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IFRS第5号の実務解説:売却目的保有資産と非継続事業

2025-05-08
目次

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」は、企業が使用を停止し売却を予定している資産や、撤退を決定した事業の会計処理と開示ルールを定めた基準です。本記事では、分類要件から測定方法、開示実務までを具体的なケーススタディを交えて詳細に解説します。

目的と背景

IFRS第5号の主な目的は、売却目的で保有する非流動資産の会計処理と、非継続事業の表示および開示のルールを明確にすることです。過去のIAS第35号を置き換える形で2004年に導入されました。

会計処理の2つの要求事項

本基準書は主に以下の2点を企業に要求しています。第一に、売却目的保有に分類される要件を満たす資産は、帳簿価額または売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い方の金額で測定し、当該資産の減価償却は中止しなければなりません(IFRS5.1(a))。第二に、財政状態計算書において区分表示し、非継続事業の経営成績は包括利益計算書において区分表示することが求められます(IFRS5.1(b))。

基準設定の背景とケーススタディ

資産が継続的な使用ではなく売却によって回収される場合、減価償却を続けるよりも売却による回収可能額で評価する方が、財務諸表利用者の将来キャッシュ・フロー予測に有用です。例えば、企業が自社工場を売却決定し要件を満たした時点から減価償却を停止し、貸借対照表上で他の有形固定資産とは分けて区分表示します。

対象範囲と適用除外

本基準書の分類および表示の要求事項は、企業が認識したすべての非流動資産および処分グループに適用されます(IFRS5.2)。転売のみを目的に取得した資産も同様です(IFRS5.3)。

処分グループの定義

処分グループとは、単一の取引において同時に処分される資産のグループと、直接関連する負債のことです。グループ全体が帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定されます(IFRS5.4)。

測定ルールの適用除外

以下の資産は、他のIFRSですでに独自の測定方法が確立されているため、IFRS第5号の測定に関する規定は適用されません(IFRS5.5)。二重適用を防ぐ意図があります。

適用除外となる資産 適用される基準
繰延税金資産 IAS第12号
従業員給付により生じる資産 IAS第19号
金融資産 IFRS第9号
公正価値モデルの投資不動産 IAS第40号
農業関連の非流動資産 IAS第41号
保険契約グループ IFRS第17号

売却目的保有の分類要件

非流動資産の帳簿価額が継続的使用ではなく、主に売却取引により回収される場合、売却目的保有に分類しなければなりません(IFRS5.6)。

厳格な分類ハードル

恣意的な利益操作を防ぐため、資産が「現状のままで直ちに売却が可能」であり、かつ「売却の可能性が非常に高い」状態である必要があります(IFRS5.7)。具体的には、経営者が売却計画を確約し、合理的な価格で積極的に売り込んでおり、原則として1年以内に売却完了が見込まれることなどの要件をすべて満たす必要があります(IFRS5.8)。

例外的な期間延長

独占禁止法の審査など、企業の支配が及ばない事象によって売却完了が1年を超えて延長された場合でも、売却計画を確約している十分な証拠があれば分類の妨げにはなりません(IFRS5.9)。

廃棄予定の非流動資産の取り扱い

企業は、廃棄予定の非流動資産を売却目的保有に分類してはなりません(IFRS5.13)。一時的に使用しなくなっている資産を廃棄されたかのように処理することも禁止されています(IFRS5.14)。

分類不可の理由

廃棄や閉鎖は、第三者との売却取引によって現金を回収する行為ではなく、継続的使用を通じて回収されるためです。例えば、老朽化した生産ラインを来年末に閉鎖しスクラップ廃棄する場合、最後まで自社で使用されるため売却目的保有には分類されません。

非継続事業としての表示

ただし、廃棄予定の処分グループが非継続事業の要件を満たす場合、その使用を中止した日において、業績やキャッシュ・フローを非継続事業として表示しなければなりません(IFRS5.13、IFRS5.32)。

測定と減損損失の認識

売却目的となった資産は、使用による価値の消費という概念がそぐわなくなるため、減価償却を停止します(IFRS5.25)。

低価法による測定

売却目的保有に分類された非流動資産は、帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定します(IFRS5.15)。例えば、帳簿価額1,000万円の建物について、分類直前の公正価値が900万円、売却コストが50万円の場合、低い方の850万円で測定します。

減損損失と戻入れ

売却コスト控除後の公正価値までの評価減について、差額の150万円を減損損失として認識します(IFRS5.20)。その後、売却コスト控除後の公正価値が950万円に上昇した場合、過去の減損損失150万円を上限として、100万円の利得を認識し帳簿価額を回復させます(IFRS5.21)。

表示および開示のルール

財務諸表利用者が、非継続事業および非流動資産の処分による財務上の影響を評価できるような情報の表示が必要です(IFRS5.30)。

非継続事業の包括利益計算書での表示

独立の主要な事業分野などを処分する場合、非継続事業に該当します(IFRS5.32)。企業は、非継続事業の税引後損益と処分損益の合計を、包括利益計算書上に単一の金額(例:非継続事業からの損失300万円)として表示し、内訳を注記などで区分表示しなければなりません(IFRS5.33)。

財政状態計算書での区分表示

売却目的保有に分類された資産と負債は、財政状態計算書上で他の資産等と区分して表示し、相殺して単一の金額にしてはなりません(IFRS5.38)。過去の期間の財政状態計算書を遡って修正再表示することは禁止されています(IFRS5.40)。

経過措置と発効日

過去の取引に対する遡及的な修正再表示のコストを考慮し、実務的な配慮がなされています。

将来に向かっての適用

本基準書は、2005年1月1日以後開始する事業年度から適用され、発効日以降に要件を満たす資産に対して将来に向かって適用しなければなりません(IFRS5.43、IFRS5.44)。これにより旧基準のIAS第35号は廃止されました(IFRS5.45)。

まとめ

IFRS第5号は、売却が確実に見込まれる非流動資産の減価償却を停止し、回収可能額に基づく低価法で測定することを求めています。また、撤退事業を非継続事業として区分表示することで、投資家が企業の将来の持続的な収益力を正確に評価できるようになります。実務においては、厳格な分類要件の判定と、適用除外となる金融資産等の取り扱いに留意することが重要です。

IFRS第5号のよくある質問まとめ

Q.売却目的保有資産とは何ですか?

A.継続的な使用ではなく、主に売却取引によって帳簿価額が回収される非流動資産のことです(IFRS5.6)。

Q.売却目的保有に分類するための具体的な要件は何ですか?

A.現状のままで直ちに売却が可能であり、経営者が売却計画を確約し、原則として1年以内に売却が完了する見込みであることなどが必要です(IFRS5.7、IFRS5.8)。

Q.売却目的保有資産の減価償却はどうなりますか?

A.売却目的保有に分類されている期間中は、当該非流動資産の減価償却は中止しなければなりません(IFRS5.25)。

Q.売却目的保有資産はどのように評価されますか?

A.帳簿価額と売却コスト控除後の公正価値のいずれか低い金額で測定され、下回る場合は減損損失を認識します(IFRS5.15、IFRS5.20)。

Q.廃棄予定の設備は売却目的保有に分類できますか?

A.廃棄予定の資産は売却取引ではなく継続的使用を通じて回収されるため、売却目的保有には分類できません(IFRS5.13)。

Q.非継続事業の業績はどのように表示しますか?

A.包括利益計算書において、継続事業とは区分し、非継続事業の税引後損益などを単一の金額として表示する必要があります(IFRS5.33)。

事務所概要
社名
公認会計士事務所プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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