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IFRS第5号「売却目的保有の非流動資産と非継続事業」の表示と開示

2025-05-16
目次

IFRS第5号「売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業」における表示及び開示の規定は、企業の事業再編や撤退による財務上の影響を利害関係者が正確に評価するために極めて重要です。本記事では、第30項から第42項までの要件を中心に、結論の根拠(BC)や適用ガイダンス(IG)の具体例を交えながら、実務上求められる表示方法や注記要件を詳細に解説します。

IFRS第5号における表示及び開示の基本原則

IFRS第5号では、企業が非継続事業や売却目的で保有する非流動資産(または処分グループ)を処分することによる財務上の影響を、財務諸表の利用者が適切に評価できるようにするための情報提供を基本原則としています。企業の継続的な収益力一時的な事業撤退による影響を明確に区別することが求められます(IFRS5.30)。

非継続事業の表示と開示要件

非継続事業の定義と要件

企業の構成単位とは、営業上および財務報告の目的上、他の部分から明確に区別できる営業活動およびキャッシュ・フローを指します。使用中は単一の資金生成単位、またはそのグループとなります。非継続事業とは、すでに処分されたか、または「売却目的保有」に分類された企業の構成単位であり、特定の要件を満たすものを指します(IFRS5.31、IFRS5.32)。

要件 内容
独立した主要事業・地域 独立の主要な事業分野または営業地域を表す
統一された処分計画 独立の主要な事業分野または営業地域を処分する統一された計画の一部である
転売目的の子会社 転売のみを目的に取得した子会社である

包括利益計算書と注記における表示

企業は、非継続事業に関して、包括利益計算書上で単一の金額として表示しなければなりません。この単一の金額には、非継続事業の税引後損益と、当該事業を売却コスト控除後の公正価値で測定したこと、または処分したことにより認識した税引後の利得または損失の合計額が含まれます(IFRS5.33)。さらに、この単一金額の内訳(収益、費用、税引前損益、関連する法人所得税費用など)を注記または包括利益計算書に継続事業と区分して表示することが求められます。また、営業・投資・財務活動に帰属する正味のキャッシュ・フローも開示が必要です(IFRS5.33、IFRS5.34)。

分類中止や過去の期間の修正再表示

企業が表示する最新の期間において非継続となったすべての事業に関連するように、過去の期間に係る非継続事業の開示は遡って再表示しなければなりません(IFRS5.34)。また、これまで非継続事業に表示していた金額を当期に修正し、それが過去の期間の処分に直接関連する場合(購入価格調整の決着や環境義務の不確実性の解消など)、その修正額を別個に非継続事業に分類し、性質および金額を開示します(IFRS5.35)。構成単位を売却目的保有に分類することを中止した場合は、過去の期間も含めて「継続事業からの利益」に再分類し、修正再表示を行う必要があります(IFRS5.36)。

継続事業に関連する利得又は損失の取扱い

非継続事業の定義を満たさない、すなわち主要な事業分野や営業地域ではない売却目的保有に分類された非流動資産(または処分グループ)の再測定による利得または損失は、継続事業からの純損益に含めて表示しなければなりません(IFRS5.37)。これにより、事業の主要な部分ではない資産の売却損益が、誤って非継続事業として扱われることを防ぎます。

売却目的保有資産の財政状態計算書における表示

資産と負債の区分表示と相殺の禁止

企業は、売却目的保有に分類された非流動資産および処分グループの資産を、財政状態計算書(貸借対照表)上において他の資産と明確に区分して表示しなければなりません。同様に、処分グループに含まれる負債も他の負債と区分して表示します。これらの資産と負債を相殺して単一の金額として純額表示することは厳格に禁止されています(IFRS5.38)。主要なクラスの資産と負債は、財政状態計算書本体または注記において区分して開示します(IFRS5.39)。

表示項目 表示方法のルール
資産と負債の区分 他の継続使用する資産・負債と明確に区分して表示
相殺の禁止 資産と負債を相殺して純額表示してはならない

その他の包括利益の表示と過年度の取扱い

売却目的保有に分類された資産および負債に関して、過去にその他の包括利益に認識された収益または費用の累計額(未実現損益など)がある場合、資本の部において区分して表示しなければなりません(IFRS5.38)。また、重要な実務上の注意点として、売却目的保有に分類された資産および負債について、過去の期間の財政状態計算書で表示した金額を、表示する最新の期間に合わせて再分類や修正再表示を行ってはなりません(IFRS5.40)。

