資産測定に関するよくある質問まとめ

Q.売却目的保有に分類された非流動資産はどのように測定されますか?

A.原則として、分類直前の帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定されます(IFRS5.15)。

Q.売却目的保有に分類された期間中、減価償却は継続されますか?

A.いいえ、非流動資産が売却目的保有に分類されている間は、減価償却または償却を行ってはなりません(IFRS5.25)。

Q.処分グループの減損損失はどのように配分されますか?

A.IAS第36号に従い、まずのれんの帳簿価額をゼロまで減額し、残額をIFRS第5号の測定対象となるその他の非流動資産に比例配分します(IFRS5.23)。

Q.売却計画が中止された場合、資産はどのように測定されますか?

A.分類されなかったと仮定した場合の減価償却等を反映した修正後の帳簿価額と、売却中止決定時点の回収可能価額のいずれか低い金額で測定されます(IFRS5.27)。

Q.新規取得資産を直ちに売却目的保有に分類する場合の測定方法は?

A.取得時の当初認識において、売却コスト控除後の公正価値で測定しなければなりません(IFRS5.16)。

Q.事後に公正価値が増加した場合、利得の戻入れに上限はありますか?

A.はい、認識する利得は、IFRS第5号または過去にIAS第36号に従って認識した減損損失累計額を上限としなければなりません(IFRS5.21)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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