追加的な開示要件と具体的なケーススタディ

追加開示と結論の根拠(背景)

企業は、非流動資産等が売却されたか、または売却目的保有に分類された期間の財務諸表の注記において、資産の説明、売却等に至った事実や状況、予想される方法と時期、認識した利得または損失、該当する報告セグメントを開示する必要があります(IFRS5.41)。売却計画を変更し分類を中止した期間には、その決定に至った事実と経営成績への影響を開示します(IFRS5.42)。国際会計基準審議会(IASB)は、処分グループの資産と負債を区分表示することが、継続使用され減価償却される資産と、減価償却が停止し売却予定の資産を明確に分けるため、財務諸表利用者にとって目的適合的で有用であると結論付けています(IFRS5.BC56-BC58)。

非継続事業の包括利益計算書表示(ケーススタディ1)

適用ガイダンス(IG設例11)に関連するケースとして、特定の主要な事業分野(非継続事業)の売却を決定した企業の例を挙げます。この企業は包括利益計算書を作成する際、本業の「継続事業からの当期利益」を算出後、計算書の下部に「非継続事業」という独立した区分を設けます。そこに「非継続事業からの当期利益」として、当該事業の営業赤字と、売却コスト控除後の公正価値までの評価減による損失の合計額の税引後純額を単一の金額で表示します。そして、売上や費用、税金などの詳細な内訳は注記で明細として開示し、投資家が本業の持続的な収益力と撤退事業の一時的な損失を区別できるようにします。

財政状態計算書における表示(ケーススタディ2)

適用ガイダンス(IG設例12)に関連するケースとして、当期末に特定の事業部門(処分グループ)を売却する要件を満たした企業の例を挙げます。この処分グループには有形固定資産、投資有価証券、関連負債が含まれます。企業は財政状態計算書において、これらを通常の項目に含めず、流動資産の区分等の下に「売却目的保有に分類された非流動資産」として総額で表示します。負債も「売却目的保有に分類された非流動資産に直接関連する負債」として総額表示し、相殺は行いません。投資有価証券に関連する未実現利得がある場合は、資本の部で特別に区分表示します。比較情報として提示する前年度の財政状態計算書については、遡って修正再表示することはありません。

まとめ

IFRS第5号に基づく表示および開示の要件は、企業の事業構造の変化が財務諸表に与える影響を透明化するためのものです。非継続事業の包括利益計算書における単一金額での表示や注記での内訳開示、財政状態計算書における売却目的保有資産・負債の区分表示と相殺禁止など、厳格なルールが定められています。これらの規定を遵守することで、投資家やステークホルダーに対して、企業の将来のキャッシュ・フロー創出能力に関する目的適合性の高い情報を提供することが可能となります。

IFRS第5号における表示と開示のよくある質問まとめ

Q. IFRS第5号における非継続事業の包括利益計算書での表示方法は?

A. 非継続事業の税引後損益と処分による利得または損失の合計額を「単一の金額」として表示し、その内訳は注記または計算書本体で区分表示します(IFRS5.33)。

Q. 売却目的保有に分類された資産と負債は相殺して表示できますか?

A. いいえ、資産と負債を相殺して単一の金額として純額表示することは厳格に禁止されており、それぞれ区分して表示する必要があります(IFRS5.38)。

Q. 過去の期間の包括利益計算書における非継続事業の取扱いはどうなりますか?

A. 表示する最新の期間において非継続となった事業に関連するように、過去の期間に係る非継続事業の開示は遡って修正再表示しなければなりません(IFRS5.34)。

Q. 売却目的保有資産について、過去の期間の財政状態計算書も修正再表示が必要ですか?

A. いいえ、売却目的保有に分類された資産および負債について、過去の期間の財政状態計算書で表示した金額を修正再表示してはなりません(IFRS5.40)。

Q. 非継続事業の定義を満たさない売却目的保有資産の処分損益はどこに表示しますか?

A. 主要な事業分野等ではない非継続事業の定義を満たさない資産の再測定による利得または損失は、継続事業からの純損益に含めて表示します(IFRS5.37)。

Q. 売却目的保有資産に関連する未実現損益などの累計額はどのように表示しますか?

A. 過去にその他の包括利益に認識された収益または費用の累計額は、資本の部において区分して表示しなければなりません(IFRS5.38)。

事務所概要
社名
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住所
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電話番号
03-6773-5062
対応責任者
公認会計士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊所の会計士までお問い合わせください。

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